ちょっとしたことでも、帰省する度に悪口を言われるのはしんどいですよね。ただ、ご高齢者の悪口に対して、否定してしまうのはあまり良くありません。否定してしまうと「どうしてわかってくれないんだ」と感じて、さらに悪口がエスカレートする可能性があります。
もし、悪口が増えたこと以外にも、物忘れ、日付がわからない、料理の手順がわからない、といったことがあれば認知症のおそれがあります。思い当たる場合は、病院で相談してみましょう。
実家で一人暮らしをしている母が、悪口ばかり話すようになってうんざりしています。帰省する度に、悪口や愚痴をずっと話していて、たまに帰るのも気が重くなるほど。昔はこんなに愚痴っぽい人ではなかったのですが…。
帰る度に私や近所の人への文句が止まらないですし、帰省がストレスになっています。どうにか母の愚痴に上手く対応できる方法はないでしょうか?
帰省の度に悪口を聞かされるのはしんどいですよね…。次のような対処方法があります。
ひとつずつ、お話ししていきますね。
たくさんの悪口を聞いていると、「それは違うでしょ」と否定したくなることもあるかもしれません。一旦、そういった否定したい気持ちを抑えて、共感したり、理解をしている態度を示してみましょう。
共感ですか。できるかな…。
「自分のことをわかってくれない」という思いで文句を言っていることもあります。そういう場合、お母様の言葉を否定してしまうと、さらに「わかってくれない」と感じて、悪口がエスカレートしてしまう可能性もあるんです。
そのため、共感まではできなくても、「話はしっかり聞いているよ」という姿勢を示すだけでもお母様が安心するかもしれません。
親御さんがご高齢になると、お子さんが親御さんを「叱る」「注意する」といった場面が増えるかもしれません。ですが、子どものような扱いをするのはNG。あくまで、大人同士の対等な立場で話をしましょう。
例えば、親御さんがご高齢になると「自分でやった方が早い」とお子さんがすべて家事をしてしまったり、「また悪口が始まった」と話を聞き流したり…。そのせいでお母様のプライドが傷ついて、文句や愚痴を言われることもありえます。
話半分に聞いていて、「いつも私の話を聞かない!」と長々と文句を言われたことがあります…。そのときは、ただうんざりしただけですが、私の態度が良くなかったんですね。
ときには、感謝の気持ちを伝えましょう。シンプルな「ありがとう」「感謝しているよ」という言葉でも、口にすることが大切です。
うーん…。悪口ばかりで感謝の言葉を伝える気もなくなってしまうんですが…。
確かに、ご実家に帰る度に悪口を聞いていると、そういう気持ちになりますよね。
そういうときは、アルバムで思い出の写真を見ながら、昔の出来事への感謝を伝えるのでも良いでしょう。悪口を言うご高齢者は、不安や焦りといった感情を持っていることが多いので、感謝を伝えることが自尊心の向上につながるでしょう。
もし、成田さんへの文句が続くときは、演技をして謝ることでお母様の気持ちが収まることもあるかもしれません。
演技をする?どういうことですか?
なかには、普段のストレスを文句や悪口で解消していることがあります。お母様の場合、一人暮らしで寂しい気持ちを紛らわしている面もあるのかもしれません。
なので、成田さんが一旦、謝ったり非を認めることでお母様の気持ちが収まって、文句も収まる可能性もありますよ。
悪口を聞き続けるのは、とてもストレスがかかることですよね。でも、お母様の話をまったく聞かないのは、さらに悪口がエスカレートする可能性もあります。
そこで、時間を決めて話を聞き流したり、話を変えるのもひとつの手です。例えば「文句は1日10分だけ聞く」「3分聞いたら話を変える」といったふうに、時間を定めておくと成田さんの気持ちが少し楽になると思いますよ。
もし、お母様が介護認定を受けているのであれば、介護サービスを受けるのもおすすめです。
一人暮らしだと、生活に刺激が少なくて気持ちがネガティブになりがち。落ち込んだ気持ちから誰かの悪口や文句を言っているのかもしれません。なので、デイサービスなどの人との交流する機会を作ると、生活にハリが出るでしょう。
お母様はデイサービスを利用していますか?
母は、介護認定を受けて「要支援1」ではあるのですが、介護サービスは使ったことがなくて。今のところ一人で生活はできていますし、必要ないんじゃないですか?
介護サービスは介護が必要になってからだけではなく、介護予防としても利用できるんです。特にデイサービスは、レクリエーションや体操などで体を動かす機会もありますし、運動不足の解消や、気分転換にもなると思います。
愚痴っぽいだけで、専門家に相談するんですか?
はい。以前はそんなことがなかったのに、「悪口が増えた」「愚痴っぽくなった」というときは認知症や何かしらの病気が隠れている可能性があります。
なので、前にお話しした対応方法をしても悪口が収まらない場合は、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談することをおすすめします。
悪口ばかり話すのが、どうして認知症の前触れになるんですか?
認知症の症状の中に、「攻撃的な言動」「被害妄想」というものがあります。これらのせいで、悪口や文句が増えている可能性があるからです。
「攻撃的な言動」「被害妄想」は、認知症の周辺症状(BPSD)と呼ばれるものです。記憶障害などの中核症状による不安やストレスから引き起こされる、二次的な症状を周辺症状と言います。
つまり、他人への悪口や文句は、被害妄想による攻撃的な言動である可能性があるということです。
ただ愚痴っぽくなっただけ、と聞き流していましたが、認知症の可能性があるなんて…。
特に、「以前は愚痴っぽくなかった」という人は要注意。以下が認知症の初期症状なので、他の症状も現れていないか確認してください。
ちなみに、「怒りっぽくなった」というのも認知症の前兆の可能性があります。詳しくは以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
母は、以前はそこまで愚痴っぽい人ではなかったんですが、どうしてこんなに悪口ばかり言うようになってしまったんでしょう?
歳のせいだと思っていましたが、何か理由があるんでしょうか?
確かに、年齢の影響はあるかもしれません。例えば、ご高齢者が悪口ばかり言うようになることについて、以下のような理由が考えられます。
元気なご高齢者でも、できないことや記憶力などの低下を感じる場面が若い頃と比べて増えていることが大半でしょう。
昔と同じようにできないことのいらだちが、誰かへの悪口や文句という形になっているのかもしれません。
そういえば、母も最近、体が思うように動かなくなっていらだっている様子がありました。できないことが増えてきて、いらだっているのかな…。
年齢とともに経験を重ねることで、プライドが高くなっていることが誰かへの悪口につながっている可能性もあります。
例えば、「若い人はわかっていない」「年上だから自分の方がえらい」といった思いから悪口を言っているのかもしれません。
定年を迎えたり、体力的な面から外出の機会が減るため、ご高齢者は人との交流が減る傾向があります。一人暮らしだとなおさらですよね。
一人の時間が増えると、「誰も相手をしてくれない」「かまってくれない」と孤独感が強くなってしまうでしょう。そうした不満が悪口につながっているのかもしれません。
被害妄想については、認知症の症状のひとつとしてお伝えしましたね。詳しくお話しすると、認知症などの影響で記憶力が低下することで被害妄想が始まることがあるんです。
なんで、記憶力の低下が被害妄想につながるんですか?
例えば、認知症による被害妄想の主なもののひとつに「物盗られ妄想」があります。これは、財布やお金などの大切なものを盗まれたと思い込むこと。大切なものを自分でしまったのに、しまったこと自体を忘れてしまって「盗まれた」と思い込む被害妄想です。
認知症による物忘れは、直近の行動や出来事をまるごと忘れてしまうのが特徴。「どこにしまったのかを忘れる」のではなく、「しまったこと自体を忘れる」ので、自分でしまったのではなく盗まれたと考えてしまうんですね。
えぇ…、そんなことが起こるんですね。
物盗られ妄想から、「近所の◯◯さんに財布を盗まれた」のような根拠のない悪口が始まることもありえます。悪口の内容が「不自然だな」と、感じたら認知症の可能性を考えても良いかもしれません。
ご高齢者が悪口ばかり言う背景には、加齢によるいらだちや孤独感、さらには認知症の可能性も隠れているかもしれません。耳を傾けるのはストレスが大きいことですが、ある程度は聞き流しつつも、その裏の本当の訴えも気にかけてみてください。
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