介護の基礎知識
特別養護老人ホーム(特養)でおこなわれるリハビリ|生活リハビリの内容
「特別養護老人ホームに入りたいけど、リハビリはしてもらえるのかな」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では特別養護老人ホーム(特養)でおこなわれるリハビリについて解説します。合わせて、リハビリが充実した特養の選び方も紹介しますので、特養への入所を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
特別養護老人ホーム(特養)でリハビリがおこなわれる目的
特養のリハビリには「生活をするうえでのサポート」と「廃用症候群の予防」という2つの目的があります。
生活をする上でのサポート
特養では、生活するうえでのサポートをリハビリの一環と考えて、身体機能の維持につながるような支援を重視しています。このことを「生活リハビリ」と言い、以下の動作の際に少しでも入所者が自力でできるようにサポートしています。
食事
口腔ケア
排泄
入浴
着替え
移乗
移動
例えば、排泄時にズボンを上げ下げする、着替えをするなどの行為は、立ち上がりや歩行、座位保持などの基本動作が欠かせません。生活リハビリはこれらの行為を継続してできるようサポートすることをリハビリとしているのです。
特養でのリハビリは、積極的な個別訓練よりも、生活の場の中でのリハビリ(生活リハビリ)が主になります。
廃用症候群を予防
特養のリハビリには、廃用症候群を予防するという目的も。生活全般に介護を必要とする人が多く入所する特養では、廃用症候群を予防していくリハビリが必要とされています。そのリハビリを担当するのが「機能訓練指導員」です。
機能訓練指導員の役割は、入所者の廃用症候群を予防する計画を立てて、機能訓練を実施すること。他職種と連携しながら、身体機能を低下させないための生活リハビリに取り組んでいます。
生活リハビリをおこない、寝たきりの時間が増えないようにすることも廃用症候群の予防につながります。
廃用症候群とは?
廃用症候群とは、活動量の減少によって身体機能が衰えることを指します。病気や怪我などで安静にする時間が長かったり、運動量が減ったりすることをきっかけに、引き起こされる疾患です。
特に高齢者は、もともと筋力や体力が低下しているため、廃用症候群になりやすい傾向があります。例えば、安静な状態で1週間過ごすと、約10〜15%の筋力が低下すると言われており、廃用症候群の回復に長期間を要する可能性もあります。
長期的な安静状態をなるべく避け、積極的に身体を動かすことで日頃から廃用症候群の予防をすることが重要です。
特別養護老人ホーム(特養)でおこなわれる主なリハビリ内容
特養では、さまざまな生活動作を活かしてリハビリをおこないます。ここでは、具体的な生活リハビリの内容について解説します。
入所者の食事中の姿勢を整える
高齢者の中には、体幹の筋力低下によって、食事中の姿勢を保てなくなる人もいます。例えば、椅子に座っていても、おしりの位置が手前にずれ落ちていくケースなどです。
このような状態を避けるために、職員がクッションや枕を使って姿勢を保持することも生活リハビリとして実施されています。
食事中に正しい姿勢を保持できると食事が食べやすくなるため、食事量が増えて必要な栄養量の確保につながります。
また、崩れた姿勢での食事は誤嚥や窒息の原因につながります。食事中の姿勢を整えることで、誤嚥性肺炎などのリスクも軽減できるでしょう。
口腔内の清潔を保つケア
特養では口腔ケアの自立が難しい入所者も多いため、適切なサポートが必要です。なぜなら口腔内が汚れていると、食事量が減少したり、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまう可能性があるからです。
口腔ケアに対する生活リハビリは、洗面台への移動を介助するなど、可能な範囲で自分で口腔ケアができるように支援することです。
洗面台での口腔ケアができない場合は、ベッド上のテーブルに歯ブラシなどの口腔ケア用品を準備し、できる範囲で自分でおこなえるよう環境を整えます。
寝たきりの方など自分で口腔ケアが難しい場合には、介護職員が介助し、歯磨きや義歯の洗浄、口腔内の確認などをおこないます。
寝るときの体勢を整える
ベッド上の姿勢を整える際に入所者自身に腰を上げてもらったり、ベッド柵で身体を支えたりするのも生活リハビリのひとつ。就寝時の姿勢調整は、褥瘡予防や睡眠の質を向上する効果があります。
就寝中は同じ姿勢で過ごすことが多くなるため、身体の一部分に圧力がかかる場合があります。強い圧力がかかると、褥瘡の発生につながるため、事前の予防が重要です。
機能訓練指導員は、入所者が心地よく過ごせるよう体勢を整えながら、自力でできる動作もなるべく引き出すよう支援します。
座る機会を増やす
座る機会を増やすことも生活リハビリです。ベッド上で過ごす時間が多い入所者には、食事や排泄、レクリエーションなど、座る機会を作ることで寝たきりの状態を予防します。
また、ベッドから車椅子、車椅子から椅子に移乗する際は、入所者ができる範囲で自力でできるように支援します。ベッド柵などをつかみ、立ち上がるときに足腰に力を入れることも生活リハビリにつながります。
座る機会を増やし、ベッドから離れる時間が取れると、ほかの入所者や職員との交流が増えるため、精神面にも良い影響を与えるでしょう。
趣味を活かした取り組み
身体を動かすだけでなく、入所者の趣味を活かした生活リハビリにも取り組みます。
例えば、将棋やカラオケ、食器の片付けや台拭きなどのお手伝いなど。機能訓練指導員が入所者の性格や趣味、入所前の生活環境などを考慮して、意欲的に活動できるようなリハビリ内容を考えます。
趣味を生かしたリハビリは、意欲の向上だけでなく、認知機能の維持・改善も期待できるでしょう。
リハビリが充実している特別養護老人ホーム(特養)の選び方
リハビリに力を入れている特養をどのように見分ければ良いのか、疑問を持つ方もいるでしょう。
ここではリハビリが充実している特養の選び方について解説します。
機能訓練指導員が多い
機能訓練指導員が多く配置されている施設ほど、入所者のリハビリに力を入れていると言えます。
特養の機能訓練指導員の配置基準は、入所者100人に対して1人と定められています。
しかし、100人の入所者を1人の職員で訓練することは難しいため、施設によっては複数名の機能訓練指導員を配置している場合があります。そのため機能訓練指導員の配置数は、施設のリハビリの充実度を見分けるポイントのひとつです。
なお、機能訓練指導員は以下の資格を持つ人を指します。
【機能訓練指導員に必要な資格一覧】
看護師または准看護師
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)
あん摩マッサージ指圧師
柔道整復師
鍼灸師(鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設にて半年以上の実務経験が必要)
リハビリの充実度が高い
特養のリハビリの充実度は、機能訓練指導員の職種や人数、機能訓練室の有無などでも判断できます。
理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が機能訓練指導員として勤務していれば、より専門的で充実したリハビリが受けられるでしょう。
しかし、機能訓練指導員は、看護師などリハビリの専門職以外の職種でも担うことができるため、特養によってはリハビリ専門職ではない場合があります。
より専門的なリハビリを受けたい人は、入所前にどのような職種が機能訓練指導員として配置されているか確認すると良いでしょう。
また、施設のリハビリ環境もリハビリの充実度を判断するポイント。機能訓練室が設置されているか、リハビリ器具が揃っているかなどを確認しましょう。
職員の人員配置が手厚い
職員の人員配置が手厚い特養は、生活リハビリをおこなう体制が整っています。
職員の配置が最低限の施設では、職員一人ひとりの業務量が多くなってしまうため、結果として、利用者の生活リハビリに関わる時間が少なくなってしまうでしょう。
人員基準を上回る職員を配置する特養であれば、職員がゆとりを持って生活リハビリにあたることができるため、充実したリハビリを受けられます。
リハビリに特化した「介護老人保健施設」もある
介護保険施設の中には、リハビリに特化した「介護老人保健施設」もあります。
介護老人保健施設は、要介護高齢者の中でも医療的ケアやリハビリを必要とする方が入所する施設。医師や看護師も配置されているため、医療的ケアが充実しています。
さらに、理学療法士や作業療法士などリハビリ専門職の配置が義務付けられているため、専門的なリハビリが受けられます。
ただし、介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設であるため、長期的な入所はできません。原則として入所期間は、3~6ヵ月と決められています。
よくある質問
特養ではどんなリハビリがおこなわれていますか?
特養では、生活上のサポートを中心とした生活リハビリがおこなわれます。食事介助や口腔ケアなどの中で、自分のできる動作を促すことも生活リハビリの一環です。
特養でのリハビリの時間や頻度はどれくらいですか?
特養のリハビリ頻度は施設によってさまざまです。1日に1回20分ほどの個別リハビリを週2〜3回おこなう施設や、個別リハビリはおこなわず生活リハビリのみに力を入れている施設もあります。
機能訓練指導員とはどんな人ですか?
機能訓練指導員とは、心身機能低下の予防目的で訓練をする職員です。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師またはあん摩マッサージ指圧師などの資格を持つ人が配置されます。
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2024/04/09