light icon

Q&A

老後の備え

認知症 老後の備え

認知症の母親が勝手に自宅の売却契約を…。取り消しはできますか?

認知症の母親が実家で一人暮らしをしているのですが、勝手に実家の売却契約をしてしまったようで困っています。契約の取り消しはできますか? 実家で売却契約の書類を見つけたので母に聞いてみても、「何の書類かわからないのよね」と契約したことすら覚えていない様子。認知症のせいでとんちんかんなことを言うようになった母親が、自宅の売却契約を理解できているとは思えません。 このままでは、母の住む場所がなくなってしまいます!どうしたら良いですか? (岡さん・パート・63歳) お母様は認知症の影響で判断能力がないとして、契約を無効にできることがあります。ただ、契約内容をよく理解できていないお母様に、半ば無理やり契約させた可能性があるので、契約の取り消しを不動産業者が対応しないおそれがあります。そこで、困ったときには消費者ホットラインに相談してください。「188(いやや)番」が消費者ホットラインの番号です。契約内容に不審な点がある場合も、まずは相談することが大切です。 認知症の親が勝手に自宅を売却!?取り消しできる? 実家で一人暮らしをする母親が、勝手に実家の売却契約をしていることがわかりました。契約書が実家で見つかったので気がついたのですが、その書類のことを母に聞いてみても「何の書類かわからないのよね」と、契約した記憶もないようです。実家を売却したら、母が住む場所がなくなってしまいます!契約の取り消しはできますか? 契約の取り消しはできないのですが、認知症の方が結んだものは契約自体が無効となる可能性があります。2020年に民法の改正がおこなわれ、 認知症などで意思能力がない人がおこなった契約は無効となることが追加されています。 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。 引用:「民法 第3条の2」 つまり、母が結んだ契約はなかったことにできるということですか? そうです。実際に裁判では、認知症によって意思能力がないと判断された人が結んだ契約が無効となった事例もあります。まずは、契約を結んだ不動産業者に連絡して、お母様が認知症で契約を理解していなかった点を説明して、契約を無効にしてもらいましょう。 困ったときは消費者ホットラインに相談 契約内容を確認したところ、自宅の売却額は相場より低く、こちらに不利な内容でした。母も受け答えがきちんとできたとは思えませんし、母が認知症とわかって理不尽な契約内容にしたように思えます。こんな内容の契約を結ばせる不動産業者に不信感しかありません!不動産業者に連絡したところで、契約を無効にしてもらえないような気がするのですが…。 おっしゃる通り、認知症の方をねらった悪質な業者は存在し、認知症の方が被害にあう消費者トラブルは絶えません。もし、契約内容に不審な点がある場合は、消費者ホットラインに相談してみましょう。電話番号は「188番」。「いやや」で覚えてください。この消費者ホットラインに電話すると、近くの消費生活相談窓口を紹介してくれます。認知症のお母様が、不利な内容の契約を結ばされたことを伝えてくださいね。 クーリングオフはできない そういえば、「クーリングオフ」という制度がありますよね?あれを利用すれば、契約の取り消しができるんじゃないですか? いえ、クーリングオフ制度は家の売却の際には適用されないんです。 えっ!?そうなんですか! クーリングオフは、一定期間内であれば商品の購入などの取り消しができる制度。これには適用できる内容が決められており、自宅の売却は適用されないんです。 成年後見制度を活用しよう 今回は、認知症のお母様が不利な内容の契約をしてしまいましたが、今後、そういったことがないように成年後見制度を利用することも検討してみてください。 成年後見制度ですか。聞いたことはありますが、よくわからないんですよね。 成年後見制度とは、認知症や障害などで判断能力が低下した人を支援する制度です。具体的には、財産管理や福祉サービスなどの契約といったことを後見人が代理でおこないます。後見人には、ご家族やご親族がなることも可能。また、弁護士などの士業に依頼もできます。 成年後見制度は2種類ある 成年後見制度を利用するときに紛らわしいのが、成年後見制度には2つの種類があることです。以下の2種類です。 法定後見制度 任意後見制度 法定後見制度 法定後見制度は、判断能力が不十分な人の代わりに契約などの法律行為をおこないます。今回のように、認知症の影響で契約内容を正しく理解できない状態で契約を交わしてしまっても、後見人が契約を解除できるんです。 任意後見制度 任意後見制度は、判断能力が低下してしまったときの備えとして後見人を立てておく制度です。まだご本人に判断能力があるうちに後見人を立てられるので、安心して任せられる人をご本人が後見人として選べるという特徴があります。任意後見制度については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 母の場合、法定後見制度と任意後見制度なら、法定後見制度を利用すれば良いんですね!それで、私が後見人になれば、今回のように母が悪い業者と不利な契約をしてしまっても、取り消しできるようになるんですね。 おっしゃる通りです。今後もお母様や岡さんが安心して生活できるように、対策していきましょう! 認知症の人が結んだ契約は、無効となることがある 不審な契約は消費者ホットライン「118(いやや)」に相談 成年後見制度を活用して、不利益な契約を結ぶのを防ごう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before { ...

2023/09/26

施設入居 老後の備え

老人ホームには”自立”の状態だと入れませんか?近所の介護施設に「介護の必要のない人は入居できません」と断られてしまいました。

半年ほど前に夫に先立たれて一人になり、自分に万が一のことがあったときのことを考えて最期まで暮らせる介護施設に入りたいと考えています。 しかし、近所の老人ホームに問い合わせをしたら「自立の方は入居できません」と断られてしまいました。介護が必要ではない状態だと老人ホームには入居できないのでしょうか? (浅野さん・80歳) いえ、自立の方でも入居できる老人ホームはありますよ!具体的には、「サービス付き高齢者向け住宅」「有料老人ホーム」「ケアハウス」といった施設が挙げられます。ただ、介護が必要な人と同じ施設に入居する場合、「おしゃべりの相手がいない」などということも有り得ます。なので、まずは自立の方向けの施設に入居し、介護が必要になったら介護体制の手厚い施設に住み替えるのもひとつの方法です。 自立でも入れる老人ホームはある? 半年ほど前に夫に先立たれてから一人暮らしをしています。そのせいか、最近は「急に倒れたりでもしたら…」と不安を感じるようになりました。なので、介護の必要はありませんが、今のうちから老人ホームに入ろうと近くの介護施設に問い合わせたところ、「自立の方の受け入れはできません」とのこと。まだ介護が必要ない状態だと老人ホームには入れないのでしょうか? いえいえ、そんなことはありませんよ!自立の方も入居できる老人ホームはあります。ただ、多くの介護施設は介護が必要な人を想定して作られているので、数は限られてしまいます。 そうだったんですね…。どんな施設だと自立でも入居できるんでしょうか? 介護が必要のない”自立”の人も入居できる施設には、いくつか種類があります。順番にお話ししていきますね。 自立でも入れる施設の種類は? 自立の方が入居できる施設は、以下のように民間の介護施設と公的な介護施設に分けられます。おおまかに把握しておくと、施設探しがスムーズになると思いますよ。 民間施設 健康型有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 介護付き有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 公的施設 ケアハウス 何だか似たような名前の施設が多いんですね。 そうなんです、ちょっとわかりにくいですよね。なので、各施設の特徴を簡単にまとめてみました。 民間施設 健康型有料老人ホーム:自立のみ 温泉、スポーツジムなどの設備が充実 レクリエーションが豊富 要介護状態になると退去 住宅型有料老人ホーム:自立~要介護5 認知症の受け入れ可能 生活支援サービスを提供 在宅介護サービスを個別に契約 介護サービス費は利用した分だけ 身体状況によっては退去・転居が必要に 介護付有料老人ホーム:自立~要介護5 認知症の受け入れ可能 看取り可能な施設あり 介護サービスは介護度に応じた定額制 介護・医療ケアが充実している 介護サービスを24時間体制で提供 少なくとも日中は看護師が常駐 サービス付き高齢者住宅:自立~要介護5 一般型と介護型の2種類 一般型 生活の自由度が高い 在宅介護サービスを個別に契約 介護サービス費は利用した分だけ 介護型 介護スタッフが24時間常駐 看護師が日中常駐 レクリエーションなどが豊富 介護度が高い人も入居可能 公的施設 ケアハウス:自立~要介護5 一般型と介護型の2種類 一般型 生活支援サービス、緊急時の対応などを提供 在宅介護サービスを個別に契約 介護度が上がると退去 介護型 介護サービスを施設スタッフが提供 認知症や看取りに対応していることも 入居条件は要介護1以上 入居待ちをする可能性が高い 自立の方が入居できる施設でも、それぞれ特徴が異なります。「介護の手厚さよりも設備の充実度」「介護が必要になっても住み続けたい」「自由な生活を続けたい」などの希望に合わせた施設を選んでくださいね ”住み替え”前提で施設探しするのもアリ いろんな施設があるから迷いますね…。結局、どの施設を選べば良いんでしょうか。大きな病気があるわけではないのですが、年を取って健康面で不安があるのでできれば医療的なサポートが手厚い施設が良いです。 私が自立の方の施設探しをお手伝いするとき、施設の選び方に「2つのパターン」があることをお伝えしています。 2つのパターンですか? はい。1つは「自立~要介護5まで受け入れている施設を終身利用」パターン。次に「自立の方向け施設から介護が必要な方向けの施設に移り住む」パターンです。どちらの場合でもメリットとデメリットがあります。両方ともお伝えするので、メリットとデメリットを把握したうえで施設探しをすると後悔しない施設探しができるでしょう。 パターン1:1つの施設に終身入居 「自立~要介護5まで受け入れている施設を終身利用」というのは、どういうことですか? 先ほど、介護施設の中には介護の必要がない「自立」から最も介護を必要とする「要介護5」まで入居できる施設があることをお伝えしましたよね。 さっきのリストで言うと、「介護付有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などですね。 その通りです!自立の状態でそういった介護体制が整っている施設に入って、最期までその施設で過ごすのが1つ目のパターンです。 私はそのつもりで施設探しをしていました。最期まで看てもらえる施設に入居するのではいけないんですか? 浅野さんのように、「終の棲家」を探している方はとても多いんですが…。実は、デメリットもあるんです。以下にメリットとデメリットをまとめてみました。 メリット ずっと1つの施設にいられる ...

2022/12/22

施設入居 老後の備え 介護の基礎知識

身寄りがなく、一人暮らしを続けるのが不安なので、老人ホームを検討しています。入れる施設はありますか?

最近、年を取って体力的に家事をするのが大変になったり物忘れが増えたので、老人ホームに入居しようかと思っています。そのため、近所の老人ホームに問い合わせたら「身元保証人がいないと入居できない」と言われてしまいました。 親戚付き合いもないので、身元保証人を頼める人もいません。身元保証人がいないと介護施設には入居できないのでしょうか? (山中さん・83歳) 残念ながら、ほとんどの介護施設では身元保証人が必要です。というのも、万が一があったときの緊急連絡先や費用の支払いが滞ったときの支払い義務を負う人が必要だからです。ただ、数は少ないですが中には保証人が必要でない老人ホームもあります。また、身元保証人や身元引受人を代行するサービスを提供する保証会社もあるので、そちらを検討してみるのはどうでしょうか? 老人ホームに入るのに身元保証人が必要? 年を取って一人暮らしに不安を感じるようになって、介護施設に入ろうかと考えています。特に毎日の家事は体力的にしんどいですし、物忘れも多くなってきて…。ただ、この間、近所の老人ホームに問い合わせたら「身元保証人がいないと入居できない」と言われてしまって。私は身寄りがないですし、身元保証人を頼めるような友人もいません。老人ホームって身元保証人がいないと入居できないものなんですか? そうなんです。入居の際に身元保証人を必要としている施設が大半なのが実情なんです…。古いデータになってしまいますが、成年後見制度を広めるための活動をしている「成年後見センター・リーガルサポート」によると、以下のような調査結果が出ています。 えっ!?9割以上の施設で身元保証人が必要なんですね!どうして身元保証人を立てる必要があるんですか? ”万が一”のときのことを考えて、入居時に身元保証人が必要なんです。例えば、身元保証人には以下のような役割があります。 緊急連絡先 身柄の引き取り 本人に代わる意思決定 生活上の手続き 金銭の連帯保証 ご高齢者の場合、体調が急変することが大いに考えられます。そのため、怪我や体調不良などで救急搬送されたときに身元保証人に連絡をします。また、これは言いにくいことなんですが、老人ホームで亡くなったときの身柄の引き取りも身元保証人がおこないます。あわせて、退去手続きや居室の私物の引き取りなども身元保証人の役割です。 そうか…。この年齢になると、いつ何があるかわからないからなぁ。 また、老人ホームに入居する人の中には認知症などで判断力が低下している人が多くいます。そのため、病院で治療を受けたときの治療方針やケアプランの決定といった重要な意思決定を代わりに身元保証人はおこないます。それに、入退院の手続き、行政手続きといった生活をするうえで必要な手続きも身元保証人の役割です。 うーん。このところ物忘れがひどくなっているから、判断や手続きを誰かにお願いするのはそう遠い話でもないのかもしれないな…。 さらに、万が一、老人ホームの利用料などの支払いが滞ったときは身元保証人が債務を負います。このように、万が一のときや毎日の生活の重要な手続きを代行する役割があるので、施設としても身元保証人を立てておいてほしいんです。 身元保証人とは?身元引受人との違いは そういえば、身元保証人に似た名前のものに「身元保証人」っていうのがありますよね?何が違うんですか? 身元保証人は先ほどお話ししたように、万が一のときの連絡先やさまざまな手続きを代行するのが主な役割です。一方の身元引受人は、主に亡くなったときの手続きや身柄の引き取りをおこないます。とはいえ、身元保証人と身元引受人をはっきりと区別していない施設が実は多いので、この2つの違いはそんなに気にしなくても問題ないでしょう。 そうなんですね!身元保証人と身元引受人の両方を立てる必要があるのかと思いました。 中には身元保証人と身元引受人を1人ずつ立てる必要がある施設もあります。そこは施設ごとにルールが異なるので、施設に問い合わせる必要がありますね。 身元保証人がいないときはどうする? 老人ホームに入居するときに身元保証人が必要なのはよく理解しました。ということは、身寄りがなくて身元保証人を頼める人がいない私は、老人ホームには入居できないんでしょうか? いえ、あきらめるのはまだ早いです!身元保証人がいなくても、なんとか老人ホームに入居するための方法はいくつかありますよ! 本当ですか!どんな方法ですか? 身元保証人がいなくても老人ホームに入居するには、以下のようなものがあります。 身元保証人サービスを利用する 身元保証人が不要の老人ホームを選ぶ 成年後見制度を利用できる老人ホームを選ぶ それぞれについて、詳しくお話ししていきますね。 身元保証人サービスを利用する 一番はじめの「身元保証人サービスを利用する」という方法は、最も確実な方法と言えます。というのも、身元保証人サービスはサービスを提供する保証会社にお金を支払うことで身元保証人の役割を代わりに確実におこなってくれるからです。 お金がかかるんですね…。そこまでゆとりがあるわけではないから、考えものだな…。 はい…。しかも、保証会社によってサービス内容や費用が異なります。中には亡くなった後の手続きも代行するサービスを提供していることも。依頼したいことを細かく決められるのは良いですが、利用する場合はしっかり内容を確認したうえで契約をしてくださいね。 身元保証人が不要の老人ホームを選ぶ あれ、老人ホームに入るには、身元保証人が必要なんじゃなかったでしたっけ?リストに「身元保証人が不要の老人ホームを選ぶ」とありますが。 はい、ほとんどの施設では身元保証人が必要です。が、中には身元保証人を必要としない施設もあります。先ほどのグラフにもあった通り、たった1割だけと本当に数が少ないですが…。身元保証人が不要の施設を探すのと同時に、「身元保証人相談可」としている施設も探してみましょう。「身元保証人相談可」の施設では、施設側が保証会社の紹介などのサポートをおこなっていることがありますから、自分で探すよりもスムーズに身元保証人サービスを利用できると思いますよ。 成年後見制度を利用できる老人ホームを選ぶ 介護施設の中には、身元保証人ではなくて成年後見人でも可としている施設もありますから、そういう施設を探すのもアリかもしれません。 成年後見人って、何でしたっけ? 成年後見人とは認知症や障がいによって判断能力が低下した人に代わって、財産管理や生活にまつわる手続きなどをおこなう人のことです。身元保証人の相談ができるか、成年後見人でも良いのかは完全に施設側が判断すること。なので、施設ごとに確認する必要があるんです。介護施設の一つひとつに確認するのが大変なときは「いい介護 入居相談室」にご連絡ください。身元保証人が不要な施設をご紹介することも可能ですよ。 ほとんどの介護施設で身元保証人がいないと入居できない 身元保証人は、緊急連絡先や費用の支払いなどの役割を担う 老人ホームに入居するには、身元保証人不要の施設を選んだり保証会社を利用する必要がある pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; ...

2022/12/01

在宅介護 老後の備え 介護のお金

介護費用が思ったよりも高くて驚いています。もっと安くする方法はないでしょうか?

母の介護にかかる費用が想像以上に高くて困っています。でも、私の仕事を続けるためには、デイサービスや訪問介護の回数を減らすことはできません。 費用を安くする方法はありますか? (菊地さん・パート・62歳) 介護の費用を抑える方法のひとつに、世帯分離があります。これは、同じ家にいながらも住民票の世帯を分けて世帯当たりの所得を減らすことで、介護保険の自己負担額や国民健康保険料を軽減できることがあります。ただ、すべての人が負担を軽減できるわけではないので、事前に所得などの確認をしておく必要があります。 世帯分離をするメリット・デメリットは? 介護にかかる費用が高くて悩んでいます。最近、母が病院から退院してきたので、介護サービスを使いながら介護をしているのですが、思ったよりもお金がかかって…。自分たちの老後のことも考えると少しでも出費を抑えたいのですが、費用を安くする方法はありますか? そうですね…。例えば、世帯分離をするのはどうでしょうか? 「世帯分離」ですか?初めて聞きました。 世帯分離というのは、同じ家に住みながら住民票の世帯を2つに分けることです。今は、お母様と同一世帯になっていますよね? はい。夫が世帯主で、私と母も同一世帯です。 でしたら、世帯を分けてお母様を世帯主にすることが世帯分離です。1つの家に世帯主が2人いるイメージですね。 そんなことができるんですね!でも、世帯分離をすると何で介護の費用が安くなるんですか? それは、世帯分離をすることでお母様の世帯の所得が減り、住民税が軽減されるからです。となると、介護保険の自己負担額だけでなく、国民健康保険料の軽減もできることがあります。ただ、そうしたメリットだけでなくデメリットもあります。よく理解してから世帯分離をするか検討していただきたいので、順にお話していきますね。 世帯分離のメリット 世帯分離をするメリットは、主に以下の4つが挙げられます。 介護保険の自己負担額を減らせる 公的施設の費用を軽減できる 後期高齢者医療制度の保険料が下げられる 国民健康保険料の負担を軽減 介護サービスを利用するためにお金を支払っていますよね。それが介護保険の自己負担額です。実は、この金額はサービス費の全額ではありません。ご本人や世帯の収入に応じて自己負担割合が決められており、その割合をもとに支払い額が決まります。そのため、世帯所得が多いと自己負担割合が増えてしまうんです。現役世代並みの収入があると3割負担となり、介護サービス費だけでもかなりの金額になってしまいます。 そうなんですね!急に母の介護が始まったもので、介護保険についてちゃんと理解できていませんでした…。 また、介護施設に入るときにも世帯の所得が関係します。というのも、特別養護老人ホームなどの公的施設の場合、居住費や食費が世帯の年収や預貯金額によって決まるんです。そのため、世帯分離をしてお母様の世帯所得を減らしておくことで、公的施設の入居費用を軽減できます。 へー!介護施設に入居させることは特に考えていませんでしたが、世帯分離をしておいて備えることも必要そうですね。 また、世帯分離をすると介護費用だけでなく国民健康や後期高齢者医療制度の保険料も軽減できる場合があります。やはり、国民健康や後期高齢者医療制度の保険料も世帯の所得をもとに算出されています。なので、世帯当たりの所得を減らしておくことで、保険料も下げられるんですね。 世帯分離のデメリット 世帯分離って良いですね、いろんな費用が安くなりそう!…でも、デメリットもあるんですよね? そうなんです。世帯分離のデメリットは、主に「国民健康保険料が高くなる可能性がある」「扶養手当や家族手当が受け取れなくなる」という2点があります。 あれ?さっきは、世帯分離をすると「国民健康保険料が安くなる」って言ってませんでしたっけ? はい、そうお伝えしました。国民健康保険料が高くなるか安くなるかは、そのご家庭によるのでケースバイケースなんです。というのも、国民健康保険料は世帯主それぞれが納めるもの。なので、世帯分離をして世帯主が2人になると、2世帯分の保険料を支払わなければいけません。つまり、2世帯の金額を合計すると、世帯分離前よりも高くなってしまう可能性があります。世帯分離をする前後で金額がどう変わるのか、事前に確認しておくことが大切ですね。 うーん、そうなんですね。保険料をきちんと確認しておかないと…。 そして、扶養手当・家族手当は扶養に入っている同一世帯の人がいる場合に支給されるケースが多いですよね。なので、世帯分離をして扶養から外れてしまうと、扶養手当や家族手当が受け取れなくなる可能性があります。 そういうこともあるんですね!今は夫の扶養に入っている状況なので、扶養から外れたらどうなるのか確認しておきます。 世帯分離の手続き方法は? 世帯分離のメリットとデメリットについてはわかりました。もし、世帯分離をするとしたら、どんな手続きをすれば良いんでしょうか? 世帯分離をするには、必要書類を揃えて市区町村の窓口に提出する必要があります。手続きの際に必要な書類は以下の通りです。 本人確認書類 世帯変更届 国民健康保険証(国民健康保険加入者の場合) 委任状(本人・世帯主以外が提出する場合) もし、書類に不備があったときには印鑑を押すこともあるので、念のため持っていくとスムーズに手続きが進められますよ。介護が始まると、何かとお金が必要になります。経済的な不安があると、介護に対する精神的な負担が大きくなってしまうので、少しでもお金の負担を減らせるように世帯分離を活用してみてくださいね。 世帯を分けると世帯収入が減って、介護費の自己負担額が減らせることも 国民健康保険料が高くなる、扶養手当が受け取れなくなるデメリットも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...

2022/10/20

施設入居 在宅介護 老後の備え 介護の基礎知識

介護保険料はいつまで支払うものですか?どういった仕組みなのかも知りたいです

介護保険料が給料から天引きされていることは知っていますが、これまで会社勤めだったこともあり、その詳細が良くわからずにいます。介護保険料はいつまで支払うものなのでしょうか?また、介護保険の仕組みについても知りたいです。 (中野さん・会社員・63歳) 介護保険料は40歳から支払いが始まり、終身にわたって払うものです。今後、保険料を支払い続けている人が介護が必要になった際に、介護サービスの利用料が1~3割負担で済むようになります。しかし、滞納してしまうとこの負担が増えることもあるので滞納せずに支払うことが大切ですね。 介護保険料はいつから支払う? あと数年で定年なので、最近、お金に関して見直しを始めました。そうしている中で、介護保険料をいつまで支払う必要があるのか気になりました。これまで、ずっと会社勤めだったもので、給料から介護保険料が引かれているのは知っているのですが、詳しい仕組みまではよくわからなくて…。 お金の見直しは大切ですよね!介護保険料というのは、介護保険制度を支える費用です。この支払いは、40歳から始まって終身にわたって納める必要がありますが、会社勤めされている場合は自動で給料から天引きされているので、実感がしにくいですよね。 そうなんです。介護についてもよく知らないので、どうやって保険料が使われているのかもわからないですし…。 介護保険料は、介護が必要になって介護サービスを利用する人を支援するために利用されます。介護サービスを利用するにはサービス費を払わなければいけませんが、介護保険制度があることでご利用者はその負担額が1~3割に抑えられるんですね。 そうなんだ!料金の10~30%の負担で済む、ということですね。 その通りです!この介護保険制度の財源は、国や自治体による公費と私たちが支払っている介護保険料で成り立っているんです。その割合は半々ですね。以下のグラフで、財源の内訳をまとめてみました。 また、介護保険制度では65歳以上の人を「第1号被保険者」、40~64歳の人を「第2号被保険者」とあらわします。基本的には、第1号被保険者のうちの介護認定を受けている人が介護サービスを利用する対象となりますが、第2号被保険者の中でも一部の特定疾病を持っている人は介護サービスを利用できます。この特定疾病とされているのは、以下の病気です。 がん(末期) 関節リウマチ 筋萎縮性側索硬化症 後縦靱帯骨化症 骨折を伴う骨粗鬆症 初老期における認知症 進性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 脊髄小脳変性症 脊柱管狭窄症 早老症 多系統萎縮症 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 脳血管疾患 閉塞性動脈硬化症 慢性閉塞性肺疾患 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 この病気を患っている人は、65歳以上でなくても介護サービスを利用できるんですね。 介護保険料はいくら支払っている? 介護保険の大まかな仕組みは理解しました。でも、実際はどれくらいの保険料を支払っているんでしょう? 介護保険料の金額については、第1号被保険者と第2号被保険者で考え方が異なります。さらに、第1号被保険者の場合、自治体ごとに計算方法が変わるんです。全国一律の金額にしてしまうと、所得などによって負担の差が大きくなってしまうんですね。 確か、私はまだ第2号被保険者ですよね?その場合はどうなるんですか? 第2号被保険者の場合、保険料は加入している医療保険によって計算方法が変わります。例として、国民健康保険に加入しているケースと、健康保険組合・協会けんぽに加入しているケースで考えてみますね。まず、国民健康保険に加入している人の場合、以下の計算式で保険料が算出されます。 (被保険者の総所得ー市県民税の基礎控除額)×介護保険料率=所得割額 所得割額+均等割額=介護保険料 所得割額とは前年中の所得金額を基に決定される金額。高所得者ほど多くの保険料を納める均等割額とは世帯の国民健康保険加入者の人数に応じて均等に負担する金額平等割額とは国民健康保険に加入する全世帯が平等に負担する金額資産割額とは国民健康保険に加入する世帯の資産を基に決定される金額 うーん…よくわからないです。 計算式もいろいろと複雑なんですよね。もし具体的な保険料を知りたい場合は、市区町村の窓口に確認してみてください。また、中野さんは会社の健康保険組合に加入されていると思います。そういった人や、協会けんぽに加入している人は、以下の計算式で算出されています。 (標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率=月額介護保険料 こっちも難しいですね…。「標準報酬月額」「標準賞与額」とはなんですか? 標準報酬月額とは、税金を引かれる給与を区切りの良い幅では区分けた金額のことです。また、標準賞与額は税金を引かれるまでの賞与から1000円未満を切り捨てた額です。ちなみに、介護保険料は会社と被保険者で折半しています。給与明細に載っているのは、働く人の負担分の金額というわけですね。 介護保険料の支払い方法 介護保険料の算出方法については、複雑でわかったようなわからないような感じですが…。実は私、あと2年で定年なんです。今は保険料が天引きされているから良いですが、定年後はどうやって支払うんでしょう?終身で支払っていかなければいけないということは、定年後も支払う必要があるんですよね? おっしゃる通り、定年後も引き続き支払う必要があります。ただ、65歳以上の第1号被保険者の人は、基本的に年金から自動的に支払われるので問題ありませんよ。けれど、支払い方法についても、第1号被保険者・第2号被保険者、年金額などによって変わってきます。ちょっとややこしいので、以下にまとめました。 第1号被保険者 年金が年額18万円以上の人 年金の定期支払時に介護保険料を自動的に差し引かれる 年金が年額18万円未満の人 市区町村から送られてくる納付書で支払う 第2号被保険者 会社員 加入している医療保険の支払いに含まれて天引きされる 自営業 口座振替。納付書を役所・銀行・コンビニで支払う これを見ると、私の場合は年金から差し引かれることになりそうですね。毎回、支払いに行かなければいけないのは大変ですからよかったです。 介護保険料を滞納すると 私の場合は、自動的に差し引かれるので大丈夫だと思いますが、もし、介護保険料を滞納した場合はどうなるんでしょうか? 介護保険料を滞納すると、その滞納期間によってペナルティがあります。滞納期間が長くなると、介護サービスを受けたときの自己負担分が増えることもありますので、注意が必要です。介護保険料の滞納のペナルティは以下のとおりです。 滞納期間:1年以内 督促手数料や延滞料が発生し、介護サービス料を全額支払わなければいけない。介護サービス料の支払いが完了してから2ヵ月後に9割が返還される。 滞納期間:1年以上 滞納している介護保険料をすべて納付しないと、9割が返ってこない。保険料の滞納が続く場合は、介護サービス料の9割の金額が充てられる。 滞納期間:2年以上 2年を過ぎると時効になり、保険料が支払えなくなる。滞納期間に応じて自己負担割合が3~4割に引き上げられる。 滞納してしまうと、介護サービスを利用しようとしても大変高額になる可能性があります。生活に支障が出ることもあるかもしれませんので、気をつけたいですね。 介護保険料が免除・減額されるケースがある 介護保険料は、災害や入院して収入が減ったときなど経済的に困窮した場合の減免措置が各自治体でとられています。詳細は自治体ごとに異なるので、今回は例として東京都練馬区の減額措置をご紹介しますね。 介護保険料の所得段階が第2または第3段階(世帯全員が特別区民税非課税)令和2年中の世帯の年間収入の合計額が基準収入額以下(世帯一人増えると50万円加算)世帯の預貯金額・資産がひとり世帯で150万円以下、世帯一人増えると50万円加算の基準額以下介護保険料を滞納していない 収入がなくなったら、介護保険料も支払えませんもんね。特に災害なんていつ起こるかわからないので、いざという時のために頭に入れておきます。 介護が身近でないと介護保険料を支払っても恩恵を感じないかもしれません。でも、介護保険料は将来、安心して暮らすためのものです。保険料を滞納して将来の負担が大きくならないように注意したいですね。 介護保険は介護が必要な人を社会全体で支える仕組み 介護保険料は40歳から終身にわたって支払う 介護保険料の金額は、自治体や加入する医療保険によって異なる 滞納すると介護保険の自己負担割合が大きくなることも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...

2022/09/15

認知症対策 老後の備え 介護の基礎知識

遠方に暮らす姉のお金の管理が心配です。私も高齢のため支援し続けられないので、困っています

遠方に住む認知症の姉の家に行ったら、あやしい健康食品や高級羽毛布団があり、悪質な業者に買わされたのではないかと思っています。しかし姉は、どういった人から買ったのかもわかっていないようす。このままでは姉の財産がなくなってしまうのでは、と心配しているのですが、私も高齢のため支援できなくて困っています。 (高木さん・主婦・67歳) そういった場合には、成年後見制度が役に立つかもしれません。この制度は、後見人を立ててご本人に代わって財産の管理や介護サービスなどの契約をおこなうものです。ご親族の他に、弁護士や司法書士などの士業が後見人になれますので、法律の専門家に老後の資産を任せられる安心感がありますよ。 成年後見制度とはどんな制度? 姉の家に久しぶりに遊びに行ったら、あやしい健康食品や高級そうな羽毛布団がたくさんあったんです。もしかしたら、悪い業者に買わされたのではないかと心配で…。姉に聞いても、どんな人から購入したのかわかっていないようでした。姉は軽度の認知症なので、わからないうちに買ってしまったんではないかと思います。このままでは、姉の財産がなくなってしまいます。私が支援できれば良いんですが、家が遠いですし、年齢が年齢なので支援が難しいです。何か良い方法はないでしょうか? それは大変ですね…。もしかしたら、「成年後見制度」を利用することでお姉様の財産を守れるかもしれませんよ。 成年後見制度ですか?聞いたことはありますが…。 成年後見制度とは、認知症や障害などで物事の判断が難しい人を支援するための制度です。後見人を立てて、ご本人の代わりに財産管理や介護サービスなどの契約をおこなうんです。 後見人というと、誰がなるんでしょう?誰か頼める人がいれば良いんですが…。 後見人は、ご親族がなるケースが多いですが、さまざまな事情でご親族に頼めない場合は、弁護士や司法書士といった士業に依頼もできます。法律の専門家に依頼したい、と考えてあえて士業にお願いする人もいるみたいですよ。 確かに!法律家の先生にお願いできるのであれば安心ですね! 法定後見と任意後見の2種類がある 実は、成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があるんです。法定後見制度というのは、すでに判断能力が低下してしまい、契約などに支援が必要な人をサポートするもの。一方の任意後見制度は、将来的に判断能力が低下したときに備えて予め後見人を選んでおく制度です。 今、判断能力があるのかどうかの違いなんですね。 その通りです。任意後見制度については、以下のご質問でもお答えしています。ぜひ参考にしてくださいね。 また、法定後見制度のなかでも、判断能力の状態によって「後見」「保佐」「補助」の3つに分けられています。この区分によって、後見人にあたる人の権限が変わるんですね。例えば、「後見」は脳死判定された人、重度の認知症の人などが対象、「補佐」は中度の認知症や知的障害の人、「補助」は軽度の認知症や知的障害の人が対象です。それぞれの違いについて、以下の表でまとめています。 後見 対象となる方判断能力がまったくない方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限財産管理の代理権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限-制度を受ける本人が失う資格、地位医師、税理士、会社役員、公務員 保佐 対象となる方判断能力が著しく不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)についての同意権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限・借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)以外の事項についての同意権、取消権・特定の法律行為についての代理権制度を受ける本人が失う資格、地位医師、税理士、会社役員、公務員 補助 対象となる方判断能力が不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限-申立てにより与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)の一部についての同意権、取消権(※1)・特定の法律行為についての代理権制度を受ける本人が失う資格、地位- ※1、日用品の購入など日常生活に関する行為は除く※2、民法13条1項にあげられる行為 後見人ができること・できないこと さっき、財産の管理を後見人にお願いできると言っていましたが、具体的にはどんなことができるんですか? 後見人にできることは、「療養看護」「財産管理」の2つがあります。あわせて後見人ではできないこともあるので、順番にお話ししていきますね。 後見人ができること 療養看護は、介護施設の入居契約やその他の介護サービスの契約を代理でおこなうことです。こうした契約は、ご本人以外では成年後見人しかできません。ご本人の判断では契約が難しい場合は、後見人を立てる必要があるんです。 そうなんですね、知りませんでした! もうひとつが財産管理ですね。これは、ご本人の財布や通帳を預かってお金の管理をすることに加えて、自宅などの不動産の管理も含まれます。ただ、基本的には今の財産を維持することが前提なので、不動産を売却する場合には家庭裁判所の確認が必要です。 たぶん姉は、自分が今どれくらいの蓄えがあるのかを把握していないと思うので、後見人になった人にきちんと財産を管理してもらいたいですね。 また、遺産分割協議などの相続に関する協議も後見人が対応できます。しかし、ご親族が後見人になった場合は、後見人であるご親族も相続人になる場合がありますよね。そのときは、特別代理人を立てて進める必要があります。 後見人ができないこと ご本人のためとは言え、成年後見人ではできないこともあります。例えば、家の中の掃除や食事は排泄介助などの実際の介助をすることはできません。後見人にできるのは、そうした介護を受けるためのサービスを契約することです。生活の直接的なサポートはできないんです。 なるほど、あくまで”契約”をすることが後見人の仕事なんですね。 加えて「身分行為」と呼ばれることもできません。身分行為とは、婚姻の成立、離婚、養子縁組といった身分を変更すること。こうした行為は、ご本人の意思が何よりも大切なので、後見人が代理することはできないんですね。 成年後見制度の費用は 成年後見制度を利用するには、お金がかかるんでしょうか?例えば、後見人になった人に依頼料を支払ったり…。 はい。ご親族が後見人になった場合は依頼料などはいらないと思いますが、弁護士などの第三者に依頼した場合は費用が発生します。その金額は、後見人が家庭裁判所に申立てをして、裁判所が決定します。具体的な金額については、東京家庭裁判所の立川支部が目安を公開しているので、それが参考になりそうです。以下にまとめてみました。 成年後見人 ・基本報酬:月額2万円 ・管理財産額が1000万円~5000万円以下:月3万~4万円 ・管理財産額が5000万円以上:月5万~6万円 成年後見監督人 ・管理財産額が5000万円以下:月1万~2万円 ・管理財産額が5000万円以上:月2万5000~3万円 付加報酬 ・基本報酬額の50%の範囲内 ※事務をおこなう上で特別困難な事情があった場合に追加支払う この、「成年後見監督人」というのは何ですか? 成年後見人がきちんと仕事をしているのか監督する人です。任意後見では必要ですが、法定後見の場合は家庭裁判所が必要があると認めたときのみ選任します。なので、この費用は必ずかかるというわけではありませんね。ただ、こうした後見人に支払う報酬の他にも、成年後見制度を利用するために費用がかかります。医師の診断などを含めると2万弱〜18万円くらい。かなり幅がありますが、申立のときにお金がかかることを頭に入れておいてください。 成年後見制度を利用する流れ 成年後見制度について、いろいろわかりました。利用するか検討してみたいと思うのですが、どうやって利用したら良いんでしょう?なんだか、いろいろとややこしそうな印象があるのですが…。 おっしゃる通り、ややこしいです。大まかには以下の通りなのですが、必要な書類が多くて手間がかかると感じるかもしれません。 医師の診断書を取得 必要書類の収集 面接日の予約 家庭裁判所へ申立 審理開始 審判 後見の登記 特に注意の必要なところについて、お伝えしておきますね。まず、最初にやることは医師の診断書を手に入れることです。ご本人の介護状況や判断能力によって「後見」「保佐」「補助」のどれかに該当するのかを判断するためですね。判断能力の診断が必要だからといって、精神科や心療内科の診断書である必要はありません。普段、利用しているかかりつけ医で良いので、必ず取得しましょう。 「後見」「保佐」「補助」の、どの区分になるのかは、医師の診断が必要なんですね。 その診断書以外にもいくつも必要な書類がありますから、リストアップしておきますね。 後見開始申立書申立事情説明書親族関係図財産目録収支状況報告書後見人等候補者事情説明書親族の同意書 必要書類をそろえて家庭裁判所との面談日が決まったら、書類一式を家庭裁判所に送付します。この時点で申立がされたとみなされ、裁判所で審理が始まります。申立の時期にもよりますが、申立から結果が出るまでに1~3ヵ月程度かかることもあります。すぐに後見人が決定されるわけではないので、余裕を持って申立をしておくことが大切ですよ。 手間もかかれば時間もかかるんですね…。かなり大変そうですが、それだけお金の管理などを代理でおこなうのは重要なことというわけなんですね。 本当に、おっしゃる通りです!特に、成年後見制度はご本人の権利を守るためのものですからね。申立の準備も大変だと思いますが、落ち着いて一つひとつ対応していきましょうね。 成年後見制度とは判断能力が低下した人の代わりに後見人が財産管理などをする制度 現在の判断能力によって法定後見と任意後見の2つの制度に分けられている 後見人は介護サービスなどの契約や財産管理ができる pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; ...

2022/09/13

在宅介護 老後の備え 介護の基礎知識

「後期高齢者医療制度」について詳しく教えてください。少しでも両親の医療費を減らしたいと考えています

両親が高齢になるにつれて、持病の医療費が多くなって家計を圧迫して困っています。「後期高齢者医療制度を利用すれば医療費が減る」と聞いたのですが、詳しく教えてください。 (大野さん・会社員・49歳) 後期高齢者医療制度とは、75歳以上のすべてのご高齢者が加入する医療保険のことです。窓口での負担額が原則1割になりますよ。また、条件を満たせば医療費の負担が軽減できる高額療養費などの制度もありますので、そちらも合わせて利用してみてください。 後期高齢者医療制度とは 70代の両親と同居しているのですが、歳を取るにつれて持病が悪化して医療費がかさんでいるんです。これから介護が必要になるともっとお金がかかるでしょうし、少しでも節約したいと考えています。テレビで「後期高齢者医療制度」というものを利用すれば、医療費の負担が減ると見たのですが、詳しく教えてもらえませんか? 後期高齢者医療制度というのは、75歳以上のすべてのご高齢者、もしくは65歳〜74歳の寝たきりなど一定の障害がある人が対象となる公的な医療保険のことです。一部の例外はありますが、窓口の負担額が1割になるんです。 へぇ!そうなんですね!それは助かります!加入するには手続きは必要なんでしょうか? いえ、65歳〜74歳の特例の人は自治体の窓口に申請が必要ですが、75歳以上の方は加入手続きはいりませんよ。 後期高齢者医療制度の自己負担割合は 今、うちの両親は2人とも73歳なので、2年後には窓口負担が1割になるってことであっていますか? はい。ほとんどの方が1割負担になります。ただ、所得によっては例外となるケースもあるので要注意です。医療費の負担割合には、もともと「1割負担」「3割負担」の2パターンがありました。ただ、高齢化による医療費の増大の影響でこれまで1割負担でよかった人の一部が、2022年の10月から2割負担に割合が引き上げられたんです。 えぇ!そうなんですね。引き上げられた人ってどんな人なんですか? 正直、ややこしいんですが…。2割負担の対象となるのは、以下の両方に該当するケースです。 住民税課税所得が28万円以上145万円未満の人がいる世帯 「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する世帯 被保険者が1人の場合:200万円以上 被保険者が2人以上の場合:合計320万円以上 ただ、2割負担の対象となっても、変更後3年は窓口負担の増加額が最大でも月額3,000円に収まるような配慮措置があります。つまり、今すぐ負担が大きくなるというわけではないんですね。 そうなんですね!うちはたぶん、2割負担にはならなさそうですが、急に負担割合が増える人は大変ですもんね。 また、3割負担の対象となるのは、現役世代並みの所得がある人です。具体的には、課税所得が145万円以上のこと。そして、単身世帯の場合は年収が383万円、夫婦2人世帯の場合は520万円を超える場合を指します。 なるほど、収入が多い人はそれだけ負担する割合が増えるというわけですね。 後期高齢者医療制度の保険料は 後期高齢者医療制度の保険料は、2年ごとに所得に応じて定められ、住んでいる市区町村に支払うことになります。支払い方は、公的年金からの引き落としで支払う「特別徴収」と、納付書などを利用して支払う「普通徴収」の2種類あります。公的年金などの支給額が年18万円以上の場合、原則として年金から保険料が天引きされるようになっています。 へー、そうなんですね。知らなかったです。 ただ、特別徴収の対象外となるケースもあるんです。以下のような場合だと、対象外となるので注意してくださいね。 公的年金の受給額が年額18万円未満 介護保険料と合わせた保険料が、年金受給額の2分の1を超える 年度の途中で他の市区町村から転入した 年度の途中で後期高齢者医療制度の対象となった 後期高齢者医療制度にも負担軽減策がある 他の医療保険と同じように、後期高齢者医療制度にも次のような負担軽減策があります。 高額療養費の負担軽減措置 高額介護合算療養費の支給 入院時食事療養費・入院時生活療養費の減額 特定疾病の負担軽減 移送費の支給 例えば、高額療養費の負担軽減措置では、1ヵ月に負担する医療費が高額となる場合、所得に応じて決められた自己負担上限額を超えた分の費用が戻ってきます。もし、病気や怪我などで医療費が急に増えた場合などに利用できる制度です。 高齢になると、体調を崩して入院してしまうことってありますもんね…。 また、必要な医療を受けるために、医師の指示によって転院した場合などで移送費がかかると、その費用の全額か一部が移送費として払い戻しされます。このように、医療費の負担を軽減するための制度はいくつかありますから、いざという時に活用できるように今から把握しておくと良いんじゃないでしょうか。 後期高齢者医療制度は、75歳以上の人の医療費負担が1割になる制度 2022年10月から一部の世帯は2割負担に変更 高額療養費の負担軽減措置など保険料の負担を軽減する方法もあ pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: ...

2022/09/12

認知症対策 老後の備え

ひとり暮らしなので、もし、認知症になってしまったら自分の財産などをどう管理しようか悩んでいます。

夫に先立たれてひとり暮らしをしています。子どももいないため、もし自分が認知症になったり介護が必要になったら頼れる人がいないので不安です。何か対策はあるでしょうか? (原田さん・65歳) 任意後見制度を活用してみるのはどうでしょうか?認知症などで判断能力が低下したときに備えて、代わりに財産などの管理をしてくれる人を選んでおく制度です。ご親戚や弁護士、司法書士などの士業に依頼することもできますよ。 任意後見制度はどんな制度? 夫に先立たれてからひとり暮らしなのですが、子どももいないので今後のことが不安なんです。今は良いけれど年も年だし、認知症になったり介護が必要になったりしたらどうしたら良いのやら…。夫が残してくれた自宅や財産の管理も今後は大変になってくるだろうし、何か良い方法はあるでしょうか? それなら、任意後見制度を利用してみるのはどうでしょうか?もし将来、認知症になったときの財産管理などを任せられますよ。 任意後見制度ですか…。聞いたことはあるのですが、難しくてよくわからないんですよね。 任意後見制度というのは、認知症や障がいなどで判断能力がなくなったときに、代わりに事務手続きなどをやってくれる人を決めておく制度です。信頼できる人を任意後見人に選ぶことで、将来の不安も軽減されると思いますよ。 任意後見人に依頼できることは? 任意後見人にはどんなことをしてもらえるんでしょうか? まずは財産の管理です。自宅などの不動産や貯金、年金の管理に加えて公共料金の支払いも任意後見人に依頼できますよ。 財産の管理をしてくれるのなら、ひとまず安心です。 それと、介護などの手続きもお願いできますね。介護サービスを利用するときに必要な要介護認定の申請や、各介護事業所との契約、介護費用の支払い、老人ホームの入居契約なども代わりにやってもらえます。入院の手続きや入院費用の支払いなどの医療サービスに関することも依頼できるので、生活に関する手続きを代行してもらえる、というイメージですね。 成年後見制度との違い そういえば、似たようなものに「成年後見制度」ってありますよね。それとはどうちがうんですか? もしかしたら、成年後見制度の方が耳にする機会が多いかもしれませんね。成年後見制度というのは、「法定後見制度」と「任意後見制度」をまとめて指している言葉です。任意後見制度と法定後見制度の違いは、任意後見制度が判断能力が衰える前にご本人などが後見人を決める制度であることに対して、法定後見制度はすでに判断能力が不十分な人に対して裁判所が専任するものです。 支援を受ける人の判断能力で制度が異なるんですね。 任意後見制度のメリット・デメリット 任意後見制度は、将来の不安に備えられるという点ではとても良いのですが、やはりデメリットもあります。メリットとデメリットの両方を理解して制度を利用するかどうか検討してください。 メリットとデメリット?例えば、どんなことでしょう? メリットとしては、後見人のサポートを受けるご本人の希望を具体的に反映できることです。任意後見制度を利用するときには、契約の内容を決めて任意後見契約を交わします。介護施設や病院の選定、介護サービスの内容、財産管理の詳細などについてもご本人の意向を契約内容に盛り込めるんです。 判断能力が衰える前に契約するからこそできることですね。 まさにそうです。それに加えて、任意後見人もご本人が選べます。大切な財産や将来のことを任せる人は、信頼できる人を自分で選べるのは嬉しいですよね。 確かにそうです。本当に信頼できる人でないと頼みたくないですから。 あとは、将来の介護に備えられるのもメリットですね。老人ホームなどに入居する際、身元引受人などを立てる必要があります。が、身寄りがなかったりご家族に身元引受人を頼めないときの条件として、身元保証会社と契約するか任意後見人を立てることが条件の施設もあるんです。そうしたときに備えて、任意後見人を立てておくのもひとつの手ですね。 私は子どももいないですし、きょうだいは高齢なので身元引受人を頼める親族もいません。もしかしたら、任意後見制度を利用した方が良いのかも…。 ただ、もちろんデメリットもあります。例えば、亡くなった後の手続きについては委任できません。任意後見人の権限はご本人が亡くなった時点で終了してしまいますから、お葬式やお墓、相続といった手続きはできないんです。もし、亡くなった後の手続きについても委任したいときは、「死後事務委任契約」という別の契約を結んでおく必要があります。 そうなんですね…。言われてみれば、お葬式やお墓についても心配。そっちも契約しておいた方が良いかも…。 他にも、任意後見人にはご本人が契約したものに対しての「取消権」がありません。法定後見制度では、ご本人に不利益な契約とわかった場合にあとから契約を解消できます。しかし、任意後見制度ではそれが認められていないんです。なので、判断能力が落ちてしまって不利益な契約を結んでしまっても、任意後見人では対応できないんですね。 それは怖い。最近、高齢者を狙った詐欺のニュースをよく見ますから、よく気をつけておかないと。 任意後見制度の利用方法 もし任意後見制度を利用するとなったら、どのように手続きすれば良いですか? 任意後見制度を利用するための手続きの流れは次の通りです。それぞれ詳しくお話ししていきますね。 任意後見人受任者を決める 内容を決め契約を結ぶ 申し立てをする 任意後見人が選任される 任意後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。ご家族やご親戚がなることが多いですが、仲の良いご友人にお願いしてもOKです。あとは、弁護士や司法書士といった士業にお願いするケースも。別途、依頼料が発生しますが、法律のプロに任せられるという点ではとても安心できますよね。 へー、弁護士さんに任意後見人も依頼できるんだ。 ただ、任意後見人にはなれない人の条件がいくつかあります。未成年者、破産した人、不正な行為をおこなうなどの任意後見人に適さない経歴がある人などです。念のため、注意しておいてくださいね。次に、任意後見人を決めたら内容を決めて契約を結びます。先ほどもお話ししたように、財産や介護の手続きなど、どんなことを委任するのかを定めるんですね。 後見人を誰にするかもそうですが、契約内容ってかなり重要ですね。何をしてほしいのか、はっきりさせておかないと。 契約を結んだら、ご本人の住民票がある地域の家庭裁判所に「任意後見監督人の選任」の申し立てをします。任意後見人との契約を開始するには、家庭裁判所によって「任意後見監督人」を選任してもらわないといけないんです。 任意後見監督人って何ですか? 任意後見監督人とは、後見人の仕事を監視する人のこと。判断能力が落ちた人の不利益になるようなことをしていないか、第三者の視点から確認してくれるんです。任意後見監督人の選任の申立ての後、家庭裁判所がご本人の状態などを考慮して審理をし、任意後見人の選定されたら、契約内容の支援がスタートされます。 これでやっと契約が開始されるんですね…。やっぱりかなり手間がかかるなぁ。 そうですね。法律が大きく関わる制度ですから、どうしても手続きは複雑で面倒なところがあります。ただ、任意後見制度は将来への備えです。今後のライフプランを考え直す良いきっかけにもなりますから、漠然とした不安を抱えている場合も不安を軽減できるかもしれません。自分らしい老後を過ごすために任意後見制度を活用してみるのも良いかもしれませんね。 任意後見制度は認知機能が落ちたときに備えて、代理で財産などの管理をする人を決める制度 任意後見人には、家族や友人、弁護士などがなれる 後見人を自分で選べる、自分の希望を反映できる 判断能力が落ちてからでは利用できない、死後の処理は依頼できない pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; ...

2022/08/25

よく読まれている記事

よく読まれている記事

article-image

介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

article-image

グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

2021/11/15

article-image

【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

介護の基礎知識

total support

介護の悩みを
トータルサポート

total support

介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。

鎌倉新書グループサイト