どうしてお母様が夜に大声を出すのか考えてみましょう。認知症になると睡眠ホルモンが出にくくなるので、睡眠障害が起こりやすくなることがありますし、見当識障害によって時間や自分の居場所がわからず、不安になっているのかもしれません。
また、大声を出したときに怒ったり、お母様の言葉を否定するのはNG。お母様に寄り添うような声掛けをしたり、温かい飲み物を飲むと落ち着くと思いますよ。
最近、認知症の母が夜中に大声で叫ぶようになって困っています。昼間はおとなしいのですが、暗くなるとそわそわと落ち着かなくなって、日付が変わる頃に起き出してきて大声で騒ぐんです。
これが毎晩続いているのでずっと寝不足ですし、仕事にも影響が出ています。先日は寝不足と疲れが重なって大声を出す母に怒鳴ってしまいました…。
うーん、認知症の人に対して、叱ったり怒ったりするのはNGなんです。
そうなんですか!?あまりにも騒ぐので、何度も叱ってしまったことがあります。
叱ったり怒ったりすることも含めて、以下のように認知症の人への対応としてNGなものがいくつかあります。理由も含めて紹介しますね。
まず、認知症の人は怒られたり叱られたりすると気持ちが不安定になることも。また、もっと興奮してしまって眠れるまでに時間がかかることがあります。
精神状態が不安定になると、認知症の症状が進行してしまう恐れがあります。疲れや寝不足でストレスが溜まっているかもしれませんが、一旦、気持ちを落ち着けて対応しましょう。
また、認知症の人の言葉を否定するような声掛けも、認知症の症状を進行させてしまうことがあります。
特に、認知症の中でも「レビー小体型認知症」の場合、幻視や幻聴といった実際にはないものを見たり聞いたりする症状が出ることがあります。なので「知らない人が庭に立っている」「誰かに悪口を言われている」と言うこともあるでしょう。
そのときに、「そんな人はいないよ」「誰の声も聞こえないよ」と否定すると、不安感が増して状態が悪化することも。実際には起こっていないことでも、認知症のご本人にとっては現実の出来事なので、否定されると混乱してしまうんですね。
そうなんですね。母は幻視や幻聴のような症状はありませんが、母の言葉を否定しないように注意します…。
眠れないなら睡眠薬を使うこともあるんじゃないですか?
そうなんですが、睡眠薬に頼りすぎるのは良くありません。特にご高齢者は薬の効果が出すぎる傾向があり、睡眠薬の影響で朝になっても起きれないことがあります。
また、日中にも眠気が取れないことがあり、夜の睡眠に悪影響が出ることもあるんです。
知らず知らずのうちに、やってはいけない対応をしていることがわかりました。では、正しい対応ってどんなことなんでしょうか?
正しい対応は、お母様の状況にもよりますので一概には言えません。ですが、以下のような対応を試してみて、状態が良くなったら継続してみてください。
片山さん、お母様にどうして大声を出すのか聞いたことがありますか?
そういえば、聞いたことはないですね…。「お父さん、お父さん」と亡くなった父のことを呼んでいるので父の夢でも見たのかなと思っていました。
それも理由のひとつかもしれませんね。ただ、実際のところはわからないので、お母様に直接聞いてみても良いかもしれません。
認知症の影響で、お父様が生きていたころに記憶が遡っていて、お父様の姿が見えないことに不安を感じた可能性もあります。いつも一緒にいた人が急にいなくなるのは不安ですよね。
理由を聞くことで、対応方法がわかることもあります。まずは、お母様に大声を出す理由を聞いてみるのも良いでしょう。
認知症の方は常に不安を感じています。そのため、その気持ちに寄り添うような優しい声掛けをしてください。それだけでも不安感は和らぐと思いますよ。
例えば、どんな風に声掛けすれば良いんでしょうか?
何かを怖がっているようなら「怖かったね。もう大丈夫だよ」「私が一緒にいるから安心して」という声掛けが良いでしょう。
お父様がいないことに不安を感じている様子であれば、「お父さんは今日は泊まりで出かけているよ」と言うのも効果があるかもしれません。
お母様がなかなか寝付けない様子であれば、温めた牛乳やココアを飲むのもおすすめです。
お母様が落ち着かないときには、温かいものを飲みながらゆっくりおしゃべりをするのも良いかもしれませんね。
お母様がよく眠れるようにするには、日中の活動量を増やすのも効果的です。昼間に趣味の活動や運動などをしてほどよく疲れることで睡眠状態が良くなりますし、太陽の光を浴びれば体内リズムの調整にもつながります。
具体的には、近所を数十分でも散歩するのも良いでしょう。デイサービスを活用して、昼間の活動時間を確保するのもおすすめです。
デイサービスは使ったことがなかったです。きちんと夜に眠るためには、規則正しい生活が大切って言いますもんね。
昼寝ってむしろ夜に眠れなくなりそうですけど…。
確かに、長時間、寝てしまうと夜の睡眠に悪影響があるでしょう。ですが、15~30分のお昼寝なら夜の睡眠の影響が少ないと言われています。
お母様があまりにも眠い様子があれば、短いお昼寝時間を作ってみるのがおすすめです。
いくつか対応方法がわかって安心しました。
…でも、そもそもどうして母は夜中に叫ぶようになったのでしょうか?少し前までは、そんなことはなかったんですが…。
認知症を発症すると夜に眠れなくなる理由がいくつかあります。具体的には以下のようなものです。
「せん妄」とは幻覚や妄想、興奮状態にあること。先ほども言った通り、認知症の影響で幻覚症状が出ることがあります。それに、認知症の人は認知機能の低下で自分が置かれている状況が理解できず、常に不安を抱えています。
そのうえ、夜は真っ暗で周りの状態がわからなくて不安感が強くなる傾向があります。そういったさまざまな原因が重なって、認知症の人は夜になると不安感が強くなり興奮状態になって大声で叫ぶケースが多々あるんです。
幻覚への対応については、以前のご質問でも答えているので、参考にしてみてください。
認知症と睡眠状態に関係あるんですか?
そうなんです。認知症によって脳の機能が低下すると睡眠ホルモンの「メラトニン」の分泌が低下します。それによって体内リズムが狂い、夜眠れなくて昼間に眠る「昼夜逆転」状態を起こしやすくなるんです。
昼夜逆転については、以前のご相談でもお話ししています。参考にしてみてくださいね。
「レム睡眠行動障害」はレビー小体型認知症の人に多い症状です。睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を繰り返します。
レム睡眠行動障害は、脳の機能低下の影響でこのレム睡眠の間に身体が動いてしまう状態。眠っているのにも関わらず、夢の中と同じ行動を起こしてしまいます。
つまり、怖い夢を見ているせいで現実でも大声で叫んでいるのかもしれません。
認知症の症状のひとつに「見当識障害」があります。これは、自分が「今、どこにいるか」「今、何時なのか」「目の前の人は誰か」といったことがわからなくなる状態です。
誰でも、目を覚ましたら知らないところにいたら不安ですよね。だから、助けを求めてお父様のことを呼んでいる可能性があります。
それはあるかもしれないですね。いつも不安そうに父を呼んでいるので…。
それに、身体的なことも大声を出す原因となることがあります。具体的には、手足が痛んだり、便秘で不快な場合です。
認知機能の低下の影響で、痛みや不快感を上手く表現できなくなることがあります。そうした「嫌な感覚」が総じて不安感になって叫んだり暴れたりといった行動につながるケースもあるんです。
便秘が夜に騒ぐ原因になることがあるんですね…。母の様子をよく見て、対応したいと思います。
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