それは大変ですね…。認知症の治療に注力している病院がありますので、そちらへの入院を検討するのが良いかもしれません。
入院すると、薬物療法や作業療法、回想法などの方法で治療がおこなわれます。認知症の専門家による治療やサポートが受けられるので、ご自宅にいるよりも症状が良くなると思いますよ。
認知症でも入院はできますか?母の認知症がひどくて介護に限界を感じており、同居がしんどいです。
なので、入院させて認知症の治療を受けさせたいと思っています。ここ最近、症状がどんどん悪化しているような気がして…。
認知症が進行してくると、ご家庭での介護は大変ですよね…。
認知症の人を受け入れている施設はあります。認知症の専門家による治療を受ければ、きっとお母様の症状も良くなると思いますよ。
認知症の人を受け入れている病院には、以下のようなものがあります。
認知症疾患医療センターとは、認知症専門の医療機関です。自治体が指定する病院に設置されて、認知症の診断や治療といった医療的なケアから、もの忘れの相談や介護保険の申請に関する相談まで、幅広いサポートをしています。
認知症疾患医療センターって初めて聞きました。認知症疾患医療センターなら入院ができるんですね。
はい、入院できます。ただ注意したいのが、認知症疾患医療センターには「基幹型」「地域型」「連携型」の3タイプがあり、入院できるのは総合病院である基幹型のみ。その他は入院設備が整っていない病院なので、基幹型の認知症疾患医療センターを探しましょう。
探すのは、お住まいの都道府県のサイトでできます。受診するにはかかりつけ医からの紹介状や予約が必要なことが多いので、まずはかかりつけ医に相談してみてくださいね。
認知症治療病棟とは、認知症による精神症状や行動障害のために日常生活に支障があったり、自宅や介護施設での介護が難しい人を治療するための病棟。精神科など、認知症治療をおこなっている診療科を持つ病院に設けられていることがあります。
まさに母がそういう状態です。毎日、私に対してひどい暴言を吐いたり夜中に大声で「助けて」と騒いだり徘徊します。
なかなかゆっくり眠れていないので、体力的にきつくて…。
それはしんどいですね…。認知症治療病棟は、長期入院ではなく短期入院で在宅復帰を目指す病院なので、集中的に認知症の治療をしてご自宅に戻るのもひとつの手だと思います。
先ほどお話しした認知症疾患医療センターで、近隣の認知症治療病棟を紹介してもらえることがあるので、相談してみるのも良いかもしれません。
認知症だと、普通の病院には入院できないんですか?
すべての一般の病院で入院できないわけではありませんが、入院を拒否されることはあるでしょう。
例えば、暴言・暴力の症状があると、入院を拒否されることがありますし、入院後に他の患者さんや職員さんに暴言を吐いたり暴力を振るうようなことがあれば、早期退院させられることもあります。
そうなんですか…。母は暴力はないですが、誰彼かまわず暴言を吐きます。となると、一般の病院だと受け入れてくれなさそうですね…。
また、入院するご本人が嫌がっている場合も、受け入れてくれないことがあります。無理やり入院させても治療を拒否したり、無理に入院したことで認知症の症状が進行してしまうことがあるためです。
これは、認知症の人を受け入れている病院であっても同じこと。無理やり入院させようとすると余計に拒否されるおそれがあるので、認知症の専門家に相談しながらお母様に入院を勧めてくださいね。
認知症の治療のために入院した場合、公的な医療保険が適用されます。原則として1~3割の費用負担ですが、高額になる場合は「高額療養費制度」を使うとさらに費用が安くなりますよ。
ちなみに、高額療養費制度を使った場合の自己負担限度額は以下の通りです。所得によって金額が異なるので、確認してみてくださいね。
適用区分 | 世帯ごとの1ヵ月の上限額 |
---|---|
年収約1,160万円~ | 25万2,600円+(医療費-84万2,000)×1% |
年収約770万円~約1,160万円 | 16万7,400円+(医療費-55万8,000)×1% |
年収約370万円~約770万円 | 8万100円+(医療費-26万7,000)×1% |
~年収約370万円 | 5万7,600円 |
住民税非課税者 | 3万5,400円 |
適用区分 | 世帯ごとの1ヵ月の上限額 |
---|---|
年収約1,160万円~ | 25万2,600円+(医療費-84万2,000)×1% |
年収約770万円~約1,160万円 | 16万7,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370万円~約770万円 | 8万100円+(医療費-26万7,000)×1% |
年収約156万円~約370万円 | 5万7,600円 |
II住民税非課税者 | 2万4,600円 |
I住民税非課税者(年金収入80万円以下など) | 1万5,000円 |
参考:「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)
入院するとお金がかかりますもんね…。うちの場合、限度額がいくらなのか確認しておかないと。
母が入院するとなると、どんな治療が受けられるのでしょうか?
もちろん病院によっても異なりますが、主に以下のような治療が受けられます。
薬物療法とは、薬を使った治療方法です。
認知症は、今のところ完治する薬は発見されていません。そのため、現在、認知症の治療に使用されている薬はあくまでも症状を抑えるもの。脳を活性化したり気持ちを落ち着けることで認知症の症状を緩和させるというわけですね。
今も、母は認知症の薬を飲んでいます。認知症の薬はいくつか種類があるとかかりつけの先生が言っていたのですが、どんな薬があるんですか?
認知症の薬として認められているのは、以下の4種類です。
認知症の薬は、その人によって相性があります。とある薬では効果がなかった人も、薬を変えることで症状が落ち着くこともよくあるんです。入院することで、通院しているときよりも柔軟に薬での治療ができるようになるでしょう。
生活機能回復訓練とは、薬を使わない「非薬物療法」のひとつ。その人の残っている身体機能や認知機能の維持・向上を目的とした治療法です。
具体的には、はみがきやトイレでもズボンの上げ下げ、髭剃りといった日常生活に必要な動作のトレーニングをします。
認知機能が低下すると、今まで当たり前にできていたことができなくなることがあります。日常生活の動作を回復させることで、在宅復帰を目指します。
「治療」と聞くと大変そうだけど、作業療法は楽しんでできそうですね!
身体を動かす運動療法も認知症の治療法です。体操や関節の動きを良くするリハビリ、ストレッチや筋力トレーニングなども無理ない範囲で実施されます。
病院の外の散歩も取り入れられているので、入院中の気分転換になるでしょう。
回想法は、認知症の人の「昔の記憶が残りやすい」という特徴に注目した治療法です。
認知症になると、その日の朝ごはんや直前に話していたことなど、直近の出来事を忘れやすくなります。こういった直近の記憶のことを「短期記憶」と言います。
対して、子どもの頃の出来事などの昔の記憶のことを「長期記憶」と呼びます。認知症の人は短期記憶を忘れやすく、長期記憶が忘れにくい傾向があり、それを生かしたのが回想法なんです。
具体的にはどんなことをするんですか?
その人の背景や経歴に基づいた会話をしていきます。例えば、子どもの頃の思い出や趣味について、昔を思い出しながら語ってもらいます。
昔の写真やよく食べていたお菓子、若い頃に流行っていた音楽などを活用しながら、話をすることが多いですよ。
認知症の治療というと、薬を使って落ち着かせるイメージしかなかったけど、いろんな形があるんですね。楽しみながらできそうなものもあるので、前向きな気持ちで母に入院を勧められそうです!
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。