うーん、正直なところ、親御さんの介護を完全に放棄できません。子どもは親に対して扶養義務があるので、場合によっては罪に問われてしまう可能性があるんです。
ただ、できるだけ直接介護しないで済む方法はあります。それは、介護サービスを利用すること。また、きょうだいや親戚に任せるのもひとつの手です。
もし、経済的な支援が難しいという場合は、介護や医療費の減免制度もありますので、活用してみましょう。
先日、10年ぶりに帰省し、父に会いました。しかし、家は荒れ放題で掃除もろくにできていない様子。また、トイレットペーパーなどの必要なものがないのに、卵やスナック菓子など、同じものがいくつも置いてあって腐っているものも…。
もしかしたら、認知症になってしまったのかもしれません。年も年ですし…。
でも、私は昔から父と折り合いが悪く、介護をしたくありません。どうにか介護をしないで済む方法はないでしょうか?
うーん…。結論から言うと、親の介護を完全に放棄できません。というのも、子どもは親に対して扶養義務があるからです。場合によっては、罪に問われることもあります。
えっ、犯罪になるんですか!?
もちろん、経済的に支援が難しいなどの理由がある場合は別です。ただ、経済的に余裕があるのに支援をしなかったり、介護を放棄したことで親が死亡や怪我をした場合は罪になることがあるんです。
法律では、以下のように直系の血族・兄弟姉妹や配偶者に扶養義務が発生します。
ここで言う扶養義務とは、直接介護をすることだけではありません。生活費や医療費の援助も扶養義務に含まれます。そのため、仕事が忙しくて介護ができない場合や介護を直接したくない場合は、経済的な援助をすることでも義務を果たすことになります。
経済的な支援…。あまりお金の余裕はないけど、直接顔を合わせるよりは良いのかも…。
先ほどお話しした通り、お父様の介護を完全に放棄してしまうと、罪に問われてしまう場合があります。
なので、できるだけ古賀さんの負担が少ない介護をしていきましょう。
負担が少ない介護ってどうやるんですか?
例えば、以下の2つの方法があります。
もし、お父様の介護を任せられるごきょうだいや親戚がいるのであれば、その方に相談しましょう。
お父様の様子を伺うに、普段の生活に援助が必要な状況である可能性が高いので、そうした身の回りの支援をごきょうだいや親戚に任せて、その分、古賀さんが介護費用の負担を多めに負担するといった分担もできるでしょう。
私には妹がいますが、妹とも疎遠なんですよね。事が事なので、連絡しないとなのかな…。
そうですね。今後、お父様の介護にあたって、妹さんと連携が必要な場面が何度もあると思います。本格的に介護が始まっていない今のうちに連絡を取っておいた方が良いと思いますよ。
介護サービスを活用することでも、古賀さんの負担は大きく減らせるでしょう。
介護サービスってヘルパーさんが家に来て、介護をしてくれたりするんですよね?
利用してみたいとは思うんですが、どうやって利用すれば良いのかわからなくて…。
そうだったんですね。では、介護サービスを利用する方法についてご説明しましょう!
介護サービスを利用するには介護認定が必要なのですが、お父様は介護認定を受けていらっしゃいますか?
介護認定?どんなものですか?
なるほど…。まずは、介護認定を受ければ良いんですね。
介護認定を受けるには、まずは申請をします。申請はお住まいの役所の窓口や「地域包括支援センター」などでおこなえます。
地域包括支援センター?
ご高齢者の生活をさまざまな面から支援する公的な相談窓口です。介護についてはもちろん、成年後見制度などのご高齢者の権利を守る制度の手続きなどもおこなえる施設です。
役所や地域包括支援センターで介護認定の申請をおこなったら、以下のような流れで介護認定が進んでいきます。
介護認定の結果がわかったら、介護サービスが利用できるようになるというわけですね。ちなみに、介護認定の結果が出るのにはどれくらいの時間がかかるんでしょうか?
介護認定は、1ヵ月前後で結果がわかることが多いです。急いで介護サービスを利用したい場合は、結果が出る前に利用を開始することも可能です。そのときは、役所や地域包括支援センターの窓口で相談してみてくださいね。
要介護度がわかったら、今度は介護サービスを利用する段階です。
と言われても、介護サービスってどんなものがあるんですか?
介護サービスは大きく分けると「在宅介護サービス」と「施設サービス」があります。
例えば、在宅介護サービスには以下のようなものがあります。
いろんなサービスがあるんですね。どれを利用すれば良いのかな…。
お父様の場合でしたら、訪問介護やデイサービスはどうでしょうか?
訪問介護は、先ほど古賀さんがおっしゃっていたように、ヘルパーさんが家にやってきて家事や介護をしてくれるサービス。制限はありますが、お家の掃除や食事の支度を頼めますから、ご実家の状態も良くなるでしょう。
確かに…。掃除もそうですが、食事の支度をしてくれるのは助かりますね。父がまともなものを食べているようには見えませんでしたから。
もうひとつのデイサービスとは?
デイサービスは、昼間に介護施設に通って食事や身体介助、レクリエーションなどのサービスを受けられます。
また、デイサービスで入浴もできるので、お父様がひとりで入浴するのが心配でしたら特におすすめのサービスですよ。
施設サービスは、その名の通り、介護施設に入居して受けられるサービスのこと。在宅介護よりはお金がかかる傾向がありますが、施設にお父様のことを任せられるので、古賀さんの心身の負担はかなり少なくて済むでしょう。
施設サービスには、以下のようなものがあります。
公的施設
施設の種類 | 入居時費用 | 月額利用料 | 入居条件 | 認知症の受け入れ |
---|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上 | |||
介護老人保健施設 (老健) | 要介護1以上 | |||
介護医療院 | 要介護1以上 | |||
養護老人ホーム | 自立 | |||
ケアハウス | 自立~要介護3程度 |
民間施設
施設の種類 | 入居時費用 | 月額利用料 | 入居条件 | 認知症の受け入れ |
---|---|---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 自立~要介護5 | |||
住宅型有料老人ホーム | 自立~要介護3程度 | |||
サービス付き高齢者向け住宅 | 自立~要介護1程度 | |||
グループホーム | 要支援2以上 |
介護施設は、運営法人によって公的施設と民間施設に分けられています。なかでも公的施設の特別養護老人ホームは、安価なうえに終身利用ができるため人気。満室の場合が多く、入居まで2~3年かかるケースもあるそうです。
2~3年!?そんなにかかるんですか!それじゃあ、いざ老人ホームに入れようと思ってもすぐには入居できないんですね…。
民間施設だったら、比較的、入居しやすいと思いますよ。公的施設よりも料金が高くなる傾向はありますが、急いで入居したいときは民間施設の方が確実でしょう。
在宅介護サービスを使うにしても、介護施設に入れるにしても、お金はかかりますよね。私もそんなに経済的に余裕があるわけではないので、お金の支援も難しいかもしれません。だからって、父が貯金をしているとも思えないし…。
うーん。あまり気が進まないかもしれませんが、まずはお父様の資産の状況を確認することが大切です。貯金があるのか、年金はいくら受給しているのか…。お金の支援をするにしても支援しないにしても、お父様の資産状況を確認しないと始まりません。
そうですよね。年金額がわからないとお金の支援が必要なのかどうかもわかりませんよね。
おっしゃる通りです。お父様の介護費用はお父様自身の財産でまかなうのが原則。足りない場合に支援する形にしないと、古賀さんの経済的負担が大きくなってしまいます。
始めに話した扶養義務についても、「余力の範囲内」で良いとされています。
なるほど。それでも、経済的支援をする余裕があまりなくて。子どもが2人いてお金がかかるので…。
そういうときはどうしたら良いんでしょうか?
でしたら、以下のような方法で負担を減らすのもひとつの手です。
在宅介護のサービス費や老人ホームの利用料、医療費など、介護にはさまざまなお金がかかります。そのため、少しでも費用負担が軽くなる減免制度もご紹介しますね。
減免制度には、以下のようなものがあります。
「特定入所者介護サービス費」は公的施設の利用料を軽減する制度。「高額介護サービス費」と「高額医療・高額介護合算制度」は、支払った介護サービス費や医療費が一定額を超えたときにお金が戻ってくる制度です。
そんな制度があるんですね、知りませんでした!
また、経済的に介護保険料の支払いが難しい場合の減免制度もあります。加えて、自治体によっては、収入が一定以下のご高齢者を支援する制度を設けている場合もあるんです。
収入の条件があるんですね。制度を利用できるか確認するためにも、父の資産状況を確認する必要がありそうですね…。
ご家族が経済的援助ができず、お父様が生活に困窮する可能性がある場合、生活保護を受けられることがあります。年金を受け取っていても条件を満たしていれば生活保護を受給できますよ。
生活保護を受けると、介護サービスや老人ホームの費用などを自己負担なく利用できるようになるんです。
そうなんですね!それは助かりますね。でも、生活保護かぁ…。
もちろん、生活保護を受けるには収入や資産などの条件があります。生活保護を受けるとさまざまな制限がかかりますから、最後の手段として頭の片隅に置いておいてくださいね。
もし、お父様の介護を老人ホームに任せたい、という場合は、ぜひ「いい介護 入居相談室」にご連絡ください!お父様を安心して任せられる老人ホームをお探ししますよ。
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