加齢で筋肉量が減ったことによって体重も減ってしまったのかもしれません。また、高齢になると食事をとっていても消化・吸収力が低下することで、栄養が身体に吸収されないで排泄されてしまうこともあります。高カロリーなゼリーなどを食事に追加してみるのも良いかもしれません。
特養に入っている母親が、急激に体重が減っているようです。何か大きな病気なのではないかと心配で…。
ちなみに、お母様の体重はどれくらい減少しているんですか?
特養のケアマネジャーさんによると、この半年で3kg以上も減っているそうです。ダイエットしているわけでもないですし、これって減りすぎですよね?
そうですね…。半年で体重の5%以上の体重減少があるのは要注意です。例えば、50kgの人の場合、2.5kg以上ですね。
特にご高齢者の場合、さまざまな理由で体重が落ちやすいので注意が必要なんです。
どんな理由で体重が落ちるんですか?
ご高齢者の体重が減少する理由はいくつか考えられます。主なものを以下にまとめました。
例えば、加齢によって筋肉量が減ると身体を動かすことが億劫になって運動不足になってしまいます。そのため、生きるために必要となるカロリーが少なくなるので、以前よりも空腹を感じにくくなります。そうして食事量が低下してしまうんですね。
また、噛む力(咀嚼機能)や飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、食事が飲み込みにくくなるので食欲が低下する傾向があります。
ケアマネジャーさんによると、母はしっかり食べられているみたいです。毎食8割ほどは食べていて、好きなおかずだと完食するときもあるくらいです。となると、食欲低下が原因ではないですよね?
確かにそうですね。…そういうことであれば、高齢になったことで消化力や吸収力が低下したことが原因かもしれません。
どういうことですか?
歳を重ねることで、栄養を身体に取り込みにくくなるんです。これまでと食事量や内容は変わらなくても、体内に栄養が吸収されずに排出されてしまうので、痩せてしまうということですね。
なるほど、もしかしたらそうなのかもしれません!
吸収力が低下している場合、下痢になる傾向があります。排泄の状況もケアマネジャーさんに確認した方が良いかもしれません。
そんなことがあるんですね、ケアマネジャーさんに聞いてみます。
あとは、やはり病気が影響することもあります。例えば、がんの場合、がん細胞はたくさんのエネルギーを使って増殖します。そのため、がんの進行にともなって体重減少が起こることがあります。
また、これはお母様は違うかもしれませんが、消化器系の疾患のときも体重減少する場合があります。胃や十二指腸の潰瘍、潰瘍性大腸炎などの場合、消化機能に異常が出るので胃の中に食べ物が残り続けて食欲がわかなくなるんです。
病気の可能性もあるんだ…。
そうなんです。それに、認知症が原因で体重が減ることもあります。
例えば、食べること自体を忘れてしまったり、食べ物を食べ物と判断できないために食事量が減少して体重も減ってしまうこともあります。
また、箸やスプーンを使ったり、それを口まで運ぶという一連の動作ができなくなることも…。さらに、認知症によって何事にも無関心になって食事もとらなくなることで、体重が減ってしまうケースもあるんです。
拒食とは食べることを拒否する弊害を指し、食べなくなることで栄養状態の悪化や体力の低下を招きます。介護をする人からすれば、「なんとか食べてほしい」という一心で食事を勧めていても、本人はそれがストレスとなり拒否している可能性があります。
食欲を掻き立てるために、本人の好きなものを献立に取り入れるのが良いでしょう。ただし、毎日となると栄養に偏りが生じてしまうため、あくまで本人の食欲を向上させるための手段と考えておきましょう。
強引に食事を勧めたり無理やり食べさせることは絶対にしてはいけません。介護をする人は、「本人のためを想ってやっているのに…」と思うこともあるでしょう。しかし一番重要なのは、本人の気持ちに寄り添い、認めてあげることです。
ご高齢者の体重が減ってしまう原因を知ったところで、合わせて体重減少によるリスクも把握しておいてください。
体重が減るリスク…。急に体重が減ったことには動揺しましたが、その危険性についてちゃんと考えたことはありませんでした。
では、ここで改めて確認していきましょう。以下に体重減少のリスクについてまとめました。
体重が減少するときは、たいてい同時に筋肉量も減っています。すると、先ほどもお話しした通り、身体を動かすことが億劫に。そのため、お腹が空きにくくなって食事量が減って、筋肉量がさらに減って…と悪循環になってしまいます。
これが進行すると、気力や体力が落ちた「フレイル」という状態になります。フレイルがさらに進行すると、介護が必要な状態、つまり要介護状態になるわけですね。もしかしたら、そのまま寝たきり状態になってしまうかもしれません。
寝たきりに!体重が減ることって良いイメージがありますが、そうとも言えないんですね。
おっしゃる通りです。若い世代の健康管理にダイエットは有効かもしれませんが、ご高齢者には勧められません。筋肉の減少する可能性が高いですから。
また、床ずれのリスクも高まります。床ずれは、栄養状態が良い人にはほとんどできません。でも、栄養状態が良くないと、皮膚がクッションの役割をしないので炎症しやすい状態です。だから、長時間ベッドに横になっていたり、同じ姿勢で座っていると皮膚がむけたり化膿してしまうんですね。
あと、この「低血糖」ってなんですか?血糖値が高いのが良くないのは知っていますが…。
血糖値は、低すぎても良くないんです。血糖値が下がりすぎると、頭がぼーっとして意識障害になったり最悪の場合、死に至ることもあります。特に、糖尿病の治療で血糖値を下げる薬を使っている場合、必要なカロリーをしっかり摂らないと低血糖になってしまうんです。
低血糖ってそんなに怖いんですね…。それと「低たんぱく血症」という言葉は、初めて聞きました。
低たんぱく血症は、血液中のたんぱく質が非常に少ない状態のことです。お腹に水が溜まる「腹水」やむくみが起きて、身体を動かしにくくなり、さらに活動量の低下につながってしまうんです。
体重が減ることのリスクを知ったら、母のことがもっと心配になってしまいました…。どうしたら食い止められるんでしょうか?
不安にさせてしまってすいません!
体重減少を食い止めるには、やはりしっかり栄養を摂ることですね。体重減少がみられるときには、糖質や脂質といったエネルギー源になる栄養を優先して摂っていきたいです。
糖質と脂質ですか…。どんなものを食べさせたら良いんでしょうか。
お母様は特養の栄養バランスが考えられた食事をとっているので、今の食事に追加するのが良いかもしれません。
例えば、手軽に栄養を摂れる高カロリーゼリーや高カロリードリンクがドラッグストアなどで売られているので、差し入れしても良いでしょう。もちろん食品を持ち込む際には、まず特養の看護師さんやかかりつけ医に相談してからにしてくださいね。
高カロリーの食品が売ってるんですね!知らなかったです。
また、そういう食品でなくてもお母様が好きな食べ物を差し入れするのも良いでしょう。例えば、ようかんやアイスといったお菓子類だと、おやつの時間などに手軽に食べられますよ。
なるほど…。特養の看護師さんに確認してみます。
そうですね。どちらにせよ、今のお母様の状態を医師や看護師さんといった専門家に相談してみることが大切です。もしかしたら、病気や服薬中の薬との兼ね合いで食べてはいけないものがある可能性もありますから。
まずは、現在の食事状況や体調を確認しつつ、特養の医師や看護師に相談してみましょう。
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