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身体の筋肉量や嚥下機能(飲み込む力)は、年を重ねるほど低下しやすくなることがわかっています。 しかし、日常的に介護が必要な高齢者の場合、積極的に運動する機会が減ることで全身の筋肉量が減りやすい状況に。さらに、ひとたび低下した嚥下機能を回復させることは難しいため、「やわらか食」「ミキサー食」といった介護食に頼らざるを得ないのです。 そこで、東京医科歯科大学は摂食嚥下リハビリテーションの調査の一環として、要介護高齢者の離床時間と筋肉量・嚥下機能の関連を研究。その結果、離床時間が4時間以上の高齢者は手足の筋肉量や嚥下機能が維持されていることがわかりました。 離床時間が長いと嚥下機能が保たれる 東京医科歯科大学が、要介護状態の高齢者の離床時間と筋肉量・嚥下機能の関係について調査。それによると、4時間以上の離床している高齢者は、筋肉量・嚥下機能を維持していることがわかりました。 この調査の対象となった高齢者は、すべて要介護状態の人。要介護3~5相当の身体状況にある人の離床時間、筋肉量、服薬、BMI(体格指数)などを調査しました。 その結果、離床時間が4時間未満の高齢者に比べて、4時間以上の高齢者は四肢の筋肉量と嚥下機能が維持されていることがわかりました。さらに、離床時間が6時間以上の高齢者は、体幹の筋肉量も多く、常食に近い形の食事をとっていたそうです。 離床時間が延びたことが食事形態に影響したのは、常食を食べるためにはしっかり覚醒して咀嚼する必要があるため。咀嚼するには体幹の筋肉が大切であり、離床時間が6時間以上になることで覚醒状態が安定し、体幹の筋肉量が保たれていた可能性があります。 効果的なリハビリのために 慢性的に人手不足である介護現場では、身体や嚥下機能のリハビリを頻繫におこなうことは難しいもの。特に嚥下機能は専門家による指導がないと、効果的なリハビリが難しい分野です。 そこで、今回の調査結果をふまえて研究グループは、離床時間を4時間以上を目指すことを推奨。現在、4~6時間は離床できている人は、6時間以上ベッドから離れて余暇の時間を過ごすことを目指すことを勧めています。 積極的なリハビリが難しい以上、離床時間を延ばすことがリハビリにつながるのであれば、ぜひ少しずつ起きている時間を増やしていきたいですね。
2022/05/10
嚥下機能(飲み込む力)の低下は、食品が気管に入って肺炎を起こす誤嚥性肺炎のリスクが上がることに加えて、食べる気力が低下して慢性的な栄養不足になることもあります。 そこで林兼産業は、少量でエネルギーやタンパク質が摂取できる「スティックゼリー」を開発。嚥下機能が落ちた高齢者でも飲み込みやすく誤嚥しにくい形状なので、誤嚥性肺炎のリスクを下げられるそうです。 ゼリーで手軽に栄養補給 ハムやソーセージなどの食品の製造をおこなっている林兼産業が「スティックゼリー」を開発。少量で栄養が補給できるため注目されています。 このゼリーの特徴は、1本で80キロカロリーを摂取できること。また、スティック状に個包装されており、スプーンで一口サイズにも切りやすい形をしています。 これまでのカップゼリーはスプーンですくうと山型になるため、嚥下機能の落ちた人ののどには通りづらく、くずれて口の中に残ることでかけらが誤嚥性肺炎の原因になりかねないことが問題でした。 そこで、このゼリーでは薄い短冊形にすることで噛まずに丸のみできるため、口の中やのどの奥にゼリーのかけらが残ったりむせこみの防止をしています。 また、嚥下機能が落ちてくると食事に時間がかかるため、それが精神的な負担となったり食事量の減少にもつながることも。さらに、それが原因で低栄養状態となって、身体状況が悪くなり介護度が上がることもあります。 そうした問題をこのゼリーでは、少量でも栄養を取れるようにすることで解決。1本約15グラムでしっかりカロリーを摂取できるタイプや、1本でタンパク質を2.5グラム含むタイプ、1本で1日必要量の30%以上のビタミンやミネラルが摂取できるタイプなど、食事量が少ない人の補助食として活用できます。 介助する人・される人の負担軽減に 嚥下機能が落ちると食事に時間がかかるようになることで、食欲が落ちたり食事量が減ることも。さらに、食事介助が必要な場合は職員の業務負担が大きくなります。 そこでこのゼリーのように、少量でもしっかりと栄養を補給できる食品があれば、介助される人の心身の負担も介助する人の業務の負担も減るのではないでしょうか。 またこのゼリーはスティック状に個包装されているので保存もしやすく、食事量が足りない日のおやつとしても使いやすいかもしれませんね。
2022/04/14
2020年の死因の第6位である誤嚥性肺炎。食べ物や飲み物が口から気管に入ることで肺が炎症を起こす病気で、嚥下機能(飲み込む力)が落ちている高齢者は特に注意したいものです。 この嚥下機能を専門に取り扱う診療センターが、関西で初めて京都大学付属病院にオープン。嚥下機能の判定やリハビリテーション、食事サポートなどをおこなうそうです。 関西初の嚥下機能専門センター 京大付属病院が、今月1日に関西初の「摂食嚥下診療センター」を開設しました。 嚥下機能の診療には、耳鼻咽喉科やリハビリテーション科、歯科などのさまざまな診療科が関わります。そのため、同病院では専門のセンターを設立することで、各診療科とスムーズに連携が取れるような体制を構築したそうです。 このセンターでは、内視鏡検査や造影検査などの基本的な嚥下状態の確認する検査に加えて、嚥下圧測定検査という検査方法も可能。これは、飲み込みの際に関わる咽頭や食道など器官の収縮を測定する検査です。 こうした検査の結果に基づいて、センターのメンバーで治療方針を決定。そしてそれに応じて、嚥下機能に合わせた形態で食事を提供して食事面からもサポートします。 また、嚥下障害の専門家である言語聴覚士や看護師によってリハビリができる体制もあるそうです。 何気ないむせこみが要介護の原因に? 高齢になると、喉の筋肉の減少や唾液の量が減ることなどによって、嚥下機能が低下しやすくなります。 それによって、むせやすくなったり食べ物が気管に入ることで誤嚥性肺炎を発症することも。加えて、上手く飲み込めないため食欲の低下によって栄養状態が悪くなり、身体全体の筋力低下につながるケースもあります。 そのため、もし「むせやすい」「食べ物が上手く飲み込めない」と感じたら、嚥下機能が落ちているサインかもしれないので要注意。「もう年だからしょうがない」と何もせずにいると、それが悪化して介護が必要になったり寝たきりになる原因になりかねません。 簡単にできる「口腔体操」などもあるので、食事の前に取り入れてみると食べやすさが変わってくるかもしれないですよ。
2022/04/11
飲み込む力が落ちてくると、一般的なお茶やジュースなどの飲み物を飲む際に誤嚥をしてしまうことがあります。 それを防ぐために、多くの介護施設では入居者の嚥下状況に応じて「とろみ剤」を飲み物に溶かして粘度を上げています。 しかし、一つひとつ手でとろみを付けているので時間がかかり、職員の負担になっているのが問題でした。 そうした負担を軽減するために、とろみづけのサブスクリプションサービス「TRORINPA(トロリンパ)」が登場。短時間でとろみのついた飲み物を提供してくれるサービスです。 誰でも簡単にとろみづけを 「TRORINPA」はとろみづけのサブスクリプション(月額)サービス。これまで、食事やおやつの際に1杯1杯手でしていたものをドリンクサーバーが自動でとろみづけをしてくれます。 このサーバーでは、森永乳業グループのとろみ剤を使い、3段階のとろみを1杯13秒で提供。時間の短縮に加えてとろみの強さも均一になるため、作る人によってとろみの強さが異なるということもなくなります。 また、サーバー専用の飲料パウダーを7種類の中から3種類を選択可能。麦茶やほうじ茶、リンゴジュースや紅茶などのさまざまな味が楽しめます。とろみなしのドリンクも選択できるので、職員の福利厚生としても活用できるそうです。 細かな調整ができれば… これまで、1杯1杯手作業でおこなっていた「とろみづけ」が自動でおこなえるとなれば、現場にとって大きな負担軽減になるのではないでしょうか。 ただ、とろみの粘度が3段階だと調整が難しい面もあるかもしれません。 おそらく、多くの施設で入居者ごとに細かくとろみの強さを調整しているでしょう。そのため、とろみの強度をもっと細かく調整できるようにしないと、現場で使い勝手が悪いと感じられてしまう可能性もあります。 例えば、日本介護食品協議会が定めているユニバーサルデザインフードの規格では、4段階の粘度を設定しています。 これに合わせて、4段階くらいの調整ができないと現場では使いにくいかもしれません。 今回のサービスは定期的なメンテナンスも含めた内容。基本料は管理費用込みで月2万2000円となり、あとは飲料パウダーととろみ剤の費用だけです。 とろみづけが必要な人が多い施設では、活躍するサービスとなるかもしれませんね。
2022/03/28
ごはんや肉じゃが、ハンバーグなど和洋中問わず、幅広い料理が食べやすく調理されているレトルト介護食。食材を小さくきざんだりとろみをつけたりと、自宅ではなかなか手間のかかる介護食が温めるだけで準備できるのでとても便利ですよね。 そのなかでも珍しいのが、「吉野家」の牛丼の介護食。お店で食べる”あの味”はそのままに、噛む力が弱まっている人でも食べやすいように工夫されています。 また今回、この介護食の牛丼を移動スーパーで販売することになったそうです。 「買い物難民」を支えるスーパーに牛丼が 全国で1200店舗を展開している吉野家が、高齢者向けレトルト食品「やわらか牛丼の具」を移動スーパーで販売開始することを発表しました。 この牛丼は、吉野家のお店の味をそのままに、噛む力が弱まっている高齢者でも食べやすいように工夫。お店のものよりも牛肉・玉ねぎを細かくきざんだりとろみをつけたりと、介護食ならではの難しさがあったそうです。 特に難しかったのが塩分の調整。店舗の味付けよりも塩分量を少なくしつつ”吉野家の味”を再現する必要がありました。 そのため、吉野家の牛丼のたれを分析して、素材を置き換えたりして低塩とお店の味を両立させたそうです。 また、この牛丼を販売する移動スーパーは、全国で約950台もの軽トラックを稼働させている「とくし丸」。大型スーパーの出店で近くの商店街がなくなってしまったり、高齢になって買い物に遠出ができなくなった高齢者が多く利用するそうです。 「スーパーまで行くのは大変だけど、自分で見て選んで買い物をしたい」という高齢者が多く、ときには利用客のリクエストの商品を乗せることもあるそう。週に2回、同じ地域を回るため、そのような「御用聞き」の役割や「見守り」も兼ねているとのことです。 あえて”ファストフードの介護食化”が良い? 「高齢者が好きな食べ物」というと、天ぷらや寿司などの和食をイメージしがちですが、それだけではなくてハンバーガーなどのファストフードが好きな人も多くいるそうです。 吉野家が牛丼を販売してから約50年なので、当時から食べていた人が高齢になっていると考えれば自然なことなのかもしれませんね。 しかし、飲食店がある駅前まで行くのは高齢者にとっては大変だったり、介護施設に入居しているとファストフードを食べることはまずできません。さらに若者向けに作られているので、量が多すぎたり食べにくい点も問題です。 そのため吉野家のような、”ファストフードの介護食化”が高齢者に喜ばれるのかもしれません。 もうすでに「高齢者は和食が好き」という時代ではないみたいですね。
2022/03/07
最新の研究で、口を開ける機能(嚥下機能)と口を開ける力(開口力)が関係していることがわかりました。 これまで嚥下機能を把握するためには特殊な検査が必要だったため、より早い段階で嚥下機能の低下を把握できるようになるとのことです。 飲み込む力のカギは「開口力」? 東京医科歯科大学の研究グループが、開口力と嚥下機能の関連性を証明。簡易的に嚥下機能を把握できるので、早期に嚥下機能障害を発見できる可能性があるそうです。 今回、研究グループが注目したのは「舌骨上筋」という食べ物を嚥下する際に働く筋肉。この筋肉がのど仏を持ち上げて気管を持ち上げることで、食べた物が食道に送り込まれるそうです。 そのため、舌骨上筋が衰えると上手く気管をふさげず、食べ物が気管に入って誤嚥が起きるそうです。つまり、舌骨上筋の働きが食べ物の嚥下に重要というわけですね。 そしてこの筋肉は、口を開けるときにも働くそう。そのため、開口力を測ることで舌骨上筋の衰えも計測できると考え、今回の実験をおこなうに至ったとのことです。 今回の実験は、開口力の計測機を作って開口する力の値を計測。同時に、全身の栄養状態や筋肉量も嚥下状態と関連していることがわかっているので、握力やBMI(体格指数)も調査しています。 加えて、日常の嚥下状態は「EAT-10」という嚥下状態を確認するアンケートで調査。嚥下機能の状態と、開口力についても比較しました。 その結果、嚥下機能が低下している人は、開口力やBMIなどの数値が低下していることがわかったそうです。 今回の結果から、これまでおこなわれていた特殊な検査でなくても、嚥下機能の測定ができる可能性があるとのこと。簡易的に検査ができるため、嚥下機能の低下を早期に発見できるようになるそうです。 また、開口力と嚥下機能の関連性がわかったので、「口を開けるトレーニングをすることで嚥下機能が向上するかもしれない」と研究グループは述べています。 大きく口を開けて、元気に食べる力をきたえる 私たちの普段の生活で、口を思い切り開けることはほとんどありませんよね。そのため、口を開ける力が低下していることには、なかなか気が付かないのではないでしょうか。 嚥下機能が衰えると栄養不足にもなりやすいですが、何より「食べる楽しみ」が減ってしまいます。 そのため、日常的に嚥下状態には気を付けておきたいですよね。 そこで、大きな口を開けるだけのトレーニングならとても簡単に生活に取り入れられます。長く元気に楽しく食べられるように、開口力をきたえていきましょう。
2022/02/22
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。