特集
新たな研究で、一人暮らしでペットを飼っている人はそうでない人に比べて、認知機能の低下を抑えられる可能性が高いことがわかりました。 この研究は50歳以上の7945人を対象におこなわれ、結果は米国医師会雑誌にて掲載されています。 ペットを飼っていると認知機能の低下が穏やか 今回の研究では、50歳以上のシニア世代7945人を対象に「一人暮らしでペットを飼っている人」「一人暮らしの人」「同居人がいる人」に分け、言語認知機能、言語記憶、言語流暢性などの認知機能の状態を比較しました。 研究結果では、一人暮らしでペットを飼っているグループは、ほかのグループと比べて認知機能の低下が一番緩やかであることがわかりました。また、ほかのグループと比べて認知機能の低下が早かったのは一人暮らしのグループでした。 この研究をおこなった中国の中山大学の李氏は「犬や猫などを飼うことは孤独感の軽減と関連する。孤独感は認知症や認知機能低下の重要なリスク因子だ」と分析しています。 ペットを飼うのが難しい高齢者もいる 動物と触れ合うと、ストレスの緩和、精神的な落ち着きなどの癒しの効果や活動性の向上を促すと言われています。しかし、もともとペットを飼っていない人が高齢になってからペットを飼い始めるのは、毎日のお世話やしつけ、寿命などが気になり、難しく感じる人もいるでしょう。 高齢者がペットを飼えるように支援する団体もありますが、ペットを飼う以外にも動物と触れ合う方法があります。 ペットと触れ合える機会は、例えば以下です。 犬のお散歩ボランティア 馴化ボランティア ミルクボランティア 譲渡会 ペットに関するボランティアは、お散歩など時間が短いものから、人に馴れさせるための馴化ボランティア、親のいない犬や猫などの赤ちゃんを育てるミルクボランティアなど一時的に家に迎えて預かるものもあります。 昨今では「ペットがほしいけど最後まで飼えるか不安」というシニア層に、保護されている犬や猫などの「受け皿」になってもらおうという動きが広がっているのです。 高齢の一人暮らしになると周囲との交流が減ってしまいがち。ペットとの交流やボランティアに参加することで生きがいが見つかるのは良いですね。 参考:「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」(環境省)
2024/02/09
大分県では、県内で起きた特殊詐欺の被害が去年の1年間で7件発生。被害総額は約7200万円にものぼっていることがわかりました。 特殊詐欺の被害の内容はすべて「老人ホームの入居権利をめぐるトラブル」を名目としたもので、現金を宅急便やレターパックで送るように指示されたそうです。 老人ホームの契約に関するトラブルで不安を煽る 大分県警によると県内で起きた特殊詐欺の一般的なケースは、はじめに自宅の固定電話に「老人ホームに入居を希望している人に名義を貸せないか」といった内容の電話がかかってくると言います。 その後、老人ホームの担当者を名乗る犯人から「あなたが名義を貸した人が入居費用を支払った。あなたの名義で契約しているので法律違反になる」などと、入居契約のキャンセル料や名義変更の手続きの費用といった名目で、現金を送るように指示する電話がかかってくるのだそうです。 電話がかかってきた被害者が「警察に相談する」と言うと、「権利を他人に渡すのは犯罪だ。警察に相談すると逮捕される」などと不安を煽られ、金銭を要求されるのだそうです。 現金を送る手段は宅急便やレターパックが多い 昨年、大分県内で起きた特殊詐欺で使われた現金を送る手段は、宅配便が6件、レターパックが1件だそう。配送先は東京都や千葉県内のアパートなどが指定される場合が多いです。 現金を送るのによく利用される方法は主に以下です。 ゆうパックなどの小包、宅配便 レターパック 一般郵便(速達) 簡易書留(速達) 一般書留(速達) 現金を包む際、「封筒を二重にする」「ティッシュの空き箱に現金を詰めさせ、隙間に新聞紙をまるめて入れる」などと指示をされる場合もあります。 宅急便やレターパックで現金を送ることは郵便法で禁止されています。「宅配便やレターパックでお金を送って」と指示された場合、どんな理由を言われても現金を送らないようにしましょう。 不審な電話がかかってきたと思っても、「家族に迷惑がかかるかも」という思いから現金を送ってしまう人も少なくありません。不審な電話がきた場合には一人で悩まず、周りの人や家族に相談しましょう。警察署の「詐欺相談専門ダイヤル」や「警察相談専用電話」なら、警察署に直接出向かずに相談できるので、固定電話の近くに電話番号を控えておくのも良いですね。 参考:「警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ」(政府広報オンライン)
2024/02/08
リンナイ株式会社は、高齢者や認知症の人でも使いやすいガスコンロ「AFULL+(セイフル・プラス)」の発売を発表しました。 セイフル・プラスは、2020年にリンナイ株式会社から発売されたガスコンロ「SAFULL(セイフル)」をベースに、より高齢者や認知症の人向けに改良したものになっていると言います。 認知症の人の「声」が活かされたガスコンロ 2024年2月1日、リンナイ株式会社は「消し忘れ消火機能」や「早切れ防止機能」を搭載したガスコンロ「SAFULL(セイフル)」の次世代機「SAFULL+(セイフル・プラス)」を発売しました。 セイフル・プラスには以下の機能が追加されています。 間違え防止になる配色にしたガスコンロの点火スイッチ 鍋を中央に置きやすくした四角い大型ゴトク 聞き取りやすい音声案内 セイフル・プラスは、認知症の人の声や、認知症の人が実際に料理をしている姿をモニタリングして商品開発をしました。これまでの商品開発では自社の社員が料理をしてモニタリングをすることが多かったのですが、認知症で、かつ自宅で日常的に料理をしている当事者がモニタリングに参加したのは今回の商品開発が初めてだそうです。 料理は認知症予防にもおすすめ 高齢であることや認知機能の低下を理由に、「ガスコンロは危ない」と家族が心配し、ガスコンロをIH調理器に変えたり、そもそも料理自体をやめさせられてしまう人もいるかもしれません。しかし、料理は自然と身体や頭を動かすので認知症の予防につながります。 料理のなかで認知症予防になると考えられるのは、例えば以下の行動です。 献立を考える 献立に合わせて買い物に行く 必要な材料や調理器具を揃える 調理の段取りを考え、効率よく料理する 味を整える 彩りよく盛り付ける 料理には頭を働かせるポイントがたくさんあります。また、食材を切ったり、こねるなどの作業により手や指先を使うことで多くの刺激を脳に与えられます。 「高齢だから」「認知症だから」と日常生活に制限が出ることもあるでしょう。しかし、高齢や認知症の症状があっても環境を整えることで、できることはたくさんあります。毎日の生活を工夫しながら認知症予防をしていけると良いですね。
2024/02/07
ロッテは東京大学高齢社会総合研究機構と共に、ガムと身体機能の関係性についての研究を実施。すると、「ガムを噛む習慣のある高齢者は、口腔機能・身体機能・認知機能が高い」ことが明らかになったのです。 この研究結果は国際科学誌に掲載されています。 ガムを噛む習慣がある高齢者は口腔機能が高い 今回の研究では、自立している65歳以上の高齢者1474人のうち、「1週間に30分以上ガムを噛む習慣があるグループ」「ガムを噛む習慣がないグループ」とに分け、さまざまな健康状態を比較しました。 研究結果では、ガムを噛む習慣があるグループは、ガムを噛む習慣がないグループに比べて、「握力」「開眼片足立ち」「認知機能」のすべてにおいて機能が高いことがわかりました。 さらに、ガムを噛む習慣があるグループは、口腔機能の衰えであるオーラルフレイルの有症率が約42%(約0.58倍)低いことがわかったのです。 ガムを噛むだけでなく、口腔体操も効果あり そもそも、オーラルフレイルとは、噛む、飲み込む、話す、などの口腔機能が衰えること。噛む力や舌の動きが悪くなると食生活に支障を及ぼしたり、滑舌が悪くなることで周囲の人や社会との関わりを控えてしまい、孤立してしまう可能性もあります。 ガムを噛むと自然とオーラルフレイル予防ができますが、入れ歯など口内環境によってはガムを噛めない人や、ガム自体が苦手な人もいるでしょう。 ガムを噛めない人は口の体操をするのがおすすめです。日本歯科医師会が推奨する口の体操は5つの項目に分かれており、それぞれ以下の目的があります。 口や舌の動きをスムーズにする 飲み込む力を鍛える 噛む力を鍛える 滑舌を良くする 舌の力を鍛える 口の機能の低下が身体的な衰えに限らず、精神的・社会的な面にも影響が出るのは困りますね。口の体操は体を動かさずに思いついたときにできるので、少しずつ日常生活に取り入れましょう。 参考:「オーラルフレイル対策のための口腔体操」(日本歯科医師会)
2024/02/06
NTTドコモのモバイル社会研究所は、「シニアのニュース取得方法について」の調査を実施。すると、2018年に比べて2023年では「webサイト」でニュースを見ているシニアが大幅に増えたことが明らかになったのです。 60歳以上のシニア世代がニュースを見る手段を調査 今回の調査は、全国の60~79歳の男女を対象に「シニアのニュース取得方法」に関する意識調査を実施。調査では1350人のシニアから回答を得ました。 報道情報などのニュースの取得方法について、60代前半、60代後半、70代前半、70代後半と分けて尋ねたところ、最も多かったのは「テレビ」で全年代で90%以上。2位は「新聞」で、70代後半では80%を超えました。一方で「Webサイト」は60代で約半数となり、年代が上がるほど低くなる傾向でした。 Webサイトでニュースを見るシニアが大幅に増加 2018年に調査したシニアのニュース取得方法についての結果と比べてみると、「Webサイト」と答えた人が、2018年では7%だったのに対し、2023年では43%に増えています。また、「ソーシャルメディアでニュースを見ている」と回答したシニアも、2018年では6%だったのが、2023年では27%へ増加。2018年から2023年の5年間でインターネットを利用するシニア世代が大幅に増加したことがわかりました。 昨今ではシニア世代にもスマートフォンが普及したため、気軽にインターネットやSNSを見られるようになったことが関係していると考えられます。 シニア世代にはスマートフォンやパソコンなどのIT機器に苦手意識を持っている人も少なくありません。しかし、最近ではスマートフォンを使いこなしている人が増えてきているようです。スマートフォンでなら気軽に好きなときにニュースを見られるので、うまく付き合っていきたいですね。
2024/02/02
新たな研究で、糖尿病の人はそうでない人に比べて、腰痛を引き起こす可能性が高いことがわかりました。 この研究はイランのタブリーズ医科大学によっておこなわれ、研究結果はアメリカの科学雑誌に掲載されています。 糖尿病の人は腰痛など筋骨格系の痛みが現れる場合が多い 今回の研究では、317人の糖尿病患者を対象に腰痛の頻度を3ヵ月間隔で調査。すると、半数以上の63%の人が腰痛を経験していることがわかりました。 また、オーストラリアのシドニー大学の研究でも、糖尿病の症状がある人はそうでない人に比べて腰痛のリスクが35%高く、首の痛みのリスクは24%高いことが明らかになっています。 シドニー大学骨関節研究所のマヌエラ フェレイラ氏は「腰痛や、首や背中の痛みなどに悩まされている糖尿病の人は多いことが示されています」と指摘しました。また、「糖尿病を治療することで、腰痛の発生を減らすことができたり、その逆に腰痛を防ぐことで、糖尿病の治療も改善することが期待されます」としています。 糖尿病の人が腰痛になる理由 糖尿病の人が発症する腰痛は、主に以下があります。 糖尿病性神経障害(神経障害性疼痛) 感染症脊椎炎 肥満による腰への負担 そもそも糖尿病の原因は、体質などの遺伝的な要因と、運動不足や肥満などの生活習慣が組み合わさることです。 糖尿病の原因のひとつである肥満は、上半身が重くなり、腰に負担がかかります。また、糖尿病によって血流が悪くなることも腰痛の原因と考えられます。 糖尿病の人が発症する糖尿病性神経障害の主な症状は手足のしびれや痛みですが、糖尿病性神経障害が原因で腰痛を引き起こすこともあります。糖尿病性神経障害は、糖尿病と診断されてから10年ほど経過した糖尿病患者の約半数の人に症状が出るといわれています。 別の研究では、体重を減らすことで糖尿病を改善できるという結果も。普段のエレベーターの使用を階段にしたり、ウォーキングをしたりなど、普段の生活の中でできることから運動する習慣をつけるのが良いかもしれませんね。
2024/02/01
福島県は県権利擁護推進会議にて、2022年度における介護施設の職員による高齢者への虐待件数、相談・通報件数ともに2年連続で増加し、過去最多となったことが明らかになりました。 県は、施設職員への研修などをおこない、虐待の防止や早期発見を図るとしています。 福島県で職員による高齢者虐待が最多に このたび福島県は、福祉や医療、法務などさまざまな分野の有識者を集め、高齢者の権利擁護に関する協議をおこなう「権利擁護推進会議」を開きました。 そこでおこなわれた発表によると、2022年度に県内で確認された介護施設職員による虐待件数は9件で、過去最多を更新したことが判明。また、虐待の相談・通報件数は32件に上り、これも過去最多であることがわかりました。 虐待の内訳は、高齢者に暴言を浴びせるなどの「心理的虐待」が最多に。次に高齢者を殴ったり蹴ったりなどの「身体的虐待」が多く、それから多い順に、必要な介護や世話を意図的に怠る「介護等放棄(ネグレクト)」、性的な関係や行為を迫る「性的虐待」と続きました。 また、県は虐待が起きた発生要因についても調査しました。それによると、「教育や知識、介護技術等に関する問題」や「不十分なチームケア体制」が虐待の原因だと考えている介護職員が最も多いことが判明。また、「虐待防止の取り組みが不十分だ」などの回答も一定数みられたとのことです。 介護職員による高齢者虐待が増加していることについて、県は「新型コロナの対応などで職員の負担が増えて、ストレスを抱えていることが要因なのではないか」と分析しています。 虐待の芽チェックリストの活用を 公益財団法人東京都福祉保健財団が、介護職員向けに「虐待の芽チェックリスト」を作成しています。その内容の一部が以下のとおりです。 利用者に対して威圧的な態度を取っていないか 利用者に対して「ちょっと待って」を乱用して、長時間待たせていないか 食事や入浴の強制をしていないか 利用者への声かけなしで介助をおこなっていないか 利用者の呼びかけやコールを無視していないか 高齢者虐待を防ぐためにはチェックシートを確認して、虐待につながりそうな行為をおこなっていないか自分のケアを振り返ることが大切です。 また、以上のチェックシートは介護施設の職員だけでなく、家族の介護をしている人も自身のケアを見直すきっかけにもなります。今まさに家族の介護をしている人は、虐待につながるケアをおこなっていないか振り返ってみてみましょう。
2024/01/30
空気清浄機などをはじめとした家電の製造・販売を手がける株式会社シリウスは1月17日、ベッドで寝たまま体を洗えるシャワーを開発したことを明らかにしました。 利用者に吹き付けたお湯をすぐに吸引することで、布団やシーツを濡らさずにシャワーを浴びることが可能だと言います。 寝たまま体を洗えるシャワーが新発売 2024年1月17日、家電スタートアップのシリウスは、ベッドで寝たまま体を洗えるシャワー「スイトルボディ」を開発したと発表。シリウスによると、ベッド上で体を洗えるシャワーは世界初だと言います。 具体的には、「スイトルボディ」は体に吹き付けたお湯をすぐに吸引できる仕組みになっていて、それで周囲を濡らすことなくシャワーを浴びられるのだそうです。 また、別売りのノズルを取り付けることで洗髪も可能。シャワーは掃除機のような形状になっていて、持ち運びもしやすくしたと言います。 現在、すでに千葉県内にある一部の特別養護老人ホーム(特養)などに試験導入を実施しているとのこと。今後は特養や訪問介護事業所、医療機関などに販売していくと言います。 さらに、将来は台湾や中国などアジア4つの国と地域への展開も計画しているのだそう。シリウスの亀井隆平社長は「ベッドに寝かせたまま全身を洗える新しいお風呂の選択肢として広まってほしい」と話しています。 入浴介助が介助者の大きな負担に 転倒のリスクが高く、利用者の全身を支える必要がある入浴介助は、介助者にとって心身ともに大きな負担のかかる業務のひとつです。 2017年に学術誌「老年看護学」で発表された研究の中で、300ヵ所以上の対象施設の職員に対して入浴介護について感じていることを尋ねたところ、「腰部への負担が大きく、腰痛者が多い」「長時間かけて大人数の入浴介助をおこなうため負担が大きい」など、介助者への負担を指摘する声が多くみられたことが明らかになりました。 また、「入浴にかける時間が足りない」「ゆったりとした入浴ができない」など入浴介助に多くの時間がかけられないという声も目立ちました。 今回紹介した「スイトルボディ」なら、浴室まで連れていかずに寝たままで入浴できるため、これが普及していけば介護度が高い利用者にもより安全かつ簡単に入浴を楽しんでもらうことができそうですね。 参考:「介護保険施設における入浴ケア体制の実態調査」
2024/01/26
2024年1月、和歌山県は県内における高齢者虐待の現況を公表。県の発表によると、2022年度中に県内で確認された家族らによる高齢者虐待の件数が187件で、過去最多を更新したことが明らかになりました。 高齢者のケアをするはずの介護者を虐待に向かわせてしまう要因のひとつに「介護者のストレス」が挙げられます。特に、周囲とのつながりが薄い人は介護のストレスが溜まりやすく、その結果高齢者に暴力を振るうなどの虐待に走ってしまうことも。長期間継続して介護を続けていくためにも、負担を感じたら福祉の専門家に早めに相談することが大切です。 3年連続、高齢者虐待数が増加 和歌山県の発表によると、2022年度中に県内で確認された、家族らによる高齢者虐待の件数が187件に上り、3年連続で過去最多を更新したことが明らかになりました。 県内で起きた高齢者虐待の種別は複数回答で、殴る・蹴るなどの「身体的虐待」が125件、高齢者に暴言を浴びせるなどの「心理的虐待」が76件、高齢者の預金を勝手に使い込んだり必要なお金を与えなかったりなどの「経済的虐待」が29件、必要な介護や世話をおこなわないなどの「ネグレクト(介護等放棄)」が23件でした。 和歌山県で起きた高齢者虐待の種類(2022年度) また、和歌山県が高齢者を虐待した人(虐待者)の年代も調査したところ、70代の虐待者が42人で最多であることが判明。また80代の虐待者も33人でした。 70代や80代といった高齢者世代の虐待者数を合計すると75人と、その子ども世代(50代40人、40代33人)の合計73人よりも、わずかながら多いことが明らかになったのです。 以上の結果について和歌山県は、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」による介護負担の増大が虐待件数の増加につながったとみています。 今後、県は市町村の職員に対し、県が作成したマニュアルを周知したり虐待防止に関する研修をしたりしていくそうです。 夫・息子による虐待が多いワケは また、過去に和歌山県は虐待者の属性についても調査を実施しました。 2021年度に和歌山県で起きた高齢者虐待事件のデータを分析したところ、虐待を受けた高齢者の息子が虐待者だった割合が35.8%で最多であることが判明。続いて多かった虐待者の属性は、虐待を受けた高齢者の夫で、その割合は27.5%でした。 一方、虐待を受けた高齢者の娘や妻が虐待者になった割合はそれぞれ16.6%と10.4%だったことから、女性よりも男性の方が高齢者虐待の主体になりやすい傾向にあることがわかりました。 参考:「令和4年度における県内市町村の高齢者虐待への対応状況について」(和歌山県) これは和歌山県のみならず、全国でも同様の傾向にあることが調査により明らかになっています。 厚生労働省がおこなった調査によると、全国で起きた高齢者虐待事件のうち、38.9%が高齢者の息子によるものであることが判明。続いて多かったのが高齢者の夫による虐待で、その割合は22.8%でした。 参考:「高齢者虐待の実態把握等のための調査研究事業」(厚生労働省) 以上のことから、全国的に見ても娘や妻といった女性よりも息子や夫といった男性の方が虐待の主体になりやすいことがわかります。 女性よりも男性のほうが虐待者になりやすいのは、一般的に社会的なつながりが女性よりも男性のほうが少ないことが一因として考えられます。職場以外の人間関係を持たない男性も少なくないため、親の介護をひとりで抱えてしまって共倒れになるケースも見受けられます。 自分が虐待しそうになったら 高齢者虐待の要因のひとつに、介護をする側のストレスが挙げられます。特に認知症のある高齢者のケアは難しく、介護を強く拒否されたことによるストレス反応で虐待をしてしまったというケースも少なくありません。 介護によるストレスをうまく発散できず、「もしかしたら自分も虐待してしまうかもしれない」ということを自覚したら、共倒れになる前に外部の介護・福祉サービスの利用を検討してみましょう。訪問介護サービスやデイサービスなどを利用すれば、家にいながらでも自分にかかる介護の負担を減らせます。 訪問介護やデイサービスなどをこれまでまったく利用したことがない場合は、まず近くの地域包括支援センターに相談してみましょう。「対象者が生活するために介護サービスが必要だ」と認定されれば、訪問介護をはじめとしたさまざまな介護サービスを利用できるようになります。 また、すでに介護サービスを利用しているもののそれが不十分で、自身の介護負担が大きいと感じた場合には、担当のケアマネジャーと相談して介護サービスの利用量を増やせるか検討してみると良いでしょう。 介護の”同志”とつながるのもアリ 長期にわたって家族の介護を続けていくためには、自分と同じように家族の介護をしている人とつながるのもひとつの手。同じ境遇の人だからこそ共感できることもあり、場合によっては有益な情報を得られるかもしれません。 例えば、認知症の高齢者を介護している人は「認知症の人と家族の会」という介護者のつどいがおすすめ。参加すると、認知症介護に関する勉強会に参加したり悩みを相談したりすることができるそうです。 ほかにも、各自治体でさまざまな介護者のつどいが開催されています。気になった人はチェックしてみると良さそうですね。
2024/01/26
2024年1月17日、東京商工リサーチが2023年の1年間で起きた介護施設の休廃業や解散、倒産をまとめたレポートを発表。その結果、同社が調査を始めた2010年以降で最多となる、510件もの介護事業所が休廃業や解散に追い込まれたことが明らかになりました。 この結果について、東京商工リサーチは「人手不足などで経営が悪化したため、倒産する前に事業の継続を断念した事業者が多いのではないか」と分析しています。 介護事業所の休廃業が過去最悪に 1月17日に東京商工リサーチが発表したレポートによると、昨年1年間で510件の介護事業所が休廃業や解散に追い込まれたことが判明。これは前年より15件多く、東京商工リサーチが調査を始めた2010年以降で最多となる数字です。 この理由について、東京商工リサーチは「人手不足による経営悪化」や「経営者の高齢化」が介護事業からの早めの撤退を決断させたのではないかと分析しています。 倒産件数も過去2番目に高い水準に また東京商工リサーチは、介護事業所の倒産件数についても調査を実施。その結果、2023年における介護事業所の倒産件数は122件であることが判明。これは、新型コロナの対応に追われた2022年の143件に次いで過去2番目に高い水準となっています。 サービス別に倒産した介護事業所をみてみると、特に人手不足が深刻とされる訪問介護事業所の倒産が最多に。その数は2023年の倒産件数全体の半数以上を占める67件にも上ります。深刻な人手不足に加え、ヘルパーの高齢化や物価高騰なども影響しているとみられています。 さらに、規模別に分類して調査結果を分析したところ、職員数10人以下の小規模な事業所の倒産が全体の8割以上を占めていることが明らかになりました。小規模の事業所では資金に余裕がないところも多く、新しい人材の確保や先端テクノロジーの導入などが難しいことも一因ではないかとみられています。 東京商工リサーチは「2024年は一段と小・零細事業者の倒産や休廃業、解散が増えるのではないか」と分析しています。 このように厳しい経営状況が浮き彫りになる中、1月22日、厚生労働省は訪問介護事業所の介護報酬引き下げを発表しました。訪問介護の事業所が厳しい経営状況に耐えられず事業を撤退させれば、高齢者の在宅介護が一層難しくなる地域も出てくる可能性があります。政府には実態を伴った改革をしてほしいですね。
2024/01/23
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。