ガスコンロを使えないようにするのもひとつの手です。しかし、お母様の行動を大きく制限してストレスになるかもしれないので、まずは別の手を考えてみましょう。
例えば、安全装置付きのガスコンロやIHコンロに変えたり、ご家族などがいるときだけは火を使えるようにするといったことです。それでも火の消し忘れが避けられない場合に、コンロの元栓を閉めることを考えてみてください。
実家で一人暮らしをする認知症の母の介護をしています。週に1~2回、通っているのですが、これまで何度かガスコンロの火がつきっぱなしになっていることがあり、やかんを空焚きしたり鍋を焦がしたりしています。
私がそれを見つける度に母に注意しているものの、「ちょっと忘れただけじゃない!」と怒鳴られ、しょっちゅう口論になって疲れます…。
認知症になると、記憶力や注意力が低下することがあるので、コンロの火をつけていたことを忘れやすくなってしまうんですよね。
記憶力の低下で、火をつけていたことを忘れるのはわかるのですが、何で注意力が関係するんですか?
注意力が低下することで、ちょっとしたことで注意が別のものに移ってしまい、もともとやっていたことや考えていたことが頭から抜けてしまうんです。
具体的には、やかんで火を使っている最中に来客や電話があったりすると、すぐにそちらに気が向いてしまいます。そのうえ、認知症の影響で新しい物事の記憶を忘れやすくなっていますから、注意が移る前に何をしていたのかを忘れてしまうんです。
なるほど。母も火を使っている最中に何かに注意が移ったことで、コンロの火のことが頭から抜けてしまったというわけなんですね。
うーん。母がコンロの火を消し忘れてしまう状況はわかりました。でも、どうしたら消し忘れを防げるんでしょう?
やっぱり、ガスの元栓を閉めて、コンロを使わせないようにしないといけないんでしょうか?
確かに、それも方法のひとつとしてあるでしょう。ただ、そうするとこれまで料理を作っていたお母様の行動に大きく制限をかけることになりかねません。
なので、コンロの使用をストップする前に別の手で解決できないか考えてみましょう。例えば、以下のような方法ではどうでしょうか?
火の消し忘れがあると、お母様が一人のときにコンロを使うのは心配だと思います。そのため、ご家族など誰かがご実家にいるときに、お母様が料理をするのはどうでしょうか?
また、もし訪問介護サービスを利用しているのであれば、ヘルパーさんがいる時間帯も火を使ってOK、としておくのも良いかもしれません。
うーん。でも、母は頑固なので理解してくれなさそうな気がします。何回も言い聞かせても、隠れて一人のときにコンロを使ってしまうんじゃないかな。
なるほど…。料理をする機会をなくさずに火の消し忘れを防げる方法だと思ったのですが…。
うちの母は頑固だし、認知症が進行して、言ったことをすぐに忘れてしまうので合わない方法だと思います。あまり認知症が進んでいない人であれば、効果があるかもしれませんね。
最近は安全装置が備わったガスコンロが増えているので、ご実家のコンロを交換するのはどうでしょうか?
最近のガスコンロには、センサーが温度を感知して約250℃を超えるとガスを自動停止するものや、一定時間以上、火がついていると自動で消火してくれる機能がついていますよ。
へー!実家のガスコンロはずいぶんと古いものなので、これを機に交換するのも良いのかも。
そういえば、IHクッキングヒーターってありますよね。あれだったら火を使わないし、安全になりますかね?
そうですね。IHクッキングヒーターも良いかもしれません。ですが、ガスコンロとIHクッキングヒーターは使い勝手が大きく違います。もしかしたら、使い方がわかるようになるまでかなり時間がかかるかもしれません。
特に認知症の人は、新しいことを覚えるのが苦手になる傾向がありますから、「IHクッキングヒーターに交換したものの、使い方がわからなくてまったく使わなくなってしまった」なんてことになる可能性もあるんです。
あぁ、確かに。この間、テレビのリモコンを文字の大きいものに取り替えたら、使い方がわからなくて、しばらく「テレビがつかない!」と大騒ぎしていました。
もっと若いうちだったら良いかもしれないけど、うちの母にはIHクッキングヒーターは難しいかも…。
でしたら、できるだけ今のガスコンロと使い方が変わらない、安全機能のついたガスコンロに交換するのが良いかもしれませんね。
ここまでお話しした2つの方法でも火の消し忘れが防げないようでしたら、ガスコンロを使わないような生活に変えていきましょう。
ただ、「コンロは使っちゃダメ」「料理しちゃダメ」といろんなことを禁止する形だと、お母様のストレスが大きくなって、認知症の症状に悪影響が出る恐れがありますから、そのあたりに注意が必要ですね。
というと、どういう風にガスコンロを使わないようにしていけば良いんでしょう?
ひとつは、「こういうときはこうして」とお願いする方法です。例えば、「みそ汁を温めるときはレンジを使って」「お茶が飲みたいときは電気ケトルを使って」というような言い方ですね。
もうひとつは、「ガスコンロが壊れた」とガスコンロが使えないことを伝える方法です。嘘をついてしまうことになりますが、こういう言い方にすれば、火の消し忘れを原因にしていないのでお母様のプライドを傷つけることはないでしょう。
ガスコンロが壊れたことにして、ガスの元栓を閉めてしまえば、火は付かないですもんね。
それに、普段から食事を火を使わなくて良いものに変えていくのもひとつの手。配食サービスを活用したり、惣菜を買ってきて、レンジで温める形にしても良いでしょう。しかし、お母様が料理をする機会がなくなってしまうので、こうしないと火の消し忘れが防げない状況でなければ避けたいですね。
どの方法も、認知症の症状やその人の生活スタイルなどによって、向き不向きがあります。いろいろな方法を試して、お母様に合った方法を見つけてくださいね。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。