介護施設が入居を断るのは「入居条件が合わない」「医療行為が対応できない」「生活保護に対応していない」などのさまざまな理由があります。
もし受け入れを拒否されても、看護師さんが24時間常駐している施設に問い合わせたり薬の調整をすることで受け入れてくれる施設を見つけられるでしょう。受け入れ可能な施設がわからない場合は、「いい介護 入居相談室」までご相談ください。
父の施設探しを始めたのですが、親の介護をしている友人から「老人ホームに入居を拒否された」と聞き、うちの父も入居できないんじゃないかと不安になっています。
どういう状況だと受け入れを拒否されてしまうんでしょうか?
介護施設は、「正当な理由なく介護サービスの提供を拒んではならない」とされています。なので、基本的には入居を拒否されることはないのですが、以下のようなケースの場合、受け入れを断られてしまうことがあります。
入居を断られる理由はいろいろあるんですね…。
順番にお話ししていきますね。
特別養護老人ホームは、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設で、略して「特養(以下、特養)」とも呼ばれています。公的な介護施設で、次の3つの特徴があります。
特養では、入浴や排泄・食事といった介護のほか、日常生活の介助・機能訓練・健康管理・療養上のお世話などが受けられます。終身での利用ができるため、「終の棲家(ついのすみか)」として選ぶ方の多い施設です。
グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。
「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。
調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。
グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。
入居条件がそんなにはっきり決められているんですね。入居条件に当てはまっていなかったから特養に断られたのかな…。
民間の介護施設のひとつに有料老人ホームという施設もあります。
有料老人ホームの場合、特養やグループホームのように有料老人ホームだけに設定されている入居条件はありません。基本的には、介護認定を受けていない人から要介護5まで受け入れています。
ただ、その施設ごとのケアの方針などによって、特有の入居条件を設けていることがあります。
「特有の入居条件」ですか?どんなものがあるんですか?
これは施設によって全く異なります。例えば、「要介護1以上の人」「介護認定を受けていない自立の人」など要介護度の指定をしていることがあります。
施設ごとに入居できる要介護度を決めているんですね。
そうなんです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった民間施設の場合、入居条件で要介護度を指定して、「自立向け」「重介護度向け」などの特徴を打ち出しているんですね。
そうすることで近い身体状況の人が入居するので、ご入居者がより生活しやすくなるというメリットもあります。
要介護度で入居できるかどうか決める理由がよくわかってなかったんですが、入居する側にもメリットがあるんですね。
また、がんや特定の難病の人に限定して受け入れている施設もあります。そういった施設は、病気を限定して重点的にケアをしているため、対象の疾病を持っている人にとってとても安心できる環境を整えています。
ただ、当然ですが対象の疾病がない人は入居を断られてしまいます。指定の病気に特化した介護施設と言えますね。
また、その人に必要な医療処置に対応できないために、入居を断るケースも。例えば、看護師さんが常駐していないために、医療的処置が必要な人の入居を断ったりすることがあります。
「医療的処置」というと、どんなことなんでしょう?
私が入居相談をお受けしていてよく耳にするのは、インスリン注射やたん吸引が必要な人のお悩み。注射を打ったりたんの吸引するのは医療行為のため、原則として看護師さんがおこないます。介護職員さんでは対応できないんです。
そのため、インスリン注射やたん吸引といった医療処置が日常的に必要な人が、「看護師がいないから」という理由で受け入れを拒否されることは少なくありません。
じゃあ、父もインスリン注射を打っているので、看護師さんが常駐している施設を探さなきゃいけないんですね。
はい、そうなります。ちなみに、お父様は1日に何回インスリン注射を打っていますか?
朝、昼、夕の3回です。
でしたら、もしかしたら看護師さんが24時間常駐している施設でないと対応ができない可能性があります。
というのも、多くの施設では看護師さんの勤務時間が9~18時なんです。夕食後にインスリン注射が必要な場合だと、看護師さんが対応できないので受け入れを断られることがあります。
え!看護師さんが勤務している施設であれば良いというものでもないんですね!
老人ホームでは、医師の指導のもと介護・看護職員が一定の医療的ケアをおこなうことが認められています。しかし、専門性が必要な医療行為は施設内で対応できないため、提携する医療機関などで受ける必要があります。
このため、入居希望者が医療的ケアを必要とする場合、施設の医療体制によっては受け入れを拒否されることがあります。老人ホームを探す際は、まず必要な医療的ケアに対応できるか確認しましょう。
インスリン注射は食前におこなうため、その時間帯に看護師が勤務している老人ホームを選ぶことが大切です。例えば1日1回朝食前の投与が必要な方は、朝食前の時間帯に看護師の勤務シフトが設定されているか確認します。
投与が必要な時間帯に看護師がいない場合は、食事の時間をずらして対応してもらうこともあります。ただし、1日3回以上投与が必要な場合や食事の時間調整が難しい場合は、看護師が24時間常駐する老人ホームを選んだほうが良いでしょう。
糖尿病はインスリン注射だけでなく、継続的な食事療法や運動療法によって血糖値を下げることも大切です。このため、インスリン注射が必要な方の受け入れ実績があり、糖質制限食やカロリー制限食に対応できて運動療法にも力を入れている老人ホームがおすすめです。
インスリンを投与している方は、空腹時や夜間に血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。このため看護師が日中のみ勤務している施設を選ぶ場合は、夜間の急変にどのように対応するかが大切です。
具体的には、夜間も医師の呼び出しが可能か、または看護師の夜間オンコール体制があるかを確認しましょう。
そうなんです。たん吸引に関しても夜間にたん吸引が必要な場合だと、看護師さんが24時間常駐している施設を探すことをおすすめしています。
なるほど…。看護師さんが日中に常駐している施設と24時間勤務している施設では、対応できる医療処置が異なるんですね。
おっしゃる通りです。また、医療処置とは異なりますが、精神疾患を患っている人も入居を断られることがあります。
というのも、統合失調症などの精神疾患がある場合、介護施設という新しい環境になじみにくいことが多く、他のご入居者とのトラブルの種になりかねないためです。冷たいと思われるかもしれませんが、今いるご入居者を守るために受け入れを断っているんですね。
うちの父は精神疾患はありませんが…。介護施設の入居条件ってけっこうシビアなんですね。
他のご入居者とのトラブルを防ぐという意味では、暴力や暴言がある人も入居を断られることが多いです。認知症の人の中には、認知症の影響で暴力・暴言行為をする人がいます。
認知症が原因だとしても、今のご入居者に怪我などがあってはいけませんから、暴力・暴言行為のある人は安全のために入居を断られるケースがかなり多いですね。
認知症の人が無事に介護施設に入居できたとしても、長く生活しているうちに認知症の症状が重度になる可能性があります。その認知症の症状によっては退去を求められる可能性もあります。
ほかの入居者と共同生活を送るうえで、迷惑行為があった場合に退去を求められるのです。
例えば、ほかの入居者への迷惑行為とは、以下が挙げられます。
施設側が入居者の迷惑行為に対して対応をおこなっても改善しない場合は、退去を求められる可能性があります。
実際に入居を検討している施設が見つかったときには、認知症による症状が原因で退去を命じられたケースが実際にあるのかを事前に確認しておきましょう。どういったケースで退去を求められたのかがわかれば、万が一、退去勧告を受けてしまった場合の準備をしておけます。
入居条件や医療・病気に関わること以外の理由で入居を拒否されることがあります。それが、「身元保証人・身元引受人がいない」「生活保護を受けている」ケースです。
身元保証人とは、認知症などによって判断力が低下している人の代わりに意思決定をしたり、緊急時の連絡先となる人のこと。身元引受人はご入居者が亡くなったときの身元の引き取りなどをおこなう人です。身元保証人・身元引受人がいないと入居ができない施設は少なくありません。
そうなんですね…。
そして、生活保護を受けている場合、入居できる介護施設はかなり限られます。そのうえ、受け入れている施設でも、受け入れ人数を限定していることがほとんどなので、入居のハードルがかなり高いと言わざるを得ません。
施設によって生活保護受給者の受け入れ体制はさまざま。また、受給者の地域や世帯の状況によって生活受給額や上限額も異なるため、介護施設を探す時は注意が必要です。
注意点は主に以下の4つです。
入居を拒否されるパターンがいろいろとあることがよくわかりました。でも、どうしたら受け入れてもらえる介護施設を見つけられるんでしょうか?
古川さんのお父様の場合、インスリン注射が施設入居のひとつのハードルになると思います。先ほどお伝えしたように、1日3回のインスリン注射の場合は看護師さんが24時間常駐している施設を選ぶのも良いんですが…。実は、看護師さんが24時間常駐している施設は数が少ないんです。
なので、看護師さんが常駐しているのが日中だけの施設でも対応できるようにインスリン注射の回数を調整したり、注射から飲み薬に変更するのもひとつの手。ただ、これは病気の状態によるので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
薬の調整ができるんですね!主治医の先生に相談してみます。
また、お父様には当てはまらないかもしれませんが、暴言・暴力といった認知症によって入居拒否されている場合も、薬の調整をすることで入居ができるようになることがあります。
認知症は、薬の種類や量を変更することで症状が落ち着く場合があるんです。そのため、かかりつけ医に相談してみると、症状が落ち着いて入居できるようになるかもしれません。
インスリン注射も認知症も、主治医の先生に相談して解決する可能性があるんですね。
そういえば、独自の条件を定めている施設もあるんですよね?それは一つひとつ確認していかないといけないんでしょうか?かなり大変だなぁ…。
各施設に片っ端から電話するとなると、とても骨が折れますよね。なので、そういうときは「いい介護 入居相談室」をぜひ活用してください。希望条件や必要な医療処置を伝えていただければ、知識豊富な入居相談員がまとめて施設側に問い合わせしますよ。
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