「前と状態が変わったな」と感じたら、区分変更をおすすめします。
ただ、要介護度は、心身の状況などから総合的に判断されるものなので、「便失禁をしたら要介護いくつ」と決まっているわけではありません。各要介護度の状態の目安はありますが、必ずしもその要介護度になるわけではないので、あくまで参考として把握しておくと良いですね。
ご高齢者は便秘になりやすい傾向があり、便秘が便失禁の原因となることも。便秘を解消することが便失禁の予防につながることもあります。区分変更と合わせて便失禁の対策もうっていきましょう。
認知症の父が便を失禁するようになってしまいました。ほぼ毎日なので、汚れた服や布団を掃除するのが大変で…。
このように父の状態が悪くなった場合、区分変更をした方が良いのでしょうか?
おっしゃる通り、お父様の状態が変化しているので、区分変更するのがおすすめです。要介護度が上がる可能性がありますから。
やっぱり…。区分変更をした場合、要介護度はいくつになるんでしょうか?
うーん。こればかりはなんともお伝えできません。というのも、「便失禁をしたら要介護いくつ」といったように、要介護度は決められていないからです。
要介護度は、その方の心身の状態から介護の必要性を総合的に判断するものなので、明確に「この症状があったら要介護いくつ」という設定をされていないんですね。
そうなんですね…。父は今、要介護1なのですが、区分変更をして要介護いくつになるのかはわからないんですね。
今、はっきりとお伝えできないですね…。申し訳ないです。
ただ、各要介護度の状態の目安はお伝えできますよ。以下の通りです。
要介護度 | 要介護認定の目安 | 状態の目安となる具体例 |
---|---|---|
自立 | 支援が必要ない状態。 | 一人で支障なく日常生活を送れる |
要支援1 | 基本的に一人で生活ができるが、家事などの支援が必要。 適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。 | 掃除や身の回りのことの一部において、見守りや手助けが必要。 |
要支援2 | 基本的に一人で生活ができるが、要支援1と比べ、支援を必要とする範囲が広い。 適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。 | 身だしなみを自分だけでは整えられない、立ち上がりや歩行などでふらつく、入浴で背中が洗えないなど支援が必要な場面がある。 |
要介護1 | 基本的に日常生活は自分で送れるが、要支援2よりも身体能力や思考力の低下がみられ、日常的に介助を必要とする。 | 排泄や入浴時に見守りや介助が必要。認知機能の低下がみられる。 |
要介護2 | 食事、排泄などは自分でできるが、生活全般で見守りや介助が必要。 | 自力での立ち上がりや歩行が困難。爪切り、着替えなどにも介助が必要。 「薬を飲むのを忘れる」「食事をしたことを忘れる」などの認知症初期症状がみられる。 問題行動をとる場合もある。 |
要介護3 | 日常生活にほぼ全面的な介助が必要。 | 食事、着替え、排せつ、歯みがきなど、日常生活において基本的に介助を必要。 認知機能の低下によって問題行動をとる場合もある。 |
要介護4 | 介助がなければ日常生活を送れない。 | 排せつ、食事、入浴、着替えなどすべてにおいて介助が必要。 思考力の低下もみられ、認知症の諸症状への対応も必要になることもある。 |
要介護5 | 介助なしに日常生活を送れない。コミュニケーションをとることが難しく、基本的に寝たきりの状態。 | 日常生活全般が自分でおこなえないため、寝返りやオムツの交換、食事などのすべてで介助が必要。 会話などの意思疎通も困難。 |
この表もあくまで目安。便失禁について明確に触れているわけではないので、参考程度に考えてください。
実は、区分変更をしたことがないんです。父の状態が以前より悪くなっているのを感じるので、区分変更をしたいのですが、どんな手続きをしたら良いのでしょうか?
では、区分変更の流れについてお話ししますね。
区分変更の手続きは、介護認定を始めて受けたときと大きく変わりません。ただ、はじめに「介護認定申請」をしていたものが「区分変更申請」に変わるだけ。
介護認定申請は、お住まいの地域の役所や地域包括支援センターでおこなったと思います。区分変更申請も同様で大丈夫です。担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーさんが申請を代行してくれることもあります。
区分変更申請をした後は、以下のように介護認定と同じ流れで進みます。
もし、区分変更の結果、父の要介護度が上がったら、利用できる介護サービスの量が増えるんですよね?
おっしゃる通りです!要介護度が上がると介護保険が適用される金額が増えます。そのため、介護サービス費の負担が安く抑えられる量も増えるんです。
具体的には、どのくらい増えるんでしょうか?
在宅介護サービスの利用限度額は以下のとおりです。
要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
出典:「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
要介護1で自己負担割合が1割負担の場合、16万7650円が利用限度額です。もし、要介護2に上がった場合、利用限度額は19万7050円になります。
つまり、要介護度が上がると、介護サービスが1割負担で利用できるのが2万9400円分増えるということです。
3万円近くも多く利用できるようになるんですね!もっと介護サービスを使いたいと思っていたので、助かります。
要介護度が上がって介護サービスの利用限度額が増えるんだったら、もっとデイサービスの回数を増やしたいです。
デイサービスを利用しているんですね!確かに、今、利用している介護サービスの頻度を上げるのはおすすめです。
その他にも、利用していない介護サービスを追加するのもひとつの手ですね。
他の介護サービスというと、どんなものがあるんですか?
在宅介護サービスには以下のようなものがあります。
例えば、ショートステイを利用するのはどうでしょうか?ショートステイは、1日から利用できる短期宿泊サービスです。排泄の介助はもちろん、栄養バランスの整った食事や、入浴といったサービスを提供しています。宿泊中のお父様のお世話はすべて任せられます。
もし、便失禁のこともあって介護のストレスが溜まっていたら、ショートステイにお父様を任せて、数日リフレッシュするのも良いんじゃないでしょうか?
父を任せてリフレッシュなんて…。そんなことして良いんですか?
もちろんです!もともと、ショートステイは介護をするご家族がリフレッシュするのも目的のひとつですから。
ストレスを溜めすぎると福井さんの方が参ってしまいますから、適度に息抜きを挟みながら、介護を続けていきましょう!
もし、介護量が増えて在宅介護の継続が難しい、と感じるようになったら、老人ホームに入居することも検討してみてください。
老人ホームですか…。考えたこともなかったです。
一口に老人ホームと言ってもさまざまな種類があります。一覧にまとめましたので、老人ホームを検討することになったら、ぜひ参考にしてみてください。
施設の種類 | 入居時費用 | 月額利用料 | 入居条件 | 認知症の受け入れ |
---|---|---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 要介護1以上 | |||
住宅型有料老人ホーム | 自立~要介護3程度 | |||
サービス付き高齢者向け住宅 | 自立~要介護1程度 | |||
グループホーム | 要支援2以上 |
施設の種類 | 入居時費用 | 月額利用料 | 入居条件 | 認知症の受け入れ |
---|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上 | |||
介護老人保健施設 (老健) | 要介護1以上 | |||
介護医療院 | 要介護1以上 | |||
養護老人ホーム | 自立 | |||
ケアハウス | 自立~要介護3程度 |
要介護度が上がって、介護サービスを使う量を増やしたとしても、父の便失禁が続くなら介護が大変なままなんですよね…。どうにか、便失禁がなくなる方法はないでしょうか?
そうですね…。確実になくなるとは言い切れませんが、以下のような方法が効果があるかもしれません。
まずは、お父様の排便タイミングを把握してみましょう。お父様がお一人でトイレに行っているようであればいつ排便しているのか把握しにくいですが、排泄のタイミングはわかるはず。
「いつもより長くトイレに入っているな」「今日はトイレの回数が多い」など、記録をつけているうちに、排泄や排便のルーティンが把握できると思います。
トイレのタイミングを把握するんですね。でも、それで便失禁がなくなるんですか?
トイレのタイミングに合わせて、「そろそろトイレに行く?」と声掛けをすると、いつものタイミングを逃さず、トイレで排便できるようにするんです。
また、食後にトイレに行く習慣を身につけるのもおすすめ。食後は腸の働きが活発になるので、排便しやすい時間帯です。そのタイミングでトイレに誘導すると、自然に排便しやすくなり、便秘による便失禁が減るでしょう。
食事量が少なくて便秘になっている場合、食物繊維を多く摂ることで便秘が解消され、便失禁も減ることがあります。
なので、普段の食事で以下のような食物繊維が豊富な食材を取り入れると良いでしょう。
加齢によって肛門周辺の筋肉である肛門括約筋が衰える傾向があります。そのため、肛門がしっかり閉じられないために、知らず知らずのうちに便失禁をしてしまうこともあるんです。
そうした場合、下着を汚してしまうので、オムツを使うのも検討してください。
オムツですか。まだ早いような気がするのですが…。
下着のような履き心地のショーツ型の紙パンツである「リハビリパンツ」もあります。リハビリパンツであれば、紙オムツよりもお父様の抵抗感が薄いと思いますよ。
いろんな手を尽くしても、すぐにお父様の便失禁が100%なくならないかもしれません。そのため、少しでも福井さんの介護の負担を減らすためにリハビリパンツを利用するのをおすすめします。
下剤を使って便秘を解消することも、便失禁を予防することにつながります。ただ、ご高齢者は、若い世代よりも薬が効きすぎてしまうことが多いんです。便秘を解消しようとして下剤を使ったら、むしろ下痢になってしまった…ということも珍しくありません。
下剤の調整って難しいんですね。
そうなんです。なので、かかりつけ医などに相談しましょう。便秘で悩んでいるご高齢者はたくさんいらっしゃるので、すぐに薬を処方してくれると思いますよ。
その際に、便失禁があることも伝えておくと、うまく薬の量を調整してくれるでしょう。
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