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厚生労働省(以下、厚労省)がおこなった調査にて、介護スタッフが高齢者の自宅ヘ訪れて食事などのサービスをおこなう「訪問介護事業所」のうち、全体の36.7%が赤字経営だったことがわかりました。 この結果は、先日おこなわれた「介護報酬改定」の決定事項について再調査の要求を受け、新たに訪問介護事業所の利益率の分布状況を集計したところ判明しました。 実際の現場では約4割の訪問介護事業者が赤字経営!? 2024年1月22日におこなわれた「介護報酬改定」にて、厚労省は「訪問介護は、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保している」として、報酬改定で訪問介護の基本料の引き下げをすることを決めました。この結果は、2023年11月に厚労省がおこなった介護事業所の経営実態についての調査を踏まえたうえでの決定です。 厚労省がおこなった介護事業所の経営実態についての調査では、訪問介護事業所全体の平均利益率は7.8%と、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保していると判断されました。 しかし、再調査の要求を受けて、あらためて訪問介護事業所の利益率の分布状況を集計したところ、赤字を意味する「利益率0%未満」の事業所は、全体の36.7%あることがわかったのです。 小さな訪問介護事業所は事業を続けられない可能性も 2023年11月の調査と、あらためておこなった調査を踏まえると「訪問介護事業所の全体で見ると黒字だが、赤字の訪問介護事業所は約4割もある」という結果となりました。全国保険医団体連合会では、「大きな訪問介護事業所では利益率が高く、小さな訪問介護事業者は調査に応じる余裕がなく無回答だったために出た結果の可能性がある」と考えています。 訪問介護の基本報酬が引き下げられると、事業の維持・管理に費やす費用が減るので小規模の訪問介護事業者は事業を続けられない可能性も。また、「報酬が少ないので介護スタッフを雇えない」「給料が少ないので転職したい」などの理由で介護スタッフが減少する可能性もあります。 訪問介護の基本報酬を引き下げるというニュースは、以前より訪問介護を利用していた人や、その家族にとっても不安なニュース。現在は、「実際の現場を見て判断してほしい」と声を上げている団体が多くあります。介護を受ける人はもちろん、介護を提供する事業者も安心して利用できる体制になって欲しいですね。 参考:全国保険医団体連合会
2024/03/12
2023年11月27日、厚生労働省の諮問委員会である社会保障審議会・介護給付費分科会の会合が開かれました。 そこで議題に挙がったのが、デイサービスなどの通所系サービスの送迎について。より効率的に業務を進められるよう、ほかの事業所の利用者も送迎車に乗せられることを明示する案が示されたのです。 共同送迎が可能なことを明示 2019年におこなわれたデイサービス等における人材活用に関する調査によると、「採用に苦労している職種」として「送迎車の運転専任職」を挙げた事業所が20.2%に上ったことが判明。このように運転手の確保が難しくなっている現状を打開すべく、厚生労働省は社会保障審議会にて、複数の事業所が共同で送迎をおこなうことを明示する案を示しました。 現在も複数の事業所による共同送迎は禁止されていませんが、「制度が曖昧で取り組みにくい」「自治体によって共同送迎の解釈や対応が違う」という現場の意見があったことから、国が改めてルールを規定することにしたのです。 共同送迎をおこなう具体的なケース 「共同送迎」は具体的にどのような場合におこなわれるのでしょうか?厚生労働省が社会保障審議会で提示した想定ケースは以下のとおりです。 他事業所の職員が自事業所と雇用契約を結び、自事業所の職員として送迎する場合 委託契約をおこない、送迎を外部に委託している場合 審議会に参加した長崎県の担当者は「共同送迎をおこなう場合、責任の所在を明確化する方法がわからないこともある。責任分担のモデル事例などを示してほしい」と要請しました。 また、民間介護事業推進員会の委員は「利便性を持った使いやすいルールにしてほしい」と話しました。 現場が混乱しないように改めて国でルールを規定することになった「共同送迎」。現場の職員が円滑に業務をおこなえるような制度をつくっていってほしいですね。
2023/12/08
2023年8月30日、厚生労働省の諮問委員会である社会保障審議会介護給付費部会が開かれ、デイサービスのような通所介護と訪問介護を組み合わせた新たな複合型サービスの創設に関する議論がおこなわれました。 新たな複合型サービスの創設は、以前から度々話し合われていたものの、委員からは「必要性を感じない」など否定的な意見も根強く、議論が見送られた経緯があります。 厚労省が複合型サービスの創設の意義を説明 訪問介護と通所介護を組み合わせたサービスの創設を提案した厚生労働省は、今回の会合でそれを検討する意義について改めて説明しました。厚生労働省が列挙した、複合型サービスの創設を検討する意義は以下のとおりです。 今後さらに在宅の介護ニーズが増加することが予測される ホームヘルパー不足で訪問介護の供給量が足りなくなる懸念がある 訪問介護と通所介護を両方運営している事業所が多いため、効果的な運用が期待できる 厚生労働省は、デイサービスなどの通所介護事業所の職員がホームヘルパーの仕事もできるようにすれば、人材をより有効に活用できるようになると説明しました。 創設の意義を疑問視する声も 今回の会合でも、新たな複合型サービスの構想そのものの意義を疑問視したり意義を唱えたりする声が相次ぎました。 日本経団連の理事を務める井上隆氏は「なぜ新たなサービスが必要なのか。事業所間の連携を深めれば済むのではないか」と構想を疑問視。また、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「ただでさえ制度が複雑だと言われている中で、さらに複雑化させるのは反対。複合型サービスを創設しなければ現場が成り立たないエビデンスも存在しない」と反論を示しました。 一方、「サービスの効率化や人材の有効活用など、うまくいけばプラスに働く側面もある」「複合型サービスを創設すれば、人材の有効活用や柔軟な対応が可能になり、より質の高いサービスが期待できる」と複合型サービスの構想を評価する声も聞かれました。 ただ、この構想が実現すると、よりスタッフの業務量が増えて介護の担い手が減ってしまうリスクも考えられます。抜本的に解決するためにも、まずは介護職員を増やすための施策を考えてもらいたいですね。
2023/09/12
財務省では2023年5月11日、専門家が集まる諮問委員会を開催。そこで、要介護1と2の高齢者への訪問介護や通所介護を、市町村が運営する「日常生活支援総合事業(通称:総合事業)」に移行する構想の具体化を、改めて訴えました。 この構想については、以前から何度も議題に挙がっているのですが、反発も多く、2024年度からの実行を見合わせた経緯があります。 総合事業について そもそも「総合事業」とはどのような事業なのでしょうか? 総合事業とは、これまでは要支援に該当している人を対象に実施され、高齢者が自立した生活を続けられるように支援することを目的とした事業です。 上限がない介護給付と異なり、総合事業の予算には上限があるため、政府が支出をコントロールしやすいというメリットがあります。 しかし、総合事業の中核を担う人は、介護の経験が浅いボランティアがほとんど。要介護1や2に該当している高齢者は認知症の人も多く、彼らが適切なケアを受けられなくなるリスクが指摘されていますました。 財務省が総合事業への移管を要請 2023年5月11日、財務制度等審議会の財務制度分科会がおこなわれ、今後の社会保障制度の改革について話し合われました。 そのときの議題のひとつとして挙げられたのが、要介護1・2の人の訪問介護や通所介護を総合事業に移行させるという案でした。 委員からは「今後も、介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中で支援を継続していくためには、地域の実情に合わせて多様な人材や資源の活用を図るべきだ」「段階的にでも、効果的・効率的なサービス提供を可能にすべきだ」などと、総合事業への移管を要請する声が相次ぎました。 要介護1や2の人の中には、足腰はしっかりしていても認知機能が大きく低下していて、簡単な会話もが難しい人がもいます。高齢者が適切なケアを受けられる環境を守るためにも、介護現場の意見も聞きながら調整していってほしいですね。 参考:「財務制度等審議会財務制度分科会資料 財政各論③:こども・高齢化等」(財務省)
2023/05/18
2023年1月16日、厚生労働省で「社会保障審議会介護給付費分科会」が実施されました。そこでは、2024年度の介護報酬改定に向けて、今後おこなう調査研究の内容と日程が決められました。 介護施設の人員配置について 介護給付費分科会では、まず介護施設の人員配置基準の改定に関する調査について話し合われました。 認知症の人のみが入所可能なグループホームは、原則として1ユニット(利用者最大9人)につき夜勤の職員数は1人以上を確保するという決まりでした。しかし、2021年度の介護報酬改定で、同じ階なら3ユニットにつき2人以上の夜勤者がいれば問題ないと規制が緩和されたのです。 今後、その実施状況と運営への影響を調査していき、速報値を9月ごろには報告する予定だとしています。 また、少人数制で手厚い介護をすることを目指したユニット型の特別養護老人ホームも、2021年度の介護報酬改定で、1ユニットの利用者の定員を10人から最大15人まで認められるようになりました。さらに、ユニット型と大人数の介護をおこなう従来型の特養を併設する場合は、介護職員と看護職員の兼務も可能になったのです。 特養の規制緩和についても、これから効果を実証するための調査をおこない、今後の課題を検討していくとしています。 LIFEの活用状況などに関する調査も決定 1月16日におこなわれた介護給付費分科会では、ほかにも以下のような、新しい取り組みにおける調査を実施することが決定されました。 オンライン会議などICT(情報通信技術)の活用状況 介護記録などを提出してそのフィードバックを受けるLIFE(科学的介護情報システム)の活用状況 認知症介護に関する基礎研修を義務化したことによる効果の検証 LIFE(科学的介護情報システム)とは、科学的根拠に基づいた介護の実践を目指して厚生労働省が推進している取り組み。利用者の状態や日々のケアの記録などを決められた書式で提出すると、ケア改善のフィードバックが受けられるというもので、今後更なる導入の拡大が期待されています。 また、2024年度は介護報酬と診療報酬が同時に改定されることになっているため、診療報酬改定を審議する厚生労働省の諮問機関、中央保険社会医療協議会との意見交換会もおこなわれることが決定されました。 今回は施設を運営する管理者からの視点で職員の人員配置についてなどの調査が議論されました。今後、一般の介護職員など現場の声も聞いた実態調査もおこなってほしいですよね。
2023/02/02
12月19日、厚生労働省は、一定以上の所得がある65歳以上の高齢者に対し、介護保険料を引き上げる案を年明け以降も協議していく方針を固めました。 厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会の介護保険部会にて議論を重ね、遅くとも来年の夏には結論を出したい構えです。 介護保険料引き上げについて 現在、65歳以上が対象になっている介護保険料の引き上げが図られています。 その理由は少子高齢化です。現役世代が減少する中、都市部を中心に高齢者の数は年々増加し続けており、制度の存続が危ぶまれています。 今後も制度を存続させるために、一定水準以上の所得がある高齢者に対し保険料を引き上げるという案が出たのです。 この案に対し「負担能力のある高齢者に対しては相応の負担を求めていくべきだ」という声がある一方で、「急激な負担の増加は高齢者の生活に大きな影響が出る」などと反対意見も多数挙がっていました。 そのため、今後も検討を重ね、来年以降も議論を深めていくと結論づけたのです。 議論の内容 介護保険料の引き上げについて、介護保険部会では毎回のように意見が二分しています。 12月19日に開かれた部会でも、出席委員から「高齢者の生活実態を調査し、本当に値上げしても生活を維持できるのか検討すべきだ」と保険料引き上げについて慎重な意見がある一方で、「何ひとつ議論が進展していない」「優先度の高い改革は早急に手を打つべきだ」など保険料引き上げを急ぐ意見もありました。 淑徳大学で社会保障論を研究している結城康博教授は「高齢者やその家族にとって、介護保険制度の改正は非常に重要な問題だ。高齢者の生活の影響なども踏まえて、負担の増加ありきではなく、慎重に議論を重ねていってほしい」と結論を急がず、さまざまな観点から議論を進めていくように指摘しています。
2022/12/22
11月14日、厚生労働省は、介護保険制度の今後を話し合う社会保障審議会の介護保険部会の中で、特別擁護老人ホーム(通称「特養」)の入所基準に関する議論があがりました。 現在、特養は原則として要介護度3以上の人を受け入れていますが、やむを得ない事情があれば、要介護度1や2の人も「特例入所」という形で入れます。 今回の審議会では、この「特例入所」の趣旨を明確化するための周知を呼びかけました。 特例入所とは 通常、特養は要介護度3以上の介護を要する人を対象としています。しかし、以下のようなやむを得ない事情があれば、特例で入所できます。 認知症や知的・精神障害で日常生活に支障をきたす行動がよく見られ、在宅生活が困難な状態にある 家族による虐待があるなど、心身の安全確保が難しい状態にある 家族による支援や地域での介護サービスに期待ができず、在宅生活が困難な状態にある 厚生労働省は、実態把握調査を実施しています。まだ調査中ですが、現時点で集計が終わっている39の都道府県において、約2万人が特例入所の制度を使って特養に入所しているそうです。 介護保険部会の内容 介護部会の中で、特例入所の趣旨を改めて明確化したい、また特例入所の柔軟な適用を願いたいという意見が出されました。その理由は以下の通りです。 「要介護度3以上を対象とする」という原則が厳しく適用され、やむを得ない事情があっても特例入所が認められない地域もある 周囲の高齢者人口の減少で、特養の空床が生じている地域もある 厚生労働省は、部会で出された意見を踏まえて特例入所の周知をおこない、その趣旨を明確にしていきたいとしていますが、「あくまで趣旨の明確化であり、入所基準の緩和は考えていない」と基準の緩和には慎重な姿勢を示しました。
2022/11/22
厚生労働省は、医療や福祉などの専門家が集まって介護を必要とする度合い(要介護度区分)を判定する介護認定審査会を、オンラインで開催できるようにするための検討に入りました。 新型コロナウイルスが流行してから、臨時的に審議会のオンライン開催を認めていましたが、今後は平時でもオンラインにすることで業務の効率化を図るねらいです。 介護認定審査会とは 介護を必要とする人が介護保険サービスを利用するためには、どれくらいその人が介護を必要としているかを示す、要介護度認定を受ける必要があります。 認定を受けるためには、以下の流れで申請をする必要があります。 調査員が介護を受けようとしている本人と面談する(認定調査) 主治医に、介護が必要になった原因となる病気やけがについての意見書を書いてもらう 認定調査と医師による意見書の結果をもとに、まずはコンピューターが審査。その後に医療、保険、福祉の専門家が集まり、審議し、最終的な要介護度を判定する 上記の流れでは3番にあたる、最終的な要介護度を判定する会議が、「介護認定審査会」です。 オンライン化する背景 ではなぜ、介護認定審査会のオンライン化を進めようとしているのでしょうか? 最も大きな理由に、高齢化が挙げられます。 高齢者をスムーズに介護サービスにつなげるために、要介護度認定は、手続きを受けてから原則30日までに出さないといけないことになっています。しかし、要介護度認定を必要とする人が増え、30日以上待機することも当たり前になっているのです。 そこで、審査会をオンラインにすれば、専門家の日程調整がしやすくなり、結果として要介護度認定の待機期間の短縮も見込まれます。 介護業界はデジタル化がまだ進んでいない部分も多いです。審議会をオンラインにすることで、業務が効率的になれば良いですね。
2022/11/22
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。