病院で検査をしないとはっきりとはわかりませんが、もしかしたら、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」かもしれません。早いうちから対策をすれば、認知症にならずに回復することもあるので、病院で検査をしてみることをおすすめします。
一緒に住んでいる母の物忘れがひどくなっていて心配なんです。料理が得意な人なのに、料理の段取りが悪くなったり、何度も同じことを聞かれることもあるし…。
まだ自分のことは自分でできるので、そうは思いたくないのですが…母は認知症になってしまったんでしょうか?
認知症の検査をしてみないとなんとも言えませんが、もしかしたら軽度認知障害の可能性がありますね。
軽度認知障害、ですか?初めて聞きました。
軽度認知障害というのは、認知症の一歩手前の状態です。認知症になると日常生活に支障が出て、誰かの手を借りないと生活ができない状態になりますが、軽度認知障害ではそこまで進行していません。
ちなみに、厚生労働省は軽度認知障害について、次のように定義しています。
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
- 本人または家族による物忘れの訴えがある。
- 全般的な認知機能は正常範囲である。
- 日常生活動作は自立している。
- 認知症ではない。
出典:「軽度認知障害」(厚生労働省 e-ヘルスネット)
例えば、「同じ話をする」「ついさっき食べたものを忘れる」などの記憶障害が代表的な症状です。他にも、「お金の計算やスケジュール管理が難しくなった」といった管理能力の低下も見られることがあります。
さらに、「趣味をしなくなった」「頭がぼんやりしてすっきりしない」「疲れやすくて元気がない」といった気持ちの面の変化もあるようです。もし、こういった状況があれば、軽度認知障害を疑っても良いでしょう。
いくつか母に当てはまるものがあります。軽度認知障害なのかなぁ。
軽度認知障害の症状に思い当たるものがあるのであれば、早めに病院で検査を受けてくださいね。
病院って何科に行けば良いですか?
認知症や軽度認知障害の専門の診療科は、心療内科や精神科、脳神経外科などです。ただ、かかりつけの病院があるのであれば、先にそこの医師に相談してみるのも手ですね。
かかりつけ医であれば、これまでのお母様の様子を良く知っていると思いますし、専門の病院を紹介してもらうこともできるでしょう。
そうですね。定期的に通院している病院があります。そこの先生に相談してみますね。
専門の病院を紹介してもらったら、そこで認知機能の検査を受けます。検査にはいくつも種類があって、それぞれ検査方法が異なります。
例えば、認知症の検査にも使われる「改訂 長谷川式認知症スケール」「MMSE(Mini-Mental State Examination)」は、5~7分かけて医師の質問に答えたり、図形の模写などの問題をおこないます。その点数によって、認知機能の程度を診断します。
うーん、母の場合、緊張してしまって上手く先生の質問に答えられなさそうな気がします。
そうなんですよね。実際に検査を受けた人からもそういう声があるんです。そこで、軽度認知障害のチェックの場合は、もっと簡単にできる「MCIスクリーニング検査」という診断法もあります。
この検査は、アルツハイマー型認知症の原因物質について調べるものです。アルツハイマー型認知症は、アミロイドベータペプチドという物質が脳にたまって神経細胞を傷つけることで発症します。
なのでこの検査では、血液中のアミロイドベータペプチドの毒性を弱める機能を持つタンパク質の量を調べることで、軽度認知障害のリスクを判断します。少量の採血のみなので、問診の緊張はないですし、受ける人の負担も少ないのではないでしょうか。
血液で認知機能が低下しているかどうかがわかるんですね!すごい時代ですね。
「軽度認知障害かも」と思っても、なかなか「検査を受けてほしい」とは言い出しにくいこともありますよね。そういうときは、自分で確認できるチェックリストがあるのでそれを使ってセルフチェックをしてみるもの良いんじゃないでしょうか。
例えば、東京都が簡単にできる認知症チェックリストを公開しています。当てはまるものが多ければ、スムーズに受診を勧めやすいでしょう。
もし、検査の結果、軽度認知障害と診断されたらどうしたら良いんでしょう。認知症になると覚悟しておいた方が良いですか?
「認知症になるリスクが高い」ということは理解しておいてください。というのも、軽度認知障害をそのままにしておくと、約5年で半分以上の人が認知症に進行してしまうとされているんです。
5年で半分以上が!?これは覚悟しておかないと…。
ただ、対策をすれば認知症にならずに回復することもあります。1年で16~41%の人が健康な認知機能の状態に戻ったという調査結果もあります。
もし軽度認知障害と診断されたら、大きなショックかもしれませんが、その後の予防が大切。予防法を学んで対策するように心がけてください。
予防法というと、どんなことをすれば良いんですか?
生活習慣の改善が効果的とされています。例えば、栄養バランスの良い食事を意識することですね。塩分や糖分の摂りすぎに気をつけたり、肉や魚、豆類といったタンパク質をきちんと摂ることも大切です。
あわせて有酸素運動も有効です。脳への血流が増えることに加えて、認知症の原因となる糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の予防にもなりますよ。定期的にウォーキングや水泳などに取り組んでみましょう。
認知症の予防というよりは、健康的な生活を心がければ良いんですね。
おっしゃる通りです!「認知症予防」というと、特別なことやストイックに取り組まなければいけないと思いがちですが、全然そんなことはありません。どちらかというと、楽しんでできることの方が脳に良い刺激を与えますから、趣味やレクリエーションを謳歌することが認知症予防につながったりするんですよ。
それに、趣味やレクを通じていろんな人と交流することも予防になりますから、楽しんでできることに取り組んでみてくださいね。
「母が認知症にならないように、いろいろと対策をしなきゃ」と気構えていたんですが、そんな必要なさそうですね。軽度認知障害と診断されても、やっていけるような気がしてきました。
それはよかった!軽度認知障害と言われるとショックを受けてふさぎこんでしまって、余計に状態が悪くなってしまう人もいるんです。
もし軽度認知障害と診断されても、「早めに認知症の対策や心構えができる準備期間をもらえた」と思うと少し気持ちが楽になるかもしれませんね。
確かに。軽度認知障害の段階でわからずに急に認知症と診断される人もいるんですもんね。ちなみに、どんな準備をしておけば良いんですか?
例えば、認知症の症状について知っておくこと。「食事したこと自体を忘れてしまう」「自分がいる場所がわからない」「外出して家まで帰って来れない」といったものが主な症状です。
あわせて、認知症に対しての支援も把握しておきましょう。お住まいの自治体で支援があったり、「認知症カフェ」という認知症のご本人やご家族が集まる場が設けられていることがあります。いざというときにすぐに支援を受けられるように、早いうちに情報を集めておくとかなり気持ちが軽くなると思いますよ。
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