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新たな研究で、配偶者のどちらか一方が後期の認知症を患っている人は、離婚の可能性が低くなる傾向が示されました。 この研究はアメリカのミズーリ大学によっておこなわれたもので、その研究結果は「PLOS ONE」というオンラインの科学誌に掲載されています。 配偶者が認知症後期の人は離婚しにくいことが判明 今回、研究グループは全米37ヵ所のアルツハイマー病研究センターからデータを収集。婚姻または内縁関係にあったがのちに離婚した263組と、その比較対象として1238組のカップルのデータをそれぞれ解析しました。 その結果、配偶者のどちらか一方が後期の認知症を患っている夫婦では、離婚の可能性が低くなることが示されたのです。一方、認知症になった配偶者が認知症前期で攻撃的になったり抑うつ状態になったりすると、離婚の可能性が高まることが示唆されました。 この結果について、研究グループは「認知症の症状が高度に進行した状態であれば、ささいなすれ違いも認知症の症状によるものだと認めやすくなる。しかし、症状がそこまで進行していない状態だと、配偶者の攻撃的な言動が意図したものだと捉えられ、離婚につながりやすくなる」と分析しています。 精神面の不安定さにアプローチすることが重要 ミズーリ大学がおこなった今回の研究で、認知症を患った高齢者の不安定な精神状態に、多角的なアプローチをすることの重要性が改めて示されました。 薬物療法などの医療的なアプローチはもちろんのこと、配偶者も認知症の精神症状を落ち着かせるような生活の工夫をすることが重要です。 アメリカの国立老化研究所は「認知症患者とその配偶者は、なるべく一緒に食事をしたり睡眠を取ったりすることが大切だ。心を落ち着かせるような音楽をかける、散歩をする、物をむやみに散らかさないなどの行為も有効かもしれない」としています。 もちろん、生活を工夫しても認知症の精神症状に悩まされることも考えられます。今まさに配偶者の認知症の症状で悩んでいる人は、夫婦で抱え込むと共倒れになるリスクもあるため、早めに地域の地域包括支援センターなどに相談してみることをおすすめします。
2023/10/04
以前の記事で、認知症を患っている高齢者向けのコミュニケーションロボット「だいちゃん」について紹介しました。今回はその続報です。 認知症の高齢者向けロボットの開発・販売や介護施設の運営などをおこなっているザ・ハーモニー株式会社は、自社が開発した認知症の高齢者向けのコミュニケーションロボット「だいちゃん」に新機能を搭載したことを明らかにしました。 具体的には、あらかじめ設定することで、「だいちゃん」と会話できる「おはなしモード」から「うたモード」に自動で切り替えることが可能に。これにより、利用者がより集中して「だいちゃん」とのコミュニケーションに取り組めるようになるといいます。 コミュニケーションロボット「だいちゃん」について そもそも、「だいちゃん」とはどのようなロボットなのでしょうか? 「だいちゃん」は、ザ・ハーモニーが自社の高齢者施設で培った知見を活かし、認知症の高齢者が楽しくコミュニケーションに取り組めるように開発されたぬいぐるみ型のコミュニケーションロボットです。 「だいちゃん」にはザ・ハーモニーが独自に開発したAIが搭載されており、認知症を患っている高齢者の会話のテンポに合わせたコミュニケーションが可能。具体的には、以下のような機能が搭載されているといいます。 おはなしモード:「だいちゃん」が利用者と同じテンポで会話をおこなう クイズモード:ことわざや都道府県に関するクイズを「だいちゃん」が出題 うたモード:「だいちゃん」が歌を披露するモード セリフ機能:利用者が嫌がることも少なくない入浴や服薬を「だいちゃん」がお願いし、スムーズな介護につなげる機能 ザ・ハーモニーは、「だいちゃん」とのコミュニケーションを通じて、認知症の人が抱える不安や意欲低下などの症状を和らげられるとしています。 「おはなしモード」から「うたモード」に自動で切り替え可能 ザ・ハーモニーが「だいちゃん」の導入施設で検証をおこなったところ、「だいちゃんと会話していた利用者が、一定時間経過すると疲れてきてしまう」などの声が挙がったといいます。 それを受けて、ザ・ハーモニーは「だいちゃん」に、あらかじめ設定することで「おはなしモード」から「うたモード」に自動で切り替わる機能を新たに搭載。10分程度でモードが切り替わるようにしておくと、利用者がより集中してコミュニケーションに取り組むようになるそうです。 また、「おはなしモード」や「セリフ機能」で「だいちゃん」が話すセリフのバリエーションも新たに追加。より多彩な場面でコミュニケーションがおこなえるようになったといいます。 今回紹介した「だいちゃん」がさらにさまざまな場所で普及していけば、介護者の負担が軽減され、より手厚いケアを提供できるようになるかもしれませんね。
2023/09/28
アルツハイマー病の進行を遅らせる治療薬を開発したエーザイ株式会社は、9月12日に認知症の臨床試験などのデータを活用する新会社「テオリアテクノロジーズ」の設立を発表。患者と医師が対話できるアプリなどを開発し、認知症の正しい理解を促していくとしています。 エーザイが新会社を設立 2023年9月12日、製薬大手のエーザイは、新会社「テオリアテクノロジーズ」の設立を明らかにしました。資金準備金など計7億円はすべてエーザイが出資。2024年4月に控える事業開始日までに、外部からデータサイエンティストなどのデジタル人材を集めていくとしています。 新会社では、患者と医師が対話できるアプリや、認知症の発症リスクを予測するアルゴリズムの開発などをおこなう予定。根強い偏見があり、健診などを渋る人も少なくない中、対話ツールなどを通じて、認知症への正しい理解や認識を促していくといいます。また、保険会社などとも連携し、認知症の保険商品を開発することも検討していく構えを見せています。 健診を受ける人は認知症リスクが下がる 千葉大学がおこなった新たな研究によると、健康診断を定期的に受診する人は、そうでない人に比べて認知症リスクが低下する可能性が示されました。 研究グループは、65~74歳の高齢者3万1012人を対象に、健診受診と認知症発症との関連性を分析。その結果、過去1年以内に健診を受診した人は、受診していない人に比べて5年間の認知症発症リスクが約13%低下したことが明らかになりました。 以上の結果を受けて、研究グループは「健診や特定保健指導で、生活習慣病を予防できれば将来の認知症リスクを減らすことができるかもしれない」と述べています。 認知症以外に、心筋梗塞や脳卒中などの致命的な疾患を予防するためにも健診は重要です。近くの自治体で健診を受けられることもあるので、チェックしておくと良いかもしれませんね。 出典:「健診受診者で認知症リスク13%少ない 」(千葉大学)
2023/09/22
新たな研究で、オリーブオイルを摂取する習慣がある人はそうでない人に比べて、認知症による死亡リスクが低下する可能性が示されました。 今回の研究はハーバード大学公衆衛生大学院の研究グループによっておこなわれ、その研究結果は米国栄養学会の「Nutrition2023」にて発表されました。 オリーブオイルを摂取した人は認知症の死亡リスクが低下 今回、研究グループは1990~2018年に収集された9万2393人の食事アンケートを分析。対象者のうち、4749人が追跡期間中に認知症で死亡したことがわかりました。 研究グループが対象者のデータを解析した結果、1日あたり大さじ半分以上のオリーブオイルを摂取した人はそうでない人に比べて、認知症による死亡リスクが28%低下したことが明らかになりました。 さらに、1日あたり小さじ1杯のマーガリンやマヨネーズを同量のオリーブオイルに置き換えると、認知症による死亡リスクが8~14%低下することが示されたのです。 オリーブオイルに含まれるポリフェノールがカギ 研究グループが今回の研究を実施するきっかけとなったのは、オリーブオイルをふんだんに使う、アクアパッツァやアヒージョなどの「地中海食」の健康効果が高い関心を集めたからでした。 しかし、今回の研究によると、オリーブオイルを積極的に摂取していた人は、食事の内容にかかわらず認知症の死亡リスクが減少したことが判明。オリーブオイルに豊富に含まれるオレオカンタールというポリフェノールをはじめ、ビタミンEや不飽和脂肪酸が好ましい結果につながったとみられています。 ハーバード大学公衆衛生大学院に所属するアンジュリー・テシエ氏は「今回の研究で、マーガリンやマヨネーズなどの(人工的な)脂肪の代わりに、天然物であるオリーブオイルを使用するほうが、致命的な認知症のリスクを下げられる可能性が示された」と述べています。 パスタなどの地中海食だけでなく、さまざまな場面で活用できるオリーブオイル。ぜひ、日々の食事に取り入れてみてくださいね。 参考:「Opting for olive oil could boost brain health」(the American Society for Nutrition)
2023/09/21
漫画家やタレントとして活躍していた蛭子能収氏が9月8日、新作絵画17点を集め、「最後の展覧会」と題した個展を開催しました。蛭子氏は2020年に認知症を公表。現在は表舞台から遠ざかり、通院したりデイサービスに通ったりして日々を過ごしているといいます。 蛭子氏の認知症について 蛭子氏は2020年に、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の合併症であることを公表しました。 ところで、この二つの認知症はそれぞれどのような疾患なのでしょうか? アルツハイマー型認知症は認知症のタイプの中で最も多い割合を占めているもの。脳内に「アミロイドベータ」と呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積し、脳全体が萎縮することで発症すると言われています。現在、完全に治す方法は確立されておらず、一度発症すると確実に認知機能の低下が進行していきます。 一方、レビー小体型認知症は脳全体に「レビー小体」と呼ばれる異常物質が沈着して発症すると考えられています。レビー小体型認知症では、認知症に共通する認知機能の低下に加えて、本来存在しないものが見える「幻視」や、身体全体が動かしにくくなったり震えたりする「パーキンソン病」などの症状が合併して起こりやすいとされています。 「最後の展覧会」と題した個展を開催 二つの認知症を患った蛭子氏は、一時期は創作活動から遠ざかっていたものの、2022年の秋頃から仲間の手を借りながら再スタート。2023年9月8日に新作絵画を集めた個展の初日を迎えました。今回の絵は蛭子氏がこれまで描いていたモノクロの画風とは異なり、色鮮やかな抽象画なのだといいます。 作品を見たファンからは「原色じゃない色で描かれているのが素晴らしいと思った」「いろんな絵の具の表情を出せることに驚いた」などの声が挙がっているそうです。 「最後の展覧会」と題した蛭子氏の個展は、9月末まで東京の南青山で開催されるそうです。蛭子氏が放つ色彩豊かな作品を見たい人は、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
2023/09/14
2023年8月30日、実用書を中心に出版事業をおこなっている株式会社クロスメディア・パブリッシングは、『1日が36時間になる日 家族が認知症になったら』を発売しました。 著者はそれぞれ、アルツハイマー型認知症の研究をおこなっているナンシー・メイスとピーター・ロビンズ。「認知症そのものを治すことはできなくても、当事者やその家族の生活の質を向上させることは可能だ」という考えのもと、適切な認知症ケアの方法を具体的な事例とともに本書に示しています。 日本で刊行される意義 認知症研究のスペシャリストが著した本書を日本で刊行する意義は絶大です。なぜなら、日本は世界で最も認知症を発症している人の割合が大きい国だからです。 総務省統計局の発表によると、2022年9月時点における日本の65歳以上の高齢者割合は29.1%で過去最多を更新したといいます。 また、日本の高齢化社会が進展するにしたがって、認知症有病者数も増加傾向にあることが判明。九州大学らの研究グループがまとめた「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年時点での認知症有病率は16.7%で、65歳以上の高齢者の6人に1人は認知症であることがわかったのです。 認知症を患っている高齢者の介護がもたらす、家族への負担は少なくありません。いざ、家族の誰かが認知症になったときに共倒れにならないためにも、正しい認知症ケアの方法を知っておく必要があります。 認知症ケアのハウツーを記述 今回発売された『1日が36時間になる日 家族が認知症になったら』では、家族が認知症になった場合のケアの方法や、認知症ケアがもたらす家族への負担を減らす方法などが具体的に記載されています。 特に、本書に特徴的なのは、認知症ケアをおこなう家族が抱く複雑な心理面についても言及していること。本書では、悲しみや怒り、絶望感などの負の感情にも向き合っていて、家族が認知症ケアを一時的に離れて心身を休ませることの重要性などを説いています。 また、日本では認知症ケアの相談窓口として地域包括支援センターが各自治体に設置されています。もし、認知症の介護で悩んでいる方がいたら、一度相談してみると良いかもしれません。
2023/09/11
福岡県にある筑後市立図書館で、認知症の人とその家族らが交流する「認知症カフェ」が開かれています。開催されるのは2ヵ月に1回(偶数月の水曜日)で、市外から訪れる人もいるそうです。 認知症カフェとは そもそも認知症カフェとはどのような場所なのでしょうか? 認知症カフェとは、認知症の人とその家族を中心に、認知症について学んだり認知症にまつわる悩みを相談したりする場のことを指します。レクリエーションや歌などが目的ではなく、カフェのようにコーヒーを飲んだり話し合ったりして気楽に過ごせるのが大きな特徴です。 また、認知症カフェは認知症の人だけでなく、その家族や地域住民など、老若男女問わず訪れられます。 現在、認知症カフェは全国6000ヵ所近くあり、さらに拡大を続けています。 市立図書館で認知症カフェを開く 筑後市立図書館が認知症カフェを始めたのは、2018年6月。認知症や介護の相談窓口である地域包括支援センターと共同で開催したといいます。 認知症カフェの参加には、事前予約が不要で名前や住所を伝える必要もありません。訪れた人は名札に、自分が呼ばれたい名前を書くだけで参加できるのです。 認知症カフェの関係者は「図書館という身近な施設で、気軽に参加できるスタイルが喜ばれている。また、認知症への理解を広める情報発信拠点にもなっている」と話しています。 自分に近しい人が認知症を患ったことが発覚したとき、パニックになってしまう人も少なくありません。無理に自分ひとりだけで介護しようとすると共倒れのリスクもあります。認知症カフェは全国各地で開かれているため、認知症になった高齢者が身近にいる人は、近くの認知症カフェに足を運んでみて、情報を入手すると良さそうですね。 参考:「私たちの認知症カフェ」(厚生労働省)
2023/08/21
以前の記事で、「バスの来ないバス停」についてお伝えしました。今回、別の場所でも同じような取り組みがおこなわれていたので、紹介します。 長野県大町市にあるNPO法人「なかまと」が運営する、認知症対応型グループホームの前には、手作りの「バスの来ないバス停」が設置されています。 家に帰ろうと思った認知症の人が、行方不明になるのを防ぐために考案したそうです。 「バスの来ないバス停」を設置 グループホームの前に設置された、「バスの来ないバス停」は、高さが1mほどの小さなモニュメント。バケツのふたやガーデニング用の柵、まな板を組み合わせて、まるで本物のバス停のように作られています。 また、バス停の横にはベンチも設置。ここに座って、来ないバスを待つ仕組みになっているそうです。 この「バスの来ないバス停」は、NPO法人「なかまと」の理事長である井澤泉氏が、国内外の事例を参考にして考案。2022年の夏頃に手作りしたと言います。 井澤氏は「入居者がほっとした気持ちになれるスポットを作りたかった」と話しています。 認知症の人が抱きやすい「帰宅願望」について 認知症を患っている人にみられやすい症状のひとつに「帰宅願望」という症状があります。 認知症によって記憶や場所、時間などの感覚や判断力などが侵されることで、「自分がなぜこの場所にいるのか」「ここはどこなのか」「目の前に立っている人物はだれなのか」などがわからなくなってしまうことがあります。 自分が今いる場所や周りの人などがわからなくなることで不安を覚え、安心感を求めて「家に帰りたい」と望むようになるのが、「帰宅願望」という症状です。 特に、仕事や学校から帰宅する時間帯に近い夕方頃に、帰宅願望は強くなりやすいと言われています。 帰宅願望のある認知症の入居者に「家には帰れない」などと否定すると、本人が混乱してしまうおそれがあります。施設の目の前に「バスの来ないバス停」があれば、症状が収まるまで穏やかな時間を過ごせそうですね。
2023/07/14
2023年6月22日、警察庁は2022年における行方不明者の状況についての報告をおこないました。認知症やその疑いがある人で、行方不明者として警察に届け出があった件数は1万8000件以上に上ったことが明らかになったと言います。 高齢者の行方不明者が年々増加 警察庁生活安全局人身安全・少年課は2022年における行方不明者の人数とその内訳を公表。警察が調査を行った結果、2022年に行方不明となった人は計8万4920人だったことが明らかになりました。 年齢別にみると、80代以上の行方不明者が年々増加傾向にあることが判明。2022年には、行方不明者全体のうち1万3749人が80代以上だったことがわかりました。 また、70代で行方をくらました人も1万人以上に上ったことが明らかになっています。 認知症の行方不明者が1万8000人以上 行方不明者について、原因・動機別でみると、疾病関係が原因で行方不明となった人が最も多く、2万4719人だったことが判明。このうち、認知症またはその疑いによるものは1万8709人で、認知症に限定した統計を取り始めた2012年以降、最多となったことが明らかになったのです。 認知症が原因とみられる行方不明者は年々増加していて、2012年の9607人から10年でほぼ2倍になりました。 高齢化社会が進展するにつれて、今後ますます認知症による行方不明者が増えていくことが予測されています。警察は、自治体や企業などと連携して早期発見に向けた取り組みを進めていくとしています。 認知症の人でも安心して過ごせる社会をつくっていくためには、地域住民の理解が欠かせません。認知症カフェなど、当事者の意見を聞ける取り組みが各地でおこなわれているため、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。 参考:「令和4年における行方不明者の状況」(警察庁生活安全局人身安全・少年課)
2023/06/23
広島大学と日本老年医学会は、全国の高齢者介護・医療施設に対して、新型コロナ禍による生活の変化で生じた影響に関するアンケートをおこないました。 その結果、約7割に上る施設が認知症を患った人に「影響があった」と回答していたことが明らかになったのです。 全国の高齢者介護・医療施設に調査を実施 今回の調査は、以下の要領でおこなわれました。 調査期間:2023年1月17日~2月24日 対象:全国の高齢者が入居している介護・医療施設 回答数:995施設 調査手法:アンケート調査 なお、新型コロナの影響に関する調査は今回で3回目。新型コロナの感染が広がった2020年から、毎年実施されています。 新型コロナが認知症の人に「影響あり」が約7割 今回のアンケートでは、まず「新型コロナの感染予防対策は、どのようなことをおこなっているか」と尋ねました。すると、全体の94%の施設が「家族・友人との面会を制限している」と回答したことが判明。ほかにも「外出を制限している」「施設へのボランティア訪問を中止した」という回答もそれぞれ9割近くに上りました。 次に、感染対策で活動を制限したことによって、認知症の人への影響があったかどうかを尋ねたところ、全体の施設のうち69.5%が「影響があった」と回答したことがわかりました。 さらに、活動を制限したことで、重度の認知症を患っている人に生じた具体的な影響について複数回答で尋ねました。すると、全体の78%の施設が「認知機能が低下した」と回答したことが明らかになったのです。 ほかにも「身体活動量が低下した」「ADL(食事や更衣、排泄など日常生活における基本的な動作をおこなう力)が低下した」という回答も半数以上に上ったことが判明しました。 広島大学の石井伸弥氏は「状況を改善するためには、感染対策を引き続きおこないながらも、面会制限を緩和することや中断していたリハビリを再開することが重要だ」と指摘しました。 外部との接触が断たれてしまうと、脳への刺激も乏しくなり認知機能が悪化するリスクが高まります。そのため、これまで課していた制限を徐々に緩和していく必要がありますが、施設内の感染拡大も防がなくてはなりません。 高齢者施設は難しい決断を迫られていますが、納得できる道を探っていきたいですね。 参考:「第3回「新型コロナウイルス感染症による医療・介護施設入所中の認知症者に対する影響に関する調査」結果報告書」(広島⼤学⼤学院医系科学研究科・一般社団法人 日本老年医学会)
2023/06/21
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。