ショッキングなことかもしれませんが…お母様が認知症になってしまった可能性があります。というのも、自分の失敗や物忘れなどを認めなかったり、事実と異なることを言うのが認知症の典型的な初期症状のひとつだからです。
こうした発言は、周囲の人から「自分の失敗を認めない」「嘘をつく」と責められてしまいがちです。しかし、認知症の影響で上手く物事ができなくなったり、忘れてしまうことに気づかれないようにしている行動なので、失敗や嘘を責めずに受け流す気持ちが大切です。
親御さんの「様子が変だな」と感じた場合は、歳のせいにせずに認知症検査を受けてみてください。親御さんが認知症と考えたくない気持ちもあると思いますが、きちんと対策をとるためには、認知症かどうかをはっきりさせることをおすすめします。
最近、母が自分の失敗を認めなかったり人のせいにすることが増えてうんざりしています。この間は、母が家の鍵をなくしたので一緒に探したら、なぜか食器棚の奥に入っていました。私は母の鍵は触らないので、母が自分で置いたとしか思えません。が、母は私が隠したと思い込んで責めるので大喧嘩になりました。
それに、私が代わりに予約した美容院も忘れる始末。母に頼まれたことなのに「私はそんな予約を頼んでない」「予約したなんて聞いてない」と、自分が忘れてしまったことも認めません。
年を取ると頑固になるとは言いますが、自分の失敗を私のせいにするのは本当に腹が立ちます。こんな母にどうやって対応したら良いんでしょうか。
お話を聞いている限りなので確実なことではありませんが…もしかしたら、お母様は認知症になっているのかもしれません。
えぇ!?認知症ですか?
確かに物忘れは増えましたが、母も80歳を超えて年も年ですし…。高齢になれば、物忘れは増えるものなんじゃないですか?
おっしゃる通り、ご高齢になると物忘れは増える傾向があります。ただ、できなかったことやわからないことをごまかしたり、失敗を認めないで他人のせいにするというのは、典型的な認知症の初期症状のひとつなんです。
そうなんですね。認知症の初期症状なんだ…。
認知症による物忘れの特徴として、「出来事そのものを忘れる」というものがあります。例えば、加齢による物忘れの場合は「夕食の献立を忘れてしまう」のに対して、認知症による物忘れは「夕食を食べたことを忘れてしまう」んです。
お母様の場合は、鍵を食器棚に入れたこと自体を忘れてしまっている可能性があります。なので、「自分は鍵を食器棚に入れた記憶がないから誰かがやったんだろう」と考えて、身近にいる村山さんのせいにしてしまったのかもしれません。
でも、母の話し方はしっかりしていますし、とても認知症とは思えないんですが…。
認知症の初期段階では、話し方がしっかりしていたり、上手い切り返しができていたりと認知症とは思えないこともあります。ただ、村山さんが鍵を隠した、とお母様が言うように認知症の場合は話に矛盾や嘘が含まれていることが多いのが特徴です。
でも、嘘までついて自分の失敗を認めないのはなぜですか?忘れてしまったならそう言えば良いのに…。
認知症の初期段階では、自身の異変について自覚してることも多いです。今まで普通にできていたことができなくなったり、「何か変だな」と自分でも感じているんですね。
しかし、誰しも今までできたことができなくなることはなかなか認められないものです。そのため、嘘をついてごまかすことで、取り繕おうとするんですね。
このように、認知症の人が失敗をごまかしたりすることは「取り繕い反応」と呼ばれています。
母の失敗が増えて、指摘するとその度に嘘をつかれたり、私のせいにされることにうんざりです。どうしたら良いのやら…。
実は…お母様が失敗したときに、その失敗を指摘したり責めたりするのはおすすめできません。
えっ?なぜですか?
お母様のプライドが傷ついて、関係が悪くなってしまうことがあるからです。
もし、お母様が認知症だった場合、認知症の影響で思考力や抑制力が弱まったせいで頑固になったりプライドが高くなっている可能性があります。また、思い通りにならないことにすぐに腹を立てるようになることもあります。
こうした状態は、周りの人から見れば自己中心的なので責めたくもなります。が、認知症だった場合、責めることで関係性が悪くなり、介助が必要になったときに介助を拒否されてしまうおそれもあるんです。
そうか、もし認知症だった場合、母も介護が必要になるかもしれないんですね…。そのときのために、責めない方が良いんだ…。
お母様が今までできていたことができなくなると、指摘してできるようになってもらいたいと思うのは自然なことです。ただ、認知症になると、できないことが次第に増えて、失敗を指摘するのもそれに反論されるのも大きなストレスになるでしょう。
そうなんですよね…。いちいち母に「これできてないよ」「忘れてるよ」と言うのもストレスですし、指摘したせいで口論になるのも疲れますし…。
なので、指摘せずに失敗を受け流しましょう!
「失敗を受け流す」?どういうことですか?
年齢を重ねたり、認知症になったことの影響で、できないことは増えていくものです。だったら、「物忘れはするもの」「できないことは増えていくもの」と考え方を変えて、お母様の物忘れや失敗を受け流すんです。
考え方を変えれば気持ちが楽になりますし、ストレスが減ると思いませんか?
それはそうでしょうけど…。
もちろん、判断能力が低下して詐欺に遭ったり、ガスコンロの火を消し忘れて火事を起こしたり…認知症の影響で大きなトラブルに巻き込まれる可能性はあります。なので、お金の大変な損失や命の危険がある問題については予防が必要です。
ただ、大きな損失や命の危険がない失敗や物忘れに関しては、割り切って受け流すと村山さんのストレスがかなり減ると思いますよ。
「物忘れや失敗を受けながす」とお話ししましたが、それでも失敗や物忘れで生活がままならなくなることも考えられます。
そういう場合は、失敗を減らす工夫をしてみましょう。
「失敗を減らす工夫」ですか…。具体的には?
例えば、こんな対策はどうでしょうか?
このくらいなら、すぐにでもできそうですね。
はい、簡単なことから始めていくのがおすすめです。
失敗や物忘れへの対策を考えるときに重要なのは、「本人が自分でできる環境を作る」こと。ご家族が代わりに予定を管理したり、料理をすべてしてしまうとお母様の能力をうばってしまうことになりかねません。
お母様ができることはなるべくやってもらい、「やりやすくする環境作り」をご家族がするのが理想の形です。
「やりやすくする環境作り」ですか…。私が代わりに予定を管理したり料理をする方が確実な気がしますが、それではダメなんですね。
おっしゃる通りです。加齢や認知症によって、今後もお母様ができないことは増えていくでしょう。そのときに、責めずにできるだけお母様自身でできるようにする考え方でサポートしてくださいね。
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