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同居している母の認知症が進行して手に負えないので、精神病院に入れようか迷っています。こんな理由で入院させて良いものなんでしょうか? 母は、体は元気なんですが、認知症のせいでトイレがわからなくなって廊下でおしっこしたり、夜中に大声で騒ぎながら家の中をうろうろするといった状況です。興奮すると手をあげることもあります。 特に私が仕事でいない時間は父と2人になるため、父の負担が大きいんです。高齢の父には手に負えないので精神病院に入院できないかと思っています。 (塚本さん・会社員・56歳) 「家族による介護が難しいから」という理由で精神病院に入院することはできます。在宅介護サービスを使っても症状に対応できない場合などに、認知症の治療のためにご家族の意思で精神病院に入院させるケースは少なくありません。認知症の治療には、「薬物療法」と「非薬物療法」がありますが、これは病院だけではなく、ご自宅でもできる治療です。そのため、まずはかかりつけ医にご自宅で症状の緩和をする治療ができないかを相談してから入院するかどうかを判断されることをおすすめします。 精神病院で認知症治療の入院が認められるケース 認知症の母の症状が悪化して、私たち家族では手に負えなくて…。トイレの場所がわからなくなって廊下でおしっこするし、夜中に大声で騒ぎながら家の中をうろうろするから眠れないし…。それに興奮すると私や父に手をあげることもあるんです。デイサービスやショートステイを利用しようと思ったのですが、こんな状態なので断られてしまって。どうしようもないので精神病院に入院させるしかないかな、と思っています。こんな理由で入院させて良いのでしょうか? はい。ご家族での介護が難しいことを理由に、お母様が精神病院に入院することは可能です。精神科では入院に関して制度が設けられており、ご本人の了承がなくても入院が可能になっています。具体的には、入院が必要な状況でご家族の同意がある「医療保護入院」や、自傷・他害のおそれがあって都道府県知事の権限が行使される「措置入院」などが当てはまります。例えば以下のような状況の場合、ご本人の同意がなくても入院が認められることがあります。 家族の介護が難しい場合 暴力を振るう可能性がある場合 そのほか医師が入院が必要と判断した場合 家族での介護が難しい場合 塚本さんのご家庭のように、認知症の症状が進行してご家族での介護が不可能になった場合、ご本人の承諾がなくても精神病院への入院が認められることがあります。特に認知症の方による深夜徘徊があると、介護施設でも受け入れを断られることがあります。そうなるとご家族だけで介護をしなければいけませんが、その負担がとても大きいですよね。そのため、入院による治療を目的に入院が認められる場合があります。 これは母に当てはまりそうです。母は、おそらく入院に了承しないでしょうから、家族が同意して入院する「医療保護入院」になりそうですね…。 暴力を振るう可能性がある場合 認知症の症状によって暴力を振るう場合も、入院が認められることがあります。ほかのご利用者やスタッフに暴力・暴言行為をする可能性のある方は、多くの介護施設で受け入れできません。一度、受け入れられたとしても、利用停止や退去を求められるケースも少なくありません。そうした場合には、治療によって症状を落ち着けるために入院治療を認められることが多いです。暴力・暴言行為があるとご家族の負担が大きいので、入院によって距離を置いたり、薬物療法によって症状を緩和するのも良いと思います。 母も興奮すると手をあげることがあるので、それを理由にデイサービスとショートステイを断られてしまいました。やっぱり、入院させた方が良いのかな…。 そのほか、医師が入院が必要と判断した場合 「家族での介護が難しい場合」「暴力を振るう可能性がある場合」以外にも、医師の判断によって入院が認められるケースもあります。具体的には、食事が摂れなくなったり拒否したりする摂食障害が起きている場合や、幻聴・幻覚によって生活に支障が出ている場合などです。 認知症のせいで食事を拒否したり幻覚などが出ることがあるんですね。今のところうちの母にはありませんが、そんな症状が出たら家族で対応するのは大変ですよね…。 病院での認知症の治療内容 もし、母が精神病院に入院するとしたら、どんな治療がおこなわれるんでしょうか? 認知症の治療方法は、「薬物療法」と「非薬物療法」に分けられます。詳しくお話ししますね。 薬物療法 認知症の薬は、主に4種類あります。効果としては、脳内の神経伝達を助けたり精神を落ち着けることで、認知症の進行を遅らせたり症状を抑えることを目的としています。認知症の薬ではあるのですが、認知症を完治させる薬はまだないのが実情なんです。 えっ、認知症を完治させる薬はないんですね!知らなかった…。 そのほかにも、ご本人の心身の状況を考慮して抗うつ薬などが処方されることもあります。 非薬物療法 非薬物療法って薬を使わない治療法ってことですよね。イメージができないのですが…。 非薬物療法は、リハビリテーションなどによる治療のことです。さまざまな治療法がありますが、主には以下のような治療をおこないます。 回想法 音楽療法 園芸療法 芸術療法 ペットセラピー 多くの治療法は、レクリエーションのように楽しみながらできるのが特徴。音楽や会話、園芸などを通して脳の活性化を図ります。また、レクリエーションによってご本人の精神が安定することで、「問題行動」と呼ばれる徘徊などの行為を軽減を目指します。 楽しみながらできるのか…。薬を使わない治療法も良いですね。 はい。ただ、入院しなくても薬物療法と非薬物療法のどちらもおこなえます。そのため、「介護が大変!入院させよう」とすぐに決めつけるのではなく、まずはかかりつけ医に在宅介護でも症状が軽減できる方法がないか相談してみてください。 そうなんですね。母のように認知症の症状がひどくなったら、精神科に入院するしかないと思っていました。とりあえず、かかりつけの先生に相談してみようと思います。 認知症の治療のために精神病院に入れることは可能 暴力を振るったり家族での介護が難しい場合に入院が認められることがある 入院での認知症治療は、薬物療法や非薬物療法などがある pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; ...
2024/03/14
認知症の親御さんを介護している友人が、「認知症のせいでショートステイを断られた」と言っていました。そんなことはあるんでしょうか? 私も認知症の父を在宅介護しており、ショートステイの利用を検討しています。しかし、友人の話を聞いて、父もショートステイの利用を断られてしまうのでは、と不安です。 (坂井さん・会社員・57歳) 認知症の症状によっては、ショートステイの利用を断られることはあります。具体的には、ほかのご利用者やスタッフさんに暴言や暴力を振るったり、帰宅願望によって落ち着きがないといった症状です。ただ、ほかにも施設が定員オーバーであったり医療行為が対応できないといった認知症と関係ない理由で断られる場合もあります。そのため、もし利用を断られたらまずは受け入れ拒否の理由を確認しましょう。もし、医療行為がある場合は一般的なショートステイの利用を断られる可能性があります。そのときは、医療型ショートステイ(短期入所療養介護)の利用も検討してください。 ショートステイ利用を断られる理由は? 認知症の親御さんを介護している友人が「ショートステイを断られた」と言っていました。そんなことってあるんでしょうか?私も認知症の父を介護しており、ショートステイの利用を考えています。もしかしたら、父もショートステイを断られてしまうのでは、と不安になって…。 どういった理由でショートステイを断られたんでしょうか? うーん、理由についてはよく聞いていないですね…。 法令上は、「正当な理由なく介護サービスの利用を断ってはいけない」とされています。が、正当な理由がある場合は、ショートステイの利用を断られることはありえます。 「正当な理由」ってどんな理由ですか? 厚生労働省は、以下のようなものが「正当な理由」にあたるとしています。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 引用元:厚生労働省 老健局「介護保険最新情報 Vol.920 令和3年2月8日」 わかりにくい言い回しなので、ひとつづつお話ししますね。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 「当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合」というのは、つまりは定員オーバーになってしまう場合です。ショートステイに限らず、介護サービスにはサービスを提供できる定員が決められています。これはサービスの質や安全性を確保するために守らなければなりません。そのため、利用を希望するショートステイが定員を満たしている場合は利用を断られてしまうでしょう。 なるほど。安全のためなら定員は守らないといけないですね。 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 「利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合」というのは、ショートステイでは主に送迎のエリア外である場合が当てはまります。たいていのショートステイは自宅への送迎も含めてサービス提供しています。しかし、ご利用者の家を順番に車でまわって送迎するので、送迎可能エリアを指定していることが多いんです。そのため、送迎エリア外の場合は利用を断られる可能性があります。ただ、このケースではご家族がショートステイの建物まで送り迎えすることで利用可能になることも。ご家族で送迎ができるなら解決できるかもしれません。 ショートステイで送迎もしてくれるんですね。確かにあまりに遠い地域だと送迎までできないですもんね。 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 ご家族が頭を悩ませることが多いのが、「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」です。これは、つまりショートステイ側が対応しきれない状態のため利用を断るケースです。 「ショートステイ側が対応しきれない」とはどういうことですか? 認知症の方の場合、症状によってはショートステイで対応できないことがあります。具体的には、ほかのご利用者やスタッフさんに暴力・暴言がある、帰宅願望が強くて落ち着かないといったケースです。 うちの父はほかの人に手をあげたり暴言を吐いたりすることはないと思いますが、落ち着きがないときはありますね…。 認知症の受け入れ状況はショートステイによって大きく異なりますから、事前に確認してくださいね。また、インスリン注射や喀痰吸引といった医療行為が必要な場合も受け入れできないことが多いです。もし医療行為が日常的に必要な場合は、ショートステイに確認してくださいね。 ショートステイを断られたらどうすれば良い? ショートステイを断られる理由についてよくわかりました。もし、父がショートステイを断られたらどうしたら良いんでしょうか? もしショートステイを断られたら、次の順番で落ち着いて対応しましょう。 受け入れ拒否の理由を確認する ほかのショートステイを探す 1.受け入れ拒否の理由を確認する そのショートステイが定員オーバーなのか、送迎エリア外なのか、認知症の症状や医療行為が対応できないのか…受け入れを断られた理由を施設にはっきり確認しましょう。送迎エリア外の場合など、ご家族が送迎することで解決することもありますし、断られた理由をはっきりさせることで次のショートステイを探すときの判断材料になります。 確かに。なぜ断られたかわからないと、次にどうしたら良いかわからないですもんね。 2.ほかのショートステイを探す 定員オーバーや認知症の症状といった、こちらで解決できないことでショートステイを断られた場合、別のショートステイを探しましょう。 でも、もし認知症の症状が理由で断られた場合、ほかのショートステイでも受け入れてもらえないんじゃないですか? いえ、認知症の症状の受け入れは施設によって異なるんです。以前にも同様の症状を持つ方を受け入れた実績がある施設なら利用できるでしょうし、人員体制などによっても受け入れ状況が変わりますから。 そうなんですね!じゃあ、まずはショートステイに父の認知症について相談する必要がありそうですね。 それに加えて、医療行為が必要な場合もショートステイに相談してください。インスリン注射や喀痰吸引、経管栄養といった医療行為が日常的に必要な場合、一般的なショートステイだと受け入れてもらえない可能性があります。 うちの父は特に医療行為は必要ありませんが…。もし医療行為が必要になったら、ショートステイは利用できないんでしょうか? 一般のショートステイのなかには、医療行為も対応可能な施設はあります。もし、医療行為を理由にショートステイを断られた場合は医療型ショートステイ(短期入所療養介護)も検討してみると良いかもしれません。医療型ショートステイは、医療行為にも対応しているショートステイ。インスリン注射、経管栄養、喀痰吸引などにも対応しています。また、認知症やリハビリ、終末期のターミナルケアも対応しているなど、医療体制が整っている施設なんです。 へぇ!それは安心ですね。 医療型ショートステイのサービスを提供しているのは、主に以下の施設です。 介護老人保健施設 介護医療院 病院 これらの施設では医師や看護師が常駐しているなど、医療ケアが充実しています。そのため、医療行為が理由でショートステイを断られた方でも受け入れが可能だと思いますよ。ショートステイは施設によって受け入れ状況が大きく異なります。とある施設が受け入れNGだったからといって別の施設もNGとは限りません。まずは、受け入れを断られた理由をはっきりさせて、別のショートステイを検討してみてくださいね。 施設側は正当な理由なくショートステイの受け入れ拒否はできない 定員オーバー、送迎対象外地域、対応が難しい症状といった場合に断られることがある 断られたら、理由を確認してほかのショートステイを探そう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: ...
2024/02/29
最近、父の認知症が急に進んだような気がしています。父は物忘れはあったものの、トイレや着替えといったことは自分でできていました。でも、この数週間くらいでトイレの場所がわからなくなって廊下でおもらししてしまったり、服の着方がわからず、洋服が乱れていることが何度もありました。 父の認知症の症状が一気に進んでしまったのでしょうか?そもそもそんなことってあるのでしょうか? (神谷さん・パート・59歳) 認知症の進行は人それぞれなので一概には言えませんが、症状が急に進むことはありえます。特に血管性認知症の場合、脳の血管の損傷部分が広がったタイミングで進行するので、「急に症状が進んだ」と感じることがあります。また、失敗を責められたり環境の変化などでストレスがかかることで認知症が進行することもあります。認知症の進行を抑制するには、規則正しい生活や人との交流を持つ機会を作ることが大切。認知症だからと言ってこもりきりにならないように気をつけましょう。 認知症が一気に進む原因は? 最近、父の認知症が急に進んでしまったような気がして心配です。以前は物忘れはあるものの、着替えやトイレといった身の回りのことは自分でできていました。ですが、この数週間、服の着方がわからないのか、ボタンをちぐはぐにかけていたり洋服が乱れていることが増えました。それに、この間はトイレの場所がわからなくなって廊下でおもらししてしまったんです!今までこんなことありませんでした。この数週間で一気に認知症が進んでしまったのでしょうか?そもそも、そんなことはありえるんでしょうか? 認知症の進行は個人差が大きいので一概には言えませんが、症状が一気に進むことはありえます。例えば、以下のようなことが原因で症状が進んでしまうことがあるんです 脳血管性認知症の特性によるもの 脳への刺激不足 精神的なストレス 脳血管性認知症の特性によるもの 認知症のなかでも脳血管性認知症の場合、症状が段階的に進行するため、「一気に認知症が進んだ」と感じることがあります。というのも、脳血管性認知症は脳血管の損傷によって起こる認知症です。そのため、脳の血管の損傷が増えたタイミングで症状が進行することも。ついこの間までできていたことが急にできなくなったり、その状態のまましばらく状況が落ち着いていたり…と段階的に症状が進むのが特徴なんです。ちなみに、お父様は脳血管性認知症でしょうか? いえ、アルツハイマー型認知症と診断されています。なので、これは父には当てはまらなさそうですね… 脳への刺激不足 認知症が進行する理由として、脳への刺激不足もあります。これまでご自分でやっていた家事や家計の管理などをご家族が代わりにしてあげたり物事を考える機会が減ると、脳への刺激が不足してしまって症状が進行してしまうんです。 脳への刺激不足ですか…。確かに、以前は父も掃除や土いじりといったことをよくやっていました。でも認知症になってからは全然やってないですね。確かに家族がやってしまっていたかも。 精神的なストレス 精神的なストレスも認知症が進行する原因になりえます。ストレスが溜まると記憶力がさらに低下したり、感情のコントロールができなくなったり注意力が散漫になることもあります。 ストレスで認知症が悪化してしまうなんて…。どんなことがストレスの原因になるんでしょうか? 例えば、以下のようなときにストレスを感じやすいです。 失敗を何度も責められる 引っ越しなどで暮らす環境が変わった パートナーの死別など人間関係に変化があった 外出の制限がある 何をするにも家族に付き添いをされる 認知症の影響や老化によって、できないことが増えていきますよね。当然、これまで当たり前にできたことができなくなったり時間がかかることもあるでしょう。それを「ちゃんとやって!」「早くして」と責められたり急かされたりすることが大きなストレスになることがあります。認知症の方はどうしてできないのか自分でもわからない場合や、そもそも失敗を記憶していない場合もあるので、責められたり急かされたりすることが余計にストレスを感じやすいんです。 そうなんだ…。私に余裕がないときは、父がちゃんとできないのを見てイライラして責めてしまって。それが原因で認知症が悪化したのかな…。 ほかにも、暮らす環境や人間関係の変化も認知症の方にとって大きなストレスになることも。認知症になると新しい物事の記憶が苦手になります。そのため、引っ越しなどで生活環境が変わったり、身近な人が亡くなったりした際に慣れるのにより時間ががかかるんです。誰でも、気が付いたら知らない場所にいたり、いつのまにか身近な人が亡くなっていたら不安になりますよね。新しい出来事の記憶が難しい認知症の人にとって、環境の変化は大きなストレスになることが想像できると思います。 つまり、認知症の人は新しいことをすぐに忘れてしまうから、環境が変化したことを覚えていないんですね。確かに、それだったらものすごいストレスかも。 また、行動が制限されることもストレスの原因のひとつ。外出を制限されたり、やりたいことを自由にできない状況だとストレスを感じてしまいます。 そんな状況だったら誰でもストレスが溜まると思います。 おっしゃる通りです。ですが、高齢になったり認知症になると、「危ないから」と行動を制限することが増えてしまいがちですよね。例えば、料理や掃除といった家事や1人での外出を制限しているご家庭は多いと思います。もちろん、危険性を考えたら制限しないといけないことはあります。しかし、必要以上に制限するとストレスが大きくなって認知症進行の原因になってしまうこともあるんです。 認知症の進行を抑える方法 認知症が一気に進んだ理由について、思い当たることがいくつかありました。これ以上、認知症を悪化させないようにするにはどうしたら良いですか? 残念ながら、完全に認知症の進行を止める方法は見つかっていません。が、認知症の進行をゆっくりにすると考えられる方法はあります。例えば、以下のような方法です。 規則正しい生活にする 人との交流を増やす 規則正しい生活にする 認知症の症状は、いわゆる体内時計(概日リズム)が乱れることでも悪化してしまうことが知られています。そのため、決まった時間に起床・就寝したり、食事を摂ることで体内時計を整えていきましょう。また、栄養バランスの良い食事を摂ることでも認知症の進行が抑えられることがわかっています。朝・昼・夕の3食きちんと摂ると生活リズムを整えやすくもなりますよ。 健康的な生活が認知症の進行を抑えるんですね! おっしゃる通りです。また、日中に運動を取り入れることで程よく疲れて、夜に眠りやすくなります。体を動かすのはストレス解消にもなります。散歩などの軽いもので良いので、運動を習慣にしましょう。 人との交流を増やす 先ほど、認知症が進行する原因のひとつとして脳の刺激不足があるとお話ししましたね。人と交流することは脳の刺激になるので、ぜひご家族以外の誰かと交流する機会を作っていただきたいんです。例えば、近所の人でも良いですし、普段は離れて暮らしているご親族に顔を出してもらうのでも良いでしょう。もしくは、在宅介護サービスであるデイサービスを利用するのもおすすめです。デイサービスなら体操やレクリエーションをする機会もあるので、体を動かしたりする時間を増やせますよ。 デイサービス、良いですね。今まで在宅介護サービスって使ったことがなかったのですが、デイサービスを利用してみるのも良いかもしれないです。 認知症は症状や進行状況に大きな個人差がある病気です。薬などによって治療する必要がある場合もあるでしょう。そのため、「いつもと違う」「今までできたことができなくなった」と感じたら、病院に行くことも大切です。症状に変化があったらすぐに対応できるように、お父様とのコミュニケーションは欠かさないでくださいね。 新たな病気、脳の刺激の減少、責められるなどが原因で認知症が進行することも 認知症の進行を遅らせるには、生活習慣を見直す、人との交流を増やすなどの方法がある pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: ...
2024/02/27
3ヵ月ほど前には母が自宅で転倒し入院し、一人で歩くのが難しくなって介護が必要な状態になってしまいました。家の中を歩くのにも付き添いが必要なので、トイレもお風呂も私が介護しています。 車で1時間ほどのところに妹と弟が住んでいますが、介護を手伝う気はまったくなし。最近では、私が母の介護の話ばかりをするせいか、電話をしても妹や弟につながりにくくなってしまって。つながっても、母のことで口論となってしまって…。 母の介護が始まる前はここまで仲の悪いきょうだいではなかったのですが…。介護が始まって関係が悪くなってしまったような気がします。このままでは家庭崩壊してしまうかもしれません。どうしたら良いですか? (小笠原さん・パート・65歳) それは大変な状況ですね…。家庭崩壊をしてしまう前に、対策をとっておきましょう。それは「家族で役割分担をする」「介護サービスを活用する」といったものです。週1回でも手伝いに来てもらったり、ごきょうだいに直接的な介護の支援をしてもらえなさそうなら金銭面での援助を求めたりなどの役割分担が大切です。そうしないと、小笠原さんの負担が大きくなり、共倒れになってしまいます。また、介護サービスを活用するのも大切。すでに利用していても介護サービスの量を増やすことで、負担がかなり減ると思いますよ。 介護で家庭崩壊してしまう対策と原因 3ヵ月ほど前に母が自宅で転倒してから、介護が必要な状態になってしまいました。なんとか歩けるものの、手すりにつかまったり私が手を引いたりしないといけないですし、足元がおぼつかなくて危険です。なので、トイレに行くのもお風呂に入るのも、私が介助しています。こんな状況なのに、妹と弟は手伝う気が一切なし。「仕事が忙しい」「姉さんに任せた」と言って、私に丸投げなんです。車で1時間ほどのところに住んでいるので、来れない距離じゃないのに…。最近では、電話しても出てくれないことも増えたし、出たと思ってもすぐに口論になってしまって。母の介護が始まる前はそこまで仲の悪いきょうだいではなかったんです。このままでは関係が悪くなって家庭崩壊してしまうかも…。どうしたら良いでしょうか? それはおつらい状況ですね…。介護が原因の家庭崩壊を避けるためには介護体制を整えることが大切です。具体的には以下のような方法です。 家族で役割分担をする 介護サービスを活用する 費用の減免制度を活用する 家族で役割分担をする 介護によって家庭崩壊をしてしまう原因のひとつに、家族で話し合いができていないことがあります。小笠原さんのお母様の場合、急に介護が始まってしまったので介護の役割分担などの話し合いができなかったと考えられますが…どうでしょうか? はい、その通りです。でも、今の状態ではろくに話し合いもできない気が…。 ごきょうだいと話し合いができない理由のひとつに、介護に関わっていないほかのきょうだいが事態の重大さを把握していないことがあります。特に転倒などで急に介護が必要となったケースでは、お元気だったころの親御さんの姿のイメージしかないので、介護が大変なことを理解できていない可能性も。親御さんの状況を直接見ていない場合ならなおさらです。 妹も弟も転倒した直後に一度、母の入院先にお見舞いに来たきりです。家での様子は見てはいないですね。私がいつも電話で母の様子を伝えていますが、それでは足りないんでしょうか? 私が多くの方のご相談を受けた経験からお伝えすると、妹さんも弟さんもお母様はもっと軽い状況だと思っている可能性が高いですね。そのため、まずは妹さんと弟さんにお母様の今の状況を見てもらって、そのうえで顔を合わせた状態で話し合いをすることをおすすめします。介護の大変さが伝わると思いますよ。 そこまでしないといけないんだ…。 また、役割分担をする場合は、妹さんや弟さんにお願いしたい内容を具体的に伝えることが大切。例えば、「週に2回は手伝いに来てほしい」「通院の送り迎えをしてほしい」といった内容です。もしかしたら、仕事や家庭のことでどうしても直接的な手伝いができないケースもあるでしょう。その場合は、多めに介護費用を出してもらうといった方法もありますよ。 なるほど…。今まで「手伝って」としか言っていなかったかも。頼みたいことを具体的にしておきます。 介護サービスを活用する 介護の負担は中心となって介護をしている人に集中してしまいがちです。そのため、積極的に介護サービスを活用することをおすすめします。特におすすめなのは、ショートステイ。1日から介護施設に宿泊できるサービスで、最大30日連続で利用できます。ご家族が体調不良などで介護できないときはもちろん、息抜きのために利用している人も多いですよ。 息抜きのために利用できる介護サービスがあるんですね! そうなんです!在宅介護は負担が大きいものです。ご家族だけで介護をするのはかなり厳しいので、ショートステイを使って、適度に休憩をしていきましょう。また、お風呂の介助が必要ならデイサービスもおすすめ。これは、介護施設に通って9~16時の間を施設で過ごせるサービスで、入浴介助も受けられるんです。そのため、週に2~3回利用して、お風呂をデイサービスで済ませている方も少なくないんですよ。 へぇ!お風呂に入れてくれるのは助かります。うちのお風呂は狭いし、滑って危ないので…。 今、お話ししたものも含めて、在宅介護をしている方が利用できる主な介護サービスには以下のようなものがあります。 訪問介護 デイサービス ショートステイ 福祉用具の貸与 福祉用具の購入 費用の減免制度を活用する 介護は思った以上にお金がかかるものですよね。そのため、介護によって経済的に苦しい状況になってしまうこともありえます。そこで、介護費用の減免制度を活用していくことが大切です。 介護費用の減免制度なんてあるんですか! そうなんです。例えば、以下のようなものがあります。 高額介護サービス費 高額医療・高額介護合算療養費制度 医療費控除 特定入所者介護サービス費 社会福祉法人などの利用者負担軽減制度 これらの制度は、上限額を超えて介護サービス費や医療費を支払った場合に払い戻しや控除が受けられるものです。また、特定の施設に入居すると利用料が減額されるものもあります。上限額や減額は所得に応じてそれぞれ設定されています。詳細は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 家族内で家庭崩壊を解決できないときは… もし、妹や弟と話し合いができなくなってしまったらどうしたら良いでしょうか? そうですね…。最終手段としては、家庭裁判所で「扶養請求調停」を申し立てる方法があります。法律上、直系血族やきょうだいはお互いに扶養義務があるとされています。その義務を果たさなかったり、扶養義務がある人同士でお互いの支援について話し合いでまとまらない場合に、家庭裁判所が間に立って調停するものです。具体的には、家庭裁判所が小笠原さんや妹さん、弟さんなどの話を聞いたうえで、お母様への支援として「毎月何万円支払う」といった提案がなされます。もしそれでも合意されなかった場合は、家庭裁判所が法律的に妥当な方法を指定して審判がされます。つまり、家庭裁判所に強制的に介護の負担を決められてしまいます。 そんなことになってしまうんですね…。そうならないように、家族での話し合いが大切ということですね。 参考:「扶養請求調停」(裁判所) 介護で家庭崩壊するとどうなる? 考えたくはないことですが、妹や弟との関係がさらに悪くなって家庭崩壊してしまったらどうなるんでしょうか? 妹さんや弟さんと完全に縁が切れてしまって、小笠原さんが介護のすべてを担うことになるでしょう。今後、お母様の状態が進行したら、さらに介護の負担が大きくなることが考えられます。そのため、以下のような状態になってしまう危険性があります。 経済的に困窮する 親を虐待する 介護うつを発症する 経済的に困窮する ほかのごきょうだいからの支援がないとなると、経済的に困窮する可能性が考えられます。先ほどもお話しした通り、介護にはお金がかかります。そのうえ、ほかのご家族から直接の介助や経済的な援助という形でサポートがないと、介護をする人だけのお金と時間を使わないといけなくなります。お母様の蓄えが十分にある場合は問題ないと思います。が、そうでない場合は、介護の時間を作るために仕事を辞めて、収入が減ったから節約するために自分で介護をして…といった負の連鎖になってしまう可能性も考えられます。直接的な支援がごきょうだいから得られなくても、経済的支援があれば介護サービスを使って負担が減らせます。経済的支援があるかないかで介護の負担は大きく変わるんです。 親を虐待する 介護をしている親を子どもが虐待するというニュースは見たことありますが…。 はい。高齢者虐待はテレビなどでも取り上げられていますからご存知だと思います。こうした高齢者虐待の原因の多くは介護によるストレスなんです。特に一人で介護をしている場合の心身のストレスは莫大です。そうしたストレスが親御さんに向いて、虐待という結果になってしまったケースが少なくありません。 つまり、ニュースで見る高齢者虐待は親子仲が悪かったわけではないんですか? はい。必ずしも親子関係が悪いことが虐待の原因になっているわけではありません。むしろ「私がちゃんと最期まで介護をしないと」と、考えているお子さんに限って虐待をしてしまうとも言われています。そうした悲しい事態を避けるためにも、ご家族で分担して介護をおこなってくださいね。過去に親御さんに手をあげてしまった方のご相談も乗っています。参考にしてみてください。 介護うつを発症する 一人で頑張りすぎた結果、介護うつになってしまう危険性もあります。介護うつとは介護が原因で発症するうつ病のこと。心身のストレスや疲労が溜まった結果、発症してしまうものです。 私もこのところの介護で疲れていて。介護うつになってしまうんでしょうか…。 介護うつは早期発見が大切です。介護うつの症状をまとめましたので、思い当たるものがあったらまずは介護を休んで、心身をリフレッシュする時間を作りましょう。 食欲不振 睡眠障害 疲労感 焦燥感 思考障害 そういえば、最近、寝付きが悪いかも。それに疲労感は常にあるし…。母が転倒してからずっと介護のことばかりだったので、ちょっと休憩するタイミングなのかもしれませんね。 はい、定期的に”介護休み”を作って休憩しましょう!もしすぐにごきょうだいの支援がもらえなさそうであれば、ショートステイなどの介護サービスを活用して、”介護休み”を作るのもおすすめの方法ですよ。 家族で話し合いできていない、介護者の心身疲労、経済的困窮で家庭崩壊をしてしまうことも 家族間の話し合い、介護サービスの利用、費用の減免制度や家族からの経済的支援によって対策をしよう 家庭崩壊すると経済的困窮、親への虐待、介護うつなどに陥る危険性がある pre { margin: 40px 0; background: ...
2024/02/09
半月ほど前に母が亡くなり、実家に父が1人で残されてしまいました。父は80歳を超えていますが、体は元気だし頭もハッキリしています。が、家事を全部母に任せっきりだったせいで、家のことは何もできません。 こんな状態の父は一人暮らしできるでしょうか。母の葬式が終わってから1週間ほどは私が実家に残って身の回りの世話をしていたのですが、父に「もう良いから帰れ」と言われてしまって帰ってきました。 同居も考えましたが、自宅の広さを考えると難しくて…。今後、どのようにサポートしていけば良いでしょうか? (宮下さん・会社員・57歳) まずは、お父様の希望を確認しましょう。一人暮らしを続けたいのか、同居したいのか…。ご高齢ですから、介護が必要になったときのことも合わせて話し合えると良いですね。ご高齢者の一人暮らしには、転倒による怪我や低栄養、認知症や火の不始末による火事といったリスクがあります。お父様が一人暮らしをする場合は、一人暮らしのリスクを念頭に置いたうえで対策をとっていきましょう。 親の一人暮らしは手を出しすぎない方が良い 母が半月ほど前に亡くなり、父が実家で一人暮らしを始めました。ですが、これまで父は家事を母に任せきりで何もできない人です。なので、今後一人暮らしができるのかどうか…とても心配です。母の葬式が終わってから1週間は私が実家に残って父の世話をしていたのですが、父に「もう良いから帰れ」と言われてしまい、自宅に帰らされました。同居も考えたものの、夫や娘がいることもあって我が家で暮らすのはスペース的に難しいです。でも、やはり父の一人暮らしが心配で。父も80歳を超えているので何があるかわかりませんし…。これから、どうやって父をサポートしていけば良いでしょうか? ご高齢のお父様の一人暮らしは心配ですよね…。ですが、まずはお父様がどうしたいのかを確認しましょう。一人暮らしをしたいのか、宮下さんご家族と同居したいのか…。ほかにも「こうしたい」という考えがあるかもしれませんよ。 なるほど。不安が大きくて父の気持ちを聞いていませんでした。 今すぐに問題が起こりそうでなければ、手を出しすぎずにお父様の一人暮らしを見守ってみてはどうでしょうか?案外、これから家事を学んでつつがなく一人暮らしができるようになるかもしれませんよ。 確かに。あせっているのは私だけで、父は一人暮らしをなんとも思っていなさそうでしたね。しばらく様子見も良いのかもしれません。 老人ホームに入るのもアリ 「一人暮らし」と「同居」だけでなく、「老人ホームに入る」という選択肢もあります。施設探しのご相談を受けていても、親御さんが一人暮らしになってお子さんのご自宅近くの老人ホームを探す、というのは珍しくないんです。 老人ホームですか…。全然考えたことなかったです。でも、父はまだまだ元気ですし、老人ホームは早い気がするんですが…。 お元気な方向けの老人ホームがあるんです。例えば、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど、介護が必要のない方でも入居ができるところは数多くあります。宮下さんのご自宅近くの老人ホームにお父様が入居すれば頻繁に会いに行きやすいですし、ご家族としても安心できるのではないでしょうか。 高齢の親が一人暮らしをするリスク もしお父様が一人暮らしをすることを選択された場合、ご高齢者が一人暮らしをするリスクについて把握しておいた方が良いでしょう。 高齢者が一人暮らしをするとリスクはありますよね。具体的に教えてください。 ご高齢者の一人暮らしのリスクには、以下のようなものがあります。 転倒による骨折 低栄養 認知症 火の不始末 転倒による骨折 今後、足腰が弱ってきた場合、転倒のリスクが上がります。さらに転倒して骨折し、入院した場合、気力や筋力の低下につながる可能性も。筋力が低下すると歩けなくなって、移動に車椅子が必要になり、一気に介護が必要な状態となってしまうことも少なくないんです。それに、入院すると活動が制限されます。すると、外部の刺激がなくなって認知機能の低下のリスクも。入院がきっかけとなって認知症になるケースも珍しくないので、注意が必要です。 転倒から認知症になることもあるんですか!それは怖いですね…。 低栄養 一人暮らしのご高齢者は、食事の準備が億劫になって簡単に済ませてしまう傾向があります。出来合いのお惣菜やパンばかり食べていると、栄養が偏って低栄養状態になってしまう危険性も。低栄養状態になると、筋力や体力が落ちて介護が必要になるリスクもあるんですよ。 栄養状態が悪くなるのは、私も心配なんです。父は料理もろくにできませんし、お弁当やお惣菜を買ってきて済ませてしまうと思います。それが、介護が必要になるきっかけになってしまうんですね…。 認知症 一人暮らしをすると認知症になってしまうんですか!? 一人暮らしをすると、必ず認知症になるわけではありません。ただ、一人暮らしになって外部との交流がなくなったり活動が減ると、脳に刺激がなくなって認知症になるリスクが高くなると言われています。それに、一人暮らしだとご家族が認知症の初期症状を見逃しやすい傾向があります。認知症の初期症状とは以下のようなものです。以前と変わった様子がないか、ご家族が気をつけておきましょう。 何度も同じことを話す・尋ねる よく探しものをする 料理や買い物に手間取る お金の管理ができない 周りの出来事に関心がない 意欲がない、趣味をやめた 怒りっぽい 疑い深い 火の不始末 火の不始末も、ご高齢者の一人暮らしで気をつけたい点です。ガスコンロやストーブの消し忘れ、たばこの火を消しきれていないといったことから火事が起こる危険性があります。 確かに!高齢者がガスコンロの火を消し忘れて火事になる、というのは聞いたことがあります。注意しないと…。 親の一人暮らしはどうサポートする? 高齢者が一人暮らしするリスクについて聞いていたら、やっぱり父の一人暮らしが心配になってきました。家族でサポートできることって何かないんでしょうか? 一番のサポートは定期的な関わりを絶やさないことです。月に数回でも一緒に食事を摂ったり、電話をするのもおすすめです。頻繁に会話をしていれば生活や心身の変化にも気が付きやすいですし、何か困りごとがあるときに気軽に頼ってもらえる関係を築きやすいと思いますよ。 月に数回でも良いんですね。実家までそんなに遠くないので、私の負担にもならなさそうです。 また、転倒対策としてトイレや廊下など、転びやすいと思うところに手すりをつけるのも良いでしょう。もし、まだそこまで足腰が衰えていない場合は、不用品の整理をしておくことも転倒対策になります。 不用品整理が転倒対策になるんですか? はい。ご高齢者のお宅は物が多い傾向があります。あふれかえった物につまづいて転倒するケースが少なくないんです。それに一人暮らしだと物の管理も難しくなるでしょうし、物を減らした方が暮らしやすくなることもありますよ。火事の対策としては、ガスコンロやストーブなどを安全装置付きのものに変えるのがおすすめ。もし、お父様が料理をするつもりがないのであれば、ガスコンロではなく電子レンジや電気ケトルだけを使うようにしても良いでしょう。 なるほど…。今後、父が料理をする気があるかを聞いておく必要がありそうですね。なんにせよ、父がこれからどう生活していきたいかを確認してから、対策をとっていくのが大切ですね。 親の一人暮らしには手を出しすぎない方が良い 高齢者の一人暮らしは、転倒、低栄養、認知症などのリスクがある 定期的な交流、不用品の片付け、手すりをつけるといった支援をしよう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: ...
2024/01/31
母を私の家の近くの老人ホームに入居させたいと考えています。ですが、母は高齢なもののまだ介護が必要な状況ではなく、元気です。なので、寝たきりの人や認知症の人が多い施設だと嫌がりそうな気がして…。 母に合う老人ホームってどんなところなんでしょうか?そもそも、介護が必要ではないのに老人ホームに入るのは可能でしょうか? (榎本さん・パート・63歳) 元気な方が入れる老人ホームはありますよ!例えば、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、ケアハウスなどがあります。これらの施設は見守りサービスなどがついていることが多いので、お母様もご家族も安心して生活ができるでしょう。ただ、なかには元気な方も介護が必要な方も受け入れている施設もあります。もし、認知症や寝たきりの方が多く入居している施設の場合、ほかの入居者とコミュニケーションが取れなくて生活がつまらないものになってしまう可能性があるので注意が必要です。施設探しの前に、お母様が介護が必要な状態になったら介護体制が充実した施設に住み替えるのかどうか、事前に決めておくと後悔のない施設探しができると思いますよ。 元気な人が入居できる老人ホーム 母が少し離れたところで一人暮らしをしているので、私の家の近くの老人ホームに入居させたいと思っています。ただ、まだ母は介護が必要なわけではありませんから、認知症の人や寝たきりの人が多い施設に入るのは嫌がると思うんです。介護が必要ない元気な母でも入居できる老人ホームってあるんでしょうか? もちろんありますよ!介護認定を受けていない人でも入れるのは以下の施設です。 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 有料老人ホーム シニア向け分譲マンション 一般型ケアハウス サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サ高住は、ご高齢者が住みやすいように配慮された賃貸住宅。例えば、バリアフリー設計になっていたり、居室の要所に緊急通報ボタンを設置しているところもあります。また、必ず安否確認と生活相談サービスを提供しており、毎日の安全確認をおこなったりお困りごとの相談にも対応しています。 サ高住には、介護が必要な人はあまり入居していないんですか? サ高住のなかでも、「特定施設」と呼ばれる施設は介護体制が充実しているので、介護が必要な方が多く入居している傾向です。ただ、それ以外のサ高住は比較的お元気な方が入居しています。ちなみに、サ高住に入居してから介護が必要になったら、外部の介護事業者と契約をすることで介護サービスを利用できます。そのため、介護が必要になってもある程度は住み続けられるでしょう。 「ある程度」というと、もし母が寝たきりになったりしたら転居しないといけないということですか? どの程度まで介護が必要な方を受け入れるかは、サ高住によって全く異なります。軽介護度の方までしか受け入れないサ高住もあれば、看取りまで対応しているサ高住もあります。事前に施設に確認してくださいね。 有料老人ホーム 有料老人ホームにも、要介護認定を受けていない人でも入れるところは多くあります。有料老人ホームには「住宅型有料老人ホーム」と「介護付き有料老人ホーム」の2種類があり、おおまかに分けると住宅型有料老人ホームが元気な方向け、介護付き有料老人ホームが介護が必要な方向け、といった違いがあります。 となると、母が入るんだったら住宅型有料老人ホームが良いということですね? 概ねそれで問題ないと思います。ただ、住宅型有料老人ホームでも介護付き有料老人ホームでも、お元気な方が中心の施設もあれば、重介護度の方が多く入居しているところもあります。サ高住と同様に施設によって受け入れ状況が全く異なりますので、希望の施設がある場合は受け入れ条件や現在のご入居者の状態なども聞いてみると良いでしょう。 シニア向け分譲マンション シニア向け分譲マンションは、その名の通り、シニアをターゲットにした分譲マンションです。一般的な分譲マンションと同様、購入したら自分の資産になるところが魅力です。基本的にシニア向け分譲マンションはバリアフリーが整っており、レストランやカラオケ、フィットネスジムを備えているところもあります。ただ、購入費用が数千万円にのぼるうえに、毎月の管理費なども上乗せされます。そのため、ほかの老人ホームや高齢者向け住宅よりも費用が高くなるのがネックですね。 数千万円ですか!我が家ではそんなにお金を出せないですね…。 一般型ケアハウス ケアハウスは公的な老人ホームのひとつで、自立した生活が難しくなったご高齢者が入居できる施設です。ケアハウスには「一般型」と「介護型」の2種類があり、お元気な方が入居できるのは一般型のみです。一般型ケアハウスは介護サービスの提供はありませんが、食事の提供があります。そのため、「介護は必要ないけど、食事の支度が億劫になってきた」というご高齢者に向いている施設と言えます。 それ、うちの母もです。家がアパートの3階にあることもあって、重いものの買い出しが大変になってしまったみたいで。そのせいで、食材をきちんと買って料理するのも億劫になったみたいです。 そういったご状況なら、一般型ケアハウスが合っているかもしれないですね。また、一般型ケアハウスに入居して介護サービスを利用したい場合、外部の介護事業者と契約する必要があります。介護サービスを利用しても自立した生活が難しくなると、退去を求められることがある点には要注意です。 元気なうちに老人ホームに入るメリット 母のことが心配なので、できれば早く近くの老人ホームに入居させたいと思っています。ですが、老人ホームって介護が必要になってから入居するイメージがあって…。元気なうちから老人ホームに入居させるのは良くないことなんでしょうか? そんなことはありませんよ!お元気なうちから老人ホームに入るのは、以下のようなメリットがあるんです。 安心感がある 生活の質が向上する 認知症予防できる 食事サービスを受けられる 趣味を楽しめる 安心感がある お元気なうちから入居できる老人ホームの多くは、見守りや安否確認などのサービスを提供しています。万が一、急に体調不良になったときにスタッフが駆けつけたり、災害時の避難誘導なども対応します。このように日々の安全を守るサービスを提供してもらえるので、ご本人もご家族も安心できると思いますよ。 生活の質が向上する 生活の質の向上?具体的にはどんなことですか? お元気な方向けの老人ホームでは、介護予防の体操や趣味のサークルなどをおこなっています。そうした活動に参加することで活動量が増えて健康になったり、老人ホーム内で新しい友人ができたりして、生活の質の向上が望めるんです。それに、ご自宅に段差があるなど、ご高齢者が活動しにくい環境になっている場合、バリアフリーの環境になることでよりいきいきと活動できるようになるかもしれません。 認知症予防できる お元気な方向けの老人ホームに入ると、認知症予防ができることもあります。というのも、認知症予防のレクリエーションを実施したり、老人ホーム内でのつながりができることが認知機能の維持・向上につながることがあるためです。お母様のご自宅が階段を上り下りしないと外出できない状況の場合、将来的には外出ができなくなってご自宅にこもりきりになってしまう可能性があります。こもりきりは認知症になりやすい状況なので、ご高齢者向け老人ホームに入居して外出しやすい環境を整えるのをおすすめします。 食事サービスを受けられる 食事サービスって、施設の方で食事を提供してくれるってことですよね?とっても助かります。母は食事の支度が大変になってきたみたいなので。 「介護は必要ないんだけど、料理が億劫になって」というお話は、ご入居相談のときによく伺います。お元気な方向けの施設のなかには、食事サービスの提供がないところもありますので、入居前にサービス提供の有無を確認してくださいね。 趣味を楽しめる 先ほどもお話した通り、お元気な方向けの老人ホームでは趣味のサークル活動をしていることがあります。初心者でも気軽に参加できるものが多いですから、新しい趣味に挑戦できる機会も多いでしょう。 元気な人が老人ホーム探しをするときに注意したいこと 北野室長の話を聞いて、できるだけ早く母を老人ホームに入れてあげたいと思いました。さっそく近所に母が入れる施設がないか探してみます。 施設探しを始める前に、考えておいていただきたいことがあります。それは「今、入居した老人ホームに最期まで入居するか」「介護が必要になったら住み替えをするか」といった今後の介護方針です。 老人ホームに入ったら最期まで入居しているものなんじゃないですか? お元気な方向けの老人ホームのなかには、介護が必要になったら退去を求められる施設もあります。予め介護方針を決めておかないと、「最期までいるつもりで入居したのに追い出された!」といった問題が起こりかねません。 介護が必要になって追い出されることになったら、どうしたら良いんですか? そういうときは、ご自宅で在宅介護をするか介護体制が手厚い施設に転居することになりますね。 うちでは介護できないから、介護体制が手厚い施設に引っ越すことになりそうかな…。 入居後にあわてて転居先を探すことになるので、介護が必要になっても入居し続けられるのか、転居しないといけないのか、事前に施設に確認もしてくださいね。もし、介護が必要になったら転居するつもりで入居する場合は、近くで介護体制の整った施設があるかどうかを調べておくと良いでしょう。もちろん、転居のタイミングでは施設の状況が変わっている可能性がありますが、早いうちにアタリをつけておけば、急に転居が必要になったときにあわてなくて済みますよ。 事前に調べておくことが大切なんですね。今の段階で入居する施設と、介護が必要になったときに入れる施設を併行して探してみます。 元気な高齢者は、サ高住、有料老人ホームシニア向け分譲マンションなどに入居できる 元気なうちに入居するメリットは、安心感、生活の質の向上、食事サービスの提供などがある 施設探しの前に、介護が必要になったら住み替えするかどうかを決めておこう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: ...
2024/01/30
父親の介護認定の更新をしたら、要介護2から要介護1に下がってしまいました。ケアマネジャーさんに「サービスの量が減る」と言われて。これ以上減ると仕事に支障が出るので困っています。 もちろん、父の状態が良くなったわけではありません。むしろ認知症がひどくなっているのに…。どうして要介護度が下がってしまったんでしょうか? (坂口さん・会社員・62歳) もしかしたら、お父様が認定調査の際に普段よりも元気に振る舞ったのかもしれません。また、調査員に実情を正確に伝えられなかった可能性もあります。要介護認定の結果に納得がいかない場合は、区分変更申請をすることをおすすめします。再度、認定調査を受ける際は、調査員に個別で実情を伝えましょう。伝えることに漏れがないようにメモを作っておくのもおすすめです。 親の要介護度が下がった!なぜ? 父の介護認定の更新をしました。そうしたら、要介護2から要介護1に下がってしまったんです!父は良くなるどころか認知症の症状が悪化しているというのに…。要介護度が下がると、利用できる介護サービスの量も減ってしまうので困っています。どうして、父の要介護度は下がってしまったんでしょうか? 「状態が良くなっているわけじゃないのに要介護度が下がってしまって困る」というのは、私もよくご相談いただきます。要介護度が下がったのには、以下のような理由が考えられます。 認定調査で普段よりも元気に振る舞った 認定調査で実情を上手く伝えられなかった 主治医の意見書でうまく伝えられていなかった 認定調査で普段よりも元気に振る舞った 意外と”あるある”なのが、認定調査のときに親御さんが普段よりも元気に振る舞ったことで要介護度が下がることです。認定員に良いところを見せたいと元気よく体を動かしたり、できないことも「できる」と回答してしまうんですね。 それ、心当たりあります!今回の認定調査で、「トイレは1人で行ける!」とはっきり答えていました。普段は危なっかしくて私が付き添っているのに…。 それに、認知症の方の場合は、普段、自分が身の回りのことをどの程度できるかを忘れてしまって「1人でできる」と答えることもありますね。また、認知症の方の場合、普段はぼーっとしていることが多いのに認定員が来たらシャキッとしてはきはき話す、というケースも珍しくありません。おそらく、いつもと違う状況が刺激となって頭がはっきりすると考えられます。 確かに!認定調査のときは、認知症になる前のようにはっきりとやりとりができていました。認定調査のときだけ元気になっても、あとで困るってことですね…。 認定調査で実情を上手く伝えられなかった 親御さんだけでなく、ご家族が介護の実情をうまく伝えられないと要介護度が下がる可能性があります。例えば、「夜中に大声で叫んで眠れない」「ふらつくことが増えて転倒してしまうかも」といったようなことです。親御さんの心身の状況や介護で困っていることを調査員に伝えられないと、要介護度が低くなってしまうことがあります。 主治医の意見書でうまく伝えられていなかった 介護認定では、認定調査だけでなく主治医の意見書も大きな判断材料になります。ですが、主治医意見書のなかで正確に親御さんの心身の状態が記述されていないと、要介護度が下がってしまうこともあるんです。 要介護度が下がったときの対策は? このまま要介護度が下がったままだと困ります!せめて今までと同じ要介護度でないと、仕事にも支障が出てしまうんです。どうにかなりませんか? それは大変です!以下のような対策を打ってみましょう! 情報開示請求をする 不服申し立て(審査請求)・区分変更申請をする 情報開示請求をする 情報開示請求とは、介護認定に関わる情報を見れる制度。認定調査票や主治医意見書の内容を確認できます。つまり、認定調査がどんな結果になったのか、主治医がどんな情報を記載したのかを知れるんです。自治体に情報開示請求のための手続きをする手間はかかりますが、どうして要介護度が下がったのかを把握したい場合には利用してみましょう。 そんなことができるんですね!確かに、このままでは要介護度が下がった理由がわかりませんもんね。 不服申し立て(審査請求)・区分変更申請をする 要介護度に納得いかない場合は、「不服申し立て(審査請求)」「区分変更申請」で介護認定を受け直せます。 介護認定ってやり直しができるんですね! そうなんです。ただ、正確には不服申し立ては今回の認定調査などの情報をもとに再度、判定をする制度。一から認定調査をやり直しするわけではないんです。そのうえ、不服申し立ては結果が出るまでに数ヵ月かかることもあります。そのため、多くの方は不服申し立てではなく区分変更申請をしています。 区分変更申請は、短い期間で結果がわかるんですか? はい。区分変更申請は1ヵ月程度で結果が出ます。それに、認定調査をはじめからやり直しをするため、認定調査の受け直しや意見書を主治医に書き直してもらうこともできるんです。 それなら、区分変更申請の方が良いですね! 再度、認定調査を受ける際には、調査員に実情を正確に伝えられるようにメモなどを取っておくことをおすすめします。伝え漏れを防げますし、メモをそのまま認定員に渡しても良いかもしれません。お父様が認定調査で元気に振る舞ったとしても、「いつもは、こんなに介助が必要なんです」とはっきり伝えるようにしましょう。 次の認定調査では、父が見栄を張って「1人でできる!」と言い張っても、調査員さんに普段の状況をきちんと伝えるようにします。 認定調査で元気に振る舞ったり、実情を伝えられないと要介護度が下がることも 要介護度が下がったときは、情報開示請求をして区分変更をしよう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before ...
2024/01/26
80代後半の父が実家で一人暮らしをしているのですが、もしかしたら認知症なのかも、と心配です。中でも心配なのがお金のこと。実家に大量の健康食品が置いてあり、父に聞いたところ要領を得ません。請求書があったので父が自分で購入したのだと思いますが、それを覚えていないようなんです。 ほかにも、必要以上に銀行口座からお金を引き落としている様子があり、健康食品以外にも不要なものを買ってしまっているのかも…。 本当は通帳を預かって私が管理したいのですが、頑固な父はそれを許しません。このままでは、年金や貯金を使いつくしてしまうかもしれません。良い方法はありませんか? (児玉さん・パート・63歳) 親御さんのお金の管理は、多くの方が頭を悩ませています…。もし、お父様が認知症だった場合、早い段階で児玉さんがお父様のお金の管理をできるようにしておくことをおすすめします。親御さんのお金をご家族が管理できるようにする方法には、成年後見制度、家族信託、銀行口座の代理人制度、保険の指定代理請求制度、日常生活自立支援事業などがあります。が、多くの方法でご本人の判断能力があるうちに手続きをしないといけないんです。そのため、お父様の判断能力が衰える前に、対策を打っておくことが大切なんです。 親が認知症になったときのお金の管理方法は 実家で一人暮らしをしている父の金遣いが荒くて心配です。先日、実家に帰ったら大量の健康食品が置いてありました。でも父はそれを買ったことをよく覚えていないようで…。請求書があったので、父が購入したものなのは確かです。でもそれを覚えていないなんて、認知症になってしまったのかもしれません…。加えて、1ヵ月に10万円近くも口座から引き出しており、不要なものを買ったりしていないか心配です。水光熱費などは口座引き落としにしているので、現金で引き出す必要はないんです。このままでは、お金を浪費して年金や貯金を使い切ってしまうかもと思い、私が通帳を預かろうと思ったのですが、父は頑なに渡そうとしません。何か対策はありませんか? 児玉さんが言う通り、お父様は認知症になってしまった可能性がありますね…。認知症の親御さんがいる方の多くは、お金や財産の管理に頭を悩ませているんです。対策としては、以下のような方法があります。 成年後見制度 家族信託 銀行口座の代理人制度 保険の指定代理請求制度 日常生活自立支援事業 成年後見制度 成年後見制度とは、判断能力が低下している人の財産などを後見人が管理できるようにする制度です。成年後見制度には、「任意後見制度」「法定後見制度」の2種類があります。 任意後見制度 任意後見制度とは、判断能力が低下したときに備えてご本人が任意後見人を立てて、生活に関する手続きや財産管理などを任せるための契約をする制度。ご本人が後見人や契約内容を選べるのが特徴です。ただ、認知症になって既に判断能力が低下しているとみなされると、任意後見制度による後見人の契約はできません。 つまり、任意後見制度を利用する場合は認知症になる前に契約を済ませておかないといけないんですね。 法定後見制度 法定後見制度は、ご本人が認知症を発症した後でも契約が可能な制度です。また、判断能力が低下している状態で契約を結ぶこともあり、ご本人がおこなった法律行為を取り消すことも可能。不要なものを買ってしまった場合も、後見人がその売買を取り消せるんです。ただ、柔軟な資産運用ができないというデメリットもあります。 家族信託 家族信託は、財産の一部、もしくは全部を家族が管理できるようになるもの。親御さんの預貯金はお子さんであっても引き出しはできません。が、家族信託契約をして信託用の口座に親御さんのお金を移しておけば、お子さんも入出金が可能になります。つまり、お父様の判断能力が低下することに備えて予め家族信託をしておけば、もしお父様が認知症になってしまっても児玉さんがお金の管理をできるようになります。法定後見制度では、収入を得ているアパートやマンションなどの不動産があっても、改修費用のために後見人が財産を利用することは難しいです。一方で、家族信託は契約内容を柔軟に決められるので、ご家族がご本人の財産から改修費用を出すこともできるんです。 家族信託って名前を聞いたことはありましたが…。柔軟にお金の管理ができるんですね。考えてみても良いかな…。 銀行口座の代理人制度 ご本人が入院や介護施設に入居して銀行窓口やATMに足を運べなくなった場合に、ご家族が代わりに入出金できるようにするのが代理人制度です。ただ、もしお父様が認知症になって銀行が口座を凍結してしまった場合は入出金はできなくなります。 えっ、じゃあ、父が認知症になって介護施設に入ったときに父の口座からお金を引き出せないということですか? 緊急時に限って言えば、銀行が特例として認めてくれる場合があります。ただし、認知症などの診断書、介護施設の請求書、家族関係がわかる戸籍といった証明が必要です。しかし、この措置はあくまで一時的なもの。継続的にお金の引き出しが必要な場合は、成年後見制度などの利用が必要です。 保険の指定代理請求制度 入院などでお金が必要になった場合、保険会社に保険金を請求しますよね。でも、ご本人が認知症などで手続きができなくなる可能性も。そこで事前に代理人登録をしておけば、ご家族が代わりに保険金や給付金の請求ができるようになります。認知症になると、保険の請求手続きなどをするのも難しくなります。そのため、将来に備えて指定代理請求制度を活用するのも良いかもしれません。 日常生活自立支援事業 日常生活自立支援事業って初めて聞きました。 なじみのない言葉ですよね。日常生活自立支援事業は、地域の社会福祉協議会が提供しているサービスで、判断能力が低下した人の生活を支援します。依頼できる内容は、お金の管理も含めて多岐にわたります。例えば、以下のようなことを依頼できますよ。 福祉サービスの情報提供、手続き代行 施設や病院のサービスに関する相談 福祉サービス・病院の料金の支払い代行 年金などの受領に必要な手続き 公共料金の支払い 日用品購入の支払い代行 銀行口座の入出金、口座の解約手続き 通帳やハンコ、証書などを預かる へー!いろんなことが頼めるんですね。 利用したい場合は、お父様がお住まいの地域の社会福祉協議会に連絡してくださいね。 認知症によるお金のトラブル事例 もし、父の状況がもっと悪くなって、認知症になってしまったらどうなってしまうんでしょうか?そうなる前に私が父のお金の管理をできるようになっていれば良いとは思うんですが…。 認知症によるお金のトラブルは意外と多いです。例えば、以下のようなものがあります。 無駄遣いしてしまう 詐欺・悪徳業者にだまされる お金を盗られたと思い込む 介護・医療費などの立て替えが増える 無駄遣いしてしまう 認知症によって気持ちの抑えが効かなくなることで、不要なものにお金を使ってしまう可能性もあります。私たちだったら「今月はお金を使いすぎているから買うのを止めよう」「欲しいと思ったけど、本当に必要?」と考えて購入を思いとどまる場合でも、気持ちの抑えが効かないので、「欲しい」と思うままにお金を使ってしまうんです。なかには、支給されてすぐに年金を使い切ってしまったり、貯金を使い込んでしまうケースもあるんです。 それはとても困ります!私も経済的な支援をいつでもできるわけではありませんし、父には無駄遣いせずにいてもらわないと…。それに、今後、介護が必要になったらお金がかかるだろうし…。 詐欺・悪徳業者にだまされる 高齢者を狙った詐欺は、ニュースでよく報道されていますよね。父も詐欺にあうんじゃないかと心配で…。 おっしゃる通り、詐欺にあうご高齢者は少なくありません。しかも、詐欺とは言えなくても、ご高齢者に商品を半ば無理やり購入させる悪徳な業者もいます。判断能力が低下してくると詐欺や悪徳業者を見抜けず、その被害に遭いやすいんです。 認知症でなくても年を取ると判断能力が衰えてきますし、その前に私がお金を管理して、対策をとっておくことが大切ですね。 お金を盗られたと思い込む 認知症の方の典型的な症状のひとつに、ものを盗られたと思い込む「物盗られ妄想」というものがあります。なかでもお金や通帳を盗まれたと思い込むケースがとても多いんです。これは、認知症によって物忘れが増えて財布や通帳をしまった場所を忘れてしまった結果、誰かに盗まれたと思い込むことによるもの。ご家族が良かれと思って財布や通帳を預かった結果、それを盗まれたと勘違いしてしまうパターンもあります。 父の財布や通帳を預かればお金のトラブルはなくなると思いましたが…。そういうわけではないんですね。 お父様の財布や通帳を預かる場合は、お父様が納得したうえで預かりましょう。ただ、もしお父様が認知症になったら、納得のうえで財布や通帳を預けたとしてもそのことを忘れてしまう可能性も。その場合は、少額のお金を入れた財布をお父様に渡しておき、通帳は預かっている旨はメモなどを貼っておくと良いでしょう。 介護・医療費などの立て替えが増える 介護施設に入ったり入院した際に、認知症によってご本人がお金を下ろせないと費用の立て替えが増える可能性があります。銀行では基本的には本人以外の出金はできませんから、お父様が認知症になってしまって預金が引き出せないとなると、ご家族が支払うことになってしまいます。 本人が認知症になると、口座を凍結される危険性があるんですもんね。そうなると、私が費用を支払わないといけないのか…。ちなみに、介護費用ってどれくらいかかるものなんでしょうか? 生命保険文化センターの調査によると、介護ベッド購入費などの一時的な費用は平均74万円、月々の費用は平均8万3000円もかかっているそうです。また、同じ調査によると、平均的な介護期間は5年1ヵ月。つまり、全体で580万円近くもかかるんです。もちろん、このお金は基本的には親御さんの貯蓄や年金から捻出するもの。お父様が認知症になったり、介護が必要になってお金が引き出せなくなる前に、ご家族がお金の管理をできるように手配をしておくことをおすすめします。 参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省) 成年後見制度、銀行の代理人制度などで親のお金を管理できる 認知症によって、無駄遣いや詐欺にだまされるなどのリスクが増える pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; ...
2024/01/25
先日、母に手を上げてしまって後悔しています。 私は数年前から認知症の母の介護をしており、このところ母が急に興奮してわけのわからないことを言いながら私に怒鳴ったり殴ったりすることが増えて。先日、理不尽な理由で私を怒鳴りながら何十分も殴り続けるので、私もだんだん怒りが込み上げてきて殴り返してしまいました…。 母の様子がおかしいのは認知症のせいなんだとわかっているのですが、自分でも抑えられなくなってしまったんです。それからずっと後悔と罪悪感でいっぱいで…。 今後、同じようなことがあったら、また母に手をあげてしまうかもしれません。防ぐ方法はありませんか? (浅井さん・会社員・57歳) 本当に大変な状況でしたね…。浅井さんが手をあげてしまったのは介護の疲れが溜まっていたせいですので、ご自分を責めないでくださいね。予防方法としては、まずは浅井さんの介護の負担を減らして疲れを溜まりにくくしましょう。ほかのご家族と分担したり介護サービスを活用することをおすすめします。なかには、「自分がしっかり介護をしないと」と常に気を張って介護をしていることもあるかもしれません。そうではなく、介護は楽をして良いもの。介護の負担を減らして作った時間を趣味の時間に使ったりと、リフレッシュタイムを確保してもっと「がんばらない介護」をしてみましょう。 認知症の親に手をあげそう…予防法は? 数年前から認知症の母の介護をしています。最近になって、母が異常に興奮してわけのわからないことを怒鳴り散らしたり、私を殴ることが増えました。先日も、母がものすごい勢いで私を怒鳴りつけながら殴ってきたんです。「いつものことだ」とはじめは流していたのですが、その日は止まらなくて…。何度も何度も殴られるうちに「どうして頑張って介護をしているのにこんな目にあわないといけないんだろう」と虚しさと怒りが込み上げてきて、思わず殴り返してしまったんです。どうして殴り返してしまったのか…認知症のせいだとわかっていたのに。たった1人の家族を殴ってしまって、ずっと後悔しています。それに、もし同じようなことがあったらまた殴ってしまいそうで怖いんです。何か予防する方法はないでしょうか? それはおつらかったですね。介護を続けていくうちに手をあげてしまう、もしくは手をあげてしまいそうになるケースは少なくありません。介護をしているご家族に手をあげてしまうかも、と悩んでいる人は浅井さんだけではないですから安心してください。介護をしている親御さんに手をあげてしまうケースの多くは、ストレスや疲れが溜まることがきっかけになっています。なので、まずは自分の介護の負担を減らしましょう。例えば、以下のような方法がありますよ。 他の家族と分担する 専門家に相談する 介護サービスを使う 他の家族と分担する 可能であれば、ご兄弟などのほかのご家族と介護を分担しましょう。浅井さんは、ご兄弟はいらっしゃいますか? 妹がいます。ただ、車で1時間以上かかるところに住んでいることもあって、あまり介護に関わってくれなくて…。 なるほど…。ちなみに、以下のような方法でも介護の協力をしてもらえなさそうでしょうか? 金銭的な援助をしてもらう 通院の送迎をしてもらう 週1回だけ介護を交代する 家が遠くて直接の介護を分担できない場合、金銭的な援助だけしてもらうのもアリです。介護には何かとお金がかかりますから、お金の援助をしてもらうだけでも精神的に楽になると思いますよ。それに、たまに通院の送迎をしてもらったり、週1回だけ手伝いに来てもらうだけでも浅井さんの負担は減るでしょう。あまり協力的でない人に介護の協力をしてもらうときには、「何をしてもらいたいのか」をはっきりさせてからお願いするとスムーズに協力してもらいやすいですよ。 うーん、妹は忙しくて定期的に直接介護してもらうのは難しそうです。でも、多少の金銭の援助ならしてもらえるかも。通院も月に1回程度なので、代わってもらえるかもしれません。 専門家に相談する 介護のことで困ったら、専門家にアドバイスをもらいましょう!具体的には以下のような専門家に相談をおすすめします。 地域包括支援センター ケアマネジャー かかりつけ医 地域包括支援センターって何ですか? 高齢者の暮らし全般をサポートしている総合窓口です。もし、まだ介護サービスを利用していないのであれば、まずは地域包括支援センターに相談することをおすすめします。もし、既に介護サービスを利用しているのであれば、担当のケアマネジャーさんに相談してくださいね。 介護サービスは利用したことがないですね。ということは、地域包括支援センターに相談するのか…。 また、かかりつけ医も介護の相談に乗ってくれます。特に認知症の場合は治療が必要になりますから、医療の専門家としてのアドバイスをしてくれるでしょう。 介護サービスを使う 介護のことはプロに任せるのがおすすめです!積極的に介護サービスを利用しましょう。 と言われても、介護サービスってよくわからなくて…。利用したこともないですし。 介護をご家族だけでおこなうのはとても難しいです。特に認知症介護の場合は負担が大きすぎて、ご家族が倒れてしまうこともありえるんですよ。 確かに、毎日毎日、母に振り回されて疲れました。いつも眠くて仕事に支障が出ています。 そんな大変な状況だったんですね…!でしたら、介護サービスをぜひ利用してください。介護サービスは、ご自宅で介護するときに利用する在宅介護サービスと介護施設に入居するサービスに分かれます。主なサービスには以下のようなものがあります。 在宅介護サービス 訪問介護 デイサービス ショートステイ 小規模多機能型居宅介護 自宅にヘルパーさんが来て介護してくれるのが訪問介護、介護施設に通って介護してくれるのがデイサービス、介護施設にお泊りするのがショートステイ。それら3つのサービスをまとめて1つの施設で提供してくれるのが小規模多機能型居宅介護です。お母様の性格や状況によって、介護サービスを使い分けましょう。 施設入居サービス 民間施設 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム 公的施設 特別養護老人ホーム(特養) 介護老人保健施設(老健) 介護医療院 ケアハウス 養護老人ホーム 認知症の方であれば、グループホームか介護付き有料老人ホーム、もしくは特別養護老人ホームがおすすめです。これらの施設は、認知症ケアのノウハウや実績があるところが大半なので、お母様が穏やかに生活できると思いますよ。 介護疲れが虐待につながることも… テレビなどで「子どもが高齢の親を殴った」というニュースを見ることもあると思います。こうした虐待の多くは介護疲れが原因によるもの。「疲れて思わず殴ってしまった」というきっかけが多いんです。あまりに介護疲れやストレスが溜まると、ご高齢の親御さんを殴ることが日常化してしまうケースも珍しくありません。 そうか、私は母を虐待してしまったということなんですね。「思わず殴り返しただけ」と思っていましたが…。北野室長が言う通り、母に夜中に起こされたり理不尽に怒鳴られたりして、疲れやストレスが溜まっているんだと思います。母の認知症がひどくなってからなおさらです。だから、殴り返してしまったんだと思います。ニュースで見る事件も、介護疲れが溜まって追い詰められることで、殴るなどの虐待をしてしまってたんですね。 おっしゃる通りだと思います。特に虐待のなかでも身体的虐待が多いんです。身体的虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力のほかにも、外出しないように行動を制限することも含まれます。認知症になると、外出して道がわからなくなってさまよう「徘徊」などの症状が出ることがありますが、それを予防するために部屋に閉じ込めたりすることも実は虐待にあたるんです。 えぇっ!?そうなんですね!母は1人では外に出ていかないので、部屋に閉じ込めたりはしていませんが…。徘徊するのであれば、部屋に鍵をかけて対策しようと思いますよね。 介護は楽をしても良い! ここまで、介護の負担を軽くするための方法や介護する親御さんに手をあげてしまう原因についてお話ししてきました。最後に、介護をするうえでの心の持ち方についてお伝えしますね。それは「介護は楽をしても良い」ということです。 楽をしても良い?介護は大変なものですよね? もちろん、介護をするのは体力的にも精神的にもきついことがあると思います。でも、介護をするご家族の心の持ち方で、介護を楽なものにできるんです。 つまり、気の持ちようで介護が楽になるということですか?よくわからないのですが…。 具体的にお話ししますね。楽な介護をするコツは、例えば次のような気持ちで介護をすることです。 がんばらない ほかの人と比べない 「終わりが来る」ものと考える がんばらない 楽な介護をするには「がんばらない」ことです。つまり、適度に手を抜くこと。多くの介護をする人は、「私がやらないと」と介護を抱え込みがちになります。介護には直接的に介護するだけではなく、もろもろの手続きや通院、買い出しなどやらないといけないことがたくさんありますよね。それのすべてを「私がやらないと」と抱え込むとパンクしてしまいます。なので、介護サービスやほかのご家族に任せられることは積極的に任せましょう。そして、誰かに任せてできた時間を、お友達と出かけたり旅行に行ったり、趣味の時間に使いましょう! 母の介護を他人に任せているのに、自分は遊ぶんですか!? 介護をしているご家族も人間ですから、息抜きの時間は必要です。なので、積極的に自分のために時間を使ってください。それでも誰かに介護を任せて自分が休むことに抵抗がある場合は、「介護を続けていくために自分のメンテナンスをする」と考えるのはどうでしょうか。介護は長期戦になることが多いですから、定期的にリフレッシュしてくださいね。 ほかの人と比べない 楽な介護をするために、ほかの人と比べないことが大切です。介護をしていると、ほかの介護をしているご家庭の話を耳にすることもあるでしょう。その話が効率的な介護の参考になれば良いのですが、ときには「〇〇さんは上手く介護をしているのに、どうして私はできないんだろう」「〇〇さんのお母さんの認知症は穏やかなのに、うちの母親は…」といった比較をしてしまうこともあるかもしれません。ですが、介護の方法や認知症の症状は千差万別。ご家庭の事情やその人の状況によってまったく異なり、ひとつとして同じ介護はありません。なので、得になりそうな情報は参考にしつつ、「うちはうち、よそはよそ」と割り切る気持ちも大切なんです。 愚痴を言う 楽な介護のために、積極的に愚痴を言いましょう! 愚痴ってあまり良くないイメージがあるんですが…。愚痴を聞く相手も嫌でしょうし…。 確かに、愚痴を言う相手は選ぶ必要はあります。が、介護のイライラやモヤモヤを溜めておくのは精神的に良くないですよね。お友達やほかのご家族に言えそうであれば、愚痴を聞いてもらうのもストレス発散におすすめです。もし、愚痴を誰かに言いにくいのであれば、紙に書くのも良いでしょう。誰かに見せるものではないので、言葉を選ばずに自由に書けますから。愚痴を書いた紙を取っておいて、記録代わりにするのも良いかもしれません。 なるほど、紙に書くのは良いですね! 「終わりが来る」ものと考える 毎日毎日、介護で忙しい日々が続いて「ずっとこんな生活が続くのかな」と暗い気持ちになることもあるかもしれません。でも、現在のしんどい状況には終わりが必ず来ます。もし、認知症による徘徊で夜も眠れない日々が続いていても、歩行が困難になればその症状はなくなります。認知症による暴力に悩んでいても、体力的に衰えると殴ることもなくなるでしょう。お母様の体がさらに衰えると悩まされていた認知症の症状がなくなり、もっと介護に余裕ができる可能性も。薄情な言い方かもしれませんが、「こんなつらい状況がずっと続くんだ」と鬱々とした気持ちで過ごすよりも、多少は気持ちが楽になって精神的に余裕が出てくると思いますよ。 確かに、母がいつまでも体が元気でいられるわけではないですもんね…。北野室長の話を聞いて、気持ちが少し楽になったような気がします。もっと気楽な気持ちで母の介護をしようと思います。 家族と介護を分担する、介護サービスを活用するなどで負担を軽減しよう 介護疲れが虐待につながることも。認知症介護は特に虐待が多い 介護は楽をしても良い!愚痴を言ったり自分を大切に pre { margin: ...
2024/01/23
2ヵ月ほど前に認知症の母を近所の老人ホームに入居させました。週に1度は面会に行くのですが、その度に「帰りたい。家に連れて帰って」と泣いてしまって…。老人ホームに入れない方が良かったのでしょうか。 母の様子を見ていると、「やっぱり私が介護するべきだったのかも」と老人ホームに入れたことに罪悪感を覚えます。今からでも家に連れ戻した方が良いのでしょうか? (坂田さん・会社員・57歳) ご家族を介護施設に入れることは悪いことではありません!お母様の老人ホーム入居に関して、罪悪感を感じなくても大丈夫ですよ。現代ではお子さんの介護の負担が大きくなりやすいです。なので、坂田さんの健康を守るためにもお母様が介護施設に入ることは必要なことだと思います。もし、「家に帰りたい」と何度もお母様が訴えていたり、施設での生活に不安があるときは施設長さんなどに相談してみましょう。対応してもらうことで、お母様が落ち着いて生活できるようになると思いますよ。 親を介護施設に入れることに罪悪感を持たなくて良い! 2ヵ月ほど前から母が近所の老人ホームに入居しています。認知症がひどくなって在宅介護は難しいと感じて入居させたのですが…。面会に行く度に「家に帰らせて」と泣くんです。母が泣く様子を見ると「やっぱり私が介護をするべきなのかな」と老人ホームに入れたことに罪悪感が…。今からでも家に連れ戻した方が良いのでしょうか? ご家族を介護施設に入れることは悪いことではありません!なので、老人ホームに入れたことに罪悪感を持たなくても大丈夫ですよ。もう少し様子を見てみましょう。親御さんを老人ホームに入れることに罪悪感を持つ方は多くいらっしゃいます。そういう人は「親の介護は子がするもの」という考え方を持っているため、親御さんを介護施設に預けることに抵抗感があるのだと思います。 そうなんです!娘である私が介護をするべきなんだと思っていました。 「親の介護は子がする」は当たり前でなくなっている 以前は「親の介護は子がする」のでも、問題がない社会構造でした。というのも、3世代が同居していることは当たり前でしたし、兄弟姉妹が数多くいるため家族で介護を分担することが簡単でした。しかし、現代では核家族化が進んだことで介護の担い手が少なくなっています。高齢の親御さんとお子さんが別居していることは珍しくないですし、兄弟姉妹のいない一人っ子であることも増えてきました。つまり、お子さん一人あたりの負担が増加 しているわけです。そのため、「親の介護は子がする」という考え方は、以前よりも実現が難しくなっています。 確かに…。母方の祖父母は、5人もいる母の兄弟で分担して介護をしたと聞いています。私は一人っ子ですから、それをすべて1人で担わないといけないんですよね。しかも、私はフルタイムで働いているので時間がかなり限られるわけだし…。 おっしゃる通り、仕事をしながら介護をしている人も増えています。一昔前は専業主婦の女性が多く、女性が主に介護を担っていました。ですが、今は共働きの家庭が増えています。そうした背景も、「親の介護は子がする」が当たり前ではなくなった理由です。 無理して在宅介護を続けるリスク 「親の介護は子がする」のが当たり前ではなくなったとしても、「家に帰りたい」と言う母の言葉を無視しているのは後ろめたくて…。やっぱり自宅で介護した方が良いんじゃないかな…。 そのお気持ちはよくわかります。「家に帰りたい」と泣いているお母様を見たら、在宅介護の方が良いんじゃないかと思いますよね。ただ、在宅介護を続けると以下のようなことが起こる危険性があるので、坂田さんに無理をしていただきたくないんです。 介護うつ 介護離職 虐待 介護うつ 介護うつというと、介護によってうつになることですか? おっしゃる通りです。介護は体力的にも精神的にも大きな負担がかかります。そのため、ストレスや疲れが溜まりやすい状況です。その状況が続くと、「寝付けない」「食欲がない」「趣味を楽しめない」 といった状態になってしまうことも。こうした状況が2週間以上続くと、介護うつの可能性が高いとされています。 言われてみれば、自宅で母の介護をしているときはなかなか寝付けないことがよくありました。常に気を張っているというか。今は介護施設に母が入ったので落ち着きましたが…。 介護離職 介護離職も在宅介護を続けるリスクのひとつです。 介護離職って、介護をするために仕事を辞めることですよね?それって良くないことなんですか? 一概に良くないこととは言えませんが…おすすめはしません。というのも、経済的な余裕が少なく なりますし、一度仕事を辞めてしまって再就職するのはハードルが高い です。それに介護だけに集中してしまうので、余計に介護うつになりやすくなる場合もあるんですよ。 えぇ!そうなんですね。再度、自宅で母の介護をするとしたら仕事を辞めることも考えていたのですが…仕事は続けた方が良いんですね。 虐待 テレビでよく高齢者虐待のニュースをやっていますよね。これも、無理をして在宅介護をし続けたせいなんでしょうか? その可能性が高いですね…。介護の疲れやストレスが溜まって追い詰められた結果、自分のご家族に手を上げてしまう ケースが多いんです。在宅介護はどうしても閉鎖的な環境になり、周囲の人とのつながりが薄くなりやすいですから、不安やストレスを1人で抱え込みがちになってしまうんですね。 罪悪感のきっかけになりやすいもの せっかく介護施設に入ったのに施設での生活に不安や不満があると、「入居させない方が良かったのかな」と罪悪感を持つきっかけになりやすいです。例えば以下のようなことがあると、介護施設での生活が心配になって罪悪感を持つようになりやすいです。 「家に帰りたい」と言われる スタッフの対応に不満・不安がある ほかの利用者との人間関係 「家に帰りたい」と言われる お母様のように「家に帰りたい」と言う方は多いです。やはり、どれだけ介護施設で快適に過ごしていたとしても、住み慣れた自宅の方が良いからでしょう。同意したうえで入居した場合でも、「家に帰りたい」という気持ちが出てきてしまうものなんです。 そうなんです!「家に帰りたい」と言われてしまうと、「自宅に連れて帰った方が良いのかな」と思ってしまって。多くの人が帰りたいと思っているものなんですね。 スタッフの対応に不満・不安がある もし、スタッフの良くない対応をご家族が見てしまったら、「家で介護した方が良かったのかも」と思ってしまうかもしれません。介護スタッフは接遇や介護技術についての研修を受けています。が、それがすべてのスタッフが身についているとは言えないのが実情なんです。 ほかの入居者との人間関係に問題がある ほかのご入居者の中には相性の悪い人がいることもあるでしょう。そういう場合も、罪悪感を持つことがあります。単純に性格が合わない場合だけでなく、認知症の症状によって相性が悪いこともあります。 まずは介護施設側に相談してみよう 介護施設での生活に不安や不満があるときは、まずは介護施設側に相談してみましょう。解決策を提案してくれるかもしれません。そのうえで、施設での不安を解決するためにご家族が対応できることもありますので、ひとつずつお話ししていきますね。 「家に帰りたい」と言われたときは うちの母のように「家に帰りたい」と言っている場合は、どうしたら良いのでしょうか? 面会の頻度を変えてみるのはどうでしょうか?面会の頻度を増やしたり減らしたりすることで、「家に帰りたい」という気持ちが落ち着くことがありますよ。 週1回くらいの頻度で面会に行っています。この場合は、頻度を増やすのと減らすのはどちらが良いんですか? お母様の状況にもよりますね。例えば、慣れない場所でさみしさを感じているときは、ご家族が頻繁に顔を見せることで「いつでも家族が会いに来てくれる」と安心 して「家に帰りたい」と言わなくなることがあります。 なるほど…。母はさみしいから「家に帰りたい」と言っているのかな…。 反対に、面会の頻度を下げることで穏やかに暮らせるようになることもあります。特に認知症の方の場合、納得したうえで入居したとしてもそれを忘れていることがありますから、ご本人が介護施設で暮らすことを受け入れるまでは面会を控える方が落ち着けるんです。それに、認知症の影響で入居していることが理解できていない場合、ご家族が面会に行くことで「迎えに来てくれた」と期待してしまう ことも。なので、自宅に帰れないとわかるとがっかりして気持ちが落ち込んでしまいます。 そんなことがあるんですね。そういえば、母は「今日は一緒に帰れるの?」と聞いてきます。面会に頻繁に行った方が良いと思っていたのですが、逆効果だったのかな…。 老人ホームに入った後の様子は施設側がよく把握しています。なので、面会を増やした方が良いのか、減らした方が良いのか、施設に相談して決めるのがおすすめ です。 スタッフの対応に不満・不安があるときは 介護施設のスタッフの対応に不満や不安を持つ場合もあるでしょう。そういうときは、施設長やケアマネジャーなどに相談しましょう。スタッフのなかには、乱暴な言葉遣いや対応などを意図せずにやっていることもありますから、相談することでケアの質が向上することもありますよ。 面倒を見てもらっているのに、文句を言ってはいけないと思ってしまうんですが…。 そうおっしゃる方は多くいらっしゃいます。ただ、面倒を見てもらっているからといって不満や不安を我慢する必要はありませんよ。万が一、特定のスタッフだけではなく施設全体の対応が悪い場合は転居を考えた方が良いでしょう。 ほかの入居者との人間関係に問題があるときは ほかのご入居者との関係に問題があったり、相性の悪いご入居者がいる場合には、部屋や食事の席を離してもらったり、居室のフロアを変えてもらう などの対応をしてもらえることがあります。 つまり、これも施設に相談が必要なんですね。 おっしゃる通りです。特にほかのご入居者も関わる問題の場合、ご本人やご家族だけで対応してしまうとトラブルが大きくなってしまうことも。そのため、まずは施設に相談して対応してもらうようにしましょう。介護スタッフに間に入ってもらうだけでも、ご本人のストレスが減ると思いますよ。 確かに、今まで「面倒を見てもらっているのだから迷惑をかけてはいけない」と思って、母のことを施設に相談せずにいました。これからはもう少し施設を頼ってみようと思います。 親を介護施設に入れることに罪悪感を持つ必要はない! 無理に在宅介護を続けると介護うつや離職、虐待のリスクも 介護施設での生活に不安があるときは、まず施設に相談しよう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: ...
2024/01/12
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。