高齢になると、筋肉量が減ったり消化機能の低下によって体重が落ちやすくなる傾向があります。もし体調不良もある場合は、病気の可能性もあるので受診するのがおすすめです。
対策としては、栄養バランスの良い食事を摂ったり、食事の回数を増やしてみるのも良いでしょう。食欲が低下して知らず知らずのうちに食事量が減っていることがあるので、すぐに食べられるものを用意しておくのも有効な方法です。
体重減少が続いてしまうと、体力や免疫力、認知機能が低下するおそれがあります。痩せすぎが寝たきりにつながることもありますので、無理なく体重を増やせるようにしていきましょう。
最近、母が急に痩せてきたことが気になって体重を測ったところ、半年前の健康診断のときよりも5kg近く減っていたんです。母はダイエットしているわけでもありませんし、食事はきちんと3食摂っていると言います。
ちゃんと食べているのに体重が減少することはあるんでしょうか。どうして母の体重は減ってしまったんでしょうか?
急な体重減少は心配になりますよね。一概には言えませんが、食事を摂っているのに体重が減ってしまっている原因は、以下のようなものが考えられます。
BMI値とは肥満度を表す体格指数です。日本肥満学会ではBMI値が18.4以下は痩せすぎと定めています。例えば、身長150cmの人がBMI値18.4だったときの体重は41.4kg。これ以下の体重は痩せすぎです。
また、半年で5%以上の体重減少がある場合も要注意。体重50kgの人の場合、半年で2.5kg以上は危険な体重減少です。
高齢になると筋肉量が低下して体重減少を引き起こしていることがあります。筋肉が減って直接的に体重が減ることに加えて、筋肉が減ると体が省エネになるため必要なエネルギーが減るんです。
「省エネになる」と聞くと良いことのように聞こえますが…。
ご高齢者の場合、必ずしも良いことばかりではないんです。
省エネになるということは、少ないエネルギーで生活できるということ。つまり、お腹が減らないんです。お腹が減らなければ食事も食べなくなりますよね。
加齢によって筋肉量が減ってお腹が減りにくくなることで、知らず知らずのうちに食事の量が減っていることがあるんです。
本人は「しっかり食べている」とは言っていますが、もしかしたら以前より食べる量が減っているかもしれない、ということですね…。
歳を重ねることによって消化機能が低下して、若い世代よりも消化吸収力が低下する傾向があります。つまり、食べたものを上手く消化して体に吸収できないんですね。
消化機能が低下すると、便秘によってお腹が減りにくくなったり、下痢によって栄養素が吸収されずに排泄されてしまうこともありえます。
となると、食べる量が減ったり、しっかり食べていても体に吸収されていない可能性があるわけですね。
母のお腹の調子も確認しておかないと…。
病気の影響で体重減少が起こることもあります。例えば、以下のような病気です。
病気の影響で食欲が低下したり、栄養が上手く吸収できなくなることもあります。また、がんの場合はがん細胞が増殖するときにエネルギーをたくさん使うため、食事を摂っていても体重減少が起こりやすいです。
急激な体重減少に加えて、腹痛や吐き気などの体調不良もあるときは受診をおすすめします。病気が原因で体重が減少しているおそれがあるためです。
「食欲がなくて食べられない」「食べているのに体重が減っている」という場合も、まずは消化器内科で相談してみましょう。
母の体重が減ってしまった原因について、なんとなくわかったような気がします。母の体重減少を食い止めるには、どうしたら良いんでしょうか?
体重減少の対策には、以下のようなものがあります。
まずは、栄養バランスの良い食事が大切です。わかりやすいのが「一汁三菜」の食事。ご飯と汁物に、主菜1品と副菜2品を組み合わせたものです。主菜を肉や魚などのタンパク質が豊富なおかずにし、副菜の野菜やきのこなどでビタミンや食物繊維が摂れると良いでしょう。
特に筋肉量を維持するためにはタンパク質を摂ることが大切。摂取量は体重1kgに対して1gのタンパク質が目安です。体重50kgの人だったら1日50gのタンパク質を摂る必要があるということですね。
母の年齢も年齢なので、食事の支度をするのが大変になって出来合いのものや簡単に食べられるパンなどで済ませることもあったようです。
やっぱり、きちんとした献立で食べないといけないんですね。
おっしゃる通り、ご高齢になると食事の支度も負担が大きく感じると思います。もちろん「一汁三菜」が理想ですが、そこまでしなくても筋肉を作るタンパク質とエネルギーの源である炭水化物をしっかり摂るように意識しましょう。
毎食、必ず主食と主菜をしっかり食べるようにするだけでも、栄養状態は良くなると思いますよ。
もし、食事の支度が大変な場合は、介護保険外サービスである「配食サービス」を活用してみるのもおすすめです。
「1日3食」にこだわらず、間食をするのもおすすめです。高齢になると、1度に食べられる量が減ることも多いですから、おやつとして軽食を取り入れてみましょう。
そのとき、お菓子や菓子パンではなくバナナやヨーグルト、ゆで卵といった栄養豊富なものを食べると良いでしょう。
食欲が落ちている場合、朝・昼・夕食のタイミングでは食べる気が起きない場合も考えられます。なので、少しでも食べたい気持ちがあるときに食べられるようにすぐに食べられるものを常に用意しておきましょう。
例えば、以下の食品はすぐに食べられて手軽にエネルギーを摂取できるのでおすすめですよ。
そのほかにも、おかずを作り置きして、食欲があるときに温めて食べられるようにしておくのも良いですね。
なるほど!栄養があって手軽に食べられるものを用意しておくんですね。それなら母も食べてくれそうです。
運動したら、もっと痩せてしまうんじゃないですか?
いえいえ、筋肉や体力を維持するためには、食事だけでなく体を動かすことも大切です。運動量の目安としては、ウォーキングや軽いジョギングなどの無理のない運動を30分以上、週2回以上できるのが理想です。
母が運動する機会は少ないと思います。自分から外出する人でもありませんし…。
でも、筋肉をつけるために、散歩から始めた方が良いのかも…。
ここまで、ご高齢者が体重減少してしまう原因やその対策についてお伝えしてきました。ここからは、体重減少や痩せすぎの状態が続くことによる危険性についてお話しします。
「危険性」ですか?
体重減少が続いたり、痩せすぎの状態が続くことで以下のような危険があります。
体重が減ることで筋力や体力が低下し、疲れやすくなる危険性があります。疲れやすいと活動量が減って、さらに筋肉や体力が低下。その結果、転倒するリスクが高まってしまいます。
加齢とともに骨がもろくなりやすいですから、転倒をきっかけに骨折してしまうことも。骨折により入院して、ベッド上で体を動かすことが極端に減ることで、退院するときにはほとんど寝たきりの状態になるケースも少なくありません。
えっ、骨折から寝たきりですか!?
はい。高齢になると、筋力の低下が早くなるのに対して、回復はかなり難しいです。入院すると体を動かさない時間が大幅に増えますから、筋力がすぐに低下してしまうんですね。
つまり、体重減少がきっかけで寝たきりになってしまう危険性があるんです。
体重が減ることで、免疫機能が低下することもあります。つまり、感染症のリスクが高まるということです。
免疫力が低下している状態で感染症にかかると、重症化しやすく、命の危険に関わる危険性もあります。
体重が減ることが、認知機能の低下と関係があるんですか?
そうなんです。体重が減ってしまうような低栄養状態が続くと認知機能の低下リスクが高まることがわかっています。
東京都健康長寿医療センターの研究によると、栄養状態が悪い人は良い人に比べて認知機能低下のリスクが2~3倍も高くなるとのこと。つまり、体重減少するような低栄養状態の人は認知症のリスクも高いと言えるそうです。
ただ、急に体重が減って心配だっただけなのですが…。この状態が続くと認知症のリスクがあるんですね。なんとかしないと…。
参考:「食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー」(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
体重が減少することで、嚥下障害を起こしやすくなります。
嚥下障害とは食べ物を飲み込む能力のこと。体重減少によって口や舌の筋肉量も低下して、スムーズに飲み込めなくなることがあるんです。
つまり、食事がしにくくなるということですか?
おっしゃる通りです。食事がしにくくなると、食べることが億劫になって食事量が減ることが考えられます。すると、さらに栄養状態が悪くなってより体の状態が悪くなる可能性も…。
嚥下障害が起こることで、体重減少の悪循環に陥ってしまうおそれがあります。
体重減少の減少がむくみと関係あるんですか?
実は、そうなんです。栄養状態が悪いと浸透圧のバランスが乱れてむくみやすくなってしまうんです。
浸透圧とは濃度の低い方に水が移動する力のこと。浸透圧によって体内の水分量は一定に保たれています。
栄養状態が悪い状況が続くと、この浸透圧のバランスが乱れて水分の排出が上手くいかなくなり、むくみやすくなるのです。
栄養状態が悪いことでむくみまで…。
急な体重減少は病気の可能性があるだけではなく、寝たきりや認知症になりやすくなったりと、将来の危険もあるのがよくわかりました。
今まで、母に食事を任せていましたが、私の方でも気をつけてみます。
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