実家で両親が二人暮らしをしています。遠方なので、年に数回ほどしか帰省はしないのですが、先日、帰省をしたら認知症の父の介護をしている母の様子がおかしくて…。
「今日は何日?」「今、何時?」と何回も質問してきたり、ついさっき話したこともすっかり忘れているんです。もしかしたら認知症なんじゃないかと怖くて…。
生活はすべて母が回していますから、母まで認知症になってしまったら両親の生活が成り立ちません!母まで認知症になってしまったらどうしたら良いんでしょうか?
落ち着いてください。まずはお母様を病院に連れて行って、早めに認知症かどうかを確かめましょう。
それでもし、お母様が認知症だったら、認知症の方が認知症の方を介護する「認認介護」という状態です。かなり心配な状況なので、早めに手を打つ必要があります。
早めに手を打つって…どうしたら良いんでしょうか?
認認介護への対策には、以下のようなものがあります。
まずは介護の専門家に相談しましょう。
お父様には担当のケアマネジャーさんがいますか?
はい。両親だけの生活なので、親身になっていろいろと心配してくれています。
でしたら、まずはお父様の担当のケアマネジャーに相談してみましょう。お母様とやりとりする機会は多いでしょうから、お母様の異変を感じているかもしれません。
お母様の認知症検査をする前に、今のお母様の状況を聞いてみるのも良いかもしれませんね。
そうですね。父のケアマネジャーさんなら、遠方に暮らす私よりも母の様子をわかっているかもしれません。
お母様が認知症とわかってからも在宅介護を継続する場合、お母様も介護サービスを使いながらの生活することをおすすめします。
確かに。今は父がデイサービスを利用していますが、母も通った方が良いんですかね。
それは良いですね。認知症の方がお一人になるのはとても危険です。ご両親で同じデイサービスに通えれば、小沢さんも安心ですよね。認知症のリハビリにもなりますし。
また、以下の在宅介護サービスもおすすめです。
訪問介護は、以前利用していました。ヘルパーさんが家に来てくれて、料理や介助などをしてくれるんですよね。
仰るとおりです!
その次のショートステイは、介護施設に短期間の宿泊ができるサービス。宿泊している間の
食事、入浴などはすべて施設にお任せできます。
お父様とお母様がご自宅で2人で暮らすのが難しい状況になったら、ショートステイを取り入れるのも良いですよ。
認認介護の状態は危険なので、同居してご家族が介護するのが安心です。もちろん、同居するご家族の負担が大きいですし、同居することで環境が変化して認知症が進行する恐れもあります。
ただ、認知症のご両親を2人きりにしておくのは危険なので、有効な対策のひとつではあります。
やっぱり同居も考えないとですよね…。私も妻も仕事をしているので、介護ができるかどうか…。
ご家族が同居することについては、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
ご実家でご両親の二人暮らしも、ご家族の同居も難しい…となると、老人ホームに入るのが安心です。
当然ながら、介護のプロがケアをしてくれますので、ご両親は安心・安全な生活ができるでしょう。
母がしっかりしていたときは、老人ホームのことなんて考えたこともありませんでしたが…。やっぱり老人ホームに入れた方が良いのかな。
北野室長は「認認介護は危険」と、さっき言っていましたよね。具体的にはどんな危険があるんでしょうか?心構えをしておきたくて。
さまざまな危険があります。主には以下のようなことです。
認知症の方が介護をすることで、介護に必要な時間が増え、心身の負担が増えることが考えられます。
介護をするには、段取りや手順、介護用品の使い方など考えないといけないことがたくさんありますよね。でも、認知症の影響で段取りを考えたり、道具の使い方を思い出すことは苦手になります。
となると、以前よりも介護に時間がかかるようになりますよね。それによって介護を受ける方とする方のどちらの負担も大きくなることが考えられます。
母だけでなくて、父の負担も増えるんですね。
「社会とのつながりを失う」とは、どういうことでしょうか?
具体的には、ご近所さんなどの地域とのつながりがなくなってしまうケースがあります。
認知症の影響で会話のキャッチボールが難しくなり、会話ができなくなると自然とご近所さんとのつながりも薄くなってしまいます。
それは確かに…。
それに、先ほどお話ししたように介護に時間を取られるようになりますから、外出する時間も作れなくなってしまうんです。
認知症になると、生活に関わるさまざまなものの管理が難しくなります。
例えば、薬の管理。薬の飲み忘れはもちろん、お父様の薬をお母様が飲んでしまうなど、命に関わる危険性があります。
認知症になると、どれが自分の薬なのかわからなくなってしまいますもんね。間違った薬を飲むのは、本当に危険ですね…。
また、お金の管理も難しくなります。公共料金などのお金の支払いもできなくなる可能性がありますし、詐欺や悪徳業者の被害にあう危険性もあります。
それは、私も心配しています。最近、高齢者が詐欺の被害にあうニュースをよく見かけるので…。
認認介護の場合、万が一、どちらかが急に倒れても対応ができない可能性が高いです。
認知症が進行すると、どのように対応したら良いのかがわからず、パニックになるかもしれません。また、倒れた方も自分の異変を上手く伝えられない可能性も…。
そのため、命に関わる状態でも救急車を呼べずに、最悪の結果になってしまいかねません。
そんな!でも、今までは二人とも元気にいてくれていたから良かったものの、高齢になったら何があるかわからないですもんね…。
これは、かなりお伝えしにくいことなのですが…。認認介護が続いた結果、虐待や殺傷事件に発展してしまったケースがあるんです。
えぇ!?どうしてですか!
例えば、介護を受けている方が認知症の影響でよく理解しておらず、介助を拒否したとします。
でも、介助をしている方も認知症なので、どうして拒否するのか、どうしたら良いのかわからない。そして、理不尽な出来事に怒り、怒りのままにご家族を殴ったり殺害してしまったケースがあるんです。
そんなことが…。
認知症の影響で、感情のコントロールができなくなると言われています。なので、通常であれば抑えられるはずの怒りがコントロールできず、衝動のままに行動してしまうんですね。
特に認知症の方がお二人だけで暮らしていると、仲裁をする人がいないので、虐待や殺傷事件につながりやすいと言われています。
つまり、うちの両親にもありえる話なんですね…。認認介護ってそんなに危険だったんだ…。
北野室長の話を聞いていたら、老人ホームに入居するのを本格的に検討しないといけないように思いました。
ただ、老人ホームのことがよくわからず…。両親が入れるのはどんな施設なんでしょうか?
認知症の方におすすめするのは、次の施設ですね。
有料老人ホームは、「住宅型有料老人ホーム」と「介護付き有料老人ホーム」の2種類があります。2種類のどちらの有料老人ホームでも、夫婦部屋を用意している施設がありますよ。
住宅型有料老人ホームは、利用する介護サービスを自由に選択できる施設。自分が選択した外部の介護事業所と契約をして介護サービスを受けるので、必要な分だけ利用できるのが特徴です。
へぇー、介護サービスを自分で選べる施設があるんですね。
対象的に、介護付き有料老人ホームでは介護サービスをすべて施設のスタッフさんが提供しています。そして、介護サービス費用は定額制なので、どれだけサービスを使っても据え置き。介護サービス費は介護度ごとに設定されているのが特徴です。
介護スタッフが24時間常駐、看護師は日中に常駐しているので、夜間に介護が必要な方や医療サポートが必要な方も受け入れているところは多いですよ。
父は夜もトイレの介助が必要です。それなら、介護付き有料老人ホームの方が良いのかな。
グループホームは、認知症の方だけが入居できる施設。少人数のユニットごとに生活をしているのが特徴です。
ユニットは最大9名と決められており、人の顔などの物事を覚えるのが苦手な認知症の方に配慮した造り。スタッフさんも認知症ケアに慣れているので、より安心して暮らせるでしょう。
ただ、グループホームには夫婦部屋はありません。同じ施設に入る場合は、1人部屋でそれぞれ入居することになります。
特別養護老人ホームは、要介護3以上の方が入居できる施設。料金が安いうえに終身利用ができるため、とても人気の施設です。もちろん、認知症の方も入居できます。
ただ、夫婦部屋を持つ特別養護老人ホームはなく、同じ施設に入れるとしても入居時期はバラバラになると考えておいてください。
なぜバラバラのタイミングで入居することになるんですか?
特別養護老人ホームの入居の順番は、緊急度によって施設に決められるからです。身体状況や生活環境、介護者の状況などによって、入居順が決定されます。この入居順はお一人おひとり判断されるので、ご夫婦だからといって同時に入居はできないんです。
そうなんですね…。安いのなら、特別養護老人ホームに入れようかと思ったのですが、そう簡単にはいかなさそうです。
ちなみに、ご夫婦が同じ老人ホームに入らないといけないわけではありませんし、同時に入る必要もありません。より状態が進行しているお父様だけ老人ホームに入居して、お母様はしばらく小沢さんご家族と同居する、という方法もあります。
そういったアドバイスもできますので、施設探しに困った際は「いい介護 入居相談室」にご相談くださいね。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。