嘘だとわかっていてもご家族の負担が大きいですよね。ただ、周囲の人には作り話だとわかっていても認知症の人、ご本人にとっては本当のことなんです。なので、お母様の話を否定するのはNG。余計に不安や孤独感が強くなって作り話がエスカレートしてしまう可能性があります。
なので、嘘だと思っていても否定せずに「そうなんだね」と流すことも大切。また、その作り話をする裏側にはお母様の孤独感や不安感が隠れている可能性もあります。よく話を聞いて、その不安感を取り除けると作り話が減るかもしれませんよ。
最近、母が作り話をするようになって困っています急に「家の庭に知らない人が立っている」「無言電話がかかってくる」と言ったり、お隣の奥さんの名前を出して「うちに泥棒に入ろうとしている」なんてことも言うんです。
そういう嘘を言う度に「そんなわけないでしょ」と言っているのですが、嘘をつくのを止めません。母は認知症なので、私がそう言ったことを忘れてしまっているのかもしれませんが…。
母の被害妄想に付き合うのに、いい加減、疲れました。何か良い対応方法はありませんか?
うーん。それは疲れてしまいますよね…。
ただ、お母様が作り話をするのは認知症の症状の影響でしょう。そのため、お母様の話を否定すると認知症の症状が悪化して、作り話がエスカレートしてしまう可能性があります。
えぇ!?そうなんですか?それはなぜですか?
というのも、周囲の人にとっては嘘でも認知症の人にとっては本当のことだからです。認知症の人は、病気の影響で認知機能や記憶力が低下していることにとても不安を感じています。その不安を解消するために、作り話を現実だと思いこんでいることが多いんです。
なので、その作り話を否定してしまうとさらに不安感が強くなって、症状が悪化して作り話もエスカレートすることがあります。
そうだったんですね…。では、どうするのか良いのでしょうか?
まずは、お母様の話を否定せずに耳を傾けてみましょう。作り話をする裏側には、孤独を感じていたり不安を感じていることがあります。
それをじっくり聞くことで「大切にされてる」と安心感を得たり、不安の原因を解消するきっかけを見つけることもあるでしょう。
毎回、作り話を聞くなんてできないと思います。仕事や家事もありますし…。
もちろん、毎回、じっくり聞く必要はありませんよ。ちょっと時間や気持ちに余裕があるときだけでも十分です。
忙しいときは、否定はせずに「そうなんだね」と肯定しつつもさらりと流すような対応だったら、吉岡さんの負担も少ないんじゃないでしょうか?
なるほど。それでも良いんですね。それならできるかも。
それと、一人で介護を抱え込まないことも大切です。
特に作り話の場合、周囲の人に影響が出ることもありますから、他のご家族やご近所さんに事情を伝えておいたり、ケアマネジャーさんやかかりつけ医に相談しておくことをおすすめします。
母の作り話への対応がわかって、ちょっと安心しました。
でも、そもそもなんで認知症で作り話をするんですか?
認知症になると、記憶障害や見当識障害などの認知機能が低下します。その影響で「大切なものがどこにあるかわからない」など、認知症の人は常に不安を感じているんです。
それを「泥棒に盗まれた」と思い込んで誰かのせいにすることで、自分の自尊心を保とうとします。つまり、自分を守るために作り話をしているんですね。
そういえば、先日、「財布を盗んだでしょ!」と母に責められたことを思い出しました。実際は自分でタンスの奥にしまいこんでいたのを忘れていただけなのですが…。
それも自分を守るために妄想を思いこんでいたんですね。
そうなんです。「財布を盗まれた」という作り話は、「物盗られ妄想」とも呼ばれており、認知症の人によく見られる症状です。
物盗られ妄想については、以前のご質問でも詳しくお答えしているので参考にしてみてください。
また、一緒に住んでいるご家族などの何気ない一言が作り話の引き金になることもあるんです。
私の一言が?どういうことですか?
例えば、お母様のわからない話題で他のご家族が盛り上がっていたりすると、孤独を感じて気を引こうと作り話をすることがあります。
また、家の中の物の位置が変わって、物が見つからなくなったりすることが「泥棒に入られた」という作り話につながることもあるんです。
いろいろと心当たりがあります。気をつけないとですね…。
ここまで、認知症の人の作り話への対応方法や作り話をする原因についてお伝えしました。参考になりそうですかね?
そうですね。とても参考になりました。…でも、「否定せずに話を聞く」とか「何気ない一言が作り話の引き金になる」と言われると常に気を張っていないといけなくて、とても大変そうです。
仕事と家事もやらなきゃいけなくて、そんな余裕はないかもしれません。
そうですよね…。介護はいろんなことに気をつけないといけないので、本当に負担が大きいと思います。
なので、限界になる前に介護から離れましょう!
え?介護から離れるってどういうことですか?
デイサービスは、週に1回、利用しています。
では、デイサービスの回数を増やせないかケアマネジャーさんに相談してみるのもアリかもしれません。
デイサービスは、日中だけですが、ご高齢者を介護施設に預けられます。その空いた時間は、お母様の介護をせずに過ごせますから一時的なリフレッシュに良いですよね。
そうですね…。でも、昼間だけだと溜まった家事を片付けるだけで終わってしまって。
でしたら、ショートステイを活用するのはどうでしょうか?ショートステイは、1~30日まで利用できる宿泊サービス。食事やレクリエーションなども提供しています。
少なくとも丸1日は介護から離れられますし、リフレッシュができると思いますよ。ご利用者の中には、数日まとめて利用して家族旅行を楽しむご家庭もあるみたいです。
介護サービスを家族旅行をするために利用して良いんですね!
もちろんです!在宅介護は大変ですから、介護をする人のリフレッシュする時間は必要です。介護をする人の心身の健康をないがしろにしていたら、共倒れしてしまう可能性もありますからね。
なので、介護のことを忘れて自分の趣味などに没頭する時間を”あえて”作ってください。その方が、リフレッシュした気持ちでお母様に接することができるようになると思いますよ。
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