認知症の母親が嘘の通報で警察を呼ぶので、疲れ果てています。どうしたら通報しないようになりますか?

認知症の母親が嘘の通報で警察を呼ぶので、疲れ果てています。どうしたら通報しないようになりますか?

更新日 2024/03/18
実家で一人暮らしをしている母親が、嘘の内容で警察に通報するので困っています。

「近所の人に財布を盗られた」といったことが多いのですが、私が母を殴ったという嘘の通報をされたことがあり、警察が私の家に何度か訪れたこともあるんです。

もちろん、私は殴っていませんし、財布も押入れの奥から出てきました。すべて嘘の内容なのですが、母は本当だと思い込んでいるようで通報を止めません。母の嘘の通報を止めさせる方法はありますか?

(片岡さん・会社員・59歳)

もしかしたら、認知症の周辺症状のひとつである被害妄想によって、お母様は警察に通報しているのかもしれません。その場合、不安感が強くなっている可能性があるので、お母様の話を否定せずに聞いてあげましょう。

じっくり話を聞いてあげることで信頼関係が築かれ、困ったときは警察ではなくご家族に相談するようになるかもしれません。

また、警察やご近所の人にお母様が認知症であることを伝え、被害妄想を話す可能性があることも共有しておきましょう。

認知症の親が警察を呼ぶ理由は?

認知症の母が何度も警察に嘘の通報をするので困っています。「近所の人に財布を盗まれた」など、物を盗まれたという内容が多いのですが、中には「息子に殴られた」という内容で通報されたこともあって、私の家に警察が聞き取りに来たこともあります。

もちろん、私が母を殴ったことはありませんし、財布は押入れの奥などで見つかることが多いです。つまり、母が嘘の通報をしているわけです。

どうして母は、嘘の通報をするのでしょうか?

もしかしたら、認知症の影響かもしれませんね。

認知症のせいで嘘をつくようになってしまったんですか?

いえ、おそらく、お母様はご自分が嘘をついているとは思っていないでしょう。財布を盗まれたことも、片岡さんに殴られたこともお母様のなかでは本当のことなんです。

えっ!?でも、どちらも本当のことではないですよ!

実は、認知症の周辺症状である「被害妄想」や「幻覚」の影響で、現実とは異なることを事実だと思いこんでしまうことがあるんです。

被害妄想の代表的なものは、「物盗られ妄想」と「見捨てられ妄想」。財布やお金、大切なものを誰かに盗まれたと思い込んだり、家族や大切な人に捨てられたと思い込むことです。

物盗られ妄想については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。

まさに、母は物盗られ妄想をしているのかも!

また、幻覚の代表的な訴えとしては、「知らない人が立っている」「誰かに悪口を言われている」といったもの。認知症によって脳がダメージ受けることで実際には存在しないものが見えたり、木や柱が人に見えたりするのが幻覚の症状です。

幻覚がエスカレートすると、「泥棒に入られた」「誰かに命を狙われている」という通報をすることも考えられます。

幻覚については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。

でも、実際は物を盗まれたり、命を狙われていることはないんですよね?どうしてこんなことを思い込んでしまうんですか?

主な原因は、不安感が強くなっているからです。

例えば、物盗られ妄想の場合、大切なものをなくさないようにどこかにしまい込んだのに、認知症の影響でしまった場所やしまったこと自体を忘れてしまいます。でも、忘れたことを認めたくなくて、「大切なものをなくすはずがない。誰かに盗まれたんだ」と思い込んでしまうんですね。

母も認知症による物忘れがありますが、物忘れからそんな妄想に発展するんですね…。

認知症の方は、記憶力や理解力の低下によって、不安感を抱きやすい状態です。そのため、ちょっとした出来事が不安の種になり、それが大きくなって被害妄想や幻覚につながると言われています。

認知症の親が警察を呼ぶのを止めさせるには?

母が嘘の通報をする理由がよくわかりました。母が警察を呼ぶのを止めさせる方法はないでしょうか?

方法はあります。それはお母様の不安を取り除いてあげること。ただ、この方法は即効性のあるものではないので、根気良く続けていく必要があります。

具体的には以下の方法があります。

  • 話を否定しない
  • 自尊心を傷つけない対応をする
  • 介護施設に入居する

話を否定しない

お母様が事実とは異なる話をしても、話を否定しないことが大切です。

例えば、「財布を盗られた」と言われたときに、「誰も盗ってないよ。自分でしまったんでしょ」と返すのはNG。お母様のなかでは財布が誰かに盗まれたのは事実なので、否定されると不安になってしまいます。

では、何と言えば良いんですか?

「家の中を探してみようか」と言って一緒に財布を探すのもひとつの手。もし、興奮しているようでしたら、「財布が盗まれたんだね」と同じ言葉を繰り返しながら話を聞くのも良いでしょう。

否定をせずに言葉を繰り返して話を聞くだけでも気持ちが落ち着くことがありますよ。

話を聞くだけでも良いんですね。

不安を大きくする要因が、「誰も理解してくれない」「誰も頼れない」という孤独感であることがあります。なので、話を否定せずに受け入れた後に一緒に探しものをすれば、「家族が話を聞いてくれる」「家族に頼れる」と安心できるでしょう。

安心できれば、警察ではなくご家族に相談するようになるかもしれません。

自尊心を傷つけない対応をする

認知症による被害妄想は、「誰にも必要とされていない」「自分は邪魔な存在だ」という気持ちがきっかけになることがあります。

認知症の進行によってできることが減ったり、ご家族に介助をしてもらうことが増えてきて自分に自信がなくなることで、こうした気持ちになることが増えるんです。

すると、「家族に必要とされていないから、見捨てられた」「邪魔な存在だから、自分を殴るんだ」といったように、妄想がエスカレートしてしまうことがあるんです。

母が、「息子が殴った」と嘘を言うのは、「自分は邪魔な存在だ」という妄想がエスカレートした結果だったんですね…。

そのため、お母様に自信を取り戻してもらいましょう。それには、「家族に大切にされている」とお母様に感じてもらうことが必要です。

具体的には、お母様が妄想を訴えたときにはご家族が話を受け入れる。話をするときは目線を合わせて話す。簡単な家事や作業をお願いするのも良いでしょう。

介護施設に入居する

夜中に警察を呼んだり認知症の症状が進行して、ご家庭では対応が難しいと感じた場合は、介護施設への入居を検討してみましょう。

介護スタッフによる見守りがある施設に入居すれば、お母様が通報する回数は減りますし、通報をする前に異変に気がついて対応してもらえるでしょう。

介護施設か…。考えたこともなかったですが、母が嘘の通報を止めないには検討しないといけないかもしれません。

ちなみに、どんな施設であれば、認知症の母を受け入れてもらえるんですか?

以下の介護施設であれば認知症の方の対応をしてもらえるでしょう。

それぞれの施設で入居条件が異なりますので、入居前に必ず確認をしてくださいね。

地域や警察と連携しよう

母が嘘の通報をしたことで警察が実家に来たことが何度もありますし、私の家まで来て調査されたこともあるんです。ご近所の人から私が「母に暴力を振るっている」と思われているんじゃないかと気になって…。

ご近所の目は気になりますよね…。なので、事前に警察やご近所の方に、お母様が認知症であることを共有しておきましょう。

母は認知症だから嘘の通報をすることがある、と警察には言ってあります。

でも、近所の人にも母が認知症であることを言う必要があるんですか?隠しているわけではないのですが…。

ご実家と片岡さんのご近所の方にお母様が認知症であることや、認知症の影響で警察に嘘の通報してしまうことを言っておけば、警察が家に来ていても理解してもらえるでしょう。

また、特にご実家のご近所さんは、お母様に異変があったときに片岡さんに連絡してくれるかもしれません。

別々に暮らしていると、どうしても片岡さんの目が届かない部分が出てきてしまいますから、警察やご近所の方も一緒にお母様を見守ってもらえる体制を作っておくと安心ですよ。

  • 話を否定しない、プライドを傷つけないなどの対応で警察を呼ぶのを予防できる
  • 警察を呼んでしまっても大丈夫なように、地域の人や警察と連携しよう
  • 不安が強くなると、被害妄想や幻覚などの症状によって警察を呼んでしまうことも

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