認知症の人を否定したり、急かしたり、責めるような言葉はNGです。というのも、こうした言葉によって、不安が強くなってストレスを感じ、認知症が進行してしまうことがあるからです。
なので、食事をしたのに「ご飯を食べていない」と言われたときは、「今作っているから待っていてね」と言ったり、「壁に虫が這っている」と幻覚を見ている様子があれば、「追い払っておいたよ」と声掛けをしましょう。
認知症の人の言葉が現実と異なっていても、それを指摘せずに、話を合わせることが大切です。
認知症の親御さんの介護をしている友人から「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。
私も認知症の母を介護しているので気になっていて。どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか?
認知症の方が不安になってしまうような言葉は、言ってはいけません。具体的には以下のような言葉です。
認知症の人自身や、その人の言葉を否定する言葉はNGです。例えば、以下のような言葉です。
認知症になると直近の記憶を忘れてしまいやすくなるので、食事を摂ったことを忘れてしまうことがあります。そのため「まだご飯を食べていない」と言うこともあります。
それに対して、「さっき食べたでしょ」と否定してしまうと混乱させてしまうことがあります。
なぜでしょうか?実際には、ご飯を食べているんですよね?
認知症の方にとっては、「ご飯を食べていない」のが事実です。認知症による物忘れの場合、「さっき食べたでしょ」と伝えても思い出せないことが多いんです。
だから、事実を言っても不安を感じるだけになってしまうんですね。
これらの言葉は、認知症の人に介護を拒否されたときに言ってしまいがちな言葉です。介護をしていると忙しいので、どうしてもいらだってしまいます。そのうえ、介護を拒否されて家事などが上手く進まないと、脅かすような言葉を使って、思い通りに動いてもらおうとしてしまうこともあるでしょう。
ただ、こうした言葉は認知症の人にとって大きなストレスになりかねないので、使ってはいけない言葉なんです。
在宅介護をしていると、忙しくて以下のような言葉を使ってしまっているかもしれません。
加齢によって身体機能が低下して体が思うように動かせなくなったり、認知機能の低下によってより動作に時間がかかるようになります。
着替えをしたり、食事をしたり、靴を履いたり…。これまで当たり前にできていたことに、時間がかかっていると、思わず「早くして」と言ってしまうこともあるかもしれません。
そうなんです!何をするにも時間がかかるようになってしまって。特に朝はぐずぐずしてなかなか着替えないので、「早くして」と言ってしまいます。私が手伝おうとしても怒鳴って拒否されるし…。
私が言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれませんね。
そうだったんですね…。忙しくてなかなか難しいかもしれませんが、時間がかかることを予想して余裕を持って行動するのが良いかもしれません。
責めるような言葉も、認知症の人に言ってはいけない言葉のひとつです。例えば、以下のような言葉です。
あ…。これも心当たりがあります。
病院の予約日時や、道具の使い方を教えても母が覚えていないので、「さっきも言ったよね」と責めてしまうことがよくあります。
認知症になるとできないことが増えていきます。それを認知症の方ご本人も自覚していることが多いんです。なのに、そのうえ、ご家族から責められると自信がなくなってしまいますよね。
責めるような言葉は、プライドや自尊心を傷つけてしまうのでNGなんです。
「できることを奪う言葉」ってどんな言葉ですか?
具体的には、こんな言葉です。
認知症になってできないことが増えていくご家族を見ていると、心配する気持ちから「やらないで」と代わりにやってしまいがちです。なかには本当に危険なこともあるかもしれませんが、ご本人ができることは見守って自分の手でやってもらうことが大切です。
うーん、でも私がやった方が早いことも多いんですよ。母に任せているとやたら時間がかかって。
そういうこともありますよね。でも、そうしてお母様のできることを奪ってしまうと、さらにできることが減ってしまう可能性があるんです。
時間がかかっても、ご自分の手でできることであれば、できるだけお母様に任せましょう。
そういえば、「認知症の人に言ってはいけない言葉」を言い続けていると、どうなってしまうんですか?
認知症の症状が進行してしまう可能性があります。
えぇ!?そうなんですか!なぜですか?
認知症の人に言ってはいけない言葉は、認知症の人にとってストレスを感じる言葉だからです。
ストレスを感じると、脳の細胞が死滅することがわかっています。つまり、脳の機能低下が加速するというわけです。脳の機能低下が進むと、認知症の状態が進行し、症状も悪化してしまいます。
えぇ…そうなんですね。このところ、母の認知症がひどくなっているように感じていましたが、それは私が認知症の人に言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれません…。
母に、認知症の人に言ってはいけない言葉をたくさん言ってしまっていたのがよくわかりました。言わないようにしたいのですが、だからといって、どんな言葉をかければ良いのかわからなくて…。
認知症の方への受け答えは難しいですよね。なので、認知症の方によくある発言と、それに対する返答をリストアップしてみました。
認知症の症状のひとつに、直前の出来事を覚えられないことがあります。そのため、食事を食べたばかりなのに「ご飯を食べていない!」と言うことがあるんですね。
聞いたことがあります。うちの母はそういったことはありませんが…。
そのときに、「さっき食べたでしょ!」と返すのはNG。「なんでご飯を食べさせてくれないの!」とさらに興奮させてしまう可能性があります。
そこで、「今、食事を作っているところだから待っていてね」と声をかけたり、軽食を渡すのがおすすめです。時間を空けて、「ご飯を食べていない!」と興奮した気持ちが落ち着くのを待ちましょう。
認知症の方が食事をしたことを忘れてしまうときの対処法については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
認知症の方の訴えでよくあるのが、「財布が盗まれた!」というものです。特に一番近くにいるご家族が犯人にされてしまうケースが多いんです。
そのため、「盗んでないよ!」「自分でどこかにしまったんでしょ!」と言うのは良くありません。認知症の方の頭の中では、盗まれたと思い込んでいるからです。
そこで、「まずは家の中を一緒に探そう」と声をかけましょう。また、一緒に探すうちに財布が見つかっても、ご家族の手から渡すのもNGです。
どうしてですか?
ご家族から財布を渡すと、「盗んだ犯人だから財布の場所を知ってるんだ」と思い込みが強くなってしまうことがあるからです。「やっぱりあなたが犯人なんでしょ!」と言われてしまうかもしれません。
なので、財布の場所がわかったら、ご本人が見つけられるようにそれとなく誘導するのがベターです。
「物盗られ妄想」については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
自宅にいるのに「家に帰りたい」と言われたときは、「ここが家でしょ」と否定するのではなく、「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていてね」と、認知症の人の世界観に合わせた返事をしましょう。
もちろん、実際に車を呼んでいるわけではありませんが、「車を呼んでいるから」と言われれば認知症の人の気持ちが落ち着きます。不安な気持ちから「家に帰りたい」と言っているので、不安な気持ちを取り除くことが大切なんです。
事実を伝えるんじゃなくて、気持ちが落ち着くような言葉をかけるんですね。
認知症の方が「家に帰りたい」と言うときの対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
認知症の影響で、幻視や幻聴が起こることがあります。壁紙の模様が虫に見えたり、「庭に知らない人が立っている」といった現実にはないものを見る症状です。
そこで「虫なんてどこにもいないよ」などと返すのはおすすめできません。認知症の人にとって、「虫」や「知らない人」も存在していますから、それを否定するとさらに不安になってしまいます。
実際には見えないものなのに、どうやって対応したら良いんですか?
否定せず、世界観を合わせます。例えば「追い払っておいたよ」と言えば落ち着くかもしれません。それでも怖がっている様子があれば、「追い払っておくから向こうの部屋に行こうか」と場所を移動するのが良いでしょう。
いずれにしても、幻視や幻聴の内容に合わせて対応すると、納得してくれることが多いですよ。
幻視や幻聴の対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてくださいね。
認知症になってから、母が今までと大きく変わってしまって、思い通りにならないことが増えてきました。何をするにも時間がかかったり、トンチンカンなことを言いだしたり…。
でも、それを責めるのはいけないことだったんですね。まずは母の感じていることを否定しないで話をするように心がけます。
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