本当に大変な状況でしたね…。浅井さんが手をあげてしまったのは介護の疲れが溜まっていたせいですので、ご自分を責めないでくださいね。
予防方法としては、まずは浅井さんの介護の負担を減らして疲れを溜まりにくくしましょう。ほかのご家族と分担したり介護サービスを活用することをおすすめします。
なかには、「自分がしっかり介護をしないと」と常に気を張って介護をしていることもあるかもしれません。そうではなく、介護は楽をして良いもの。介護の負担を減らして作った時間を趣味の時間に使ったりと、リフレッシュタイムを確保してもっと「がんばらない介護」をしてみましょう。
数年前から認知症の母の介護をしています。最近になって、母が異常に興奮してわけのわからないことを怒鳴り散らしたり、私を殴ることが増えました。
先日も、母がものすごい勢いで私を怒鳴りつけながら殴ってきたんです。「いつものことだ」とはじめは流していたのですが、その日は止まらなくて…。何度も何度も殴られるうちに「どうして頑張って介護をしているのにこんな目にあわないといけないんだろう」と虚しさと怒りが込み上げてきて、思わず殴り返してしまったんです。
どうして殴り返してしまったのか…認知症のせいだとわかっていたのに。たった1人の家族を殴ってしまって、ずっと後悔しています。それに、もし同じようなことがあったらまた殴ってしまいそうで怖いんです。何か予防する方法はないでしょうか?
それはおつらかったですね。介護を続けていくうちに手をあげてしまう、もしくは手をあげてしまいそうになるケースは少なくありません。介護をしているご家族に手をあげてしまうかも、と悩んでいる人は浅井さんだけではないですから安心してください。
介護をしている親御さんに手をあげてしまうケースの多くは、ストレスや疲れが溜まることがきっかけになっています。なので、まずは自分の介護の負担を減らしましょう。
例えば、以下のような方法がありますよ。
可能であれば、ご兄弟などのほかのご家族と介護を分担しましょう。
浅井さんは、ご兄弟はいらっしゃいますか?
妹がいます。ただ、車で1時間以上かかるところに住んでいることもあって、あまり介護に関わってくれなくて…。
なるほど…。ちなみに、以下のような方法でも介護の協力をしてもらえなさそうでしょうか?
家が遠くて直接の介護を分担できない場合、金銭的な援助だけしてもらうのもアリです。介護には何かとお金がかかりますから、お金の援助をしてもらうだけでも精神的に楽になると思いますよ。
それに、たまに通院の送迎をしてもらったり、週1回だけ手伝いに来てもらうだけでも浅井さんの負担は減るでしょう。
あまり協力的でない人に介護の協力をしてもらうときには、「何をしてもらいたいのか」をはっきりさせてからお願いするとスムーズに協力してもらいやすいですよ。
うーん、妹は忙しくて定期的に直接介護してもらうのは難しそうです。でも、多少の金銭の援助ならしてもらえるかも。通院も月に1回程度なので、代わってもらえるかもしれません。
介護のことで困ったら、専門家にアドバイスをもらいましょう!具体的には以下のような専門家に相談をおすすめします。
地域包括支援センターって何ですか?
高齢者の暮らし全般をサポートしている総合窓口です。もし、まだ介護サービスを利用していないのであれば、まずは地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
もし、既に介護サービスを利用しているのであれば、担当のケアマネジャーさんに相談してくださいね。
介護サービスは利用したことがないですね。ということは、地域包括支援センターに相談するのか…。
また、かかりつけ医も介護の相談に乗ってくれます。特に認知症の場合は治療が必要になりますから、医療の専門家としてのアドバイスをしてくれるでしょう。
介護のことはプロに任せるのがおすすめです!積極的に介護サービスを利用しましょう。
と言われても、介護サービスってよくわからなくて…。利用したこともないですし。
介護をご家族だけでおこなうのはとても難しいです。特に認知症介護の場合は負担が大きすぎて、ご家族が倒れてしまうこともありえるんですよ。
確かに、毎日毎日、母に振り回されて疲れました。いつも眠くて仕事に支障が出ています。
そんな大変な状況だったんですね…!でしたら、介護サービスをぜひ利用してください。
介護サービスは、ご自宅で介護するときに利用する在宅介護サービスと介護施設に入居するサービスに分かれます。主なサービスには以下のようなものがあります。
自宅にヘルパーさんが来て介護してくれるのが訪問介護、介護施設に通って介護してくれるのがデイサービス、介護施設にお泊りするのがショートステイ。それら3つのサービスをまとめて1つの施設で提供してくれるのが小規模多機能型居宅介護です。
お母様の性格や状況によって、介護サービスを使い分けましょう。
認知症の方であれば、グループホームか介護付き有料老人ホーム、もしくは特別養護老人ホームがおすすめです。
これらの施設は、認知症ケアのノウハウや実績があるところが大半なので、お母様が穏やかに生活できると思いますよ。
テレビなどで「子どもが高齢の親を殴った」というニュースを見ることもあると思います。こうした虐待の多くは介護疲れが原因によるもの。「疲れて思わず殴ってしまった」というきっかけが多いんです。
あまりに介護疲れやストレスが溜まると、ご高齢の親御さんを殴ることが日常化してしまうケースも珍しくありません。
そうか、私は母を虐待してしまったということなんですね。「思わず殴り返しただけ」と思っていましたが…。
北野室長が言う通り、母に夜中に起こされたり理不尽に怒鳴られたりして、疲れやストレスが溜まっているんだと思います。母の認知症がひどくなってからなおさらです。だから、殴り返してしまったんだと思います。
ニュースで見る事件も、介護疲れが溜まって追い詰められることで、殴るなどの虐待をしてしまってたんですね。
おっしゃる通りだと思います。特に虐待のなかでも身体的虐待が多いんです。身体的虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力のほかにも、外出しないように行動を制限することも含まれます。
認知症になると、外出して道がわからなくなってさまよう「徘徊」などの症状が出ることがありますが、それを予防するために部屋に閉じ込めたりすることも実は虐待にあたるんです。
えぇっ!?そうなんですね!
母は1人では外に出ていかないので、部屋に閉じ込めたりはしていませんが…。徘徊するのであれば、部屋に鍵をかけて対策しようと思いますよね。
ここまで、介護の負担を軽くするための方法や介護する親御さんに手をあげてしまう原因についてお話ししてきました。最後に、介護をするうえでの心の持ち方についてお伝えしますね。
それは「介護は楽をしても良い」ということです。
楽をしても良い?介護は大変なものですよね?
もちろん、介護をするのは体力的にも精神的にもきついことがあると思います。でも、介護をするご家族の心の持ち方で、介護を楽なものにできるんです。
つまり、気の持ちようで介護が楽になるということですか?よくわからないのですが…。
具体的にお話ししますね。楽な介護をするコツは、例えば次のような気持ちで介護をすることです。
楽な介護をするには「がんばらない」ことです。つまり、適度に手を抜くこと。多くの介護をする人は、「私がやらないと」と介護を抱え込みがちになります。
介護には直接的に介護するだけではなく、もろもろの手続きや通院、買い出しなどやらないといけないことがたくさんありますよね。それのすべてを「私がやらないと」と抱え込むとパンクしてしまいます。
なので、介護サービスやほかのご家族に任せられることは積極的に任せましょう。そして、誰かに任せてできた時間を、お友達と出かけたり旅行に行ったり、趣味の時間に使いましょう!
母の介護を他人に任せているのに、自分は遊ぶんですか!?
介護をしているご家族も人間ですから、息抜きの時間は必要です。なので、積極的に自分のために時間を使ってください。
それでも誰かに介護を任せて自分が休むことに抵抗がある場合は、「介護を続けていくために自分のメンテナンスをする」と考えるのはどうでしょうか。介護は長期戦になることが多いですから、定期的にリフレッシュしてくださいね。
楽な介護をするために、ほかの人と比べないことが大切です。介護をしていると、ほかの介護をしているご家庭の話を耳にすることもあるでしょう。その話が効率的な介護の参考になれば良いのですが、ときには「〇〇さんは上手く介護をしているのに、どうして私はできないんだろう」「〇〇さんのお母さんの認知症は穏やかなのに、うちの母親は…」といった比較をしてしまうこともあるかもしれません。
ですが、介護の方法や認知症の症状は千差万別。ご家庭の事情やその人の状況によってまったく異なり、ひとつとして同じ介護はありません。なので、得になりそうな情報は参考にしつつ、「うちはうち、よそはよそ」と割り切る気持ちも大切なんです。
楽な介護のために、積極的に愚痴を言いましょう!
愚痴ってあまり良くないイメージがあるんですが…。愚痴を聞く相手も嫌でしょうし…。
確かに、愚痴を言う相手は選ぶ必要はあります。が、介護のイライラやモヤモヤを溜めておくのは精神的に良くないですよね。お友達やほかのご家族に言えそうであれば、愚痴を聞いてもらうのもストレス発散におすすめです。
もし、愚痴を誰かに言いにくいのであれば、紙に書くのも良いでしょう。誰かに見せるものではないので、言葉を選ばずに自由に書けますから。愚痴を書いた紙を取っておいて、記録代わりにするのも良いかもしれません。
なるほど、紙に書くのは良いですね!
毎日毎日、介護で忙しい日々が続いて「ずっとこんな生活が続くのかな」と暗い気持ちになることもあるかもしれません。
でも、現在のしんどい状況には終わりが必ず来ます。もし、認知症による徘徊で夜も眠れない日々が続いていても、歩行が困難になればその症状はなくなります。認知症による暴力に悩んでいても、体力的に衰えると殴ることもなくなるでしょう。
お母様の体がさらに衰えると悩まされていた認知症の症状がなくなり、もっと介護に余裕ができる可能性も。薄情な言い方かもしれませんが、「こんなつらい状況がずっと続くんだ」と鬱々とした気持ちで過ごすよりも、多少は気持ちが楽になって精神的に余裕が出てくると思いますよ。
確かに、母がいつまでも体が元気でいられるわけではないですもんね…。
北野室長の話を聞いて、気持ちが少し楽になったような気がします。もっと気楽な気持ちで母の介護をしようと思います。
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