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株式会社東京商工リサーチによる調査で、2024年1~4月の間に起こった老人福祉・介護事業の倒産が51件あったことがわかりました。老人福祉・介護事業の倒産件数の調査は毎年おこなわれており、2024年の老人福祉・介護事業の倒産件数は過去最多となったそうです。 倒産件数の過去最多を大幅に更新 株式会社東京商工リサーチはこれまで毎年、老人福祉・介護事業の倒産件数の調査をおこなってきました。これまでの1~4月の間に起こった老人福祉・介護事業の倒産件数で最も多かったのは2020年の43件でしたが、2024年の老人福祉・介護事業の倒産件数は51件と過去最多の件数となりました。 2024年1~4月の間に倒産した老人福祉・介護事業51件のうち、訪問介護が22件で最も多く、その次に多いのが通所・短期入所介護で19件、有料老人ホームは5件、その他は5件と続いているそうです。 倒産するのにはさまざまな原因がある 株式会社東京商工リサーチは老人福祉・介護事業の倒産件数が増えたことについて、以下の原因があるとしています。 介護職員の人員不足 感染症の影響による利用控え増加 感染防止対策などのコスト増加 介護事業への支援の縮小 物価の高騰 また、2024年1月22日におこなわれた「介護報酬改定」にて、訪問介護の基本料の引き下げが決定しており、今後も訪問介護事業者をはじめとした老人福祉・介護事業の倒産は増えると考えられます。 介護報酬改定については、再調査や再検討を希望する声をあげている団体が多くあります。介護サービスを利用している人や家族にとっても、「利用している介護事業者が突然無くなってしまうのでは…」と不安を抱えながら利用することは望ましくありません。介護を受ける人はもちろん、介護を提供する事業者も安心して利用できる体制になって欲しいですね。
2024/05/21
2024年5月13日におこなわれた警察庁の発表により、2024年1~3月の間で孤独死・孤立死をしてしまった人の数が全国で約2万1716人いることがわかりました。そのうちの約8割が65歳以上の高齢者で約1万7034人もいたそうです。 警察庁が孤独死・孤立死のデータを公表 2024年5月13日におこなわれた衆院決算行政監視委員会にて、2024年1~3月の間の孤独死・孤立死のデータが警察庁より発表されました。 警視庁は2024年1~3月の間に警察が取り扱った、孤独死・孤立死の状態である「一人暮らしをしていて自宅で亡くなってしまった人」の数を集計。その結果、一人暮らしで自宅で亡くなった人の数は全国で約2万1716人おり、そのうちの約1万7034人が高齢者であることがわかったのです。 警察庁の発表を踏まえて、政府は、孤独死・孤立死の実態を把握し、今後の対策に向けて今回のデータを生かしていく考えだそうです。 高齢者の孤独死を招く原因とは 毎年おこなわれている内閣府の高齢者の実態調査では、2021年に東京都23区内で孤独死をした65歳以上の高齢者は4010人という結果が出ています。前年の2020年の4219人よりは減っていますが、2011~2020年の間では高齢者の孤独死の数は増え続けており、10年前の2011年の2618人と比べると1.5倍にも増えています。 孤独死を招く原因は以下が考えられます。 未婚、離別、死別などが原因で一人暮らしをしている 家族や親族、友人、地域の人たちとの関係性が希薄 経済的に窮困しており生活に支障が出ている 昨今では核家族が増え、高齢者の一人暮らしや、高齢者夫婦のみで暮らしている人が増えています。現在は夫婦二人で暮らしていても、配偶者と離別・死別をしてしまい、将来的に1人になってしまうこともあります。 特に、家事全般を配偶者に任せていた人は、配偶者が亡くなった際に、1人では食事や掃除が満足にできず食生活が乱れたり生活環境が悪化したりする恐れもあるので注意しましょう。 孤独死・孤立死を防ぐには、高齢者本人と周囲の人との関係性をつなげておくことが大切です。家族が頻繁に連絡を取ったり、見守りサービスを利用するなど、孤立させない生活環境を作るのが良いですね。 参考:「令和5年版高齢社会白書」(内閣府)
2024/05/16
厚生労働省(以下、厚労省)がおこなった調査にて、介護スタッフが高齢者の自宅ヘ訪れて食事などのサービスをおこなう「訪問介護事業所」のうち、全体の36.7%が赤字経営だったことがわかりました。 この結果は、先日おこなわれた「介護報酬改定」の決定事項について再調査の要求を受け、新たに訪問介護事業所の利益率の分布状況を集計したところ判明しました。 実際の現場では約4割の訪問介護事業者が赤字経営!? 2024年1月22日におこなわれた「介護報酬改定」にて、厚労省は「訪問介護は、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保している」として、報酬改定で訪問介護の基本料の引き下げをすることを決めました。この結果は、2023年11月に厚労省がおこなった介護事業所の経営実態についての調査を踏まえたうえでの決定です。 厚労省がおこなった介護事業所の経営実態についての調査では、訪問介護事業所全体の平均利益率は7.8%と、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保していると判断されました。 しかし、再調査の要求を受けて、あらためて訪問介護事業所の利益率の分布状況を集計したところ、赤字を意味する「利益率0%未満」の事業所は、全体の36.7%あることがわかったのです。 小さな訪問介護事業所は事業を続けられない可能性も 2023年11月の調査と、あらためておこなった調査を踏まえると「訪問介護事業所の全体で見ると黒字だが、赤字の訪問介護事業所は約4割もある」という結果となりました。全国保険医団体連合会では、「大きな訪問介護事業所では利益率が高く、小さな訪問介護事業者は調査に応じる余裕がなく無回答だったために出た結果の可能性がある」と考えています。 訪問介護の基本報酬が引き下げられると、事業の維持・管理に費やす費用が減るので小規模の訪問介護事業者は事業を続けられない可能性も。また、「報酬が少ないので介護スタッフを雇えない」「給料が少ないので転職したい」などの理由で介護スタッフが減少する可能性もあります。 訪問介護の基本報酬を引き下げるというニュースは、以前より訪問介護を利用していた人や、その家族にとっても不安なニュース。現在は、「実際の現場を見て判断してほしい」と声を上げている団体が多くあります。介護を受ける人はもちろん、介護を提供する事業者も安心して利用できる体制になって欲しいですね。 参考:全国保険医団体連合会
2024/03/12
2024年1月17日、東京商工リサーチが2023年の1年間で起きた介護施設の休廃業や解散、倒産をまとめたレポートを発表。その結果、同社が調査を始めた2010年以降で最多となる、510件もの介護事業所が休廃業や解散に追い込まれたことが明らかになりました。 この結果について、東京商工リサーチは「人手不足などで経営が悪化したため、倒産する前に事業の継続を断念した事業者が多いのではないか」と分析しています。 介護事業所の休廃業が過去最悪に 1月17日に東京商工リサーチが発表したレポートによると、昨年1年間で510件の介護事業所が休廃業や解散に追い込まれたことが判明。これは前年より15件多く、東京商工リサーチが調査を始めた2010年以降で最多となる数字です。 この理由について、東京商工リサーチは「人手不足による経営悪化」や「経営者の高齢化」が介護事業からの早めの撤退を決断させたのではないかと分析しています。 倒産件数も過去2番目に高い水準に また東京商工リサーチは、介護事業所の倒産件数についても調査を実施。その結果、2023年における介護事業所の倒産件数は122件であることが判明。これは、新型コロナの対応に追われた2022年の143件に次いで過去2番目に高い水準となっています。 サービス別に倒産した介護事業所をみてみると、特に人手不足が深刻とされる訪問介護事業所の倒産が最多に。その数は2023年の倒産件数全体の半数以上を占める67件にも上ります。深刻な人手不足に加え、ヘルパーの高齢化や物価高騰なども影響しているとみられています。 さらに、規模別に分類して調査結果を分析したところ、職員数10人以下の小規模な事業所の倒産が全体の8割以上を占めていることが明らかになりました。小規模の事業所では資金に余裕がないところも多く、新しい人材の確保や先端テクノロジーの導入などが難しいことも一因ではないかとみられています。 東京商工リサーチは「2024年は一段と小・零細事業者の倒産や休廃業、解散が増えるのではないか」と分析しています。 このように厳しい経営状況が浮き彫りになる中、1月22日、厚生労働省は訪問介護事業所の介護報酬引き下げを発表しました。訪問介護の事業所が厳しい経営状況に耐えられず事業を撤退させれば、高齢者の在宅介護が一層難しくなる地域も出てくる可能性があります。政府には実態を伴った改革をしてほしいですね。
2024/01/23
群馬県が、昨年度の高齢者虐待に関するデータを発表。それによると、県内の特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設で高齢者が虐待を受けたケースが12件に上り、過去最悪の水準であることが明らかになりました。 群馬県で起きた虐待件数が過去最悪に 群馬県の発表によると、昨年度に県内の介護施設で起きた高齢者虐待件数が12件に上ることが判明。これは、統計を開始した2006年度以降で最悪の数字です。 具体的な虐待内容は複数回答で、殴る・蹴る、身体拘束などの「身体的虐待」が8件、利用者に暴言を吐くなどの心理的虐待が4件、世話や介護を意図的に放棄する「ネグレクト」が2件、性的な行為や脱衣などを強要する「性的虐待」も2件でした。 県は高齢者を虐待から守るために、虐待の対応にあたる市町村からの相談に弁護士が応じる窓口を設置したり、介護施設や市町村の職員を対象にした研修会を開催したりして、対策を強化していると言います。 県の担当者は介護職員による虐待の背景に「ストレス」があると指摘した上で、「どんな理由があっても虐待は許されない。早期に発見した上で、対応にあたるための周知活動に努めたい」と話しています。 ストレスをコントロールする方法 介護職員や家族といった介護者による高齢者虐待が後を絶ちません。ではどうすれば介護者による高齢者の虐待を防げるのでしょうか? 介護者による虐待の大きな原因のひとつに、介護者のストレスが挙げられます。ケアの場面でストレスを感じたとき、それに対して上手く対処できないと不適切なケアにつながりやすくなると考えられます。 特に介護者がストレスを感じやすいと考えられる場面は、認知症を患っている高齢者への対応。認知症のあるこうれいしゃはケアに強い抵抗を示すことも少なくないため、適切な対応が求められます。 認知症介護研究・研修センターは、介護者のストレスを緩和するために以下のような対策が有効だと言います。 高齢者が拒否を示す理由を推察し、その気持ちへの対応を考える ストレスを感じているということをスタッフやほかの家族と共有する ケアを一人で抱え込まない 特に大事なのは、ケアを一人でおこなわないこと。もし現在一人で高齢者の介護を抱え込んでいる人がいたら、各自治体の地域包括支援センターに相談してみましょう。共倒れにならないためにも、さまざまな人と協力しながらケアを進めていくことが大切です。 参考:「介護現場のための高齢者虐待防止教育システム」(認知症介護情報ネットワーク)
2024/01/19
2024年1月7日、東京都は2024年度から都内で働く介護職員に対し、1人当たり最大月2万円の居住支援手当を支給することを明らかにしました。 団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年が近づく中、少しでも介護人材を確保しようというねらいがあるそうです。 1人1~2万円の居住支援手当を支給 1月7日、東京都は2024年度から都内で働くおよそ16万8000人の介護職員に対して、居住手当を支給することを明らかにしました。対象となるのは、居住支援手当を新たに設けた介護事業所に務める職員とケアマネジャーで、1人当たり月1万円を支給するとしています。 また、給料が伸びにくい若手を支援し、介護業界への転職を促すため、勤続5年以内の職員にはさらに月1万円を加算するそうです。 さらに、障害福祉サービス事業所で働く職員に対しても同様の手当を支給すると言います。 2025年問題とは 今回、東京都が介護事業所で働く職員に対して手当を支給する背景には、「2025年問題」があると考えられます。 そもそも、この「2025年問題」とはどのような問題なのでしょうか? 2025年は、ベビーブームだった1947~1949年の期間に生まれた、いわゆる「団塊世代」が全員75歳以上の後期高齢者となる年。人口比率が高い世代の人たちが全員後期高齢者となることで起こる、さまざまな問題を総称したものが「2025年問題」なのです。 中でも深刻な課題だと言われているのが「労働力不足」。これは介護業界でも同様で、東京都の調査では、2025年度には都内の介護人材が3万人以上不足するとみられています。 今後も高齢者が適切な福祉にアクセスできる体制を維持していくためには、労働力を少しでも介護・福祉に集める施策を打つことが重要です。そこで、都は職員に手当を支給することを決めたのだと考えられます。 今回の施策がうまくいって、少しでも多くの若手人材が介護業界を志してくれるといいですね。
2024/01/09
高齢者をねらった特殊詐欺の被害が増えているとして、警察が警戒を呼びかけています。警察庁の発表によると、2022年における特殊詐欺の認知件数は1万7520件で、前年よりも3000件以上増加したことが判明しました。 今年は特に、兵庫県で特殊詐欺の被害が増加しています。兵庫県警によると、2023年10月に認知した特殊詐欺事件の件数が、過去10年間の月別の被害件数で最多となる130件以上に上ったことが明らかになったのです。 以上のような現況を踏まえ、兵庫県では自動録音機能などがついた防犯機能付き電話機を購入した高齢者に対し、最大1万円を補助することを明らかにしました。 防犯機能付き電話で詐欺を撃退! 2023年11月29日、県内で特殊詐欺の被害件数が過去最悪のペースで増加していることを受けた兵庫県は、65歳以上の県内の在住者を対象に、詐欺被害を防ぐ助成策を打ち出すことを発表。自動録音機能などの防犯機能付き電話機を購入した高齢者に、最大1万円を補助すると明言しました。 防犯機能付きの電話機には、電話をかけてきた相手に対して「音声を録音する」と警告メッセージを流す機能があり、それで多くの被害を防げると言います。 実際に、65歳以上の一人暮らしの高齢者に警告メッセージ機能付きの音声録音機を貸し出した山梨県のケースでは、「迷惑電話が一切なくなり安心感があった」など、高齢者から好評を得ています。 被害件数はここ10年で最多に? 兵庫県警の発表によると、2023年10月に認知した特殊詐欺の被害件数が130件以上に上ることが判明しました。これは月別では過去10年で最悪の数字です。 10月に特に被害が多かった手口は、架空の未払い料金などを口実に金銭をだまし取る「架空請求詐欺」で約50件発生。「ウイルスに感染した」といううその警告をパソコンの画面に表示させ、解決代の名目で料金を払わせる手口が多発していると言います。 また、兵庫県内で起きた1~9月の特殊詐欺の被害件数は889件でした。10月分を合わせると1000件以上、被害総額は16億円以上になるとみられています。 今年の兵庫県における詐欺被害の増加ペースは、過去10年で最多と言われた去年の1074件を上回る勢い。担当者は「去年よりもさらに1.2倍増える恐れがある」と警鐘を鳴らしています。 「介護施設の入居権を譲って」は詐欺? 今年、兵庫県で起こった詐欺事件の中には、介護施設の入居手続きを名目に2000万円近くをだましとられるという事件もありました。 警察の調べによると、今年の7月27日~9月4日の間、神戸市在住の81歳女性の自宅に住宅会社の社員などを名乗る人物から、「建設中の介護施設の入居優先権が当たった。入居しないか」という電話があったと言います。 女性が介護施設への入居を断ると、「ならば入居する権利を別の人に譲ってほしい」という申し出があったそうです。 女性がそれを承諾すると、今度は弁護士などを名乗る人物から「入居する権利をほかの人に譲ったことが問題になっている」「解決するためには現金が必要だ」などと脅されたと言います。 犯人の話を信じた女性は計4回にわたって、宅急便で指定された場所に現金を郵送。11月になって連絡が途絶えたことで被害に気づいたそうです。 被害者の9割近くが高齢者 高齢者をねらった詐欺被害が増えているのは兵庫県だけではありません。 警察庁の発表によると、2022年における特殊詐欺の認知件数は1万7520件(前年比3022件増)で被害総額は361.4億円(前年比79.4億円増)でした。どちらも前年より大幅に上回っていることが明らかになったのです。 また、2022年に起こった1万7520件の特殊詐欺のうち、約86%が65歳以上の高齢者が被害に遭った詐欺事件であることも判明。特に、高齢女性が被害に遭ったものが1万件以上を占めていることもわかりました。 「オレオレ詐欺」より多いのは… 参考:「COLUMN 特殊詐欺による高齢者の被害について」(消費者庁) 具体的には、どのような手口の詐欺に遭ったのでしょうか? 2022年に最も被害件数が多かった手口は、税金などの還付に必要な手続きと偽って、別の口座に送金させる「還付金詐欺」で、全体の26.7%を占めていることがわかりました。 そのほかには、家族などを名乗って金銭をだまし取る「オレオレ詐欺」が24.4%、「キャッシュカードが不正に利用されている」などとうそを言ってキャッシュカードを別のものとすり替える「キャッシュカード詐欺盗」が17.4%、「架空請求詐欺」が16.5%、「口座が犯罪に利用されている」などの名目でキャッシュカードをだまし取る「預貯金詐欺」が13.5%でした。 有効な対策は「不審な電話に出ないこと」 では、特殊詐欺から身を守るためには、どのような対策をすればすれば良いのでしょうか? 兵庫県警は、「不審な電話から出ないように対策すること」が非常に有効だと言います。県警が挙げた具体的な対策は以下のとおりです。 電話番号通知サービスを利用し、非通知の電話には応答しない 常時留守番電話に設定し、メッセージを確認するまで応答しない 防犯機能付き電話機を使用する 防犯機能付き電話機には、自動で通話の音声を録音する機能はもちろん、警察が情報提供している電話番号からの着信を自動で拒否する機能やボタンを押すだけでお断りメッセージを流す機能など、機種ごとにさまざまな機能が搭載されています。 詐欺対策に万全を期すためにも、不安な方は防犯機能付き電話機の購入を検討してみても良いかもしれませんね。 参考:「特殊詐欺被害にあわないために」(兵庫県警)
2023/12/08
2023年11月27日、厚生労働省の諮問委員会である社会保障審議会・介護給付費分科会の会合が開かれました。 そこで議題に挙がったのが、デイサービスなどの通所系サービスの送迎について。より効率的に業務を進められるよう、ほかの事業所の利用者も送迎車に乗せられることを明示する案が示されたのです。 共同送迎が可能なことを明示 2019年におこなわれたデイサービス等における人材活用に関する調査によると、「採用に苦労している職種」として「送迎車の運転専任職」を挙げた事業所が20.2%に上ったことが判明。このように運転手の確保が難しくなっている現状を打開すべく、厚生労働省は社会保障審議会にて、複数の事業所が共同で送迎をおこなうことを明示する案を示しました。 現在も複数の事業所による共同送迎は禁止されていませんが、「制度が曖昧で取り組みにくい」「自治体によって共同送迎の解釈や対応が違う」という現場の意見があったことから、国が改めてルールを規定することにしたのです。 共同送迎をおこなう具体的なケース 「共同送迎」は具体的にどのような場合におこなわれるのでしょうか?厚生労働省が社会保障審議会で提示した想定ケースは以下のとおりです。 他事業所の職員が自事業所と雇用契約を結び、自事業所の職員として送迎する場合 委託契約をおこない、送迎を外部に委託している場合 審議会に参加した長崎県の担当者は「共同送迎をおこなう場合、責任の所在を明確化する方法がわからないこともある。責任分担のモデル事例などを示してほしい」と要請しました。 また、民間介護事業推進員会の委員は「利便性を持った使いやすいルールにしてほしい」と話しました。 現場が混乱しないように改めて国でルールを規定することになった「共同送迎」。現場の職員が円滑に業務をおこなえるような制度をつくっていってほしいですね。
2023/12/08
2023年11月10日、厚生労働省は介護施設の経営状況を調べた調査結果を公開。それによると、訪問系・通所系・施設系を合わせたすべてのサービス形態における利益率(収支差率)の平均が2.4%であることが判明。この数字は、介護保険制度が始まった2000年以降で最悪の水準です。 サービスの利益が上がらなければ、給与を上げることも当然難しくなります。給与が上がらなければ人材も定着せず業務が回らなくなり、介護サービスの運営自体が続けられなくなるかもしれません。 こうした状況を変えるためには、来年度に控える介護報酬改定で大幅な改善策を打ち出すことが重要です。 本記事では、介護報酬改定が目前に迫る中、介護施設が現在立たされている状況について考えていきます。 介護サービスの利益率が過去最低に!? 11月10日、厚生労働省は介護施設の経営状況を調べた調査結果を公表。2021年度における、全サービス平均の利益率は前年度より0.4ポイント低い2.4%であることが明らかになりました。これは、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年度と並んで、過去最悪の水準であると言えます。 2021年度2022年度増減全サービス平均2.8%2.4%-0.4%特別養護老人ホーム1.2%-1.0%-2.6%介護老人保健施設1.5%-1.1%-2.6%訪問介護5.8%7.8%2.0%デイサービス0.7%1.5%0.8%ショートステイ3.2%2.6%-0.6% 特に経営状況が大きく悪化していたのが、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの施設系サービス。特養の利益率は前年度より2.2ポイント低いマイナス1%、老健の収支差率は前年度より2.6ポイント低い1.1%でした。 施設系サービスは24時間365日運営しているため、光熱費などの物価高騰の影響を特に大きく受けたと考えられます。 利益率が低いから人材不足に? 経済産業省がおこなった「企業活動基本調査」によると、製造業や小売業などの主要産業における2021年度の利益率は4.3%であることが判明。介護業界平均の同年度の利益率はわずか2.4%であることを踏まえると、いかに介護領域の利益率が低いかがわかります。 利益率を上げようとしても、その源泉となる介護報酬は国が定める基準によって算定されるため、簡単に上げられないのが実情。利益が少なければ、当然職員の給与も上がりにくくなります。 2021年度におこなわれた介護労働安定センターの調査によると、介護職全体の平均給与は約370万円であることが判明。国税庁が発表した、2021年における全職種の平均給与が458万円であることを考えると、かなり低い水準であると言わざるを得ません。 また、介護労働安定センターの調査では、全国8500ヵ所以上の介護施設のうち、およそ25%の施設が「人数・質ともに職員を確保できていない」と回答したこともわかりました。 賃金をはじめとした労働条件に改善の見込みがなければ、今以上に人手不足に陥る可能性も十分にあります。こうした状況を変えるためにも、来年度の介護報酬改定で抜本的な改善策を打ち出していく必要があるのです。 介護を”受けたくても受けられない”日本に? 昨今の物価高騰がこのまま続けば、さらに多くの介護事業所が資金難に陥るでしょう。事業所の資金が枯渇すれば、人材に還元することもできず、さらなる人材不足に見舞われる可能性もあります。 資金も足りない、人員も足りないという状況が続けば、やがて介護事業が大幅に縮小したり介護事業所そのものが倒産したりする可能性も。東京商工リサーチの2022年の調査では、介護施設の倒産件数が過去最多の143件に上ったことがわかっています。 事業所の倒産によって介護施設が閉鎖すれば、施設で介護サービスを利用していた人にも多大な影響をもたらすでしょう。新たに介護サービスを受けられる施設を探そうとしても、遠隔地などの場合、介護施設そのものが近くにない可能性も考えられるのです。 日本全国どこに住んでいても、高齢者が適切な介護サービスを受けられる社会をつくるためには、介護事業所が利益を上げられる仕組み作りを早急にしていく必要がありそうです。
2023/11/24
2019年に東京・池袋で起こった、高齢ドライバーによる暴走事故に決着がつきました。当時30代の女性とその長女の命を奪った92歳の受刑者に対し、東京地裁の裁判長は1億4000万円の損害賠償を支払うように命じたのです。 警察庁の調べによると、池袋の暴走事故のような高齢ドライバーによる交通事故の発生件数自体は減ってきてはいるものの、依然として死亡事故のリスクは高齢者以外のドライバーによる事故に比べて大幅に高いと言います。 高齢者を悲惨な事故の加害者にさせないために、私たちに何ができるのでしょうか? 今回は、高齢ドライバーを取り巻く課題について触れつつ、事故を減らす一助になる「免許返納」の勧め方について考えていきます。 池袋の高齢者暴走事故、1.4億円の支払い命令 2019年4月の東京・池袋にて、当時87歳だった男が、30代女性とその長女を時速約96kmの乗用車ではねるという事故が発生。はねられた女性とその長女は、その後死亡が確認されました。 この事件で妻子を亡くした30代の男性は損害賠償を求め、男を提訴。2023年10月27日、東京地裁はドライバーの男に対して、1億4000万円の損害賠償を支払うように命じました。 判決では、「今回の事故は被告の一方的で重大な過失によるものだ」と認定。また、「被告は被害者に謝罪もせず、今回の判決が出るまで不合理な弁解を続けた。遺族の心情を逆なでする行為だ」と述べられました。 遺族の男性は、「2人の命を無駄にしないという信条の下、交通事故を防ぐための活動を続けていく」と話しています。 高齢ドライバーによる事故は減っているが… 参考:「令和4年における交通事故の発生状況について」(警察庁) 警察庁の発表によると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は年々、減少傾向にあることが判明。2012年における75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は、10万人当たり11.5件だったのが、2021年では10万人当たり5.7件にまで減少しました。 一方、2021年における75歳未満のドライバーによる死亡事故件数は、10万人当たり2.5件。75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数が75歳未満のものより倍以上も高いことを踏まえると、高齢ドライバーによる死亡事故のリスクは依然として高い水準にあると言えるでしょう。 高齢ドライバーの事故原因 高齢ドライバーによる事故はどのような原因で引き起こされるのでしょうか? 参考:「令和4年における交通事故の発生状況について」(警察庁) 警察庁が、2021年における75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の人的要因を調べたところ、ハンドル操作を誤ったりブレーキとアクセルを踏み間違えたりなどの「操作不適」が30.1%で最多であることがわかりました。 高齢になると、瞬発的に筋肉を動かす能力が特に衰えやすくなると言われています。筋肉を瞬発的に動かしにくくなった結果、ブレーキとアクセルを状況に応じて瞬時に切り替えるなどの瞬発力が求められる車の操作に失敗し、大きな事故につながったと考えられます。 次に多かったのは、ぼんやりしたまま運転を続けるなどの「内在的前方不注意」で、その割合は20.3%に上ったことが判明しました。また、左右の安全確認を怠るなどの「安全不確認」も19.5%みられました。 年齢を重ねるにつれて、視野が狭くなったり視力そのものが低下したりして、前方に障害物があっても気づけなくなるリスクが高まります。加えて集中力も続かなくなるため、75歳以上の後期高齢者が車を運転すること自体が、リスクの高い行為だと言えるでしょう。 どうして高齢ドライバーは運転免許を返納しないのか 国や警察は、運転が不安になってきた高齢者に対して、運転免許証の自主返納を勧めています。免許証を返納すると、「運転経歴証明書」が発行され、公的な身分証として利用可能。ほかにもタクシーやバスなどの交通機関で割引になるなどの特典もあります。 しかし、高齢になっても運転免許証を返納しない人も少なくないのが実情。その理由として真っ先に考えられるのは、やはり車なしでは生活が難しいという点でしょう。 特に地方では、バスの廃線・便数の減少などで車がなければ買い物に行くことすら困難な地域も少なくありません。また、電車も本数が少ないうえに、そもそも自宅から駅までが遠いということも考えられます。 また、株式会社エイチームライフデザインがおこなったアンケート調査によると、「自分はまだ運転できているから」「運転の趣味がなくなるから」「仕事で車が必要だから」などの理由で、運転免許証を返納しないと考えている高齢者が一定数存在することも明らかになっています。 高齢の親に運転免許返納を勧める方法 では、どのような方法なら、高齢者も運転免許証の返納を受け入れやすくなるのでしょうか? 参考:「運転免許証の自主返納制度等に関する世論調査」(内閣府) 内閣府がおこなったアンケート調査の中で「どのようなときに運転免許証を返納しようと思うか」と複数回答で尋ねたところ、64.8%と過半数の人が「自分の身体能力の低下を感じたとき」と回答したことが判明しました。 また、37.4%の人が「家族や友人、医者などから運転をやめるように勧められたとき」と回答していたこともわかりました。 以上のことから、体力テストなど客観的な身体能力の指標をもとに、免許証を返納するように説得を試みるのが有効な手段であると言えそうです。 親に免許返納を勧めるときのポイント 最後に、高齢者に免許返納を勧める際に留意しておきたいポイントについてお伝えします。 高齢の親などに免許証返納するように伝えるときに、気を付けておきたいポイントは以下のとおりです。 頭ごなしに否定しない 免許返納後の代わりの移動手段を提案する 車のコストを計算して伝える 免許返納の経験者から話してもらう かかりつけ医や親族に説得をお願いする 相談窓口に相談する 「危ないから運転をしないで」のように頭ごなしに否定してしまうと、ますます頑なにさせるリスクがあります。なるべく、運転免許証を返納するメリットを伝えるようにすると良いでしょう。 家族が送り迎えをしたり割引サービスを受けながら公共交通機関を利用したりするなど、自分で車を運転する以外の移動手段を提案するのも良い方法のひとつ。自家用車を利用する場合と公共交通機関を利用する場合で、かかるコストを比べてみるのも良いかもしれません。 また、免許返納を経験した知り合いやかかりつけ医、親族など自分以外に親のことをよく知っている人から説得してもらうのも有効。それでも免許証の返納を渋る場合は、各都道府県に設置されている公的な安全運転相談窓口に相談してみるのもひとつの手かもしれませんね。 参考:「運転が不安になってきたシニアドライバーやそのご家族へ 運転免許証の「自主返納」について考えてみませんか?」(政府広報オンライン) 参考:「「運転免許の自主返納」に関する当事者とその家族の意識調査を公開!~家族の想いと高齢者の本心が明らかに~」(株式会社エイチームHP)
2023/11/10
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。