認知症の人の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配になるでしょう。
老人ホームのひとつである住宅型有料老人ホームでは、認知症の症状があっても受け入れてもらえます。
しかし、住宅型有料老人ホームには施設に介護体制がなかったり、スタッフが常駐していないなど注意点もあります。
こちらの記事では、「認知症でも住宅型有料老人ホームに入居できるのか」を解説します。また、住宅型有料老人ホームに認知症の人が入居する際の注意点や、認知症の人が入れるほかの施設も紹介します。参考にしてください。
Contents
住宅型有料老人ホームには認知症の人も入居できます。しかし、すべての住宅型有料老人ホームに入居できるわけではないので注意が必要です。
住宅型有料老人ホームの入居条件は法律などの基準が定められていないため、要介護度や認知症に関する基準は施設ごとに異なります。また、「軽度の認知症なら受け入れ可」としていても、症状によっては施設が対応できないと判断される場合もあります。
認知症の受け入れが可能かどうか、事前に入居を希望する住宅型有料老人ホームに確認しましょう。
認知症の人が住宅型有料老人ホームに入居する際の注意点は主に以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
住宅型有料老人ホームは、自立・要支援もしくは要介護度が低い高齢者向けの施設です。
住宅型有料老人ホームではスタッフによる食事や掃除などの生活支援、緊急時の対応といった生活面でのサービスは受けられますが、介護サービスは提供されません。
住宅型有料老人ホームに入居中に介護サービスが必要になった場合には、訪問介護やデイサービスなどの外部の介護事業者と契約する必要があります。
住宅型有料老人ホームでは施設に介護や看護の資格を持っているスタッフが必ず常駐しているとは限りません。なぜなら、住宅型有料老人ホームの人員基準では、介護スタッフや看護師の配置の人数に決まりがないからです。
厚生労働省が定める住宅型有料老人ホームのスタッフの人員基準では、介護スタッフの配置人数は「施設の介護サービスに支障がない人数」とあるため、施設の判断によって、介護スタッフが多かったり少なかったりとさまざまです。
また、看護師の配置は決められておらず、施設によっては看護師がいない場合もあります。
住宅型有料老人ホームの夜間の人員基準は日中と同じく、施設の判断で必要数を決めることとなり、施設によってスタッフの人数が違います。
出典:「高齢者向け住まいの実態調査 報告書」(厚生労働省)
実際に住宅型有料老人ホームで夜間に配置されているスタッフの人数は平均1.9人です。夜間はほとんどの入居者が寝ているため、見守りや急病への対応、トイレの誘導など、スタッフによる入居者へのケアの人手が日中ほど必要ないと考えられ、日中より少ない人員でも良いのです。
認知症の人が無事に住宅型有料老人ホームに入居できたとしても、長く生活しているうちに認知症の症状が重度になる可能性があります。認知症の症状やその度合によっては退去を求められる可能性もあります。
ほかの入居者と共同生活を送るうえで、迷惑行為があった場合に退去を求められるのです。
例えば、ほかの入居者への迷惑行為とは、以下が挙げられます。
施設側が入居者の迷惑行為に対して対応をおこなっても改善しない場合は、退去を求められる可能性があります。
住宅型有料老人ホームでは認知症の人を受け入れている施設が多くあります。しかし、施設によって認知症ケアの内容はさまざまなので、入居する前に認知症への対応内容を確認することが重要です。
認知症の人が住宅型有料老人ホームに入居する前に、施設に確認するおすすめのポイントは以下の4点です。
それぞれのポイントの内容を、こまかく見てみましょう。
入居を検討している住宅型有料老人ホームで、「どういった認知症の症状に対応してもらえるのか」を事前に確認しておくと安心です。
認知症といっても、種類や重度など症状はさまざまです。認知症の症状によっては、入居を検討している施設に受け入れ体制が整っておらず、入居を断られるケースがあります。
入居を検討している住宅型有料老人ホームでどういった認知症の症状に対応してもらえるのかを確認する際には、同時に「どんな症状を持った人を実際に受け入れたか」も確認しましょう。
認知症にはいくつかの種類や度合いがあるため、施設が「認知症でも入居を受け入れている」というだけでは認知症の入居者へどんな対応をおこなったかわかりません。
入居を検討している住宅型有料老人ホームで本人の症状と同じ症状の人を受け入れた実績があれば、より安心して生活できるでしょう。
入居を検討している住宅型有料老人ホームで、「過去に認知症の症状により退去を命じられたケースがないか」を確認しておきましょう。
認知症の症状には、「ものを盗られたかもしれない」という被害妄想や「怒りっぽくなる」などがあります。被害妄想や怒りっぽい症状などが原因で、ほかの入居者に迷惑をかけてしまうケースがあるかもしれません。
認知症による症状が原因でほかの入居者に迷惑をかけてしまい、退去を命じられたケースが実際にあるのかを確認しておくと、万が一、退去勧告を受けてしまった場合の準備をしておけます。退去条件など、施設のスタッフに聞いたり契約書で確認をしましょう。
入居を検討している住宅型有料老人ホームに「認知症のケアに関する資格を持っているスタッフはいるのか」「何人いるのか」を事前に確認しましょう。
認知症の人への対応は高度なスキルや経験が必要です。認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士など、認知症に対する知識や理解が深いスタッフが常駐している施設なら、安心した生活を送れるでしょう。
認知症の人でも入居できる施設はほかにもあります。主には以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持ったスタッフの援助を受けながら、要支援2以上の認知症高齢者が共同生活を送ります。
グループホームでは、「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割を分担をします。調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持するのです。
介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。生活支援や介護サービス、看護サービスが受けられ、それらのサービスには介護保険が適用されます。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などが施設のスタッフにより提供されます。
介護付き有料老人ホームは入居条件も施設により異なります。自立している人から介護が必要な人まで幅広く受け入れている施設もあり、軽度であれば認知症の症状があっても入居できます。
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)とは、基本的に介護を必要としない自立している高齢者が住まう施設。バリアフリーの設備が整っており、安否確認、生活相談などのサービスを提供しています。
また、サ高住には「一般型」と「介護型」の2種類があります。
一般型サ高住は、安否確認や生活相談など生活面でのサービスの提供のみで、一般的な賃貸住宅と同じように生活ができる、自由度の高い施設です。介護型サ高住は、介護型ケアハウスや介護付き有料老人ホームと同じく、生活面でのサービスに加え、介護サービスも提供されます。
認知症の人でも入居できるのは、介護型サ高住です。しかし介護型サ高住は数が少なく、サ高住の全体の約3割ほど(※)しかないため、注意が必要です。
※参考:「サービス付き高齢者向け住宅に関する現状」(国土交通省)
特別養護老人ホームとは、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設で、略して「特養(以下、特養)」とも呼ばれています。要介護3以上の人が入居できる施設で、軽度であれば認知症の症状があっても入居できます。
特養では、入浴や排泄・食事といった介護のほか、日常生活の介助・機能訓練・健康管理・療養上のお世話などが受けられます。
ただし、特養は費用の安さゆえに人気が高く、地域によっては入居まで数年待ちが必要な場合もあります。
ケアハウスとは老人福祉法で定められた軽費老人ホームの一種です。ケアハウスには「一般型」と「介護型」があり、一般型ケアハウスは施設からの介護サービスの提供がなく、介護型ケアハウスでは施設から介護サービスの提供があります。
認知症の人が入居できるのは介護型ケアハウスです。一般型ケアハウスは自立した高齢者向けの施設であるため、認知症の人は入居できません。
介護型ケアハウスでは、提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。それに加えて排泄や入浴の介助、機能訓練といった介護サービスも施設のスタッフから受けられます。
住宅型有料老人ホームには認知症の人も入居できます。しかし、住宅型有料老人ホームの入居条件の要介護度や認知症に関する基準は施設ごとに異なり、すべての住宅型有料老人ホームに入居できるわけではないので注意が必要です。
住宅型有料老人ホームに認知症の人が入居する際には「施設に介護体制がない」「スタッフが常駐していない可能性がある」「夜間はスタッフの数が少ない」「認知症の症状によっては退去を求められる可能性がある」という注意点があります。
認知症の人でも入居できる施設は「グループホーム」「介護付き有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「特別養護老人ホーム」「介護型ケアハウス」があります。
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