同居している母を介護施設に入居させようと考えています。これまで自宅で介護をしていたのですが、私が仕事と両立するのが難しくなって…。
それで、隣の市にある施設に入居予定ですが、住民票はその施設に移さないといけないんでしょうか?
いえ、基本的には住民票は移動させなくても問題ありませんよ。ただ、その施設が「地域密着型サービス」の場合、施設がある市区町村に住民票がないと入居ができません。
えっ、 地域密着型サービスって何ですか?聞いたことがないです。
地域密着型サービスとは、その地域の特性に合わせたサービスを提供するもので、その地域の市区町村が運営事業者の監督などをおこなっています。施設の規模を小さくしてご利用者の要望にきめ細かく応えることを目的としているサービスです。
地域密着型サービスに該当する介護施設には、以下のようなものがあります。
今回、母を入居させようとしているのは有料老人ホームです。有料老人ホームも地域密着型サービスにあたるんですね。
いえ、有料老人ホームと特別養護老人ホームに関しては、地域密着型サービスの施設とそうでないものがあります。基本は地域密着型サービスではない施設がほとんどです。
ただ、中にはその市区町村の住民限定の地域密着型サービスとして運営されている施設もあるので、事前に確認しておきましょう。
そうなんだ…。もし地域密着型サービスだった場合、入居前に移動させなければいけないんでしょうか?
原則として、入居前に移動させる必要があります。市区町村によっては、その地域に3ヵ月以上は住民票があることが確認できないと地域密着型サービスを利用できないことも。そのあたりも合わせて施設に確認してくださいね。
ちなみに、地域密着型サービスではない場合、住民票の移動はしてもしなくてもOK。移動させるタイミングも自由です。
受給資格証明書とは…
北野室長
要介護認定を受けている人が他の市区町村に住民票を移す場合、「受給資格証明書」が必要です。これは、元の市区町村で介護認定を受けていたことを証明するもので、転居先の市区町村に14日以内に手続きをしないと再度、介護認定を受けなければいけなくなります。
前の市区町村から次の市区町村へ介護認定を引き継ぐものですので、忘れずに発行しておきましょう。
地域密着型サービスでなければ住民票を移動させなくてもOK、と言いつつも、移動させることでいくつかのメリットがあります。
合わせてデメリットもあるので、メリット・デメリットの両面を理解したうえで住民票を移動させるか検討していただきたいです。
メリットとデメリットですか…。どんなものがありますか?
まず、住民票を移動することのメリットをまとめると以下のようなものがあります。
まず、介護保険料は、自治体によって異なります。そのため、転居先の市区町村の方が介護保険料が安くなることも。転居前後の自治体の保険料を比較して安くなるのであれば、住民票の変更を検討した方が良いでしょう。
なるほど!保険料は少しでも安いほうが良いですもんね!
また、郵便物が直接施設に届くのもメリットのひとつです。ご家族が頻繁に介護施設に訪問できない場合だと重要な郵便物を受け取るのも時間がかかってしまいます。そうした手間を省きたいのであれば、住民票の移動を検討してみてください。
そうか、母宛の郵便物は変わらず今の自宅に届くわけですもんね。毎回、施設に持っていくのは面倒だなぁ。
最後の「転居先の市区町村の地域密着型サービスが利用できる」は、先ほどお伝えした通りです。
むしろ、住民票を移動しないとサービスの利用ができませんので、よく確認しておいてくださいね。
はい。よくわかりました。
それと、デメリットは何でしょうか?
メリットでも触れましたが、介護保険料が高くなる可能性もあるんです。保険料が自治体によって差があるので、むしろ転居先の方が金額が高くなることももちろんあります。
確かに!じゃあ、今支払っているのと転居先の介護保険料を比べてみて、転居先の方が金額が高かったら住民票は移動させない方が良い、というわけですね?
いえ、そうしたデメリットを解消する「住所地特例制度」という制度があるので、転居後の介護保険料の方が高かったらこの制度をぜひ活用しましょう。
住所地特例制度についても、詳しくお伝えしますね。
そもそも、介護保険料の給付は住民票がある自治体から受けています。しかし、そうなると介護施設が多くある自治体に負担が偏ってしまいますよね。
そこで、そうした自治体間の負担をなるべく均一にするために住所地特例制度があります。大まかに言うとこの制度は「転居前の自治体の介護保険を利用できる」ということです。
転居前の自治体の介護保険を利用できると、どんなメリットがあるんですか?
転居前後の自治体の介護保険料を比較して、前の自治体の保険料の方が安い場合、この住所地特例制度を活用すれば安い保険料のままで介護サービスが受けられます。
つまり、介護保険料の高い市区町村に住民票を移動させても介護保険料の負担額が変わらずに生活し続けられるというわけです。
それは助かりますね!自宅と施設がある自治体の介護保険料を比べてみて、住所地特例制度を利用するか考えてみます。
ちなみに、住所地特例制度の対象となる介護施設は決められています。念のために、対象の施設かどうかも確認しておきましょう。
入居する介護施設に住民票を移すかどうかは基本的には自由です。ただ、住民票を移動させるメリットとデメリットを理解したうえでどうするか決めてくださいね。
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