お母様は認知症の影響で嘘をついているのかもしれません。認知症になると記憶障害を起こすことが多く、なくなった記憶を埋めるために嘘をついている可能性があります。
認知症の初期段階では、記憶がなかったり理解力が落ちていることに何らかの形で気づいていることが多いです。そのせいで不安を感じているので、嘘を追求したり責めたりせず、耳を傾けて共感してみましょう。お母様が安心して過ごせるようになると思いますよ。
認知症の母が嘘をつくので困っています。仕事の日は母の分の昼食を用意して冷蔵庫に入れておくのですが、先日「お昼食べた?おいしかった?」と母に聞いたら、「食べたよ。おいしかった」と返答。でも、冷蔵庫を見たら手を付けずにそのまま残っていたんです。
「どうして食べたと嘘をつくの?」と問いただすと、「嘘なんかついてない!」と怒鳴りだす始末。こんなやり取りがしょっちゅうで…疲れてしまいます。
食事を用意するのも手間なので、いらないならそう言ってもらえれば作らないのですが…。どうして母は嘘をつくんでしょうか。
もしかしたら、認知症の影響かもしれません。
認知症のせいで嘘をつくんですか?
はい。…いえ、もしかしたら、お母様は嘘をついている気はないかもしれません。
えぇ?どういうことですか?
認知症になると多くの人が物忘れが始まることはご存知だと思います。嘘をついて話を合わせたり忘れてしまった記憶を埋めたりしている可能性があるんです。
お母様の場合、「昼食を食べたかどうかはわからないけど、おいしかったと言っておこう」という気持ちで「おいしかったよ」と言っているのかもしれません。
そんなことを言わなくても、「食べたか忘れた」と素直に言ってくれれば良いのに…。
ご家族からすれば、そう思うかもしれません。でも、その日の昼食を食べたかどうかがわからない、という状況は普通ではありませんよね。それもご本人が気がついていて「自分がおかしくなったことに気づかれたくない」と思って話を合わせているとも考えられます。
それに、「せっかく食事を作ってくれたのに『食べたかわからない』なんて言えない」というお母様の気遣いも含まれていると思いますよ。
そんなことを考えていたんだ…。
じゃあ、母は私を騙そうと思って嘘をついているのではなく、話を合わせているだけなんですね。
おっしゃる通りです。お母様のように、記憶がないことを補うために結果的に嘘をついてしまうケースは珍しくありません。
例えば、しまった場所を忘れて「財布がない!盗まれた!」と誰かを犯人にしてしまうケース。「朝ごはんは何を食べた?」と聞かれて、食べたのを忘れてしまって「食欲がなくて食べられなくて…」と答えるケースなどです。
会話のキャッチボール自体には問題がなかったり、上手い言い回しで答えることも多いので、認知症の影響だと気が付かないことも多いんですよ。
なるほど…。母はまだ会話には問題がないと思っていたので、まさか認知症の影響だと思っていませんでした。
認知症の影響で嘘をついてしまっているのだとしたら、「なんで嘘をつくの?」と聞いても意味がないことなんですね。
おっしゃる通りです。それに、お母様の言葉を強く否定したり追求したりすると、認知症の症状が進行する可能性があるので避けた方が良いでしょう。
認知症が進行するんですか!?
認知症が進行する要因としてはストレスが大きいです。お母様は嘘をついている認識はないわけですから、「なんでそんな嘘をつくの?」と言われると自分の言葉をすべて否定されているような気持ちになります。
自分の言葉を否定する人に対して敵意を持つこともありますし、自分の言葉に自信がなくなってどんどん不安な気持ちが大きくなってしまうことも考えられます。
そうなんですね…。では、どうしたら良いんでしょうか?
以下のような対応を心がけてみてください。
まずは、話に耳を傾けること。当たり前のことのように思うかもしれませんが、介護や仕事に忙しいと「ちょっと待って」「後で聞くから」と言って話を聞かないこともあるんじゃないでしょうか。
もちろん、すべての話にじっくり耳を傾ける時間はないと思います。なので、一日に何度かだけでも話を聞く時間を作ってみてください。
確かに。母の話を後回しにして、結局聞かないことはよくあります。
それに、話のなかに今の不安などが隠れていることもあります。不安が減ることで認知症の症状が穏やかになることもありますから、忙しいとは思いますができるだけ耳を傾けてみてください。
話に共感するのも、認知症の方が安心する対応です。もしかしたら、事実とは異なる嘘を話すこともあるかもしれません。そういうときに、否定せずに「そうなんだね」「大変だったね」と共感するだけでも、お母様は穏やかになると思いますよ。
それだけで良いんですか?
はい。共感の言葉を言うだけでも、「私のことを受け止めてくれる」と不安が減るんです。
飯塚さんに話をすれば安心できる、とお母様が感じられるようになれば、信頼関係が深まって認知症の症状が落ち着くこともあるでしょう。
お母様がとても興奮している場合、話に耳を傾けても落ち着かない場合もあります。そういうときは、思い切って話題を変えてみましょう。
「そういえば、近所の〇〇さんが旅行に行ってきたみたいだよ」「お母さんが好きなドラマの再放送が始まるって」など、お母様が興味を持ちそうな話題だと良いでしょう。
いきなり話を変えたら、それこそ母が怒り出しそうですが…。
例えば、こんなテクニックもあります。何かなくしものをして「盗まれた」と興奮しているときは「私が探してくるから、お茶を飲んで休んでいて」とお茶を用意して時間を空けます。しばらくしてお母様のところに戻り、「おもしろいテレビ番組がやってるよ」など、何事もなかったかのように過ごすんです。
認知症が進んでいると、少し前のことも忘れてしまうことがあります。それを想定して、時間を空けたり気をそらせるようなことをすると、すぐに穏やかになると思いますよ。
そんな簡単なことで良いんですね。認知症の対応ってもっと難しいのかと思っていました。
まずは「話に耳を傾ける」「共感する」ですね。どこまでできるか自信はないですが…心がけてみます。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。