まずは、お父様がどうして介護を拒否しているのか知ることが大切です。認知症の人の場合、認知機能の低下によって介護の必要性を理解できないことがあります。また、介助を受けること自体に抵抗感を持っていることもあるかもしれません。
そのため、どうして介助を拒否するのか、お父様の意思を尊重してみてください。それによって、気持ちが落ち着いて拒否の回数が減るかもしれませんよ。
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認知症の父の介護をしているのですが、何をするのも拒否をするので困っています。中でもトイレと入浴の介助を嫌がるんです。
最近はトイレの失敗が増えてきていて、汚れた衣服を部屋にしまいこんだりしています。お風呂は、入るのが面倒みたいで、何週間も入らないことがあります。何か良い方法はありませんか?
そうですね…。対策はいくつかありますが、まずは、なぜお父様が介護拒否をするのかを把握した方が良いかもしれません。というのも、介護拒否の理由によって対策も異なるからです。
介護拒否の理由、ですか…。よく「さわるな!」とか怒鳴っていますね…。殴られることもあります。
うーん。もしかしたら、認知症による認知機能の低下によって、「介護をされる意味がわからない」のかもしれません。入浴だったら「どうして風呂に入らないといけないかわからない」「どうして服を脱がされるのかわからない」といった風です。
何もわからず浴室に連れて行かれて服を脱がされそうになったら、誰でも驚きますよね。そういった理由で抵抗していることもありえます。
お風呂に入る意味がわからないってことですか?認知症だと、そんな日常的なこともわからなくなってしまうんですね。
そうなんです。それに、記憶障害の影響ではじめは介護の意味を理解していたのに、介助されている途中で忘れてしまうこともあります。
お風呂に入ろうとして服を脱ぎ始めたのに、その最中で何で服を脱いでいるのかわからなくなった、というようなケースですね。意味もわからず服を脱がされていたら、やはり混乱して抵抗してもしょうがないのかもしれません。
なるほど…。そんなことを考えたこともありませんでした。
あとは認知症が進んでくると、ご家族などの良く知った人の顔もわからなくなります。なので、認知症のご本人にとっては「知らない人に服を脱がされている」という状況になるんですね。
それもやっぱり抵抗したくなりますよね。幸い、まだうちの父は私や他の家族の顔はわかっているようですが…。
あとは、排泄や入浴介助に関しては羞恥心があることも考えられます。裸になったり、ズボンや下着を下ろしたりするわけですからね。
特に排泄介助の場合、失敗してしまった下着を見られるのが恥ずかしいと感じていることもあります。なので、介助を拒否してしまうんですね。
あ、父の場合、それかもしれません!先日、父の部屋を掃除したらタンスの奥に汚れた下着がたくさんあって…。掃除するのも洗濯するのも大変でした…。
それは大変でしたね…。汚れた下着を発見するというのは、羞恥心もありますがその人の自尊心を傷つけることにもなりかねないんです。トイレを失敗したり、汚れた下着を正しく処理できない自分を「情けない」と感じてしまうんですね。
それを避けるためにトイレ介助を拒否したり、汚れた下着を隠していたのかもしれませんね。
あー、それもあるかもしれないです。
また、介助を受けること自体に抵抗感を持つ人もいます。「誰かの世話を受けたくない」「まだ自分でできる」と感じて、介助を拒否してしまうんです。
父がなんで介助を受けたがらないのか、何となくわかった気がします。どうしたら、拒否されなくなるでしょうか?今のままだと衛生的にも良くないですし、早くなんとかしたいです。
介護拒否への対応としては、主に以下のようなものがあります。
「本人の意思を尊重する」というのは、介護を受ける人の気持ちを優先した介護をするということ。介護をするのはとても大変ですから、介護する側の気持ちの余裕がなくなって、忙しないケアになってしまいがちです。
そのうえ、介護を拒否されたらもっと余裕がなくなることもあるでしょう。そこを一呼吸おいて、ご本人の意思に寄り添ってみましょう。
「意思に寄り添う」って、具体的にはどんなことをするんですか?
拒否されたときに無理やり介助するのではなく、「これをしたくないんだね」と共感すること。そのうえで、「こうしたら良いんじゃない?」「自分で服を選んでみようか」などのご本人の意思を尊重するような声掛けをします。
こうすることで、介護を受ける人が「対等な立場で対応してくれる」と感じ、自尊心が保たれるため、介護を受け入れるようになっていくでしょう。
うーん。それってなかなか難しいですね…。そんな風にのんびり介護したら終わらないし、イライラしちゃうし…。いけないとわかっていても、父に介護を拒否されると怒鳴ってしまっています。
そうなんですよね…。ただ、拒否されたときに叱ってしまうと、余計に拒絶されて介助がまったく進まないことも。それを考えれば、いったん落ち着いてから穏やかに声掛けをした方がスムーズに介護が進む可能性があるんじゃないでしょうか。
確かにそうですね…。気持ちの余裕が大切ですね。
…その次の「具体的な声かけをする」というのはどういうことですか?普通の声掛けとは違うんですか?
普通の声掛けは「お風呂入るよ」「トイレ行こう」といったことが多いと思います。でも、これだと認知機能が落ちている人の場合、どうしてお風呂やトイレに行かなきゃいけないのかがわかりません。
なので、「汗をかいたからお風呂に入ってさっぱりしよう」「トイレに行ったらお腹が軽くなって、ごはんがおいしく食べられるよ」など、理由もあわせて伝えるんです。そうしたら、介助を受ける意味もわかりやすいですよね。
そういうことですね。いつも「トイレ行くよ」だけだったので、今度からそうやって声掛けしてみます。
また、私たちが食事や入浴、トイレなどを自分のタイミングでおこなっているのと同じように、認知症で介助を受けている人にも自分のタイミングがあります。そのため、介護拒否をされるときは、違うタイミングだったから拒否したということも考えられます。
そういうときは、少し時間を置いて再度、介助を試みてください。ちょっとタイミングをずらすだけで、意外にあっさりと介助を受け入れてくれることもあるんです。
へー!そんなこともあるんだ!忙しいから無理やりトイレに連れて行っちゃうこともあったので、今度からそうしてみます。
ただ、やはり松井さんがおっしゃる通り、認知症の人に合わせた介助というのは、時間がかかることもあります。介護する人に時間的・精神的な余裕がないとできないことも多いでしょう。
なので、余裕のある介護をするためにも介護サービスを積極的に利用していくことが大切です。
でも、父は人と関わることが苦手で。今はデイサービスに週1回通っていますが、それも最近になってようやく通えるようになったんです。
ただ、やはり松井さんがおっしゃる通り、認知症の人に合わせた介助というのは、時間がかかることもあります。介護する人に時間的・精神的な余裕がないとできないことも多いでしょう。
なので、余裕のある介護をするためにも介護サービスを積極的に利用していくことが大切です。
訪問介護は利用したことはないですね…。ヘルパーさんの言うことなら聞いてくれるかな。
やはりヘルパーさんは介護のプロですから、認知症の人の対応に慣れています。プロの力を借りて、少しでも介護の負担を減らしていきましょう。
在宅介護は大変なので、気持ちに余裕がなくなって1人で抱え込みがちです。なので、できるだけ負担は分割していってくださいね。
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