お母様は認知症の影響で判断能力がないとして、契約を無効にできることがあります。ただ、契約内容をよく理解できていないお母様に、半ば無理やり契約させた可能性があるので、契約の取り消しを不動産業者が対応しないおそれがあります。
そこで、困ったときには消費者ホットラインに相談してください。「188(いやや)番」が消費者ホットラインの番号です。契約内容に不審な点がある場合も、まずは相談することが大切です。
実家で一人暮らしをする母親が、勝手に実家の売却契約をしていることがわかりました。契約書が実家で見つかったので気がついたのですが、その書類のことを母に聞いてみても「何の書類かわからないのよね」と、契約した記憶もないようです。
実家を売却したら、母が住む場所がなくなってしまいます!契約の取り消しはできますか?
契約の取り消しはできないのですが、認知症の方が結んだものは契約自体が無効となる可能性があります。
2020年に民法の改正がおこなわれ、 認知症などで意思能力がない人がおこなった契約は無効となることが追加されています。
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
引用:「民法 第3条の2」
つまり、母が結んだ契約はなかったことにできるということですか?
そうです。実際に裁判では、認知症によって意思能力がないと判断された人が結んだ契約が無効となった事例もあります。
まずは、契約を結んだ不動産業者に連絡して、お母様が認知症で契約を理解していなかった点を説明して、契約を無効にしてもらいましょう。
契約内容を確認したところ、自宅の売却額は相場より低く、こちらに不利な内容でした。母も受け答えがきちんとできたとは思えませんし、母が認知症とわかって理不尽な契約内容にしたように思えます。こんな内容の契約を結ばせる不動産業者に不信感しかありません!
不動産業者に連絡したところで、契約を無効にしてもらえないような気がするのですが…。
おっしゃる通り、認知症の方をねらった悪質な業者は存在し、認知症の方が被害にあう消費者トラブルは絶えません。
もし、契約内容に不審な点がある場合は、消費者ホットラインに相談してみましょう。電話番号は「188番」。「いやや」で覚えてください。
この消費者ホットラインに電話すると、近くの消費生活相談窓口を紹介してくれます。認知症のお母様が、不利な内容の契約を結ばされたことを伝えてくださいね。
そういえば、「クーリングオフ」という制度がありますよね?あれを利用すれば、契約の取り消しができるんじゃないですか?
いえ、クーリングオフ制度は家の売却の際には適用されないんです。
えっ!?そうなんですか!
クーリングオフは、一定期間内であれば商品の購入などの取り消しができる制度。これには適用できる内容が決められており、自宅の売却は適用されないんです。
今回は、認知症のお母様が不利な内容の契約をしてしまいましたが、今後、そういったことがないように成年後見制度を利用することも検討してみてください。
成年後見制度ですか。聞いたことはありますが、よくわからないんですよね。
成年後見制度とは、認知症や障害などで判断能力が低下した人を支援する制度です。具体的には、財産管理や福祉サービスなどの契約といったことを後見人が代理でおこないます。
後見人には、ご家族やご親族がなることも可能。また、弁護士などの士業に依頼もできます。
成年後見制度を利用するときに紛らわしいのが、成年後見制度には2つの種類があることです。以下の2種類です。
法定後見制度は、判断能力が不十分な人の代わりに契約などの法律行為をおこないます。
今回のように、認知症の影響で契約内容を正しく理解できない状態で契約を交わしてしまっても、後見人が契約を解除できるんです。
任意後見制度は、判断能力が低下してしまったときの備えとして後見人を立てておく制度です。
まだご本人に判断能力があるうちに後見人を立てられるので、安心して任せられる人をご本人が後見人として選べるという特徴があります。
任意後見制度については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
母の場合、法定後見制度と任意後見制度なら、法定後見制度を利用すれば良いんですね!
それで、私が後見人になれば、今回のように母が悪い業者と不利な契約をしてしまっても、取り消しできるようになるんですね。
おっしゃる通りです。今後もお母様や岡さんが安心して生活できるように、対策していきましょう!
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