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新たな研究で、タクシーなど乗車だけで移動が完結する「受動的」な移動手段を多く用いている高齢者は、徒歩や自転車などの「能動的」な移動手段を多く用いている人に比べて、「手段的日常生活動作(IADL)」が低下しやすい可能性が示されました。 手段的日常生活動作とは、掃除・料理といった家事や金銭管理、交通機関の利用などの生活を営むのに必要な複雑な動作をおこなう能力のこと。この能力が衰えてくると、自立した生活を続けるのが難しくなっていきます。 今回の研究は、医療経済研究機構(IHEP)が、愛知県豊明市やNTTデータ経営研究所と共同で実施したもの。その研究結果は「BMC Public Health」という学術誌に掲載されています。 高齢者の移動手段を「能動」と「受動」で分類 研究グループは、豊明市在住の要介護認定を受けていない高齢者を対象にした「住民健康実態調査」の2016年と2019年の調査結果を分析しました。 ちなみに、「住民健康実態調査」の対象者の詳細は以下のとおりです。 場所:愛知県豊明市在住 年齢:65歳以上の高齢者 人数:8145人 また、研究グループは対象者を移動手段ごとに分類。徒歩や乗用車(自分で運転)、電車・バス、自転車など自分で操作したり道を選択したりする「能動的移動手段」と、タクシーや乗用車(他者が運転)のような乗車だけで移動が完了する「受動的移動手段」に分けて、手段的日常生活動作の3年間の推移を調べました。 受動的な移動手段を使っている人は 研究グループが分析した結果、受動的移動手段を多く用いている高齢者は、能動的移動手段を多く用いている高齢者に比べて、家事や交通機関の利用など生活に欠かせない複雑な動作をおこなう能力「手段的日常生活動作」の低下リスクが1.93倍高まることが明らかになりました。 研究グループは「高齢者が受動的移動手段を選択することは、手段的日常生活動作の低下リスクと関連がある可能性が示された。自治体などの移動支援では、高齢者がバスや電車などの能動的な交通手段を利用できるような機会と環境を整えることが、高齢者の社会的自立を促すのに効果的なのではないか」と述べています。 能動的な移動手段には、もちろん徒歩も入ります。社会的に自立した生活を続けていくために、散歩する機会を定期的に設けてみても良いかもしれませんね。
2023/05/10
さまざまなサプリメントの開発などを手がける日本予防医薬株式会社は、食が細くなりがちな高齢者向けに、タンパク質とカロリーをバランス良く摂取できるスープ「満足感が違う、イミダ栄養スープ」を開発。2023年4月8日に販売を開始しました。 手軽に栄養を補給できるスープを飲んでもらうことで、高齢者の要介護化を防ぎたいとしています。 高齢者の低栄養は要介護につながる 年を重ねるにつれて食が細くなったという人も少なくありません。厚生労働省の調査によると、BMIが目標を下回る70代の割合は男性で約2割、女性では約4割にもなります。 しかし、高齢者の低栄養は、筋肉量や基礎代謝を下げる要因のひとつ。低栄養状態を放置していると体を動かしにくくなり、要介護につながるリスクが高まると言われています。 以上のような高齢者の実情を目の当たりにした日本予防医薬は、食が細くなった高齢者でも気軽に栄養を摂取できるようなスープを開発することにしたのだそうです。 タンパク質を効率的に摂取可能な配分 日本予防医学は、タンパク質を効率的に使って高齢者の筋肉量を増やすためには「炭水化物・タンパク質・脂質」の3つの栄養バランスが重要だと言います。 筋肉をつくるには、タンパク質とエネルギーが必要。また、そのエネルギーは炭水化物・タンパク質・脂質からつくられますが、炭水化物と脂質が不足するとタンパク質がエネルギーを生成するのに使われ、筋肉の材料が足りなくなってしまうそうです。 逆にタンパク質が多すぎても、今度はタンパク質とともに体内でつくられる大量の尿素窒素を排出する必要があるため、腎臓に大きな負担がかかってしまいます。 そこで、日本予防医学が今回発売した「満足感が違う、イミダ栄養スープ」では、タンパク質を体内で合成するのに最適なバランス(タンパク質14%:脂質24%:炭水化物62%)で栄養素を配合。食が細くなった人でも、お湯を注ぐだけで気軽に栄養を摂取できるスープです。 筋肉量を増やすには、タンパク質を摂取すること以外に適度な運動が有効です。健康で長く過ごしていくために、ウォーキングなど手軽な運動を毎日の生活に取り入れてみても良いかもしれませんね。 参考:「腎臓病について」(全国腎臓病協議会)
2023/05/09
新たな研究で、肉類を多く摂取している高齢者は、そうでない人に比べて歩行速度が速いことが明らかになりました。 歩行速度の速さは、身体機能を測る尺度のひとつとされています。 今回の研究は、東京都健康長寿医療センター研究所によっておこなわれ、その研究結果は「日本サルコペニア・フレイル学会誌」に掲載する予定だそうです。 アミノ酸が豊富な肉類に着目 今後さらに、高齢化の進展が見込まれています。厚生労働省の試算によると、2040年には全体の約35%が65歳以上の高齢者になると考えられているそうです。 そこで、課題となるのが要介護状態の前段階と呼ばれる「フレイル」対策です。フレイルとは、加齢によって心身の機能が衰えた状態のこと。フレイル状態を放置すると要介護へと進んでしまいます。 しかし、適切な介入があれば、フレイルから健康な状態に戻れるため、早い段階で対策を打っていくことが大切です。 今回、研究グループは健康な体をつくるアミノ酸が豊富に含まれている「肉類」に着目。肉類の摂取量とフレイルの関連性について調べました。 肉類をよく食べる高齢者は歩行速度が速い 研究グループは、同研究所が実施している健診に参加した高齢者512人を対象に調査を実施しました。 調査では対象者の食事内容、歩行速度、握力、血液の成分を測定・調査。対象者を肉類の摂取量で3グループに分け、フレイルに関連する指標である歩行速度との検討をおこないました。 その結果、肉類の摂取量が多い人は、そうでない人に比べて最大歩行速度が最も速い(フレイル状態になりにくい)ことが明らかになったのです。 研究グループはこの研究の意義について「今回の研究で、高齢期のフレイル予防の栄養ケアとして、肉類が有効である可能性を示せた」と述べています。 フレイル予防には、肉類を含めた栄養バランスの取れた食事が大切だと言われています。噛む力が衰えて肉類をうまく噛めなくなってきた人は、長時間煮込んで柔らかくするなど工夫してみると良いかもしれません。 参考:「平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容」(厚生労働省)
2023/04/27
ソフトバンク株式会社が、60代以上の高齢者に対して、心と身体の働きが弱くなってきた状態を指す「フレイル」のリスクに関するアンケートを実施しました。 その結果、60代以上の高齢者のうち、6割近くの人がフレイルのリスクがあることがわかったのです。 フレイルとは フレイルとは、加齢とともに心と身体の働きが衰えた状態のことを指し、よく「健康と要介護状態の中間」と言われることも。フレイルになると、走るとすぐに息切れする、何もしていないのに疲れる、外出するのがおっくうなどの症状が見られます。 要介護状態になるのを防止するには、フレイルの前段階である「心と身体のちょっとした衰え」にいち早く気づき、早めに対処することが大切です。 全国の高齢者にアンケート 今回の調査は、以下の要領で実施されました。 調査期間:2023年2月25日~2月26日 対象者:全国の60歳~79歳の男女1000人 調査手法:アンケート 今回の調査は、インターネット上でおこなわれました。身体的・精神的・社会的の3つの側面を評価可能な11項目の質問からなる「イレブンチェック」を使って、フレイルリスクがどの程度かを判定。また、どんなことを楽しみに思っているかについても質問しました。 60代以上の高齢者のうち6割はフレイルリスクあり 調査の結果、全体のうち31.7%の人がフレイルリスクが高く、26.1%の人が中程度のフレイルリスクがあることが判明。つまり、計60%近くの人が、フレイルリスクが比較的高い状態にあることが明らかになったのです。 また、年齢と性別で結果を分析すると、60代の男性が最もフレイルリスクが高い傾向にあることもわかりました。 さらに、日常生活の楽しみについて尋ねたところ、フレイルリスクが低い高齢者はフレイルリスクが高い高齢者に比べて、「友人との会話」などのコミュニケーションの機会や「スポーツ」や「日常品以外の買い物」などの外出機会を「楽しみだ」と思っている人が、約2倍あるいはそれ以上多いことが判明しました。 外出しない日が続くと、それだけ心身ともに衰えていきやすくなります。リフレッシュも兼ねて、暖かい日に外に出てみてはいかがでしょうか。
2023/03/16
2023年2月24日、料理研究家の岩崎啓子氏が『シニア暮らしにちょうどいい2人分献立』を発売。この本には、高齢者も気軽に調理できて、栄養バランスも取れたレシピが掲載されています。 『シニア暮らしにちょうどいい2人分献立』の特徴 高齢者が作る料理に特化したこの本には、ほかのレシピ本にはあまり見られない特徴があります。特に、高齢者が健康的な身体をつくるのに欠かせないたんぱく質やカルシウム、それから、弱った腸の動きを助ける食物繊維が豊富なレシピが重点的に掲載されています。 また、血圧が高めの人でも食べられる減塩食のレシピを載せているのも特徴です。 さらに、食事の量が少なくなった高齢者世代でも使い切れる食材量を、レシピの念頭に置いているのもポイント。具体的には、3日間で高齢者に必要な栄養が補給できるレシピになっているのです。 シニア2人分献立5ヵ条とは 『シニア暮らしにちょうどいい2人分献立』の中には、高齢者が気軽に栄養が摂れるレシピをつくるためのポイントが紹介されています。それが以下の5つです。 たんぱく質、カルシウム、食物繊維をしっかり摂る 塩分や油脂はほどほどに 3日間で栄養バランスが取れていれば大丈夫 深めのフライパンや電子レンジで手間を省略 買い出しは無駄が出ない3日分ずつがベスト 特に、血圧が高くなりがちな高齢者が、料理を作る際に留意しておきたいのは塩分量です。 WHOは1日の塩分摂取量を5g以下に抑えることを推奨しています。しかし、日本人の平均塩分摂取量は10g程度とWHO基準の倍以上。『シニア暮らしにちょうどいい2人分献立』の中には、塩分を抑えたレシピも紹介されているため、参考にしてみると良いかもしれませんね。
2023/03/03
新たな研究で、ビタミンDが不足している人はそうでない人に比べて、筋力が年齢とともに衰えていく「サルコペニア」の発症リスクが上昇することが明らかになりました。 今回の研究は、国立長寿医療研究センターや名古屋大学などで構成される研究グループによっておこなわれ、その研究結果は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」という医学誌に掲載されています。 サルコペニアとは そもそも、「サルコペニア」とは何でしょうか? サルコペニアとは、年齢を重ねるにつれて筋肉の量が減っていく老化現象のこと。早い人では20代後半から進行が始まり、生涯を通して筋肉が衰えていきます。 サルコペニアを発症すると、歩く速度が低下するほか、着替えや入浴などの日常生活の動作もしにくくなります。また、バランスの維持が難しくなるため、転倒や骨折のリスクも上昇します。 対象者の筋力の変化などを調査 研究グループは、国立長寿医療研究センターが実施している、老化についての長期的な疫学研究である「NILS-LSA」で集められた医療データを分析することに。そのデータは、「NILS-LSA」に参加した40歳以上の男女1919人のものを使用しました。 調査では、対象者をビタミンDが充足しているグループと不足しているグループに分類。それから、4年にわたって筋力の変化や筋肉の量、サルコペニアの新規発症数などを調べました。 ビタミンDが足りない人は筋力低下する傾向に 対象者の医療データを解析した結果、ビタミンDが不足している人はそうでない人に比べて筋力低下がより進行し、サルコペニアにかかる割合が上昇したことが明らかになりました。 つまり、ビタミンDが不足している状態が続くと、筋力が衰える速度が加速するリスクが示されたのです。 ビタミンDはキノコ類や魚介類に多く含まれると言われています。ビタミンDを意識的に摂取した上で適度な運動もおこなって、筋力低下の防止に努めたいですね。
2023/02/22
ゼラチンやコラーゲンの開発をしている「新田ゼラチン株式会社」は、身体機能や認知機能の低下が起こる「フレイル(虚弱)」について調査しました。 その結果、50代の半数以上が「フレイル」か、その前段階の「プレ・フレイル」に該当していることが明らかになったのです。 「フレイル(虚弱)」とは フレイルとは、加齢やストレスなどで心身の機能が低下した状態のこと。よく「健康な状態と介護が必要な状態の中間地点」と表されています。 早めにフレイル状態に気づき、生活習慣を改善することで要介護状態になることを防げると考えられています。 フレイルには、以下のような5つの評価基準があります。 意図せず体重が減少している 筋力が以前よりも低下している 特に何もしていなくても、疲労感がある ほかの同年代の同性に比べて歩くのが遅い 定期的に運動する習慣がない 以上の項目のうち、3項目以上に該当すれば「フレイル」、1~2項目に該当すれば「プレ・フレイル(フレイルの前段階)」だと言われています。 40歳以上の男女にフレイルに関する調査を実施 今回の調査は、以下の要領でおこなわれました。 調査期間:2022年12月17~18日 調査手法:アンケート調査 対象者:全国40歳以上の男女600人 調査チームは、今回の調査の前にスクリーニング調査を実施。2132人の40歳以上の男女のうち、フレイルの人200人、プレ・フレイルの人200人、健常な人200人をそれぞれ抽出して、今回の調査に参加してもらいました。 50代の半数以上が「フレイル」または「プレ・フレイル」 調査では、フレイルの自覚症状があるかどうかを尋ねました。すると、対象者のうち9.6%の人が「フレイル」、43.8%の人が「プレ・フレイル」の基準に該当していることが明らかになったのです。 年代別で比較すると、50代がフレイルの前段階である「プレ・フレイル」に該当している人が51.1%と最も多かったことが判明。50代では、61.4%と半数以上の人が「フレイル」または「プレ・フレイル」に該当していることがわかりました。 フレイルを予防するためには、良質な食事や睡眠、適度な運動などといった生活習慣の改善が重要です。最近疲れやすくなったなどの症状を自覚するようになった人は、今までより歩く距離を伸ばしてみても良いかもしれませんね。
2023/02/16
新たな研究で、1日5000~7000歩歩くと高齢者の死亡リスクが最大まで低下することが明らかになりました。 この研究は早稲田大学や京都先端科学大学などで構成される研究グループによっておこなわれ、その研究結果は「Medicine & Science in Sports & Exercise」という学術誌に掲載されています。 研究の概要 今回の研究では、「京都亀岡スタディ」と呼ばれる研究の参加者の歩数を評価することに。「京都亀岡スタディ」の概要は以下のとおりです。 研究期間:2011年から継続して実施 対象地域:京都府亀岡市 対象者:京都府亀岡市在住の人 目的:介護予防の推進と検証 研究グループは、「京都亀岡スタディ」参加者のうち、65歳以上の高齢者4165人を対象に1日の歩数を測定。歩数の少ない順に参加者を4グループに分類しました。その後およそ3年にわたる追跡調査をおこない、歩数と死亡リスクの関連性を調べました。 5000~7000歩歩くと最大まで死亡リスクが低下 調査の結果、1日5000~7000歩歩くともっとも死亡リスクが低下することが判明。それ以上歩いても死亡リスクは変わりませんでした。 また、1日の歩数が5000歩未満であっても、歩数を1000歩増やすことで高齢者の死亡リスクが23%低下することもわかりました。 つまり、1日のほとんどを座ったり寝たりして過ごしている高齢者であっても、今より少し歩数を増やすことでより長生きできる可能性が示されたのです。 この結果を受けて、早稲田大学スポーツ科学学術院に所属する宮地元彦教授は「厚生労働省が推奨している、今より10分多く身体を動かそうという取り組み『プラス・テン』の実践が、高齢者の長生きにつながる可能性が示された」と述べました。 「最近何もしなくても疲れてしまう」という高齢者は、健康と要介護の中間状態である「フレイル」かもしれません。しかし、フレイルは生活習慣を改善することで健康な状態に戻ると言われています。 長く元気に過ごすためにも、今までより少しだけ多く歩いてみてはいかがでしょうか。
2023/02/14
デイサービスを運営している合同会社さわもとは、インターネット上で体操やレクリエーションなどができる「オンライン介護デイサービス」をスタート。平日の10時15分~15時におこなわれるそうです。 合同会社さわもとは、このサービスを通じて、新型コロナの感染拡大で外出できない高齢者の心身機能の維持に役立てたいとしています。 「オンライン介護デイサービス」の狙い 「オンライン介護デイサービス」は、オンラインミーティングなどで用いられているZOOMを使って、高齢者が自宅から介護士によるレクリエーションに参加できるというサービスです。 感染対策のために外出を減らし、「することがないから」「起きていると疲れているから」などと言って、ずっと横になっている生活を続けていると、体力低下につながる恐れがあります。 そこで、「オンライン介護デイサービス」に参加すると、家族以外の人と会うために身だしなみを整えたり、体操をするために身体を起こしたりする必要があります。そうして生活リズムを整えることで暮らしにメリハリがつき、高齢者の生きる活力につながるのです。 レクリエーションの効果 「オンライン介護デイサービス」でおこなわれているレクリエーションは以下のとおりです。 発声練習 音楽などを使った全身体操 食べ物が気管に入ってしまう誤嚥を防止するのための口の体操 高齢者に昔の暮らしなどを語ってもらう「聞き書きレク」 中でも特徴的なのは「聞き書きレク」と呼ばれるレクリエーションです。これは、高齢者が昔の暮らしや以前していた仕事、今考えていることなどを語ってもらい、職員がその内容を記録するというものです。 合同会社さわもとによると、「高齢者が若い人にものを教える機会を与えることで、誰かの役に立っていることを感じてもらい、高齢者の自己肯定感を高めている」そうです。 この「聞き書きレク」は認知症の人にも役立つのではないでしょうか。 認知症の人は新しいことは中々覚えられなくなりますが、古い記憶は保持されていることが多いです。そのため、「聞き書きレク」で昔のことを思い出して言葉にしてもらうことで、脳が活性化し、認知機能の低下を抑える効果が期待できそうです。 今回紹介した「オンライン介護デイサービス」は3月末まで無料モニターを募集しているそうなので、一度、話を聞いてみても良いかもしれませんね。
2023/02/01
新たな研究で、新型コロナウイルスの流行によって高齢者の身体活動量が減少し、身体能力の大幅な低下が見られることが明らかになりました。 この研究は筑波大学によっておこなわれ、研究結果は「日本老年医学会雑誌」という医学誌に掲載されています。 研究の概要 今回の研究の対象者は以下のとおりです。 茨城県笠間市在住の高齢者(平均年齢73.2歳) 高齢者の健康や体力、身体活動に関する調査「かさま長寿検診」に参加した240人(男性107人、女性133人) 今回の研究では、対象者の身体活動や体力に関する2016~2020年のデータを解析しました。 研究の詳細 集められたデータを解析した結果、新型コロナウイルスの流行下では通常に比べて、より高齢者の体力や身体機能が低下したことが明らかになりました。 特に低下が大きかったのは、移動動作能力、歩行能力、柔軟性でした。 移動動作能力は、「Timed Up & Go」と呼ばれるテストを使って対象者の能力を測定。「Timed Up & Go」は、椅子に腰かけた状態からスタートし、合図があったら対象者は立ち上がり、3m前方にあるコーンを回って再び椅子に腰かけるというテストです。また対象者は、この動作を自分ができる最大速度でおこないます。 このテストは対象者に、立ち上がる、歩行する、コーンを回るなど複合的な動作を要求します。そのため、高齢者の下半身の筋力やバランス、歩行能力などの全体的な身体機能を評価できるのです。 このテストを対象者におこなった結果、通常の加齢に伴う変化と比べて新型コロナ流行以後のほうが、3倍以上も高齢者の移動動作能力が低下していたことが判明しました。 さらに対象者に、5mを通常の速さで歩いてもらったり、上半身を前方に伸ばして柔軟性を測る長座体前屈をしてもらったりもしました。 やはり通常の加齢に伴う変化と比べて歩行能力、柔軟性ともに大幅に能力が低下していました。特に柔軟性では、通常の加齢変化に比べ5倍以上も低下していることが明らかになったのです。 この結果を受けて、研究グループは「新型コロナ流行など日常生活に制限がある中では、移動動作能力や柔軟性が低下することがわかりました。高齢者の体力を維持するために、介護予防プログラムを実施する必要があると考えられます」と、高齢者の体力を維持するような取り組みの必要性を訴えました。
2022/12/26
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。