「健康診断に行こう」と別の理由で誘ってみるのもひとつの手です。また「お母さんが認知症になったら、私が困るから病院で診察してもらおう」と浜田さんが心配に感じていることを素直に伝えると、検査を受ける気になってくれるかもしれません。
認知症を発症した多くの人が、自分の様子がおかしいことに気がついて不安を感じています。なので、そこを刺激するような「最近、変だから検査しよう」「認知症なんじゃない?」といった伝え方をしてしまうと、拒絶されてしまうことがあるので要注意です。
母の様子が最近おかしくて。午前中にした話をその話をしたことすら忘れてしまったり、同じ質問を1日に何度もしてくることもあります。
もしかしたら認知症なのかもしれないと思って「最近、様子が変だから認知症の検査に行こう」と言ったら「認知症なんかじゃない!」と怒って拒否されてしまいました。母が認知症検査を受けてくれる上手い誘い方はないでしょうか?
うーん、実は、ご高齢者を認知症検査に誘う言い方として、「おかしい」とか「ボケている」といった言い方はNGなんです。
えぇ!そうなんですか?
はい…。認知症の人の多くは、初期の段階では自分の変化に気がついています。なので、「認知症かも」と指摘されるとその不安感が大きくなってしまうんです。
それに、認知症だと自分で認めなくない気持ちもあるので、反発されてしまうこともあります。
そうだったんだ…。もしかしたら、母も自分の異変を感じて不安になっているかもしれないんですね…。
そうなんです。なので、さらに不安になってしまうような言い方はNGです。
加えて、「ご飯を食べに出かけよう」「私が調子が悪いから病院に付き添って」というような嘘もしない方が良いですね。病院に着いてお母様が嘘に気がついたとき、信頼関係が崩れてしまう可能性もありますから。
うーん、認知症の検査を受けてもらうのは難しいですね…。良い言い方があると良いのですが…。
そうですね…。例えば、「健康診断を受けてみない?」と誘ってみるのはどうでしょうか?
また、「高齢になると検査する人が多いみたいだよ」「近所の○○さんも検査したみたいだよ」と、第三者を引き合いに出すのも良いかもしれません。
それだけで納得してくれますかね?母が納得しなくて、結局、無理やり連れていくしかないように思います。
いえ、無理やり受診するのはおすすめできません。というのも、認知症は「検査して診断が出れば終わり」というものではなく、長期的に治療を続けていくものだからです。そのため、無理やり病院に連れて行って認知症だと判明しても、その後の治療のための通院がとても大変になる可能性があります。
なので、無理やり検査を受けるのではなく、じっくり説得してお母様が納得したうえで検査を受けていただくのが今後のためにも良いんです。
なるほど…。
もし、なかなか検査を受けてくれないようだったら、ストレートに「お母さんが認知症だったら、私がとても困る。私のために検査を受けて」とお願いしてみるのも良いでしょう。
また、かかりつけ医にお願いして、検査を勧めてもらうのも手。「先生が言うなら…」と意外とスムーズに受診してくれる人も多いですよ。
あぁ、確かに。かかりつけの先生の言うことなら素直に聞くので、先生にお願いするのが良いかもしれません。
ちなみに、認知症の検査を受けられるのは何科の病院ですか?
精神科、脳神経内科、脳神経外科、心療内科、老年科…などいろんな診療科で検査が受けられます。
どの病院で検査を受けるか迷ったら、それもかかりつけ医に相談してみるのが良いでしょう。検査を受けられる病院を紹介してくれると思いますよ。
認知症診断の流れは以下の通りです。
認知症診断では、問診を含む面談、他の病気の可能性も確認するための身体検査、神経心理学検査と脳画像検査となります。
検査の結果、母が認知症と診断されたらどうしたら良いんでしょうか?
まずは、認知症や介護の専門機関に相談してみましょう。そうすることで、適切な介護サービスや支援を受けられますよ。
そうか、認知症になると介護が必要になるんですよね。
そうです。今は元気でも認知症が進行していくと、さまざまな面で介護が必要になります。なので、適切な介護サービスが受けられるように、介護認定を受けましょう。
介護認定を受けるには、介護やご高齢者の暮らし全般をサポートしている「地域包括支援センター」の窓口で申請する必要があります。そのため認知症の診断が下りたら、まずは地域包括支援センターに行くことをおすすめします。
地域包括支援センターを要約すると、介護だけでなく医療や保険、福祉などの面から高齢者やその家族の生活を支える総合窓口、ということになります。
地域包括支援センターにはそれぞれの専門家が常駐しており、高齢者が住み慣れた場所での生活を続けられるようにさまざまなサービスを提供してくれたり、相談に乗ってくれたりします。
地域包括支援センターの運営主体は各市町村。それら自治体から委託を受けた社会福祉法人や社会福祉協議会が運営しているケースがほとんどで(稀に民間企業が運営しているセンターも)、全国には約5000以上もあります。
そんな地域包括支援センターは、主に以下の4つの役割を担っています。
わかりました。地域包括支援センターですね。
それと、認知症についてのかかりつけ医をみつけましょう。今のかかりつけ医が認知症に対応できるのであればそのままで大丈夫です。しかし、もし認知症が専門ではない場合は、認知症を専門にしている病院を今のかかりつけ医に紹介してもらってください。
そして、お母様の状況に応じた治療薬を処方してもらいましょう。
確か、今のかかりつけの先生は、認知症は専門ではなかったような気がしますね…。
もし介護をしている中で、辛いことや困ったことがあったら地域の「認知症カフェ」に足を運んでみるのも良いでしょう。認知症カフェは、認知症の当事者やその介護をする家族が集まる場所です。近い境遇にある人と悩みを共有できたり、認知症介護のコツを教えてもらえます。
認知症カフェに参加するのは必ずしないといけないことではありませんが、介護に苦しくなったときの息抜きができる場所があることを知っておいて損はありませんよね。
とはいえ、まずはお母様に認知症の検査を受けてもらうのが第一歩です。じっくりお母様を説得してみてください。
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