話が噛み合わなかったり質問をはぐらかすことは、加齢による認知機能の低下の可能性もありますが、認知症の初期症状の可能性もあります。
認知症の初期段階では自分の記憶がなくなっていたり、物事を理解できない異変に気がついています。でも、そうしたことが周囲に知られるのが怖かったりその場の雰囲気を壊さないために、話をごまかしたり合わせることがあるんです。
検査を受けて認知症と診断された場合、まずは介護の体制を整えましょう。お父様がお住まいの地域の役所や地域包括支援センターに介護の相談窓口があるので、そこで要介護認定の申請をしましょう。早い段階から介護サービスを利用しておくことをおすすめします。
先日、半年ぶりに帰省したら、父の様子がおかしくて気になっています。例えば、「病院の予約はいつ?」と聞いたら「そういえば、近所の〇〇さんが体調が悪いらしい」といったように話をかえたり、「ハサミはどこに置いてあったっけ?」と質問したら「今、手が離せないから待って」とどこかに行ってしまうこともありました。
父は80歳を超えていますし、年齢を考えると理解力や記憶力が衰えるのはしょうがないのかな、とは思っているのですが…。高齢になると話が噛み合わなくなったりごまかすことが増えたりするのでしょうか?
おっしゃる通り、年齢を重ねることで理解力や記憶力が低下することはあります。ただ、白井さんの話を聞くと認知症になってしまった可能性も捨てきれません。
認知症ですか!?
話が噛み合わないことが増えたとはいえ、会話が成り立つときがほとんどですし、言葉もしっかりしていますよ。認知症になったようには思えません。
認知症になったからと言って、すぐに言葉が話せなくなるわけではないんです。
認知症の初期段階では会話が成り立つことが多く、発症を見逃されてしまうことも少なくありません。記憶力や理解力が低下している部分もある反面、まだそこまで脳の機能が低下しているわけではないので、自分に異変が起きていることに気がついているケースも多いです。
そうなんですね…。認知症を発症すると、父のように話をごまかしたり話をかえたりすることが増えるんでしょうか?
はい。認知症になると、質問をはぐらかしたり周囲の反応に合わせてやり過ごす「取り繕い反応」が起こることがあります。
これは、記憶力や理解力の低下によって、会話の内容がわからなかったり咄嗟に質問の答えが出てこないことをごまかす反応。代表的なものとしては、「質問をはぐらかす」「言い訳をする」「話をかえる」「笑ってやり過ごす」などがあります。
父に当てはまっています…。
取り繕い反応は、一見、「話を聞いていない」「嘘を言っている」「言い訳ばかりする」など、マイナスなイメージを持ってしまいがちです。しかし、取り繕い反応をする背景には「間違いを言って恥ずかしい思いをしたくない」と自尊心を保とうとする気持ちがあります。
誰しも自分の能力が衰えたことは認めたくないですし、認知機能が衰えていくことへの不安や恐怖を感じるものですよね。それに、取り繕い反応によってわからないことを自分でカバーしているとも言えます。
確かにそうですね。
それに、取り繕い反応には「とんちんかんなことを言ってその場の空気を壊したくない」といった周りへの気遣いも隠れています。
そのため、お父様が取り繕っていると感じたら、責めたり否定したりせずに話を合わせて聞くと、お父様が安心して過ごせるかもしれません。
取り繕い反応に似ている状況とはいえ、まだお父様が認知症になったと決まったわけではありません。なので、早めに認知症検査を受けることをおすすめします。
確かに。まだ、認知症と確定したわけではありませんもんね。ただ、認知症の検査ってどうすれば受けられるものですか?何科を受診すれば良いのでしょうか?
認知症検査を受けられるのは、精神科、脳神経内科、脳神経外科、心療内科、老年科などです。認知症はいろんな診療科で対応しているので、どの病院で検査を受ければ良いのか迷った場合は、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
かかりつけ医であれば、普段のお父様の様子を把握しているでしょうから、異変も感じているかもしれません。かかりつけの医院で認知症検査ができない場合でも、対応している病院を紹介してくれるでしょう。
検査の結果、父が認知症だったらどうしたら良いのでしょうか?介護も必要になるでしょうし…。
まずは、認知症のお父様が一人暮らしでも安心して暮らしていける環境を整えることが重要です。大まかに、以下の2点について対応していきましょう。
今は一人暮らしができていても、認知症が進行したら今までのように1人で生活ができなくなる可能性が高いです。そのため、介護サービスでプロの手を借りましょう。
介護サービスって全然わかりません。どうしたら利用できるんですか?
まず、お父様が住む地域の役所か地域包括支援センターで相談しましょう。
役所には「介護保険課」「福祉課」などの名前で介護を担当している窓口があります。そこで、介護サービスの利用の仕方などを聞いてみましょう。また、地域包括支援センターは、高齢者の生活の総合相談窓口。もちろん、介護のこともイチから相談できますよ。
介護の相談窓口が役所にあるんですね!高齢者の生活相談窓口があるのも知りませんでした。
介護サービスを利用するまでには、いろいろと段階を踏まないといけないんですね。
ちなみに、介護サービスってどんなものがあるんでしょうか?
在宅介護で使える在宅介護サービスは、たくさんの種類があります。その中でも次のものは、主に利用されているサービスです。
こうした介護サービスを組み合わせながら、お父様が1人で生活できるような基盤を作っていきましょう。
意外に思われるかもしれませんが、認知症は規則正しい生活に改善することで症状の緩和や進行が抑制されることがわかっています。
知らなかった!具体的にはどんなことを改善したら良いんですか?
健康的な生活をするために、以下の点に気をつけましょう。
特別なことではないんですね。
そうなんです!「決まった時間に寝起きする」「偏りのない食事をする」など、当たり前のことが認知症の症状を緩和したり、進行を抑えると言われています。
ただ、ご高齢者の一人暮らしだと難しい部分もあると思いますから、介護サービスなどを活用して健康的な生活ができるようにサポートしてくださいね。
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