Q&A
最近、介護をしている母が怒りっぽくなったような気がします。母は認知症になってから物忘れが多くなり、半日前に話したことも忘れてしまいます。それを指摘すると「そんなことは話してない!」と怒鳴り出すんです。 母が認知症とわかってから段々、怒りっぽくなってきたように思うのですが、認知症になると怒りっぽくなることがあるのでしょうか? (内藤さん・会社員・60歳) はい。認知症の初期症状で怒りっぽくなることがあります。認知症になると、これまで何気なくできていたことができなくなったり、周囲の状況が理解できなくてストレスに感じることが増えていきます。そのいらだちをご家族にぶつけてしまうのかもしれません。なので、そういうときはお母様の言葉や行動を否定せず、まずはよく話を聞いて怒りに共感してみましょう。話を聞いているうちに、いらだっている原因がわかるかもしれません。ただ、あまりにも興奮して暴言を吐いたり、暴力を振るうような状態であれば、一度、距離をおいて落ち着くのを待ちましょう。 なぜ認知症で怒りっぽくなる? 同居している母がちょっとしたことで怒るので、毎日それに振り回されて疲れました。昔は快活で笑顔の絶えない人だったのに、今は少し注意しただけでものすごい勢いで怒鳴り出します。認知症の診断を受けた先月くらいから怒りっぽくなったような気がするのですが、もしかして認知症の症状だったりするんでしょうか? うーん、その可能性はありますね。というのも、認知症の初期症状のせいで性格が変わってしまったかのうように、怒りっぽくなる人は珍しくないんです。 やっぱり!でも、なんで認知症になると怒りっぽくなるんですか? まず、脳の感情をコントロールする機能が低下していくことが原因として挙げられます。通常、怒りを感じることがあっても脳の感情を制御する機能のおかげで、怒りを爆発させずに済みます。ですが、認知症になるとその他の脳の機能と同じように感情を制御する機能が低下してしまうので、ちょっとしたことでも感情を爆発させてしまうんですね。 そうなんですね。認知症になって低下するのは、記憶する力だけじゃないんだ…。 認知症の初期症状とは 認知症の初期症状は、認知症の種類によっても異なりますが、「もの忘れ」がきっかけとなり気づくことが多いようです。 また、時間や場所がわからなくなる見当識障害や理解力・判断力の低下も、比較的初期からはじまります。これにより、これまでできていたことができなくなくなったり、精神的に混乱するなどのさまざまな兆候が現れます。 ここからは、認知症のサインとなる症状を紹介します。 もの忘れ 少し前の出来事をすぐに忘れてしまう同じことを何度も聞いたり話したりする置き忘れやしまい忘れが増え、いつも何かを探している約束をすっぽかしたり、約束をしたこと自体を忘れてしまう人やものの名前が出てこなくなり、「あれ」や「それ」で指すことが増える同じものを何度も買ってきてしまう 時間や場所がわからない 今日の日付が言えなくなったり、今の季節がわからなくなる普段から通っている道でも迷ってしまう過去の出来事がどれくらい前のことなのかわからなくなる 理解力・判断力の低下 役所の手続きやATMでのお金の出し入れができなくなるテレビドラマの筋が途中でわからなくなる運転ミスが増えたり、事故を起こす 仕事や趣味、身の回りのことができない 仕事や趣味の段取りが悪くなったり、時間がかかるようになる料理の手順がわからなくなったり、味付けを間違える季節に合わせた服装を選べなくなる家電の使い方がわからなくなる入浴の仕方や服を着る順番がわからなくなるトイレが間に合わないことが多くなる 精神的混乱や落ち込み 一人になるのを不安がったり、怖がったりする趣味などの好きなことにも興味が持てなくなり、ふさぎこんだり、何をするにもおっくうがるイライラしたり怒りっぽくなる存在しない人やものを見えると言う自分のものを盗まれたと疑う目的があって出かけても、途中で目的がわからなくなり混乱する 認知症になると、記憶障害に加えて、自分が今いる場所や時間がわからなくなる「見当識障害」などさまざまな症状が現れます。すると、これまで普通にできていたことが急にできなくなったり、できないことを誰かに指摘されることが増えていきますよね。それによって自尊心が傷つけられたり、できないことが増えていく苛立ちを感じるようになるんです。 「できないことが増えていく苛立ち」ですか…。 周囲の人も親切心から「これはできないから手伝おうか」と声をかけますよね。すると、それが引き金となってそれまで溜まっていた苛立ちが爆発してしまう…ということもあり得るんです。 あぁ!それは思い当たります。身体を洗い忘れたり髪の毛のシャンプーを流し忘れたりすることがあったのでお風呂を手伝おうと声をかけたら、「1人でできるから手を出すな!」と怒鳴られてしまいました。手伝おうとすることで母の自尊心を傷つけていたんですね…。 そうですね。もしかしたら「1人でできないと思われている」と感じてしまったのかもしれません。また、自分の体調不良をうまく表現できなくて怒っていることもあり得ます。 体調不良で怒っているんですか? 認知症が進行すると、身体の痛みや発熱、便秘などで身体に不調があってもそれを自分で理解できなくなることがあるんです。通常だと「腰が痛むから湿布を貼っておこう」「熱っぽいから早めに寝よう」と、自分の体調不良を正確に感じて、それに対応できますよね。でも、認知症の人は「腰が痛い」「熱っぽい」といった感覚を的確に把握できず、でも不快なので怒りに転換してしまうことがあるんです。 そんなこともあるんですね!知らなかった…。 つまり、認知症になると怒りっぽくなるのは、精神的・肉体的ストレスをうまくコントロールできなくて、怒りとして発散している、と言えますね。 認知症で怒りっぽくなったらどうすれば良い? 母が怒りっぽくなった理由がなんとなくわかって少し安心しました。だからって母の対応をするのが疲れるのは変わりません。何か良い方法はありませんか? まずは、お母様の話をよく聞いてあげることが大事です。 聞いてますよ!でも、何度も同じ質問をしてきたり、とんちんかんなことばかりしゃべるので聞いているこちらがイライラしてきてしまって…。 内藤さんのお気持ちはわかります。ただ、おそらくお母様は認知症の症状が進行して、とても不安な状態です。不安やストレスを軽くするには、話をよく聞いて怒りの感情に共感してあげることが大切です。介護やお仕事で疲れているとその余裕がなくなりがちですが、共感して話を聞いていく中でお母様が不安に感じている原因がわかるかもしれませんよ。ただ、お母様ご自身も怒っている原因がわかっていない可能性があるので、怒っている理由は問い詰めないようにするのも重要です。 なるほど…。先日、怒る母に「なんでそんなにすぐ怒るの」と怒鳴り返してしまったことがありましたが、良くないことだったんですね。 介護で疲れていると、冷静に対応する余裕がなくなることもありますよね…。もし、内藤さんの余裕が全くなくなってしまったり、お母様が興奮しすぎて暴言や暴力が見られるときは、一時的に距離を置くこともひとつの手です。別の部屋に移動したりして、物理的に離れるとお互いに気持ちが落ち着くと思いますよ。 確かに…。今度、イライラしたら別の部屋に離れてみようと思います。 もしかしたら、それでも疲れやストレスが溜まっていることもあるかもしれません。そういうときは、短期間の宿泊ができる介護サービスの「ショートステイ」を利用して”介護休み”を作っても良いかもしれません。どうしても、介護を受ける側の体調や生活が優先されてしまうことが多いのですが、それで介護する人が倒れてしまってはいけません。なので、たまには休みを作りながら介護を続けていってくださいね。 脳の機能が低下することで怒りっぽくなることがある 認知症になって自分を否定されることが増えて怒りにつながることも 怒りだしても否定するのはNG。まずは話をよく聞いて pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before { content: '[sample]'; ...
2023/01/06
最近、母の様子がおかしくて、認知症かもしれないと感じています。午前中にした話を午後には忘れていたり、何度も同じ質問をしてくることもあります。 なので、認知症の検査を受けてもらおうと「認知症の検査に行こう」と言ったのですが、「認知症じゃない!」と拒否されてしまいました。どうやったら、母を説得できるでしょうか。 (浜田さん・61歳・会社員) 「健康診断に行こう」と別の理由で誘ってみるのもひとつの手です。また「お母さんが認知症になったら、私が困るから病院で診察してもらおう」と浜田さんが心配に感じていることを素直に伝えると、検査を受ける気になってくれるかもしれません。認知症を発症した多くの人が、自分の様子がおかしいことに気がついて不安を感じています。なので、そこを刺激するような「最近、変だから検査しよう」「認知症なんじゃない?」といった伝え方をしてしまうと、拒絶されてしまうことがあるので要注意です。 認知症の検査を嫌がるときの誘い方は? 母の様子が最近おかしくて。午前中にした話をその話をしたことすら忘れてしまったり、同じ質問を1日に何度もしてくることもあります。もしかしたら認知症なのかもしれないと思って「最近、様子が変だから認知症の検査に行こう」と言ったら「認知症なんかじゃない!」と怒って拒否されてしまいました。母が認知症検査を受けてくれる上手い誘い方はないでしょうか? うーん、実は、ご高齢者を認知症検査に誘う言い方として、「おかしい」とか「ボケている」といった言い方はNGなんです。 えぇ!そうなんですか? はい…。認知症の人の多くは、初期の段階では自分の変化に気がついています。なので、「認知症かも」と指摘されるとその不安感が大きくなってしまうんです。それに、認知症だと自分で認めなくない気持ちもあるので、反発されてしまうこともあります。 そうだったんだ…。もしかしたら、母も自分の異変を感じて不安になっているかもしれないんですね…。 そうなんです。なので、さらに不安になってしまうような言い方はNGです。加えて、「ご飯を食べに出かけよう」「私が調子が悪いから病院に付き添って」というような嘘もしない方が良いですね。病院に着いてお母様が嘘に気がついたとき、信頼関係が崩れてしまう可能性もありますから。 うーん、認知症の検査を受けてもらうのは難しいですね…。良い言い方があると良いのですが…。 そうですね…。例えば、「健康診断を受けてみない?」と誘ってみるのはどうでしょうか?また、「高齢になると検査する人が多いみたいだよ」「近所の○○さんも検査したみたいだよ」と、第三者を引き合いに出すのも良いかもしれません。 それだけで納得してくれますかね?母が納得しなくて、結局、無理やり連れていくしかないように思います。 いえ、無理やり受診するのはおすすめできません。というのも、認知症は「検査して診断が出れば終わり」というものではなく、長期的に治療を続けていくものだからです。そのため、無理やり病院に連れて行って認知症だと判明しても、その後の治療のための通院がとても大変になる可能性があります。なので、無理やり検査を受けるのではなく、じっくり説得してお母様が納得したうえで検査を受けていただくのが今後のためにも良いんです。 なるほど…。 もし、なかなか検査を受けてくれないようだったら、ストレートに「お母さんが認知症だったら、私がとても困る。私のために検査を受けて」とお願いしてみるのも良いでしょう。また、かかりつけ医にお願いして、検査を勧めてもらうのも手。「先生が言うなら…」と意外とスムーズに受診してくれる人も多いですよ。 あぁ、確かに。かかりつけの先生の言うことなら素直に聞くので、先生にお願いするのが良いかもしれません。ちなみに、認知症の検査を受けられるのは何科の病院ですか? 精神科、脳神経内科、脳神経外科、心療内科、老年科…などいろんな診療科で検査が受けられます。どの病院で検査を受けるか迷ったら、それもかかりつけ医に相談してみるのが良いでしょう。検査を受けられる病院を紹介してくれると思いますよ。 認知症診断の流れ 認知症診断の流れは以下の通りです。 面談(問診) 身体検査 認知症検査 認知症診断では、問診を含む面談、他の病気の可能性も確認するための身体検査、神経心理学検査と脳画像検査となります。 認知症と診断されたら… 検査の結果、母が認知症と診断されたらどうしたら良いんでしょうか? まずは、認知症や介護の専門機関に相談してみましょう。そうすることで、適切な介護サービスや支援を受けられますよ。 そうか、認知症になると介護が必要になるんですよね。 そうです。今は元気でも認知症が進行していくと、さまざまな面で介護が必要になります。なので、適切な介護サービスが受けられるように、介護認定を受けましょう。介護認定を受けるには、介護やご高齢者の暮らし全般をサポートしている「地域包括支援センター」の窓口で申請する必要があります。そのため認知症の診断が下りたら、まずは地域包括支援センターに行くことをおすすめします。 地域包括支援センターとは 地域包括支援センターを要約すると、介護だけでなく医療や保険、福祉などの面から高齢者やその家族の生活を支える総合窓口、ということになります。 地域包括支援センターにはそれぞれの専門家が常駐しており、高齢者が住み慣れた場所での生活を続けられるようにさまざまなサービスを提供してくれたり、相談に乗ってくれたりします。 地域包括支援センターの運営主体は各市町村。それら自治体から委託を受けた社会福祉法人や社会福祉協議会が運営しているケースがほとんどで(稀に民間企業が運営しているセンターも)、全国には約5000以上もあります。 ...
2022/12/21
認知症の母が夜になかなか寝てくれないので困っています。一度、夜中に外に出てしまって警察に保護されたこともあって心配で私も一緒に起きており、常に寝不足なんです。 どうしたら母は眠ってくれるようになるんでしょうか? (五十嵐さん・パート・61歳) もしかしたらお母様は「昼夜逆転」状態になっているかもしれません。認知症になると脳の機能が低下して、体内時計が乱れることで時間の感覚がなくなるので昼夜逆転してしまう傾向があります。なので、体内時計を整えるために日中に適度な運動をしたりすることで、夜間の睡眠状態が良くなることがありますよ。 なぜ認知症で昼夜逆転するの? 最近、母の寝付きが悪くて夜中に起きるので困っています。起きているだけなら良いのですが、以前、夜中に1人で家を出て帰れなくなり警察に保護されたこともあるので、また出ていってしまわないか心配で私も一緒に起きています。私も常に寝不足で辛いです。どうにかする方法はないんでしょうか? うーん、それはとても大変な状況ですね。…ちなみに、お母様は認知症を発症していらっしゃいますか? はい、アルツハイマー型認知症です。物忘れがひどくて、30分前に話したことも忘れてしまうほどです。 なるほど…。でしたら、認知症による「昼夜逆転」の症状が出ているのかもしれませんね。 昼夜逆転、ですか?どういう状態でしょうか? 夜に眠らずに活動して、日中に眠ってしまう状態のことです。文字通り、昼と夜が逆転してしまっているんですね。 まさにうちの母がそうです!夜はほとんど眠らないのに、お昼ごろになるとリビングで居眠りしているんです。何か良い解決法はありますか? 解決法を考える前に、お母様が昼夜逆転している原因を探してみましょう。その原因によって、打ち手も変わってきますから。 それもそうですね。昼夜逆転の原因というと、どんなことがあるんでしょう? 主な昼夜逆転の原因は、以下のようなものがあります。 体内時計が乱れている 見当識障害がある 夜間せん妄が起きている 日中の活動が少ない 薬の影響がある 身体の不快感がある 体内時計とは、1日の昼と夜の変化に合わせて身体の状態を変化させる機能のことです。「概日リズム」とも呼ばれ、時間によってホルモンの分泌や体温調整を無意識でおこなっています。ただ、この機能は脳の働きによるもの。認知症によって調整する部分の機能が低下してしまうと体内時計が乱れて、寝るべき夜に眠れず、起きているべき昼間に眠ってしまうようになるんです。 「体内時計」という単語は聞いたことがありますけど、認知症の影響があるんですね。知らなかったです。 また、「見当識障害」も認知症の影響で起きる症状のひとつ。見当識障害とは、今の時間や場所がわからなくなることです。「今は夜か昼か」がわからなくなっているので、「今は寝る時間かどうか」もわからなくなるんですね。その結果、夜中に活発になってしまうのはもちろん、明け方なのに夕方と勘違いして夕食の準備をしようとしたりすることもあります。 実は母も時間がわかっていない様子はあります。昼夜問わず「今、何時?」と何度も聞いてきますし…。 見当識障害とは 見当識障害とは、今、自分がいる時刻や日付、場所、周囲の環境などを総合的に判断する能力が失われる障害です。アルツハイマー型認知症になると、記憶障害に続いて見られる症状です。 見当識障害には「時間の見当識障害」「場所の見当識障害」「対人関係の見当識障害」の3つの種類があります。まず最初に症状としてあらわれるのが時間の見当識障害と場所の見当識障害です。症状が進行すると対人関係の見当識障害も目立つようになります。 時間の見当識障害 昼か夜かわからなくなる 今日が何月何日かわからなくなる ...
2022/11/15
認知症の母の暴言や暴力がひどくて我慢の限界です。母の認知症が進んだせいか、数ヵ月前から暴言を吐き、ときおり暴力を振るうときもあります。そうなると、入浴やトイレの介助などをまったく受け付けません。 昔から気難しい人ではありましたが、それがひどくなっている気がします。どうしたら良いか、対策を教えてください。 (新井さん・パート・57歳) お母様からの暴言を受けながらの介護は大変ですよね。もし、暴言を吐かれてつらいと感じたら、物理的に距離を取りましょう。別の部屋に移動したりして、お母様の目の届かないところに移動することで、お母様も次第に落ち着くかもしれません。また、テレビをつけたり食べ物を出したりしてお母様の注意をそらすのも手。それでも暴言・暴力が続くようでしたら、医師やケアマネジャーに相談しましょう。 認知症による暴言・暴力の理由は? 母からの暴言や暴力がつらくて、毎日の介護が大変です。認知症が進行したのか、母は何ヵ月か前から私を罵るようになり、今ではちょっと気に食わないことがあると怒鳴り散らします。昔から気難しい人ではありましたが、ここまで激しく怒ることはありませんでした。どうしてこんな風になってしまったんでしょうか? 怒鳴られながらも懸命にお母様の介護をして、とてもおつらいですよね…。認知症になると、感情のコントロールに関わる前頭葉が萎縮します。そのため、ストレスや不安を感じると感情のコントロールが効かなくなって、激しく怒り出すことがあるんです。こういった状態のことを「感情失禁」と呼びます。 ストレスや不安によって、怒り出すんですか?それよりも、母の場合は単に気に食わないから怒っているようにも見えます。病院が嫌いな人なので、病院のことはわかっていないのに「こんなところに連れてきてどうするつもり!」と病院の入口怒鳴ったり、「助けて!」と大声で叫んだり私を殴ったりするんです。そうやって騒ぐせいで、受診できなかったことが何度もあります。 なるほど…。それも一種の不安が原因かもしれません。というのも、認知症になると直近の出来事を記憶できなくなります。人によってはほんの数分前のことも忘れてしまうんです。そういった場合、外出するときに「病院に行くよ」と伝えていたとしても、移動しているうちに忘れてしまいます。でも、出来事の記憶はなくなっても「病院は嫌い」という感情の記憶は残りやすいんです。なので、「よくわからないけど、嫌なところに行く」という不安が暴言や暴力を引き起こしている可能性があります。 「病院は嫌」という感覚だけは残っているんですね…。 認知症の中核症状「記憶障害」とは 認知症の中でも、最もわかりやすいのが記憶障害です。 記憶障害はもの忘れとよく混同されますが、記憶障害ともの忘れは根本的に異なります。もの忘れは「何かを忘れている」ことは理解できますが、記憶障害になると、忘れているという記憶すらなくなるのです。 例えば、普通のもの忘れであれば会う約束の時間をうっかり忘れてしまっても、指摘されると思い出すことができます。しかし、記憶障害になると約束したこと自体もすっぽりと記憶からなくなってしまうのです。 例)失われやすい短期記憶 数時間前に会った人の名前 ...
2022/10/05
特別養護老人ホームにいる母が急に痩せてしまって心配です。食事は毎食8割近く食べられているそうですが、半年で3kg以上減っているとのこと。きちんと食べているのに体重が減っているのはなぜでしょうか? (杉山さん・会社員・60歳) 加齢で筋肉量が減ったことによって体重も減ってしまったのかもしれません。また、高齢になると食事をとっていても消化・吸収力が低下することで、栄養が身体に吸収されないで排泄されてしまうこともあります。高カロリーなゼリーなどを食事に追加してみるのも良いかもしれません。 なぜ体重減少をしてしまった? 特養に入っている母親が、急激に体重が減っているようです。何か大きな病気なのではないかと心配で…。 ちなみに、お母様の体重はどれくらい減少しているんですか? 特養のケアマネジャーさんによると、この半年で3kg以上も減っているそうです。ダイエットしているわけでもないですし、これって減りすぎですよね? そうですね…。半年で体重の5%以上の体重減少があるのは要注意です。例えば、50kgの人の場合、2.5kg以上ですね。特にご高齢者の場合、さまざまな理由で体重が落ちやすいので注意が必要なんです。 どんな理由で体重が落ちるんですか? ご高齢者の体重が減少する理由はいくつか考えられます。主なものを以下にまとめました。 加齢によるもの 認知症によるもの 病気によるもの 咀嚼力・嚥下機能の低下 例えば、加齢によって筋肉量が減ると身体を動かすことが億劫になって運動不足になってしまいます。そのため、生きるために必要となるカロリーが少なくなるので、以前よりも空腹を感じにくくなります。そうして食事量が低下してしまうんですね。また、噛む力(咀嚼機能)や飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、食事が飲み込みにくくなるので食欲が低下する傾向があります。 ケアマネジャーさんによると、母はしっかり食べられているみたいです。毎食8割ほどは食べていて、好きなおかずだと完食するときもあるくらいです。となると、食欲低下が原因ではないですよね? 確かにそうですね。…そういうことであれば、高齢になったことで消化力や吸収力が低下したことが原因かもしれません。 どういうことですか? 歳を重ねることで、栄養を身体に取り込みにくくなるんです。これまでと食事量や内容は変わらなくても、体内に栄養が吸収されずに排出されてしまうので、痩せてしまうということですね。 なるほど、もしかしたらそうなのかもしれません! 吸収力が低下している場合、下痢になる傾向があります。排泄の状況もケアマネジャーさんに確認した方が良いかもしれません。 そんなことがあるんですね、ケアマネジャーさんに聞いてみます。 あとは、やはり病気が影響することもあります。例えば、がんの場合、がん細胞はたくさんのエネルギーを使って増殖します。そのため、がんの進行にともなって体重減少が起こることがあります。また、これはお母様は違うかもしれませんが、消化器系の疾患のときも体重減少する場合があります。胃や十二指腸の潰瘍、潰瘍性大腸炎などの場合、消化機能に異常が出るので胃の中に食べ物が残り続けて食欲がわかなくなるんです。 病気の可能性もあるんだ…。 そうなんです。それに、認知症が原因で体重が減ることもあります。例えば、食べること自体を忘れてしまったり、食べ物を食べ物と判断できないために食事量が減少して体重も減ってしまうこともあります。また、箸やスプーンを使ったり、それを口まで運ぶという一連の動作ができなくなることも…。さらに、認知症によって何事にも無関心になって食事もとらなくなることで、体重が減ってしまうケースもあるんです。 認知症による『拒食』 拒食とは食べることを拒否する弊害を指し、食べなくなることで栄養状態の悪化や体力の低下を招きます。介護をする人からすれば、「なんとか食べてほしい」という一心で食事を勧めていても、本人はそれがストレスとなり拒否している可能性があります。 対策①好きなものを献立に取り入れる 食欲を掻き立てるために、本人の好きなものを献立に取り入れるのが良いでしょう。ただし、毎日となると栄養に偏りが生じてしまうため、あくまで本人の食欲を向上させるための手段と考えておきましょう。 対策②無理に食べさせようとしない 強引に食事を勧めたり無理やり食べさせることは絶対にしてはいけません。介護をする人は、「本人のためを想ってやっているのに…」と思うこともあるでしょう。しかし一番重要なのは、本人の気持ちに寄り添い、認めてあげることです。 高齢者が体重減少をするとどんなリスクがある? ご高齢者の体重が減ってしまう原因を知ったところで、合わせて体重減少によるリスクも把握しておいてください。 体重が減るリスク…。急に体重が減ったことには動揺しましたが、その危険性についてちゃんと考えたことはありませんでした。 では、ここで改めて確認していきましょう。以下に体重減少のリスクについてまとめました。 活動量の低下 床ずれ 免疫力の低下 低血糖 低たんぱく血症 体重が減少するときは、たいてい同時に筋肉量も減っています。すると、先ほどもお話しした通り、身体を動かすことが億劫に。そのため、お腹が空きにくくなって食事量が減って、筋肉量がさらに減って…と悪循環になってしまいます。 これが進行すると、気力や体力が落ちた「フレイル」という状態になります。フレイルがさらに進行すると、介護が必要な状態、つまり要介護状態になるわけですね。もしかしたら、そのまま寝たきり状態になってしまうかもしれません。 寝たきりに!体重が減ることって良いイメージがありますが、そうとも言えないんですね。 おっしゃる通りです。若い世代の健康管理にダイエットは有効かもしれませんが、ご高齢者には勧められません。筋肉の減少する可能性が高いですから。 また、床ずれのリスクも高まります。床ずれは、栄養状態が良い人にはほとんどできません。でも、栄養状態が良くないと、皮膚がクッションの役割をしないので炎症しやすい状態です。だから、長時間ベッドに横になっていたり、同じ姿勢で座っていると皮膚がむけたり化膿してしまうんですね。 あと、この「低血糖」ってなんですか?血糖値が高いのが良くないのは知っていますが…。 血糖値は、低すぎても良くないんです。血糖値が下がりすぎると、頭がぼーっとして意識障害になったり最悪の場合、死に至ることもあります。特に、糖尿病の治療で血糖値を下げる薬を使っている場合、必要なカロリーをしっかり摂らないと低血糖になってしまうんです。 低血糖ってそんなに怖いんですね…。それと「低たんぱく血症」という言葉は、初めて聞きました。 低たんぱく血症は、血液中のたんぱく質が非常に少ない状態のことです。お腹に水が溜まる「腹水」やむくみが起きて、身体を動かしにくくなり、さらに活動量の低下につながってしまうんです。 高齢者の体重減少にはどんな対策がある? 体重が減ることのリスクを知ったら、母のことがもっと心配になってしまいました…。どうしたら食い止められるんでしょうか? 不安にさせてしまってすいません! 体重減少を食い止めるには、やはりしっかり栄養を摂ることですね。体重減少がみられるときには、糖質や脂質といったエネルギー源になる栄養を優先して摂っていきたいです。 糖質と脂質ですか…。どんなものを食べさせたら良いんでしょうか。 お母様は特養の栄養バランスが考えられた食事をとっているので、今の食事に追加するのが良いかもしれません。 例えば、手軽に栄養を摂れる高カロリーゼリーや高カロリードリンクがドラッグストアなどで売られているので、差し入れしても良いでしょう。もちろん食品を持ち込む際には、まず特養の看護師さんやかかりつけ医に相談してからにしてくださいね。 高カロリーの食品が売ってるんですね!知らなかったです。 また、そういう食品でなくてもお母様が好きな食べ物を差し入れするのも良いでしょう。例えば、ようかんやアイスといったお菓子類だと、おやつの時間などに手軽に食べられますよ。 なるほど…。特養の看護師さんに確認してみます。 そうですね。どちらにせよ、今のお母様の状態を医師や看護師さんといった専門家に相談してみることが大切です。もしかしたら、病気や服薬中の薬との兼ね合いで食べてはいけないものがある可能性もありますから。 まずは、現在の食事状況や体調を確認しつつ、特養の医師や看護師に相談してみましょう。 半年で体重の5%以上の体重減少は要注意! 高齢になると食欲低下、消化・吸収力の低下で体重が減少しやすい 筋力や免疫力の低下によって、寝たきりや病気になるリスクが上昇 栄養食品や好きな食べ物で意識して栄養を摂って pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before { content: '[sample]'; ...
2022/10/04
認知症で同じことを何度も聞いてくる母にイライラしてしまいます。それに夜に落ち着きがなくなって家から出ていこうとすることもあるので、夜もゆっくり眠れません。イライラを解消するにはどうしたら良いでしょうか? (竹内さん・63歳) 介護でストレスが溜まったときは、ご自分のための時間を作ってリフレッシュしましょう。美味しいものを食べたり運動をするなど、リフレッシュ方法を見つけておくと良いですよ。また、介護の負担を軽くすることも大切。介護サービスを活用して介護をプロに任せることも検討してください。 介護でストレスが溜まったときの解消法 母の介護をしていて、どうしてもイライラしてしまいます。母は認知症なので、同じことを何度も聞いてくるし、機嫌が悪いと朝の着替えを嫌がるので支度に時間がかかるんです。いけないのはわかっているんですが、イライラするとどうしても怒鳴ってしまうこともあって…。どうにかしたいと思っています。 それは大変ですね…。このままだと竹内さんが体調を崩したりする可能性もあるので、適度にリフレッシュする方法を見つけていきましょう。何か気分転換できる方法はありますか? いやいや、リフレッシュする方法なんて、そんなすぐに思いつかないですよ。 大掛かりなものでなくても良いんです。ちょっとしたことでも、息抜きになったりリフレッシュするきっかけがあるとストレスも解消できると思います。例えば、以下のような方法でリフレッシュしている人もいますよ。 美味しいものを食べる ペットや子どもの写真を見る 好きな音楽を聞く 好きなテレビを見る 好きな芸能人の写真を見る 運動をする こんな簡単なことで良いんですね。だったら、孫の写真を見るのでも良いかな。 良いですね!お孫さんと会うこともリフレッシュになりそうですね。手軽にできるもので良いので、気分転換になる方法を見つけておくと介護の合間にリフレッシュしやすいです。介護をしていると、どうしても介護のことで頭がいっぱいになってしまいますから、意識して”自分のための時間”を作ると気持ちが少し楽になりますよ。 自分のための時間なんて、久しくありませんでした。ちょっと意識してみます。 それと、同じように認知症のご家族を介護している人との交流をしてみるのも良いかもしれません。「認知症の家族の会」や「認知症カフェ」など、認知症の介護で悩む人や認知症のご本人が集まる場がありますから、そこで同じ環境の人と話すと気持ちが楽になることもあるはずです。それに、良い介護の方法などの情報交換もできますから、近くで集まりが開催されてないか探してみてくださいね。 イライラしない認知症介護の心がけとは 認知症のご家族を介護する場合、毎日の介護の心がけや対応方法をちょっと変えるだけでだいぶ気持ちが楽になることがあります。そこで、イライラを軽減するための「介護の心得」と「認知症介護の原則」をお伝えしますね。 心の負担を軽くする心得 まず、介護の心得から。認知症の人の介護に限らず、介護を続けていくうえでぜひ頭に入れていただきたい考え方です。 自分も大切にする 溜め込まない 比較しない まわりにも頼る 「今」を大切に 「自分も大切にする」…母の介護が始まってから、自分のことがおろそかになっていたかもしれません。 そういう人はとても多いんです。ご高齢者の身体機能や認知機能が衰えることは当然のことです。でも、それを介護をするご家族が「自分が上手く介護をできなかったからだ」とご自分を責めてしまうことがあります。そうして必要以上にがんばってしまったことで共倒れになることも。そうならないために、ご自身の健康や時間も大切にしてくださいね。 そうですね。適度に息抜きする時間を作っていこうと思います。 「溜め込まない」という考え方も「自分も大切にする」に共通する部分があります。というのも、介護の負担を1人で溜め込んでしまった結果、介護する人が体調を崩してしまうこともありますから。それに、介護をするなかでイライラだけでなく不満や悲しみを感じることもあるでしょう。そうした負の感情は、溜め込まないのが一番です。友人や他のご家族に相談したり愚痴を言ったりと発散することも大切ですよ。 愚痴かぁ…。あまり言ったことがなかったですね。 愚痴を言える人が身近にいると、かなり精神的な負担が軽くなりますよ。それに、それが「まわりにも頼る」という心得にもつながります。介護は大変ですから、なかなか1人ですべておこなうのは難しいです。なので、ご家族や近所の人などに協力してもらったり、介護サービスを利用していくと上手く負担を軽減できると思いますよ。 認知症介護の原則 次に「認知症介護の原則」です。認知症の人や介護する人が快適に過ごせる接し方についてですね。主には以下のような内容です。 何事にも“ゆっくり”を心がける 感情を合わせる 具体的な声かけをする 自分も役に立つ存在であることを感じてもらう 外部との関わりを持つ 「“ゆっくり”を心がける」とは、ゆっくり話しかける、ということですか? はい、そうです。認知症の人は脳の機能が低下しているため、こちらが普通に話しかけても速すぎて理解ができないことも。それでも、認知症の人も一生懸命に理解しようとがんばるので疲れてしまうことがあります。なので、お母様に話しかけたり介助をするときも”ゆっくり”が基本です。「ちょっと遅いかな」と思うくらいが、穏やかに介助できるコツですよ。 そうなんですね!たまに母がこっちの話を理解しているかわからないときがあるんですが、あれは私の話が早かったからなんですね。あと、その次の「感情を合わせる」とはどういうことですか? 感情に共感する、ということです。例えば、お母様が怒ったり悲しんだりしているときに、まずは共感してあげましょう。「辛かったね」など共感しながら穏やかに接することで、お母様もつられて気持ちが落ち着いてくることがあります。 なるほど。今度、母の気持ちが不安定になったら共感するようにしてみます。 接し方をちょっと工夫するだけでも介護の負担が軽くなることがありますから、無理のない範囲で取り入れてみてくださいね。 介護サービスを活用して介護を”楽”に イライラのリフレッシュ方法や、ストレスを溜めない介護のコツについてお伝えしましたが、状況によってはこうした対策をしてもイライラが解消されないこともあると思います。そういうときは、介護サービスに頼ってください。介護の専門家に任せた方が良いときもよくありますから。 すでに母は、週3回のデイサービスを使っていますが…。 デイサービスとは デイサービスとは、施設に入居することなく、自宅から通所しリハビリテーションや介護サービスを受けることで、高齢者のQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上を目指す施設です。 デイサービスを利用する場合は施設から車で自宅まで迎えにきてくれるので、歩行に自信がない方でも利用できます。 ただし、施設の送迎範囲が決まっているので、その範囲外の場合はその施設をその施設の利用はできません。基本的にデイサービスは地域住民のためのサービスという特徴があるからです。 デイサービスでは、介護職員や理学療法士、看護師などの専門スタッフがサービスを提供。決められた時間に高齢者の機能訓練や集団でのレクリエーションなどを担当します。 自宅にこもりがちになる高齢者にとっては、外部との交流が持てることも嬉しいポイントです。 もし、今のサービス量だと負担が大きいようでしたら、ケアマネジャーさんに相談して、デイサービスの回数を増やしたり、他のサービスを追加するのも手ですよ。 他のサービスってどんなものがあるんですか?これまでデイサービスしか利用したことがないのでよくわからなくて…。 在宅介護サービスには、デイサービス以外にもいろんなものがあります。主なサービスは、以下の通りです。 訪問介護 訪問入浴 デイサービス(通所介護) ショートステイ(短期入所生活介護) 小規模多機能型居宅介護 ああ、「訪問介護」は聞いたことがあります。ヘルパーさんがお世話をしてくれるサービスですよね。あと…この「ショートステイ」って何でしたっけ?これも聞いたことがある気がするんですが…。 ショートステイは、短期間、介護施設に宿泊するサービスです。食事や入浴介助など、身の回りのお手伝いもやってもらえます。なので、冠婚葬祭などで家を空けなければいけないときなどに利用できます。あと、多くの人が介護から離れてリフレッシュするために利用しています。ショートステイを利用している間に、ご家族で旅行に行く人もたくさんいるみたいですよ。 ショートステイを活用したい場面 ショートステイは最短1日から最長30日間も利用できるので、使いやすく便利です。ショートステイを活用する場面は下記のようなケースです。 仕事の事情や冠婚葬祭などにより、介護する側が家を空けなくてはならないとき 介護する側が体調不良になってしまったとき介護疲れによりリフレッシュしたいとき 将来の施設入居をふまえ、事前に施設に慣れておきたいとき 退院が決まっているが、在宅介護がまだ不安なとき いずれにしても在宅介護を基本に、介護者の都合にあわせて利用されるケースが多いようです。定期的な介護疲れのリフレッシュにも、ショートステイは非常にありがたい存在です。 そんなサービスがあるんですね!知らなかった…。 在宅介護については、以下のご質問で詳しく回答しています。ぜひ参考にしてみてください。 介護施設の入居も検討して 今後、ご自宅での介護が難しくなったら、在宅介護サービスを利用するのと合わせて、介護施設への入居も検討した方が良いかもしれません。 施設ですか。まだまだ考えられないですけど…。 実は、そういう方が大半です。ただ、本当に自宅での生活ができなくなってからでは、施設探しもままならなくなりますから、余裕のあるうちに早め早めに検討しておいてください。 ちなみに、介護施設ってどんなものがあるんですか? 主な介護施設には、以下のようなものがあります。 特別養護老人ホーム(特養) 介護老人保健施設(老健) 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム このなかで、特養と老健は公的施設です。特養は要介護3以上でないと入居できませんし、老健は3~6ヵ月での退去を前提としているので、長期的な入居はできないという特徴があります。 公的施設だと、いろいろと制約が多いんですね。 対して、それ以外の施設は基本的に民間企業が運営している施設です。施設ごとに特徴が大きく異なるので、一概には言えないんですが…認知症の人に向いている施設は「介護付き有料老人ホーム」「グループホーム」ですね。 その2つはどんな施設なんですか? 介護付き有料老人ホームは、その名の通り介護サービスがまとめて受けられる施設です。サービスを提供するための介護スタッフさんや看護師さんが常駐しているのが特徴で、常に介助が必要な方に向いている施設なんです。 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 へー、それは安心ですね。もうひとつのグループホームというのは? グループホームは、認知症の人が共同生活している施設です。ここでは、入居者さん一人ひとりが自分のできることを生かしながら協力して暮らしています。介護付き有料老人ホームでは、掃除や料理などの家事はすべてスタッフさんがやってくれることが多いんですが、グループホームではご入居者さん自身ができる範囲で家事をおこなっているんですよ。なので、認知症でも身体がお元気な人が多く入居しています。 グループホームの特徴 グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 なぜ介護をするとイライラしてしまう? 介護のイライラの原因となるものはいろいろとあります。ただ、それを放置しておくと「介護うつ」になってしまうこともあるので、理由を把握して対策をとっていきましょう。 イライラの理由、ですか。改めて考えたこともありませんでした。 イライラにつながる原因は、状況やその人によって異なります。しかし、主に以下の負担がイライラにつながります。 身体的な負担 精神的な負担 経済的負担 確かに、こういった負担が重なってストレスやイライラになっている気がします。 一般的に、大きいのは身体的な負担でしょうか。ベッドや布団での寝起きや、トイレ・入浴などの介助をするときに、やはり身体への負担が大きいです。介護を続けることで、介護をする人が腰やひざなどを痛めてしまうケースが多いんです。加えて、夜にトイレ介助が必要な場合だと、介護するご家族も起きて介助をしなければいけません。それで、睡眠不足になってしまうこともあります。 うちの母の場合、夜中に起き出して外に出かけようとしたことがあったので、私が落ち着いて眠れなくなりました。なので、睡眠不足のことが多いですね。 そうなんですね…。そうした睡眠不足は、精神的な負担にもつながります。そのうえ、認知症の影響で「何度も同じことを話す」「探しものがないと言い張る」といったことに対応する必要がありますよね。さまざまな要因が重なって負担が大きくなると、介護うつになってしまって介護する人の健康に影響が出ることもあります。そうなる前に、適度にリフレッシュしたり介護サービスを活用して負担を軽減したりと、”楽”な介護をするために対策をしてくださいね。 介護うつに要注意! 介護による身体的負担・精神的負担が発展することで、“介護うつ”につながることがあります。 「在宅での介護にこだわって全て自分でやろうとする」「介護による悩みや愚痴を相談できない」「身体的負担や精神的負担を我慢する」など、全て自分でやろうとしてしまうと、知らないうちに精神的限界を迎えて、介護うつになってしまうケースが多々あります。 身体的や精神的な負担が重なって、イライラが介護うつを引き起こすことも ストレス解消法を用意しておいて、自分の時間も確保して 介護サービスを積極的に利用して”楽”な介護を pre { ...
2022/09/29
認知症の母親の物盗られ妄想がひどくて困っています。毎日のように「財布を盗られた」と騒ぎ、いつも犯人は私。私が「盗んでいない」と言っても理解してくれず、ケンカのようになってしまってとても疲れます。何か良い対応方法はないでしょうか? (小島さん・パート・63歳) 物盗られ妄想で、泥棒扱いされてしまうとつらいですよね。物盗られ妄想が出たときに大切なのは、「発言に対して共感する」ということです。否定も肯定もせずに「大変だったね」と言うだけでも落ち着くことがあります。また、認知症の進行で介護の負担が大きくなっている場合は、介護サービスの量を増やしたり老人ホームなどの介護施設への入居も検討してみてください。 物盗られ妄想の原因とは? 認知症の母の介護をしています。最近、母が「財布が盗まれた」と言うことが多くなっています。しかも、私が盗んだと言うんです!これまでも、自分で財布をしまいこんでどこにやったかわからなくなることはあったのですが…。何でこんなことを言うようになったのでしょうか? お母様の状態は、いわゆる「物盗られ妄想」でしょう。物盗られ妄想は、認知症によって記憶障害が起こっていることで現れるとされている症状です。 記憶障害って、記憶ができなくなるということですよね? そうです。記憶障害は認知症の中核症状のひとつで、ほとんどの認知症の人に現れる症状です。特に新しい記憶を覚えられなくなるのが特徴で、「何度も同じことを話す」「さっき聞いたことを再び質問する」といったことも、記憶障害の影響です。 記憶障害 認知症の中でも、最もわかりやすいのが記憶障害です。 記憶障害はもの忘れとよく混同されますが、記憶障害ともの忘れは根本的に異なります。もの忘れは「何かを忘れている」ことは理解できますが、記憶障害になると、忘れているという記憶すらなくなるのです。 例えば、普通のもの忘れであれば会う約束の時間をうっかり忘れてしまっても、指摘されると思い出すことができます。しかし、記憶障害になると約束したこと自体もすっぽりと記憶からなくなってしまうのです。 例)失われやすい短期記憶 数時間前に会った人の名前 何を買うために外出したか 何を話そうとして電話したか 例)保たれやすい長期記憶 子供の時の思い出 昔の楽しかった出来事 思い出の旅行 母も私によく同じ質問をします。…でも、その記憶障害が物盗られ妄想とどんな関係があるんですか? 新しいことを記憶できないということは、「自分で財布をしまった」記憶を忘れているということなんですね。なので、「どこかにしまった記憶がないので、誰かに盗まれたに違いない」と思い込んでしまうんです。 なるほど…。ちなみに、いつも私が財布を盗んだ犯人にされてしまうんです。これはどうしてなんでしょう? おそらく、認知症によっていろんなことが思い通りにできなくなっていることに不安感や怒りを感じていて、身近なご家族にやつあたりしているのかもしれません。それか、誰かのせいにすることで自分がいろんなことができなくなっていることから目をそらしていることも考えられます。 うーん、そんな理由があったんですね。大変な思いをして毎日介護をしているのに、何で私が犯人にされるのか腹が立っていたんですが、ちょっとだけ納得しました。 物盗られ妄想への対応 物盗られ妄想の理由はわかったのですが、これからどう対応したら良いのかがわかりません。いつも私が盗んだことにされるので、どうしても怒ってしまって。毎回ケンカになってしまうんです。 実際はそうではないとは言え、犯人にされるのはつらいですよね。うまく対応できる方法を知っていれば、ケンカが減るかもしれません。物盗られ妄想への対応で大切なのは、落ち着いて話を聞くことです。まずはお母様の話に耳を傾け、「それは大変だね」と共感してみてください。「私は盗んでない」と話を否定してしまうとお母様が興奮してしまう可能性もありますから。 そうなんです!さらにきつい口調で私を責めてきて、お互いにヒートアップしてしまうんです。だからといって、私が盗んだと肯定したら本当に私が犯人になってしまいますよね? いえ、肯定はしなくて良いんです。肯定はせずに「財布がないのは大変だね」と共感するだけでOKです。それから、一緒に財布を探してみてください。それで財布が見つかったら「よかったね」と前向きな声掛けをすれば、お母様の安心感も高まるでしょう。それに、もしかしたら家の中を探し回っている間に気が紛れて財布を探していたことを忘れてしまうこともあります。むしろ、あえて探しているときに、テレビや食事の話をして財布から気をそらせるという手もありますよ。 なるほど!それは良いですね!今度から一緒に家の中を探してみます。 ちなみに、普段から認知症の人は不安感を持っていることが多いです。なので、落ち着いているときに何か不安に思っていることはないか聞いてみるのも良いでしょう。そうした普段からのコミュニケーションで妄想が減ることもありますよ。 介護サービスをうまく活用しよう 物盗られ妄想があると、実際は盗んでいなくても責められている気持ちになるので精神的な負担が大きいと思います。小島さんはつらくないですか? つらいというよりは疲れました…。物盗られ妄想がほとんど毎日のことなので毎日ケンカしているような状況です。 そうなんですね…。介護の負担を1人で抱え込んでしまうと、介護している人が倒れてしまいかねません。なので、介護のプロにお願いしてみましょう。今は介護サービスを利用していますか? デイサービスに週2回通っています。 可能であればデイサービスの回数を増やしたり、ショートステイを利用するのも良いかもしれません。 デイサービスとは デイサービスとは、施設に入居することなく、自宅から通所しリハビリテーションや介護サービスを受けることで、高齢者のQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上を目指す施設です。 デイサービスを利用する場合は施設から車で自宅まで迎えにきてくれるので、歩行に自信がない方でも利用できます。 ただし、施設の送迎範囲が決まっているので、その範囲外の場合はその施設をその施設の利用はできません。基本的にデイサービスは地域住民のためのサービスという特徴があるからです。 デイサービスでは、介護職員や理学療法士、看護師などの専門スタッフがサービスを提供。決められた時間に高齢者の機能訓練や集団でのレクリエーションなどを担当します。 自宅にこもりがちになる高齢者にとっては、外部との交流が持てることも嬉しいポイントです。 ショートステイですか?聞いたことはありますが…。 ショートステイというのは、短期間、介護施設に宿泊できるサービスです。施設ではレクリエーションなどを受けられるのでご本人の気分転換にもなりますが、何より介護をするご家族のリフレッシュになるんです。ショートステイを利用して、数日間、介護から離れて自分のことをしたり、旅行に行っている人もいますよ。 へー、そういうサービスなんですね。でも、母を預けて旅行に行くのは気が引けます…。 いえいえ、介護は長期戦です。「介護がある間は旅行に行けない」と考えてしまうと、小島さんがリフレッシュする機会がなくなって、つらくなってしまいます。それをそのままにしておくと、介護の疲れから「介護うつ」になってしまいかねません。定期的にショートステイを利用して賢く休んでいる人もいます。まずは、担当のケアマネジャーさんに相談してみてください。 ...
2022/09/22
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。