はい。所得が少ない人も入れる介護施設はあります。例えば、特別養護老人ホームやケアハウス、介護老人保健施設といった公的施設です。また、介護施設や介護に関わる費用を助成する制度もあるので、積極的に活用しましょう。
もし、公的施設でも入居が難しい場合は、生活保護を受給するのもひとつの方法。民間施設の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では生活保護の方向けの料金プランを用意している場合があり、選択肢が広がる場合があります。
同居している父の認知症が悪化して、もう手に負えません。夜になると「家に帰る」と言って外に出かけようとするので私はおちおち眠っていられないですし、いつの間にか一人で出かけていて警察に保護されたこともあるんです。
こんなことが続いているので、在宅介護をするのはもう難しいかなと思って介護施設に入れたいと思っています。ですが、父の年金は月に8万円もありません。貯金もほとんどないですし、私もそこまで余裕があるわけではなくて…。
父のような低所得者でも入れる老人ホームはあるんでしょうか?
はい。所得の少ない人でも入れる老人ホームはありますよ!
老人ホームには、社会福祉法人などの公的な団体が運営する公的施設と民間企業が運営する民間施設の2種類があります。なかでも公的施設は費用が安く抑えられているので、収入が少ない方でも入りやすいのが特徴なんです。
具体的には、以下のような介護施設があります。
特別養護老人ホームは、要介護3から入所できる施設。介護スタッフが24時間常駐しており、常に介護が必要な場合でも入所できます。また、多くの施設で看取りまで対応していますので、「終の棲家」として選ばれることが多い施設でもあります。
もし父が介護施設に入るとしたら、最期までその施設でお世話してもらおうと思っていました。特別養護老人ホームなら安心して父を任せられそうですね。
認知症の方の受け入れもしているので、安心できると思います。ただ、特別養護老人ホームは安くて看取りまで対応しているとあってかなり人気。入所待ちが100人以上発生していることもありますし、なかには申込みから入所まで1年以上かかるケースもあるんです。
そのため、「今すぐ入所したい」と思っても入れないのが実情。ある程度の余裕がある段階で入所申込みをしておいて順番を待つのがベターです。
特別養護老人ホームにはすぐに入れないんですね。いつ入れるかわからないけど、入所の申込みだけでもしておこうかな…。
介護老人保健施設は、リハビリをすることで在宅復帰を目指す施設です。自宅に戻ることが目的なので、入所期間が限定的なのが特徴。3~6ヵ月に一度、心身の状態の検査をおこない、自宅に戻っても問題ない状態と判断されれば退所を求められます。
そのため、「足腰が衰えたからリハビリをして、再び自宅で生活できるようになりたい」という方にはぴったりなのですが、終身利用をしたい方には向いていない可能性があります。
父は、今のところ足腰が弱った様子がないので、特にリハビリは必要ないと思います。それに、終身利用できないのはちょっと困りますね…。
ケアハウスとは、身寄りがなかったり家族の支援が受けられないご高齢者のための住まいです。
ケアハウスには「一般型」と「介護型」の2種類があります。一般型は食事の提供などの生活支援サービスを提供しており、介護が必要な場合は外部の介護事業所と別途、契約する必要があります。対して、介護型は介護サービスも含まれており、昼夜問わず常駐している介護スタッフによってケアを受けられます。
ただ、介護型ケアハウスは数が少ないうえに人気も高いので特別養護老人ホームと同様、入所待ちが発生している可能性が高いです。
やっぱり、介護体制が整っている施設は人気なんですね。
介護にはいろんなお金がかかりますから、低価格な施設に入る以外にも介護費用を軽減する方法をお伝えしますね。
介護費用を安くする方法があるんですか?
そうなんです。例えば、以下のように介護費用を軽減する制度があるので、ぜひ活用していきましょう。
「特定入所者介護サービス費」は公的施設の利用料の一部を減額する制度。世帯所得によって段階が分けられ、段階によって金額も異なります。
具体的には、以下の5段階に分けられます。
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
特定入所者介護サービス費を利用した際の特別養護老人ホームと介護老人保健施設の金額は以下のとおりです。
特別養護老人ホーム
負担限度額(日額) | |||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1360円 | |
居住費 | 多床室 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 |
従来型個室 | 320円 | 420円 | 820円 | 820円 | |
ユニット型個室的多床室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室 | 820円 | 820円 | 1310円 | 1310円 |
参考:「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
介護老人保健施設
負担限度額(日額) | |||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1360円 | |
居住費 | 多床室 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 |
従来型個室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室的多床室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室 | 820円 | 820円 | 1310円 | 1310円 |
参考:「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
所得によってこんなに金額が変わるんですね…。うちがどの段階に当てはまるのか、家に帰ったら調べてみないと。
「高額介護サービス費」は、1ヵ月に支払った介護サービス費が上限額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度。これも、世帯の所得によって上限額が決められています。
世帯所得と上限額は以下のとおりです。
区分 | 負担の上限(月額) |
---|---|
生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人※1) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
ちなみに、施設入居した際の食費や日常生活費などは対象外。介護サービスに対する費用しか適用されない点は注意してくださいね。
介護に関わる費用だからって、何の費用でも払い戻しされるわけではないんですね。
70歳以上 | 70歳未満 | |
---|---|---|
年収約1160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
年収770万~1160万円 | 141万円 | 141万円 |
年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 |
年収156万~370万円 | 56万円 | 60万円 |
市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 34万円 |
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) | 19万円 | 34万円 |
ここまで、低価格の公的施設や介護費用を抑える制度についてお話ししてきました。ですが、低所得の方は入居先を見つけるのが難しい可能性もあります。
そういう場合は、生活保護を受給することも検討してください。
生活保護ですか!?まだそんな状態ではないとは思うんですけど…。
公的施設は費用が安いために人気があり、すぐには入所できないとお話ししましたね。そのため、比較的に入居待ちが少ない民間施設も検討していただきたいのですが、民間施設は公的施設に比べて費用が高いんです。
ですが、民間施設の中には生活保護を受給している方向けの料金プランを用意しているところがあり、生活保護を受給すれば、民間施設も選択できるようになります。
つまり、生活保護を受ければ公的施設も民間施設も入れるということですね。
おっしゃるとおりです。もちろん、生活保護を受給するには条件がありますし、受給することのデメリットもありますから、一概に生活保護をおすすめしている訳ではありません。
なので、経済状況が逼迫しているのであれば、まずは役所の生活保護担当部署で相談してみるのもアリだと思いますよ。
なるほど…。生活保護については考えたこともありませんでした。生活保護を受給することも含めて、施設探しをしてみようと思います。
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