看取りケアとは、主に最期を迎えるまでの身の回りのケアを指します。具体的には、清拭や入浴、口腔ケアなどで身体の清潔さを維持したり、ご入居者をお一人にしないように職員さんの訪室回数を増やしたりと、穏やかに最期を迎えられるようにケアを実施します。
ただ、老人ホームには医師が常駐しておらず、看護師さんが夜間帯に勤務していない施設が多いです。そのため、急変時にも治療はできず、病院のようにすぐに看護師さんが駆けつけられない可能性があることは理解しておいてくださいね。
この半年ほどで老人ホームに入居している母の状態が悪くなっています。もう年齢が年齢なので、「そろそろ覚悟しないと」とは思っているのですが、どうしても不安なんです。
母の施設は「看取りケアが可能」と聞いて入居しました。ただ、まだ看取りのタイミングではないようで、看取りの具体的な内容までは聞いていません。看取りケアとはどんなことをするのでしょうか?
急にお母様の体調が変わってしまうと、とても心配になってしまいますよね…。それに「看取りケア」という言葉も耳慣れない言葉かもしれませんから、詳しくお話ししていきますね。
まず、老人ホームで実施されている主な看取りケアは、以下のようなものがあります。
清潔の保持は、入浴や口腔ケアといった身体や、ベッドのシーツ交換、居室の清掃などの環境を清潔に保つことです。
当然のことのように思えますが、身体や環境を清潔に保つことは穏やかな最期を迎えるためにはとても重要。看取り期のご入居者は、寝たきりで意識がないケースが多いのですが、だからといって清潔の保持を怠らないことが看取りケアでは大切にされているんです。
身体的なケアは主に以下です。
身体的なケアでは、入居者が穏やかで快適に過ごせるように、身体を拭いたり身だしなみを整えたりと、日常生活を整備するケアがおこなわれます。
身体的なケアは当然のことのように思えますが、体や環境を清潔に保つことは穏やかな最期を迎えるためにとても重要です。
なるほど…。看取りになる前から施設でやってもらっているとは思いますが、看取り期ではより重要視されているんですね。
また、最期を迎える際の苦痛をなるべく和らげるようなケアもおこなわれます。例えば、身体的な苦痛を和らげるために、定期的に寝ている身体の向きを変えて床ずれを予防します。
また、看取り期に入ると食事ができなくなる人がほとんどです。なので、施設では食べられるだけ提供し、無理に食べさせるようなことはしません。中にはゼリーやプリンであれば食べられることもあるので、差し入れで持っていっても良いかもしれませんね。
母も少し前までは食事をすべて食べられていたんですが、最近は3分の1くらい食べられれば良い方だそうです。最期が近くなると食欲が落ちるものなんですね…。
身体的な苦痛を緩和するケアと同時に、精神的な苦痛の緩和もおこないます。終末期になるとご本人も不安が強くなることがあります。なので、できるだけお一人にしないように職員さんの訪室回数を増やします。
また、他の感覚がなくなっても聴覚は最後まで残ると言われているので、反応がなくても何度も声掛けをしたり、ご家族との時間を作ってご家族からも声掛けをしてもらいます。
ご本人が少しでも寂しさを感じないように配慮することも、看取りケアのひとつなんです。
身体的なケアと同時に、精神的な苦痛を緩和するためのケアもおこないます。内容な主に以下です。
終末期になると入居者本人も不安が強くなることがあります。看取りケアでは、入居者の不安や孤独感などの気持ちに寄り添いコミュニケーションを図っていきます。
また、プライバシーを尊重したり、今いる場所が安心だと思えるような快適な室内環境を作ることも大切にしています。
看取り期は、亡くなるご本人と同時にご家族にもケアを実施するんです。
え?家族にですか?
はい。やはり大切な方が亡くなるわけですから、ご家族の精神的な負担も大きいですよね。なので、ご家族の不安を和らげるためにケアの内容を丁寧に説明したり、最期を迎える際のご家族の希望をケアに反映することもあります。
また、亡くなった後には「グリーフケア」を実施。大切な人を亡くした後のご家族が悲しみから立ち直って日常生活をおくれるようにする支援をおこなうんです。
看取りケアでは、入居者本人へのケアだけでなく、入居者の家族へのケアもおこないます。具体的には以下です。
最期のときが近づくと、家族は大切な人が衰弱していく姿を見ることになるので、ショックを受けたり、冷静でいられなくなったりすることもあるでしょう。看取りケアでは家族の不安や辛い心情に寄り添った対応をしてくれます。
また、施設側が家族に対して入居者の状態をわかりやすく伝えることによって、「今、何が起こっているのか」だけでなく、「これからどのようなことが起こるのか」がわかり、気持ちを落ち着けることにつながります。
母が亡くなった後のことはまだ考えられませんが…そうした支援があると助かりますね。
老人ホームでの看取りケアについて、おおまかにイメージがつきました。
まだ母の老人ホームからは看取りについて何も言われていないのですが、看取りが始まるのはどんなタイミングなんでしょうか?
提携医療機関の医師によって「回復の見込みがない」と診断されたときに看取りをするかどうかの判断をします。ご本人やご家族の同意があった場合、看取りケアに入るわけですね。
ちなみに、看取りケアは以下のような流れでおこないます。
3番目の「看取り介護計画書」とは何ですか?
「どんな最期を迎えたいか」…。まだ実感がありませんが、それを考えないといけなくなるんですよね…。
そうですね…。お辛いことかもしれませんが、お母様やご家族の希望を実現するためには必要なことなんです。
もちろん、通常のケアプランと同じく、決めた内容は後から変更できます。看取りケアをおこなう中で考えが変わった場合は、施設のケアマネジャーさんに相談してくださいね。
日本の8割近くの人が病院で最期を迎えています。病院であれば、医師や看護師がすぐ近くにいるので急変時にもすぐ対応できて安心ですよね。
ただ、病院では点滴や酸素吸入といった医療措置を受けて苦しみが長引き、その人らしい最期を迎えられないこともあります。そうしたときに、その人らしい最期を迎えるために老人ホームを選ぶのもひとつの手です。
病院での看取りと老人ホームでの看取りは、何か違いがあるんですか?
病院では、食事ができなくなると点滴をしたりと医療ケアがおこなわれます。病院で終末期におこなわれる医療ケアを「ターミナルケア(終末期医療)」と呼びます。
病院でも無理な延命治療はおこないませんが、点滴によってむくんでしまったりあざができてしまったりと、治療による苦痛が伴う可能性があります。
点滴をすれば食事をしなくても良いから良いものだと思っていましたが、良いことだけではないんですね…。
対して、老人ホームでは点滴や酸素吸入などの医療ケアはできません。が、日常的なケアを通してできるだけ苦痛を和らげて自然な形での最期を迎えられるように支援をします。
ご本人の意識が薄くてコミュニケーションが取れなくなっても、好きな音楽を流したりご家族との写真を飾ったりと、ご本人やご家族の意向を反映できるのが老人ホームでの看取りの特徴です。それに、それまで関わってきた介護職員さんに見守られながら最期を迎えられるのも安心できるポイントでしょう。
本当に、母の施設の職員さんたちには良くしていただいています。そうした人たちに見守られて最期を迎えられるなら、母も穏やかな気持ちでいられると思います。
看取りが始まるまでまだ時間があるようなので、母にどんな最期を迎えてほしいのか家族でよく話し合ってみますね。
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