認知症になると、判断力や抑制力が低下して感情をコントロールできなくなることがあります。そのため、以前は「プライドを傷つけられた」と感じないようなことでも、すぐに怒りを感じて怒鳴ってしまうのです。
なので、プライドを傷つけない声掛けが重要。「1人ではできないから手伝うよ」といった言い方をしてしまうと、プライドを傷つけてしまうことがあるので要注意です。お父様ができることはなるべくご自身でやってもらい、できないところだけ手助けするなど、お父様が尊厳を保てるような介助を心がけてみてください。
認知症の父が、プライドが高くて介護を拒否するのでとても困っています。特に困っているのがトイレ。最近、トイレを失敗することが増え、汚れた下着をタンスの奥に隠すようになりました。
汚れた下着を後で片付けるのが大変なので、父がトイレに行くときに手伝おうとすると「1人でできる!」と怒鳴って拒否…。それが毎日のことなので私もイライラしてしまい、いつも言い合いになってしまうんです。
認知症になって1人でできないことが増えているのに、プライドが高くてそれが認められないみたいで…。父が素直に私の介護を受けてくれるにはどうしたら良いでしょうか?
それは大変ですよね…。野田さんの負担も大きいと思います。
ちょっとした言い方で、認知症の人の介護は、スムーズにできるか・できないかが大きく変わります。中でも認知症の人のプライドを傷つけてしまうような言い方をすると、介護拒否につながることもあるんです。
「プライドを傷つけてしまうような言い方」ってどんな言い方ですか?そんな言い方はしていないと思うのですが…。
例えば、「1人ではできないから手伝うよ」といった声掛けをしてしまうと、プライドを傷つけてしまう可能性があります。ときには大声で怒ったり、介護拒否されてしまうことも…。
それ、言っちゃっているかも…。「お父さん、1人じゃできないでしょ」と言ったら、「手を出すな!」と拒否されたことがあります。あれもプライドを傷つける言い方だったんですね。
良かれと思っていることでも、言葉の選び方でプライドを傷つけてしまうことがあるんですよね…。
また、介護に疲れて余裕がないと、「何回言ったらわかるの」「何をやってるの!」ときつい言い方になってしまうこともあるかもしれません。そういう声かけもプライドを傷つけることがあるので、避けた方が良いでしょう。
それもよく言ってしまっています…。
では、どうすればプライドを傷つけないんでしょうか?
例えば、家庭の中で役割を持ってもらうのはどうでしょうか?今のお父様ができる範囲で良いので、家事の手伝いをしてもらうとプライドが保たれて関係も良好になるかもしれません。
具体的には、「食後にお皿を下げる」「洗濯物をたたむ」といったこと。ちょっとしたことでも、役割があることで尊厳が保たれて生きがいのある暮らしを送れるようになります。
そんな簡単なことで良いんですね。
加えて、お父様が自発的にやろうとしたことを奪わないことも大切です。
例えば、お父様が自分から部屋の片付けをしたり、庭の手入れをしようとしたとします。そのときに危険だからと頭ごなしにその仕事を奪うのはNG。プライドが傷つけられて反発し、言い合いの種になりかねません。
え!そうなんですね!このあいだ、父がハサミで庭の植木を手入れしようとするので、「余計なことはしないで!」と叱ってしまいました。父がハサミで怪我をして以来、刃物は持たせないようにしていたんです。
やっぱりそのときも「自分の庭をいじるのが何が悪い!」と怒鳴って、勝手にハサミで植木を剪定していましたが…。
1人だと危険なこともあるので言い方が強くなってしまいますよね…。「今度、剪定の仕方を教えて」など、やわらかい言い方で止める方が良かったのかもしれませんね。
あと、尊厳を守るためには「できないことだけ手伝う」ことも重要。どうしても介護が忙しいとすべて介助してしまいがちですが、そうするとプライドが傷つけてしまうことがあります。
着替えの手伝いであれば「ボタンをかけるだけ」「入浴の介助では背中と頭を洗うのだけ」を手伝うといった最小限の介助を心がけることも大切です。
父は認知症になる前からプライドが高い人だったんですが、認知症になってからさらにプライドが高くなったような気がします。
認知症になるとプライドが高くなりますか?
はい。認知症の影響でプライドが高くなることはあります。
というのも、認知症によって判断力や抑制力が低下し、感情のコントロールが難しくなるから。以前はプライドが傷つけられても怒りを抑えられていたのが、認知症の影響で抑えられなくなっているんです。
そうだったんですね!認知症になったことを認められず、意固地になっているのかと思っていました。
そういう面もあるかもしれません。認知症になると自分でできないことが増えていきます。でも、誰しも「自分は何もできない」と思いたくはないですよね。
お父様は、できないことが増えていく不安を感じているはずです。でも、それを認めたくなくて、汚れた下着を隠すなどの行為をしている可能性もあります。誰かに自分の失敗を見せるのは恥ずかしいものですからね。
父は認知症になって不安を感じているんですね。
きっとそうだと思います。でも、認知症になったからと言って、その人が持っているプライドが失われるわけではありません。なので、行動や言動を否定してしまうと、大きなストレスを感じてしまいます。
ストレスは認知症の症状の悪化の原因のひとつですから、プライドを傷つけることで認知症が悪化する可能性も。となると、介護する人にとっても介護の負担が大きくなるので、介護する人・される人の双方にとって良くない状態になりかねません。
認知症は発症したからといってすべて手伝ってしまうのではなく、お父様の尊厳を守りながら介護していけるのが理想ですよね。
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