Q&A
約2年前に認知症と診断された父と同居して介護しています。以前はそんなことはなかったのに、この半年ほど父がちょっとしたことで怒って、私や母を殴ったり物を投げるようになりました。 母も私もあざだらけで、いつ殴られるのかおびえながら生活しています。こんな父にはどのように対応したら良いですか? (内山さん・会社員・56歳) 暴力行為があると、内山さんもお母様もかなり不安な日々を過ごしていらっしゃると思います。ですので、まずはできる範囲で距離を取りましょう。お父様が怒り始めたら、別の部屋などに移動して物理的に離れる、デイサービスやショートステイなどで離れる時間を作る、といった対応です。認知症になると、感情をコントロールする脳の機能が低下して、ちょっとしたことで暴力的になることがあります。また、不安やストレスを感じて暴力的になっていることがあるので、力で抑えようとしたり身体拘束をするのはNG。さらに暴力行為がエスカレートするおそれがあります。あまりに暴力行為が激しいときは、精神科のある病院への入院も検討してくださいね。 暴力は認知症の「周辺症状」のひとつ 認知症の父から殴ったり蹴ったりの暴力を受けることが増えて困っています。認知症のせいか物忘れがひどくなり、忘れている出来事を指摘すると怒鳴りながら殴りかかってきます。また、家電などの道具類も使い方がわからなくなり、いらだって庭に投げ捨てて壊すことも…。父は一度怒り出すと手を付けられず、私も母もあざだらけ…。何がきっかけで怒るのかわからないので、毎日おびえながら生活しています。急に暴力的になったのは、認知症のせいなんでしょうか? おそらく、認知症のせいだと思われます。暴力は認知症の「周辺症状」の代表的なもののひとつ。周辺症状とは、認知症のメインの症状「中核症状」や心理状態に影響して引き起こされる症状のことで、「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。認知症の中核症状には、物忘れや理解力の低下などがあります。周辺症状は、それらの中核症状が原因となって現れているんです。 うちの父は物忘れがひどいのですが、それが原因で暴力を振るっているということですか? はい、その可能性もありますね。ただ、物忘れは多くの認知症の方に現れる症状ですが、物忘れの症状がある方全員が暴力行為をするわけではありません。その方の状況などによって、個人差が大きいのが周辺症状の特徴なんです。 認知症の種類によっては暴力の症状が出ることも ちなみに、お父様の認知症の種類はご存知ですか? はい。血管性認知症です。認知症の種類が暴力を振るうことに関係があるんですか? そうなんです。実は、認知症のなかには暴力行為が起こりやすい種類があります。それが、「脳血管性認知症」と「前頭側頭型認知症」です。血管性認知症は、感情のコントロールが難しくなるのが特徴。脳血管の障害によって起こる認知症なので、障害がある脳の部位と正常な部位との機能の差が生まれ、意識がはっきりしている時間とそうでない時間があります。意識がはっきりしないときがあることを、ご自身で認識できる場合もあるので、精神的に不安定になる方も。そのため、不安が大きくなってちょっとしたことで暴力を振るいやすいんです。 えぇっ、父はそんな状態だったんですね…。 また、前頭側頭型認知症は、人格や社会性、言語などをつかさどる脳の部位が損傷しています。そのため、ルールを守った行動ができなくなったり、少し気に入らないことがあると暴力を振るうことがあるのが特徴です。 認知症の人の暴力はどう対応する? 毎日、父の顔色をうかがいながら生活するのはもう嫌です!どうにかならないでしょうか? そうですね…。対応策としていくつかお伝えしましょう。例えば、以下のような方法です。 物理的・心理的に離れる 薬で治療する 在宅介護サービスを利用する 介護施設に入居する 物理的・心理的に離れる まずは、物理的にも心理的にも距離を取りましょう。具体的には、お父様が怒り出したタイミングで、別の部屋へ移動したり、落ち着いているときに音楽などを聞いてご自分のリラックスタイムを作る、といったようなことです。取り急ぎの対応方法ではありますが、意識的に距離を取ってみると、内山さんやお母様の気持ちが多少楽になると思いますよ。 薬で治療する 薬を使えば、お父様の状態が落ち着くこともあります。既に服薬している薬がある場合は、飲み合わせの問題もあるので、「お薬手帳」を持ってかかりつけ医に相談しましょう。また、認知症の薬を服薬している場合、別の薬に変えたり量を調整することで、症状が良くなることも。暴力を振るわれていることを医師に伝えてみましょう。 在宅介護サービスを利用する 在宅介護サービスのなかでも、「デイサービス」と「ショートステイ」を利用するのがおすすめです。デイサービスは、介護施設に通って介護サービスを受けられるもの。昼間の時間帯に介護施設が預かってくれるので、ご家族が安心して過ごせる時間を確保できます。また、認知症だけが利用できる「認知症デイサービス」というものもあります。認知症デイサービスであれば、認知症ケアに慣れた職員がそろっているので、適切なケアによってお父様の状態も落ち着くかもしれません。 へぇ!認知症の人限定の介護サービスがあるんですね。ちょっとでも父を預かってくれれば、私も母も安心できます。 また、ショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。宿泊している間の食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを提供しています。デイサービスよりも長時間、介護施設が預かってくれるので、ご家族のリフレッシュとして活用している方が多いですよ。 それは助かります!父に気を使わなくて良い日が1日でもあると、気が休まりそうです。 介護施設に入居する もし、ご自宅での介護が難しい状況であれば、介護施設への入居も検討してください。以下の施設であれば、認知症の方への対応に慣れているので対応できるでしょう。 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム グループホーム ただ、お父様の暴力が職員さんや他のご入居者にも及ぶ場合、入居を断られる可能性も。介護施設の受け入れ状況やお父様の状態にもよりますので、介護施設によく相談してみてください。 暴力行為があると、介護施設でも入居ができないことがあるんですね…。 暴力があまりにもひどいときは病院へ 先ほどお話しした通り、暴力行為がある方は介護施設の入居が断られる可能性があります。これは、有料老人ホームなどの長期入居型の施設だけでなく、デイサービスなどの在宅介護サービスでも同様で、利用を断られる可能性があります。 そんな!では、父におびえながら私と母が自宅で介護するしかないんですか!? いえ、誰にも手がつけられないほど怒ったり、暴力を振るう場合は、病院での治療が必要な状態と言われています。そのため、介護施設で受け入れられないほどの暴力行為がある場合は、入院をおすすめします。 えっ!入院ですか? そうなんです。入院設備のある病院のなかでも、精神科のある病院が良いでしょう。なぜなら、一般的な病院の場合、認知症の方の対応ができないことが多いためです。精神科であれば、認知症の薬の処方をしてもらえますし、看護師も認知症の方の対応に慣れているので受け入れてくれるでしょう。 精神病院ですか…。まさか、父がそんな状態だとは思っていませんでした…。 もちろん、薬の調整やケアの方法を変えることで暴力が落ち着いて、在宅介護を続けられることもあります。まずは、かかりつけ医やケアマネジャーさんに相談してくださいね。認知症の方の入院については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 こんな対応はNG! 認知症の影響による暴力行為は、間違った対応をするとさらにエスカレートしてしまう可能性があります。なので、やってはいけない対応についてもお話ししておきますね。具体的には、以下の2つです。 力で押さえつける 身体拘束をする 認知症の方の振り上げた手を押さえつけて降ろさせるなどの、力で押さえつける対応はNGです。なぜなら、行動を制限されたことで不安や恐怖を感じ、暴力がエスカレートするおそれがあるからです。 私や母では父の力には勝てないので押さえつけたことはありませんが、暴力がエスカレートすることもあるんですね…。 また、ベッドなどに縛り付ける、部屋に鍵をかけて自由に出られないようにする、といったことは身体拘束で虐待にあたりますから、やらないでくださいね。 虐待!?絶対にやらないです! 身体拘束がストレスとなり、認知症が進行したり、身体機能が低下する危険性があります。暴力行為はとても怖いことで、不安を感じるかもしれませんが、「力で押さえつける」「身体拘束をする」といった対応はしないでくださいね。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人が暴力を振るう理由は? 父は、もともと怒りっぽい人ではありませんでしたし、すぐ手が出る人でもありませんでした。認知症のせいだとしても、どうして暴力的になってしまったんでしょうか? 認知症の方が暴力を振るうのは、以下のような理由が考えられます。 ストレス・不安のため 自尊心を傷つけられたため 薬の副作用のため ストレス・不安のため 先ほども触れた通り、認知症の影響で判断力や理解力が低下します。そのため、周囲の状況が把握しにくいので、ストレスや不安を感じやすい状態です。さらに、感情のコントロールする機能も低下しているため、ストレスや不安を感じると精神的に不安定になり、その結果、暴力的になってしまうことがあります。 自尊心を傷つけられたため 加齢や認知症の影響で、できないことが増えていきますよね。そのため、ご家族が介助をするわけですが、その際に自尊心を傷つけてしまうことも少なくないんです。 どういうことですか? 例えば、「一人で大丈夫?」といった声掛けも、ときには自尊心を傷つける一言に。「一人じゃできないんだから、手伝うよ」といった言い方をすると、なおさら自尊心を傷つけかねません。認知症の方を心配すると、こういった声掛けをしてしまいがちですが、自尊心を傷つけて暴力行為のきっかけになることもあるので、気をつけましょう。 薬の副作用のため 服用している薬によっては、副作用の影響で暴力的になっていることもあります。認知症の薬のなかには、暴力行為が副作用として指摘されているものも。体質に合わない薬を止めたら暴力行為がなくなったケースもあるんです。 認知症の薬のせいで、暴力的になっている可能性もあるんですか! そうなんです。だからといって、独断で服薬を中止するのはとても危険なので止めてくださいね。薬を中止したり、調整するときは、必ず医師に相談してください。認知症の影響によって暴力を振るうといっても、原因は人それぞれのため、対応方法もそれぞれです。ご家庭で抱え込まないで、まずはケアマネジャーやかかりつけ医に相談してくださいね。認知症の方の暴言については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人の暴力には心理的に離れる、薬で治療するなどの対応をしよう 認知症の人を力で押さえつける、身体拘束するのはNG! 認知症の影響で、感情の抑制ができない、不安感を感じやすいため暴力を振るうことも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: ...
2023/09/13
認知症の母が、ビニール袋やティッシュを食べるようになってしまいました…。すぐに私が口から離させるので飲み込むことはないのですが、何を食べてしまうのかわからなくて常に目を離せなくて困っています。 今後、もっと危険なものも食べてしまうかもしれません。どうしたら母は食べ物以外のものを食べるのを防げますか? (奥村さん・会社員・63歳) もしかしたら、空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうようになったのかもしれません。なので、軽食を食べてもらったり、ストレスの原因を取り除くなどの対策をしてみましょう。もし、食べ物ではないものを飲み込んでしまったときは、できる範囲で飲み込んだ量を把握したうえで病院を受診してくださいね。 認知症のせいで食べ物以外のものを食べる!?予防法は? 認知症の母が、ちょっと目を離した隙に食べ物以外のものを口にするようになってしまいました。特に多いのがビニールやティッシュです。しかも、この間は服から取れたボタンを食べようとしていたんです。いつ、何を食べてしまうかわからないので母を家に一人にできないですし、常に目を離せないので私は疲れてしまいました。どうしたら食べ物以外のものを食べるのを防げるのでしょうか? 食べ物以外のものを口にしてしまうのは、とても危険ですよね。ちなみに、食べ物以外のものを食べてしまうことを「異食」と言い、認知症の周辺症状のひとつです。認知症の人が食べ物以外のものを口にするのを防ぐ方法には以下のようなものがあるので、参考にしてみてください。 おやつを食べてもらう 食べると危険なものは手の届かないところに置く 食べ物ではないことをわかりやすくする 食べられるものと入れ替える おやつを食べてもらう お母様は、お腹が空いていて食べ物ではないものを口にしている可能性があります。なので、その対策としては、軽食を食べてもらうこと。せんべいやクッキーなどのおやつを食べて、次の食事までの間の空腹を紛らわしてもらうんです。 えっ、でも、そんなに食べてしまったら、食事が摂れなくなってしまうんじゃないですか? もちろん、量の調整は大切です。食事に影響が出ないくらいの量に抑えたり、おやつを食べた分は食事を減らしたり、といった調節はしてくださいね。 食べると危険なものは手の届かないところに置く 認知症の方が異食をしてしまうことが多いもののなかでも、乾電池や洗剤などは飲み込んでしまうと大変危険です。なので、手の届かないところや棚の中にしまいましょう。 確かに。口にしないように、食べ物以外のものはすべてしまっておかないと。 ただ、飾り物をすべてしまって、あまりにも殺風景になってしまうのも刺激がなくて脳に良くありません。手が届かないところに飾るなど、うまく調整してくださいね。 食べ物ではないことをわかりやすくする 「食べ物ではないことをわかりやすくする」ってどういうことですか? ストレートに「これは食べ物ではありません」と書くのはどうでしょうか?認知症の方でも文字が読める方であれば、効果があるでしょう。食べてしまうものにもよりますが、洗剤や薬品類などのパッケージに大きく書いておくと効果があるかもしれません。 食べ物と入れ替える お母様がティッシュやビニールを手に持っていたりして、「食べてしまうかも」と思ったときには、食べられるものと交換してみるのも良いでしょう。 今までは、急いで母の手から取り上げていたのですが、それではいけないんですか? お母様としては、手に持っているものは「食べても良いもの」と理解しているので、それを急に取り上げられると驚きますし、混乱しますよね。そうしたことが繰り返されると、混乱からストレスを感じてさらに異食をする頻度が上がってしまう可能性があります。 そうなんですか!?食べたら危険だと思って、急いで取り上げていたのは良くないことだったんですね…。 なので、食べ物を手渡してさりげなく食べてはいけないものと交換しましょう。「こっちの方がおいしいよ」と食べ物を手渡してみると、意外とすんなり交換してくれるかもしれません。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 食べ物以外のものを食べてしまったら もし、母が食べ物以外のものを飲み込んでしまったらどうしたら良いんでしょうか? もし、食べ物以外のものを飲み込んでしまった場合、無理に吐き出させようとせずに、口の中を確認しましょう。口にしたものの大きさによっては、口の中に物が残っていることがありますから、それを取り除きましょう。ただ、ティッシュやビニールといったものは気管をふさいで窒息する危険性があります。電池や洗剤なども中毒のおそれがあるので、危険なものを飲み込んでしまった場合はすぐに病院を受診してください。 ティッシュやビニールで窒息する可能性があるんですね!それには気が付きませんでした。本当に危険ですね…。 食べると危険なもの ティッシュやビニールなどの、家の中に当たり前にあるものでも食べたら危険なものがあるんですね…。他に、食べると危険なものにはどんなものがあるんですか? 食べると危険なものには、以下のようなものがあります。 ティッシュ ビニール 電池 洗剤 漂白剤 防虫剤 殺虫剤 ガソリン・石油 除光液 薬 タバコ マニキュア 針・刃物 上記のものは、口にしてしまうととても危険なので、認知症の方が手が届かない場所に保管しておきましょう。便を食べてしまう場合については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人が食べ物以外のものを食べる理由は 母は「まだ飲み込んでいないから大丈夫」と思っていましたが、異食がとても危険なことだとよくわかりました。そもそも、どうして母は食べ物以外のものを食べるようになってしまったんでしょうか? 認知症の影響だと考えられます。具体的には、以下のような理由で食べ物以外のものを食べてしまっているのかもしれません。 食べ物かどうか判別できない 食事の時間だと勘違いしている お腹が空いている 不安やストレスを発散している 食べ物かどうか判別できない 認知症の影響で、目の前のものがどういった役割のものなのかを理解できなくなることがあります。この症状を「失認」と言い、認知症の症状のひとつです。具体的には、「ティッシュが何かわからない。わからないから手に取ってみる。それでもわからないから口に入れてみる」といった具合です。また、洋服のボタンやビー玉などを飴玉と勘違いしているケースもあります。食べ物と勘違いしているのであれば、自然と口に入れてしまいますよね。 うちの母も、ティッシュやビニールを食べ物と勘違いしていたのかもしれませんね。 食事中と勘違いしている また、認知症になると現在の日時、季節といった時間に関する感覚があいまいになることがあります。これは「見当識障害」と言って、認知症の症状の代表的なものです。見当識障害の影響で時間感覚があいまいになり、食事の時間と勘違いして近くにあったものを食べてしまった、ということもありえます。 お腹が空いている 母は食欲旺盛で、3食しっかり食べています。それでもお腹が空いているんですか? 実は、認知症の影響で満腹感を感じにくくなっている可能性があります。認知症によって脳の満腹を感じる部位が損傷を受けることで、満腹になりにくいんです。そのうえ、認知症によって食べ物以外のものを食べ物と思い込んでしまっていれば、自然と食べようと思ってしまいますよね。そうした理由が合わさって、食べ物ではないものを食べてしまっているのかもしれません。 不安やストレスを発散している 認知症ではない私たちも。「やけ食い」などでストレス発散することがありますよね。それと同じように、認知症の方も食べることで不安やストレスを解消しようとしているのかもしれません。また、誰でも何がなんだかわからない状況に置かれるのはストレスですよね。認知症の方は、それ以上に認知機能の衰えによって物事が理解できず、不安やストレスを感じやすい状態にあります。なので、ストレスを発散させようと異食をしてしまっている可能性があります。 母が食べ物以外のものを食べるのを止めさせることばかり考えていましたが、いろんな理由があって異食をしていたんですね…。母の異食の原因を減らせるように、対策をしていきたいと思います。 おやつを与えたり、危険なものを届かないところで保管して予防して 食べてしまったら、無理に吐き出させようとせず、口の中を確認して 空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうことも pre { margin: 40px 0; background: ...
2023/09/08
先日、帰省したところ、高齢の父親の様子がおかしくて気になっています。具体的には、一緒に外食をしたら、料理にお箸がついていないことで店員を怒鳴りつけて大騒ぎしたんです。ちょっとしたことですぐ怒るようになっているようで…。 昔はここまですぐに怒るような人ではありませんでしたから、何かの病気の前触れなのかと心配です。もしかして、認知症の可能性もありますか? (松原さん・会社員・58歳) 認知症の可能性もありますね。ただ、認知症以外にも、うつ病や脳梗塞の後遺症、加齢などによって怒りっぽくなることはあります。認知症にはいくつか初期症状がありますから、他の症状も当てはまったら、病院で検査することをおすすめします。 高齢者が怒りっぽいのは病気の前触れ? 先日、久しぶりに実家に帰省したら、一人暮らしの父が怒りっぽくなっているような気がして気になっています。一緒に外食に出かけたところ、食事にお箸がついていないことに激怒し、店員を怒鳴りつけたんです。以前は、こんなことで怒るような人ではありませんでした。急な変化だったので、何かの病気の前触れなのではと心配です。もしかして、認知症になってしまったのでしょうか? 現時点では、はっきりとしたことは申し上げられませんが、認知症も可能性のひとつです。ただ、認知症も含めて、ご高齢者が怒りっぽくなる理由は以下のようなことが考えられます。 認知症 うつ病 脳梗塞 加齢 認知症 認知症の初期症状のひとつに怒りっぽくなることがあります。認知症によって、感情をコントロールしている前頭葉が萎縮すると、気持ちの制御ができなくなって怒りやすい性格になってしまうと言われています。また、認知機能の低下によって状況が理解できない、適切な判断ができない混乱が怒りにつながることもあります。 やっぱり、認知症の可能性もあるんですね。一人暮らしだから心配だな…。 認知症の影響で暴言を吐いてしまう方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 うつ病 うつ病の可能性もあります。うつ病の症状というと、気持ちが落ち込んでふさぎ込むようなイメージがありますが、実は怒りっぽくなるのも症状のひとつなんです。というのも、幸せホルモンとも言われる「セロトニン」が減少することで気持ちが落ち込むと同時に怒りっぽくもなります。「落ち込みながら怒る人」も多くいるんです。 脳梗塞 脳梗塞を経験している人は、その後遺症として怒りっぽくなることがあります。これも、脳の一部がダメージを負ったために、感情のコントロールができなくなってしまうんです。また、反対に脳梗塞の前触れにも怒りやすくなることも。脳の血流が徐々に減少していくなかで、脳梗塞の症状が出ることがあります。高血圧の方は、脳梗塞の可能性も疑った方が良いかもしれません。 父は高血圧です。母が亡くなって一人暮らしをするようになってから、食事が乱れているみたいで血圧が上がっているようなんです。血圧の薬もきちんと飲んでいるのか確かめないと…。 加齢 年齢を重ねることで怒りやすくなることもあります。こうした方は、もともと怒りっぽい気質だったケースが多いですね。特に一人暮らしの場合、人との交流が減ることで日常生活でストレスを発散する機会も減る傾向があります。そのため、ちょっとしたことでも、怒りにつながってしまうんですね。 なるほど…。父もそうなのかな。このところ、趣味の将棋サークルも行かなくなったみたいですし…。家にこもりきりみたいなんですよね。 認知症のせいで怒りっぽいのか見分ける方法 認知症以外にも、父に当てはまりそうな理由がいくつかありました。認知症かどうか、見分ける方法はないですか? ひとつの方法として、「怒っている理由を聞く」ことがあります。認知症の方の場合、ご本人自身も何に対して怒っているのかわかっていないことも多いんです。なので、「どうして怒っているの?」と聞いてみて、はっきり答えられない場合は認知症の可能性が高いです。また、以下のポイントにも注意してみてください。 今まで怒っていたか 外出時も怒るようになったか 頻度が増えているか これらに当てはまったら、認知症や脳梗塞などの病気の前兆かもしれません。病院での検査をおすすめします。 「怒りっぽい」以外の認知症の初期症状 怒りっぽくなるのは認知症の初期症状のひとつ、とお話ししましたよね。その他にも初期症状があるので、「怒りっぽい」以外の症状にも当てはまっていないか、確認しておきましょう。主な認知症の初期症状は、以下の通りです。 同じことを何回も話す・質問する お金の管理ができない 料理や買い物に手間取る 物をよく探している 周りの出来事に関心がない 趣味を止めた 物や人の名前が出てこない だらしない服装になる これらに当てはまったら、認知症の可能性が高いということですね。うーん…。そういえば、「明日は何時に家を出るんだ」と、外出する時間を何度も聞かれたような。帰省の期間が短かったから、その他の症状はわからないですね。 普段、一緒に過ごしていないとわかりにくいところではありますよね。もし、初期症状にいくつか当てはまるようでしたら、病院で検査してもらってくださいね。認知症の影響で怒りっぽくなってしまった方についても、以下のご質問でお答えしています。参考にしてください。 高齢者が怒り出したときの対応方法 先日の帰省のときは、店員さんだけでなく、私も何度も怒鳴られて。近々、また帰省する予定があるんですけど、次も同じように怒鳴られるかもと思うと気が重いです。 怒鳴られるというのは、ストレスですよね。それに、自分が怒られているわけではなくても、怒っているのを見るだけでも気が滅入ってしまうと思います。そういうときは、「顔を背ける」「別の部屋に移動する」といった方法で、怒りから離れましょう。ストレスの元から逃げることも大切です。 顔を背けるって、それだけでも良いんですか? はい。物理的に離れるのが難しい場面では、顔を背けて、怒っている人を視界に入れないだけでもストレスが軽減されます。怒っている人をなだめるのは大変ですから、毎回、相手の気持ちを落ち着けようとするのはかなりの負担です。「手を付けられない」と思ったら、逃げるのもひとつの手ですよ。 逃げても良いんですね。ちょっと安心しました。とはいえ、まずは父が認知症や脳梗塞を発症しているのか確認しないとですね。 怒りっぽくなったときは、単なる加齢のほかに認知症やうつ病なども考えられる 昔より怒りっぽくなった、怒る頻度が増えている傾向があったら認知症の可能性も 怒り出したら顔を背ける、別の部屋に移動するなど、ストレスを避ける対応を pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: ...
2023/08/31
認知症の父親が自分の便を食べるようになってしまい、どうしたら良いかわかりません…。 先日、家に帰ったら父が便で手を汚した状態で廊下に立っていました。よく見ると口の中にも便が入っていて…。 それ以降、同じように便を食べてしまうことが何度かあって。いつ便を口にしてしまうかわからず、常に目を離さないようにしているのがしんどいです。 (川島さん・会社員・56歳) 便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGです。ストレスを感じて、余計に食べるようになってしまう可能性があります。便が下着の中に残っていることで肌が不快で触って、手に着いた便を食べてしまった可能性があります。なので、排便のタイミングを把握して、下着の中に便が残っている時間を短くしましょう。空腹やストレスなどから便を食べてしまっている可能性があります。原因を把握して対応していきましょう。 認知症の親が便を食べてしまったら? 先日、家に帰ったら父が手を便で汚して廊下に立っていたんです。よく見たら口の中にも便があって…。たぶん食べてしまったんだと思います。それ以降、便を食べてしまったり、食べようとしたところを私が止めたことも何度かありました。ずっと目を離せないので、しんどくて…。毎回、父を叱るのですが食べるのを止めないんです。 実は…便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGなんです。 えっ、そうなんですか!?どうしてですか? 叱られるというのは誰しもストレスを感じますよね。そのうえ、認知症の方の場合、なぜ怒られているのか理解できない可能性があります。「なぜかわからないけど怒られる」というのはとてもストレスを感じることですよね。そのストレスが原因で、余計に便を食べるようになることもあるんです。 えぇ!?では、どうしたら良いんですか? 落ち着いた口調で、「便を食べるのは危険」と伝えましょう。便とわかっていない場合、「おしりに付いているものを食べるのは危険なんだよ」という伝え方でも良いでしょう。便を触っていたり、食べてしまっているのを見ると、どうしても怒りたくなると思います。が、そこはぐっと気持ちを落ち着けてから、話をしましょう。認知症の方との関わり方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の親が便を食べるのを予防するには 父が便を食べるのを止める方法はありますか?もう、どうしたら良いかわからないんです。 いくつか方法があります。ひとつずつ試していきましょう。 排便タイミングの把握 皮膚を保護する 汚れも予防する 排便タイミングを把握する まずは、お父様の排便のタイミングを把握しましょう。同じルーティンで生活していることが多いご高齢者は、排便のタイミングもある程度決まっています。そのため、1日の排便のタイミングや、毎日、排便がない場合や何日間隔で排便があるのかを把握してみましょう。トイレ介助をしている場合は、比較的、把握しやすいと思います。お父様がお一人でトイレに行く場合、いつもよりもトイレが長いときに排便していることが多いです。意識して記録しておきましょう。 排便のタイミングですか…。記録するのは良いんですが、タイミングを把握してどうするんですか? 排便のタイミングが把握できると、下着の中に排便してしまったときにすぐに確認できますよね。下着の中に便があると、気になって触ってしまうことがあります。それに手についた便を口にしてしまうことを防げるんです。できるだけ便が肌に触れている時間を減らすと、便を食べてしまう回数が減ると思いますよ。手で便をいじってしまうときの対応については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 皮膚を保護する また、肛門やおしりの周りにワセリンなどの保湿クリームを塗っておくのも効果があるかもしれません。というのも、下着やパッドの蒸れによって肌がかぶれ、おしりをかいてしまって便が手につくことがあります。あらかじめ、クリームで皮膚を保護しておくとかゆみの予防になるでしょう。 汚れも予防する お父様が便に触っているということは、お家の中が汚れやすいことはありませんか? そうなんです!特に父の部屋が汚れやすいんです。便がついた手でいろんなところを触ってしまうみたいで…。 便は臭いますから、掃除も大変ですよね。便を食べるのを予防するだけではなく、汚れの予防もすることで、相談者さんの負担も大きく減ると思いますよ。例えば、便がつきやすい場所にビニールの保護シートを貼ったり、シーツが汚れる場合は上から敷く防水シートもあります。 へー!そんなものがあるんですね。 もし、畳の部屋の場合、畳の目に汚れがつまりやすくて掃除が大変だと思います。そういうときは、畳の上に敷くフローリングカーペットがあります。それだけでもとても掃除が楽になると思いますよ。 認知症の親が便を食べる理由は? そもそも、どうして父は便を食べるようになってしまったんでしょうか? いくつか理由が考えられます。便を食べてしまう主な理由は以下の通りです。 肌に違和感がある 食べ物だと勘違いしている お腹が空いている 肌に違和感がある 下着やオムツの中に便があると肌がかぶれてかゆくなります。そのため、おしりが気になってかくことで便が手についてしまうことがあります。手についた便が何だかわからなくて、口に入れてしまうんですね。 父はリハビリパンツを使っているのですが、最近、濡れたパンツやパッドを自分で捨てられなくなってしまいました。もしかしたら、それで肌がかぶれているのかも…。 食べ物だと勘違いしている 便を食べ物だと勘違いしていることも考えられます。認知症の影響で、物を認識していてもそれが何だかわからなくなることがあります。手についた便が汚いものなのか、食べ物なのか何なのか理解できなくなってしまうんですね。 でも、おいしいものではないでしょうし、口の中に入れたらわかるものだと思いますが…。 いえ、加齢や認知症の影響で、味覚が鈍くなることがあるんです。なので、口に入れても食べ物なのかどうかがわかっていない可能性があります。 お腹が空いている お腹が減って便を食べてしまうんですか?食事は十分に食べさせているんですが…。 実は、認知症によって脳の一部が損傷することで、満腹を感じにくくなることもあるんです。なので、食べても食べても満腹感は薄く、常にお腹が減っている状態になることも。目についたものは何でも口に入れてしまうんです。こういう場合は、軽食を渡すことで便を食べる回数が減るかもしれません。 便のほかにも食べてしまいがちなもの 便のほかにも、食べ物ではないものを口にしてしまうことを「異食」と呼びます。認知症の症状のひとつです。 便以外にも食べてしまうことがあるんですか?何を食べてしまうんですか? その人にもよりますが、よく異食してしまうものには以下のものがあります。 ゴミ・ほこり 薬の袋・パッケージ ティッシュ 電池 タバコ 洋服のボタン・飾り 洗剤 いろいろあるんですね…。今のところ、父はこれらのものを食べてはいませんが、いつか口にしてしまうかも…。気をつけておかないと。 異食の危険性 異食をしてしまうと、以下のようにさまざまな危険性があります。 窒息する 中毒症状が出る 食道や内臓を傷つける 薬の袋などのビニール類、服のボタンなどは、気管に詰まって窒息してしまう可能性があります。また、洗剤を飲んでしまった場合、中毒症状が出る危険性も…。 中毒!?それは危険ですね。 そのうえ、当然ながら食べ物ではないものは胃の中で消化できずに残ってしまうことが多いです。すると、胃や腸などの消化器官を傷つけてしまうことも。口に入れてしまいやすいものは、手の届かないところにしまっておきましょう。異食があると常に目が離せなくて負担が大きいと思います。適度に気を抜けるように介護サービスの活用もしてくださいね。 便を食べたときに叱るのはNG.落ち着いて対応しよう 排便タイミングに合わせてトイレに座るなど、便が肌に触れる時間を減らそう ボタンや洗剤などを口にすることも。手の届かないところに置こう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; ...
2023/08/31
もう、母の認知症に我慢ができません!私や私の妻が母のトイレやお風呂の介助をしようとすると、大声で叫んで嫌がるのは毎日のことで、ときには手が出ることもあります。 それに、夜中に家から出ようとすることもあり、その度に私や妻が起きてなだめているのですが…。常に寝不足で体力的にももう限界です。 こんな状況をどうにかする方法はありませんか? (小泉さん・会社員・64歳) 在宅介護サービスは活用していますか?デイサービスやショートステイなど、一時的に介護施設で過ごすサービスがあるので、小泉さんご夫妻の負担がかなり減ると思います。また、介護施設への入居も合わせて検討してください。認知症ケアはかなり難しいです。なので、介護のプロに任せることも、ご家族ができる介護のひとつです。我慢の限界を超えてしまうとご家族が「介護うつ」になってしまうリスクがあるので、無理をせずに、介護サービスを活用しましょう! 認知症の親に我慢の限界!どうしたら良い? もう限界です。母の認知症がどんどんひどくなってきて、妻も私も疲れ切っています。以前からお風呂とトイレの介助が必要だったのですが、最近になって嫌がるようになりました。それも、大声で「助けて!」と叫んで抵抗するんです。気持ちが高ぶっていると手が出るときもあります。それに、夜中に起き出してきて家から出ようとするので、毎晩、私や妻が母をなだめないといけなくて…。ゆっくり眠れないので、いつも寝不足なんです。 それは本当に大変な状況ですね…。ちなみに、介護サービスを利用していますか? いえ、していません。以前、利用した訪問ヘルパーさんと母が折り合いが悪くて、訪問介護を使うのを止めてからは、何もサービスを利用していません。 お母様の状況を聞いていると、ご家族だけの介護はもう厳しいと思います。というのも、認知症ケアはかなり難しく、ご家族の負担がとても大きいんです。ですので、できれば介護サービスを利用することをおすすめします。 そうなんですよね…。私と妻だけでは、介護を続けるのは難しいと思います。でも、どのサービスを使えば良いんでしょうか? 介護サービスは、在宅介護サービスと施設介護サービスに分けられます。それぞれお話ししますね。 在宅介護サービスを使う お母様にぜひ使っていただきたいのは、次の在宅介護サービスです。 デイサービス ショートステイ デイサービスでは、日中の間、介護施設に通って介護サービスを受けられます。具体的には、食事、入浴、レクリエーションなどを提供しています。もちろん、必要であれば食事介助、入浴介助、排泄介助も受けられます。 デイサービスって聞いたことがあります。お風呂やトイレの介助も任せられるんですね! その次のショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。もちろん、宿泊している間の食事や入浴、レクリエーションなども提供しています。最大30日連続で宿泊できることもあり、ご家族のリフレッシュや介護施設に入るまでの順番待ちの間に利用されることもあります。 介護施設に入居する 在宅介護ではなく、施設入居を検討するのもひとつの手です。むしろ、小泉さんと奥様が限界を迎える前に、早めに検討することをおすすめします。 介護施設か…。いろんな種類がありますよね?よくわかっていないんですよね。 はい。介護施設にはたくさんの種類があります。認知症の方だったら、以下の施設がおすすめです。 特別養護老人ホーム グループホーム 介護付き有料老人ホーム 特別養護老人ホームは聞いたことがあります。でも、詳しくは知らないです。 そうでしたか!特別養護老人ホームは、要介護認定3以上の方が入居できる施設。介護が必要な方のための施設で、「終の棲家」として入居される方も多いです。ただ、公的施設ということもあって料金が安いので、入居の順番を待たないといけないことがほとんどです。なかには数年待つケースもあるようです。 人気なんですね…。ただ、うちの母は要介護2なので入居できないですね。その次のグループホームというのは? グループホームは、認知症の方向けの施設です。「ユニット」と呼ばれる最大9名の少人数のグループで生活をするのが特徴。掃除や料理などをご入居者が協力しながらおこなっています。もし、お母様がアットホームな施設が合いそうであれば、グループホームがおすすめです。 アットホームなところか…。母は人の好き嫌いがはっきりしているので、合わない人がいたらなじめなさそうです。 でしたら、介護付き有料老人ホームも選択肢のひとつです。比較的、大規模な施設が多く、合わない人がいたらフロアを変えるなどの対応もしてもらえるかもしれません。また、介護付き有料老人ホームも看取りなどの対応ができる施設ですので、最期までお母様を任せたい場合はおすすめです。 接し方を変えれば認知症の症状は緩和される? 介護サービスを利用すれば、私たちの負担が減りそうで安心しました。ただ、在宅介護サービスを使うにしても、介護施設に入居するにしても、しばらくは私たちが介護をしないといけませんよね。母の状態がこのままだと、どちらにしろ気が休まらない気がして…。 うーん。もしかしたら、お母様への対応を変えることで、認知症の症状が緩和するかもしれません。 えっ、私たちの対応を変えるだけで、症状が緩和するんですか? 認知症を進行させる原因のひとつにストレスがあります。認知症の方は、認知機能が低下することで不安を感じていることが多いんです。その不安感が和らぐことで、症状が緩和すると言われています。 へぇ!そうなんですね。具体的にはどうしたら良いんでしょう? では、詳しくお話ししていきますね。 認知症の人の関わり方のポイント 認知症の方は認知機能の低下や、加齢によって耳が遠くなっていることがほとんどです。なので、以下のようなことに気をつけてコミュニケーションを取りましょう。 話し方 話を否定しない ゆっくり話す 大きな声で話す 目線を合わせて話す 話をよく聞く 接し方 ペースを合わせる 無視をしない 役割を持ってもらう 特に気をつけていただきたいのが、「話を否定しない」です。認知症の方は、症状の影響で事実と異なる話をしたり、何度も同じ話をしたりします。でも、それに対して「それは違うよ」「さっきも言ったでしょ」と、認知症の方を否定するのは禁物なんです。 そうなんですか!?毎晩、母が「仕事に行かなきゃ」と言って出かけようとするので、「もう仕事はしていないでしょ!」と止めていたのですが…。いけないことだったんですね。 おそらく、お母様の中では仕事に行っているのが事実です。なので、それを否定してしまうと、混乱して不安になってしまうんですね。なので、「仕事は今日休みだよ」「まだ仕事の時間には早いから、もう一度寝よう」などの声掛けをすると、納得してもらえるかもしれません。認知症の方とのコミュニケーションは、その方の”世界観”に合わせるのが基本。事実と異なっていても否定をせず、話を合わせていると症状が穏やかになっていくと思いますよ。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 我慢の限界を超えると「介護うつ」になってしまう!? 今の状況が良くなりそうで良かったです。このままだと、私も妻もどうにかなりそうだったので…。 認知症の方の介護は大変ですよね。我慢の限界を超える前に、負担を減らす工夫をしていきましょう!限界を超えてしまうと、「介護うつ」になってしまうこともあるので…。 介護うつですか? はい。介護うつは介護が原因で起こるうつのことです。介護によって心身に大きな負担がかかり続けていると、発症してしまうことがあります。長期的に食欲や気力がなくなっていると、危険なサイン。趣味や好きなことを楽しめなかったり、気分が晴れない状態が続いている場合、介護うつの可能性が高いです。そうした状態になる前に、ショートステイを使うのもおすすめです。まとめて数日間ショートステイを利用して、ゆっくり休む時間を作りましょう。 介護サービスには、そういう使い方もあるんですね。私や妻が限界を迎える前に、介護サービスを活用していきたいと思います。 認知症の親の介護に限界を感じたら、介護サービスを積極的に使おう 関わり方を変えると症状が緩和されることも 我慢し続けると「介護うつ」になってしまう可能性も pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/08/30
先日、認知症の親御さんを介護している友人に、「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。具体的には、どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 私も認知症の母の介護をしており、このところ急に症状が悪化しているような気がしています。汚れたパッドが部屋に投げ捨てられていたり、着替えを手伝おうとすると大声で叫んで暴れるようにもなってしまいました…。 言ってはいけない言葉を使うと、どうなってしまうんですか? (松原さん・自営業・65歳) 認知症の人を否定したり、急かしたり、責めるような言葉はNGです。というのも、こうした言葉によって、不安が強くなってストレスを感じ、認知症が進行してしまうことがあるからです。なので、食事をしたのに「ご飯を食べていない」と言われたときは、「今作っているから待っていてね」と言ったり、「壁に虫が這っている」と幻覚を見ている様子があれば、「追い払っておいたよ」と声掛けをしましょう。認知症の人の言葉が現実と異なっていても、それを指摘せずに、話を合わせることが大切です。 認知症の人に言ってはいけない言葉がある? 認知症の親御さんの介護をしている友人から「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。私も認知症の母を介護しているので気になっていて。どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 認知症の方が不安になってしまうような言葉は、言ってはいけません。具体的には以下のような言葉です。 否定する言葉 脅かす言葉 急かす言葉 責める言葉 できることを奪う言葉 否定する言葉 認知症の人自身や、その人の言葉を否定する言葉はNGです。例えば、以下のような言葉です。 (「仕事に行く」と言われて)「もう仕事は辞めたでしょ」 (食事後に「ごはんを食べていない」と言われて)「さっき食べたばかりでしょ」 (虫がいないのに「虫がいる」と言われて)「虫なんてどこにもいないよ」 (「家に帰る」と言われて)「ここが家でしょ」 認知症になると直近の記憶を忘れてしまいやすくなるので、食事を摂ったことを忘れてしまうことがあります。そのため「まだご飯を食べていない」と言うこともあります。それに対して、「さっき食べたでしょ」と否定してしまうと混乱させてしまうことがあります。 なぜでしょうか?実際には、ご飯を食べているんですよね? 認知症の方にとっては、「ご飯を食べていない」のが事実です。認知症による物忘れの場合、「さっき食べたでしょ」と伝えても思い出せないことが多いんです。 だから、事実を言っても不安を感じるだけになってしまうんですね。 脅かす言葉 (お風呂に入らなくて)「頭がかゆくなっても知らないよ」 (食事を拒否されて)「あとでお腹減っても食べ物ないからね」 これらの言葉は、認知症の人に介護を拒否されたときに言ってしまいがちな言葉です。介護をしていると忙しいので、どうしてもいらだってしまいます。そのうえ、介護を拒否されて家事などが上手く進まないと、脅かすような言葉を使って、思い通りに動いてもらおうとしてしまうこともあるでしょう。ただ、こうした言葉は認知症の人にとって大きなストレスになりかねないので、使ってはいけない言葉なんです。 急かす言葉 在宅介護をしていると、忙しくて以下のような言葉を使ってしまっているかもしれません。 「早くして」 「いつまでやっているの?」 「まだ?」 加齢によって身体機能が低下して体が思うように動かせなくなったり、認知機能の低下によってより動作に時間がかかるようになります。着替えをしたり、食事をしたり、靴を履いたり…。これまで当たり前にできていたことに、時間がかかっていると、思わず「早くして」と言ってしまうこともあるかもしれません。 そうなんです!何をするにも時間がかかるようになってしまって。特に朝はぐずぐずしてなかなか着替えないので、「早くして」と言ってしまいます。私が手伝おうとしても怒鳴って拒否されるし…。私が言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれませんね。 そうだったんですね…。忙しくてなかなか難しいかもしれませんが、時間がかかることを予想して余裕を持って行動するのが良いかもしれません。 責める言葉 責めるような言葉も、認知症の人に言ってはいけない言葉のひとつです。例えば、以下のような言葉です。 「そんなこともできないの?」 「さっきも言ったよね」 「同じ話を何度もしないで」 あ…。これも心当たりがあります。病院の予約日時や、道具の使い方を教えても母が覚えていないので、「さっきも言ったよね」と責めてしまうことがよくあります。 認知症になるとできないことが増えていきます。それを認知症の方ご本人も自覚していることが多いんです。なのに、そのうえ、ご家族から責められると自信がなくなってしまいますよね。責めるような言葉は、プライドや自尊心を傷つけてしまうのでNGなんです。 できることを奪う言葉 「できることを奪う言葉」ってどんな言葉ですか? 具体的には、こんな言葉です。 「私がやるから手を出さないで」 「危ないから触らないで」 認知症になってできないことが増えていくご家族を見ていると、心配する気持ちから「やらないで」と代わりにやってしまいがちです。なかには本当に危険なこともあるかもしれませんが、ご本人ができることは見守って自分の手でやってもらうことが大切です。 うーん、でも私がやった方が早いことも多いんですよ。母に任せているとやたら時間がかかって。 そういうこともありますよね。でも、そうしてお母様のできることを奪ってしまうと、さらにできることが減ってしまう可能性があるんです。時間がかかっても、ご自分の手でできることであれば、できるだけお母様に任せましょう。 かける言葉によって認知症が悪化する!? そういえば、「認知症の人に言ってはいけない言葉」を言い続けていると、どうなってしまうんですか? 認知症の症状が進行してしまう可能性があります。 えぇ!?そうなんですか!なぜですか? 認知症の人に言ってはいけない言葉は、認知症の人にとってストレスを感じる言葉だからです。ストレスを感じると、脳の細胞が死滅することがわかっています。つまり、脳の機能低下が加速するというわけです。脳の機能低下が進むと、認知症の状態が進行し、症状も悪化してしまいます。 えぇ…そうなんですね。このところ、母の認知症がひどくなっているように感じていましたが、それは私が認知症の人に言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれません…。 認知症の人にはどんな言葉をかければ良い? 母に、認知症の人に言ってはいけない言葉をたくさん言ってしまっていたのがよくわかりました。言わないようにしたいのですが、だからといって、どんな言葉をかければ良いのかわからなくて…。 認知症の方への受け答えは難しいですよね。なので、認知症の方によくある発言と、それに対する返答をリストアップしてみました。 「ご飯を食べていない」には「今作っているところだよ」 「財布を盗られた!」には「一緒に探そう」 「家に帰りたい」には「車を呼んでるからお茶を飲んで待っていて」 「虫が這っている!」には「追い払っておいたよ」 「今作っているところだよ」 認知症の症状のひとつに、直前の出来事を覚えられないことがあります。そのため、食事を食べたばかりなのに「ご飯を食べていない!」と言うことがあるんですね。 聞いたことがあります。うちの母はそういったことはありませんが…。 そのときに、「さっき食べたでしょ!」と返すのはNG。「なんでご飯を食べさせてくれないの!」とさらに興奮させてしまう可能性があります。そこで、「今、食事を作っているところだから待っていてね」と声をかけたり、軽食を渡すのがおすすめです。時間を空けて、「ご飯を食べていない!」と興奮した気持ちが落ち着くのを待ちましょう。認知症の方が食事をしたことを忘れてしまうときの対処法については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「一緒に探そう」 認知症の方の訴えでよくあるのが、「財布が盗まれた!」というものです。特に一番近くにいるご家族が犯人にされてしまうケースが多いんです。そのため、「盗んでないよ!」「自分でどこかにしまったんでしょ!」と言うのは良くありません。認知症の方の頭の中では、盗まれたと思い込んでいるからです。そこで、「まずは家の中を一緒に探そう」と声をかけましょう。また、一緒に探すうちに財布が見つかっても、ご家族の手から渡すのもNGです。 どうしてですか? ご家族から財布を渡すと、「盗んだ犯人だから財布の場所を知ってるんだ」と思い込みが強くなってしまうことがあるからです。「やっぱりあなたが犯人なんでしょ!」と言われてしまうかもしれません。なので、財布の場所がわかったら、ご本人が見つけられるようにそれとなく誘導するのがベターです。「物盗られ妄想」については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていて」 自宅にいるのに「家に帰りたい」と言われたときは、「ここが家でしょ」と否定するのではなく、「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていてね」と、認知症の人の世界観に合わせた返事をしましょう。もちろん、実際に車を呼んでいるわけではありませんが、「車を呼んでいるから」と言われれば認知症の人の気持ちが落ち着きます。不安な気持ちから「家に帰りたい」と言っているので、不安な気持ちを取り除くことが大切なんです。 事実を伝えるんじゃなくて、気持ちが落ち着くような言葉をかけるんですね。 認知症の方が「家に帰りたい」と言うときの対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「追い払っておいたよ」 認知症の影響で、幻視や幻聴が起こることがあります。壁紙の模様が虫に見えたり、「庭に知らない人が立っている」といった現実にはないものを見る症状です。そこで「虫なんてどこにもいないよ」などと返すのはおすすめできません。認知症の人にとって、「虫」や「知らない人」も存在していますから、それを否定するとさらに不安になってしまいます。 実際には見えないものなのに、どうやって対応したら良いんですか? 否定せず、世界観を合わせます。例えば「追い払っておいたよ」と言えば落ち着くかもしれません。それでも怖がっている様子があれば、「追い払っておくから向こうの部屋に行こうか」と場所を移動するのが良いでしょう。いずれにしても、幻視や幻聴の内容に合わせて対応すると、納得してくれることが多いですよ。幻視や幻聴の対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてくださいね。 認知症になってから、母が今までと大きく変わってしまって、思い通りにならないことが増えてきました。何をするにも時間がかかったり、トンチンカンなことを言いだしたり…。でも、それを責めるのはいけないことだったんですね。まずは母の感じていることを否定しないで話をするように心がけます。 否定・急かす・責める言葉などは認知症の人に言ってはいけない 言ってはいけない言葉をかけることで認知症が悪化することも 認知症の人の世界観に合わせた声掛けをしよう pre { margin: 40px 0; ...
2023/08/25
最近、認知症の父親が便を失禁するようになってしまいました。毎日のように下着が便で汚れていて、かなり参っています。 こういう場合って、区分変更をした方が良いのでしょうか?区分変更をしたら要介護度はいくつになりますか? (福井さん・パート・63歳) 「前と状態が変わったな」と感じたら、区分変更をおすすめします。ただ、要介護度は、心身の状況などから総合的に判断されるものなので、「便失禁をしたら要介護いくつ」と決まっているわけではありません。各要介護度の状態の目安はありますが、必ずしもその要介護度になるわけではないので、あくまで参考として把握しておくと良いですね。ご高齢者は便秘になりやすい傾向があり、便秘が便失禁の原因となることも。便秘を解消することが便失禁の予防につながることもあります。区分変更と合わせて便失禁の対策もうっていきましょう。 認知症の親が便失禁をするようになったら介護度はどうなる? 認知症の父が便を失禁するようになってしまいました。ほぼ毎日なので、汚れた服や布団を掃除するのが大変で…。このように父の状態が悪くなった場合、区分変更をした方が良いのでしょうか? おっしゃる通り、お父様の状態が変化しているので、区分変更するのがおすすめです。要介護度が上がる可能性がありますから。 やっぱり…。区分変更をした場合、要介護度はいくつになるんでしょうか? うーん。こればかりはなんともお伝えできません。というのも、「便失禁をしたら要介護いくつ」といったように、要介護度は決められていないからです。要介護度は、その方の心身の状態から介護の必要性を総合的に判断するものなので、明確に「この症状があったら要介護いくつ」という設定をされていないんですね。 そうなんですね…。父は今、要介護1なのですが、区分変更をして要介護いくつになるのかはわからないんですね。 今、はっきりとお伝えできないですね…。申し訳ないです。ただ、各要介護度の状態の目安はお伝えできますよ。以下の通りです。 要介護度要介護認定の目安状態の目安となる具体例自立支援が必要ない状態。一人で支障なく日常生活を送れる要支援1基本的に一人で生活ができるが、家事などの支援が必要。適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。掃除や身の回りのことの一部において、見守りや手助けが必要。要支援2基本的に一人で生活ができるが、要支援1と比べ、支援を必要とする範囲が広い。適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。身だしなみを自分だけでは整えられない、立ち上がりや歩行などでふらつく、入浴で背中が洗えないなど支援が必要な場面がある。要介護1基本的に日常生活は自分で送れるが、要支援2よりも身体能力や思考力の低下がみられ、日常的に介助を必要とする。排泄や入浴時に見守りや介助が必要。認知機能の低下がみられる。要介護2食事、排泄などは自分でできるが、生活全般で見守りや介助が必要。自力での立ち上がりや歩行が困難。爪切り、着替えなどにも介助が必要。「薬を飲むのを忘れる」「食事をしたことを忘れる」などの認知症初期症状がみられる。問題行動をとる場合もある。要介護3日常生活にほぼ全面的な介助が必要。食事、着替え、排せつ、歯みがきなど、日常生活において基本的に介助を必要。認知機能の低下によって問題行動をとる場合もある。要介護4介助がなければ日常生活を送れない。排せつ、食事、入浴、着替えなどすべてにおいて介助が必要。思考力の低下もみられ、認知症の諸症状への対応も必要になることもある。要介護5介助なしに日常生活を送れない。コミュニケーションをとることが難しく、基本的に寝たきりの状態。日常生活全般が自分でおこなえないため、寝返りやオムツの交換、食事などのすべてで介助が必要。会話などの意思疎通も困難。 この表もあくまで目安。便失禁について明確に触れているわけではないので、参考程度に考えてください。 状態が変わったら区分変更をしよう 実は、区分変更をしたことがないんです。父の状態が以前より悪くなっているのを感じるので、区分変更をしたいのですが、どんな手続きをしたら良いのでしょうか? では、区分変更の流れについてお話ししますね。 区分変更の流れ 区分変更の手続きは、介護認定を始めて受けたときと大きく変わりません。ただ、はじめに「介護認定申請」をしていたものが「区分変更申請」に変わるだけ。介護認定申請は、お住まいの地域の役所や地域包括支援センターでおこなったと思います。区分変更申請も同様で大丈夫です。担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーさんが申請を代行してくれることもあります。区分変更申請をした後は、以下のように介護認定と同じ流れで進みます。 要介護度が上がったら介護サービスを増やそう もし、区分変更の結果、父の要介護度が上がったら、利用できる介護サービスの量が増えるんですよね? おっしゃる通りです!要介護度が上がると介護保険が適用される金額が増えます。そのため、介護サービス費の負担が安く抑えられる量も増えるんです。 具体的には、どのくらい増えるんでしょうか? 在宅介護サービスの利用限度額は以下のとおりです。 要介護1で自己負担割合が1割負担の場合、16万7650円が利用限度額です。もし、要介護2に上がった場合、利用限度額は19万7050円になります。つまり、要介護度が上がると、介護サービスが1割負担で利用できるのが2万9400円分増えるということです。 3万円近くも多く利用できるようになるんですね!もっと介護サービスを使いたいと思っていたので、助かります。 在宅介護サービスの一覧 要介護度が上がって介護サービスの利用限度額が増えるんだったら、もっとデイサービスの回数を増やしたいです。 デイサービスを利用しているんですね!確かに、今、利用している介護サービスの頻度を上げるのはおすすめです。その他にも、利用していない介護サービスを追加するのもひとつの手ですね。 他の介護サービスというと、どんなものがあるんですか? 在宅介護サービスには以下のようなものがあります。 訪問介護 訪問看護 訪問入浴 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 夜間対応型訪問介護 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ(デイケア) 短期入所生活介護(ショートステイ) 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 福祉用具レンタル 介護リフォーム 例えば、ショートステイを利用するのはどうでしょうか?ショートステイは、1日から利用できる短期宿泊サービスです。排泄の介助はもちろん、栄養バランスの整った食事や、入浴といったサービスを提供しています。宿泊中のお父様のお世話はすべて任せられます。もし、便失禁のこともあって介護のストレスが溜まっていたら、ショートステイにお父様を任せて、数日リフレッシュするのも良いんじゃないでしょうか? 父を任せてリフレッシュなんて…。そんなことして良いんですか? もちろんです!もともと、ショートステイは介護をするご家族がリフレッシュするのも目的のひとつですから。ストレスを溜めすぎると福井さんの方が参ってしまいますから、適度に息抜きを挟みながら、介護を続けていきましょう! 施設介護サービスの一覧 もし、介護量が増えて在宅介護の継続が難しい、と感じるようになったら、老人ホームに入居することも検討してみてください。 老人ホームですか…。考えたこともなかったです。 一口に老人ホームと言ってもさまざまな種類があります。一覧にまとめましたので、老人ホームを検討することになったら、ぜひ参考にしてみてください。 民間施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ介護付き有料老人ホーム0~数千万円15~30万円要介護1以上○住宅型有料老人ホーム0~数千万円11~25万円自立~要介護3程度△サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円11~25万円自立~要介護1程度△グループホーム0~数十万円10~15万円要支援2以上◎ 公的施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ特別養護老人ホーム(特養)0円8~14万円要介護3以上○介護老人保健施設(老健)0円7~14万円要介護1以上○介護医療院0円7~14万円要介護1以上○養護老人ホーム0円0~14万円自立×ケアハウス0~数十万円6~17万円自立~要介護3程度△ 認知症の人が便失禁を予防する方法は? 要介護度が上がって、介護サービスを使う量を増やしたとしても、父の便失禁が続くなら介護が大変なままなんですよね…。どうにか、便失禁がなくなる方法はないでしょうか? そうですね…。確実になくなるとは言い切れませんが、以下のような方法が効果があるかもしれません。 排便タイミングを把握する 食事を整える 適切にオムツを使う 適切に下剤を使う 排便タイミングを把握する まずは、お父様の排便タイミングを把握してみましょう。お父様がお一人でトイレに行っているようであればいつ排便しているのか把握しにくいですが、排泄のタイミングはわかるはず。「いつもより長くトイレに入っているな」「今日はトイレの回数が多い」など、記録をつけているうちに、排泄や排便のルーティンが把握できると思います。 トイレのタイミングを把握するんですね。でも、それで便失禁がなくなるんですか? トイレのタイミングに合わせて、「そろそろトイレに行く?」と声掛けをすると、いつものタイミングを逃さず、トイレで排便できるようにするんです。また、食後にトイレに行く習慣を身につけるのもおすすめ。食後は腸の働きが活発になるので、排便しやすい時間帯です。そのタイミングでトイレに誘導すると、自然に排便しやすくなり、便秘による便失禁が減るでしょう。 食事を整える 食事量が少なくて便秘になっている場合、食物繊維を多く摂ることで便秘が解消され、便失禁も減ることがあります。なので、普段の食事で以下のような食物繊維が豊富な食材を取り入れると良いでしょう。 さつまいも 玄米 大豆 ごぼう 適切にオムツを使う 加齢によって肛門周辺の筋肉である肛門括約筋が衰える傾向があります。そのため、肛門がしっかり閉じられないために、知らず知らずのうちに便失禁をしてしまうこともあるんです。そうした場合、下着を汚してしまうので、オムツを使うのも検討してください。 オムツですか。まだ早いような気がするのですが…。 下着のような履き心地のショーツ型の紙パンツである「リハビリパンツ」もあります。リハビリパンツであれば、紙オムツよりもお父様の抵抗感が薄いと思いますよ。いろんな手を尽くしても、すぐにお父様の便失禁が100%なくならないかもしれません。そのため、少しでも福井さんの介護の負担を減らすためにリハビリパンツを利用するのをおすすめします。 適切に下剤を使う 下剤を使って便秘を解消することも、便失禁を予防することにつながります。ただ、ご高齢者は、若い世代よりも薬が効きすぎてしまうことが多いんです。便秘を解消しようとして下剤を使ったら、むしろ下痢になってしまった…ということも珍しくありません。 下剤の調整って難しいんですね。 そうなんです。なので、かかりつけ医などに相談しましょう。便秘で悩んでいるご高齢者はたくさんいらっしゃるので、すぐに薬を処方してくれると思いますよ。その際に、便失禁があることも伝えておくと、うまく薬の量を調整してくれるでしょう。 便失禁をしているから、要介護度がいくつ、と決まっているわけではない 区分変更で介護度が上がったら、介護サービスを増やして、負担を減らそう 排便タイミングを把握したり、適切にオムツを使って便失禁を防ごう pre { margin: 40px 0; background: #333; ...
2023/08/23
認知症が進んできたのか、母親がお風呂を嫌がるようになってしまいました。昔はお風呂が大好きだったのに、最近は月に1~2回しか入浴しません。 においもありますし、フケもすごいです。下着も替えておらず衛生的に良くないので、お風呂に入るように言うのですが、口を出すとものすごい勢いで怒りだして…。毎日、口論になるので疲れました。 どうにか母が入浴してくれる方法はないでしょうか? (鎌田さん・会社員・61歳) まずは、どうしてお風呂を嫌がるのかを考えてみましょう。認知症の方がお風呂を嫌がる理由には、「入浴の必要性がわからない」「入浴の方法がわからない」「裸になるのが恥ずかしい」などがあります。理由がわかったら、その対策を考えます。なかでも、適切な声掛けが大切。お母様がお風呂に入ったと思い込んでいる場合、「体が汚れているからお風呂に入ろう」と言っては逆効果。「お風呂に入っているから汚れていない!」と怒らせてしまう可能性があります。ご家庭での介助が難しい場合は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用して、介護のプロに頼るのもひとつの手です。 認知症の母がお風呂を嫌がるのはなぜ? 昔はお風呂が大好きだったのに、認知症のせいか母親が入浴を嫌がるようになってしまいました。最近は月に1~2回しかお風呂に入りません。そのため、髪の毛のフケがすごいし、においもすることがあって…。お風呂に入るように何度言っても耳を貸しません。どうにかお風呂に入らせる方法はないものでしょうか? それは衛生面で心配ですね…。お母様にお風呂に入っていただく方法を探す前に、どうしてお風呂を嫌がるのかを考えてみましょう。原因が分かれば、対応方法もわかるかもしれません。 確かにそうですね。どうして母はお風呂を嫌がるのでしょうか? お母様の状況を見ないとはっきりとしたことはわかりませんが、一般的に認知症の方がお風呂を嫌がる理由には以下のようなものがあります。もしかしたら、この中にお母様がお風呂を嫌がる理由に当てはまるものがあるかもしれません。 入浴の必要性がわからない 入浴の方法がわからない 入浴が面倒くさい お風呂に悪いイメージがある 裸になるのが恥ずかしい 介助がいらないと思っている 入浴する気分ではない 入浴の必要性がわからない 認知症の影響で、入浴する必要性がわからなくなることがあります。 どういうことでしょうか?何週間もお風呂に入らなければ、頭がかゆくなったり、においがしたりするものだと思いますが…。 それが、認知症になるとお風呂に入っていると思い込んでしまうことがよくあるんです。お風呂に入っているから体は汚れていないし、入浴しなくて良いと思ってしまうんですね。なので、頭がかゆくてもお風呂に入っていないことと結びつかないんですよね。それに、年を重ねると嗅覚がにぶることが多いので、ご自分のにおいに気がついていないのかもしれません。 お風呂に入っていると思い込んでるんだ…。それじゃあ、確かに「お風呂に入っていないから入って」と言っても耳を貸さないですよね。 入浴の方法がわからない 認知症の症状のひとつに、「実行機能障害」「失行」というものがあります。これらの症状のせいで、入浴の仕方がわからなくなっている可能性があります。 入浴の仕方がわからなくなることなんてあるんですか? そうなんです。例えば、実行機能障害とは、物事を順序立てて作業できなくなること。入浴の「1枚ずつ服を脱ぐ」「シャンプーで頭を洗って、シャワーで流す」といった作業もできなくなってしまうんです。また、失行はそれまでできていたことができなくなること。具体的には、体を洗うために何をしたら良いのかがわからなくなってしまったりするんです。 認知症になると、今まで当たり前にできていたのに急にできなくなってしまうことがあるんですね…。 入浴が面倒くさい 誰しもお風呂に入るのがめんどくさい、と感じることはありますよね。特にご高齢になると、体力も落ちてくるので疲れて入浴がめんどくさく感じることが増えているのかもしれません。 お風呂に悪いイメージがある お風呂で転んだり顔に水がかかるなど、嫌な経験を以前にしていると、悪いイメージだけが残ってしまって、入浴を嫌がることがあります。 でも、認知症になると物忘れが増えますよね?母もちょっと前のことでもすぐに忘れてしまいますし、嫌な経験をしていても忘れてしまうんじゃないですか? 確かに、嫌なことがあってもその出来事自体の記憶は忘れてしまうかもしれません。ただ、認知症の方は、出来事の記憶は忘れてしまってもそのときの感情の記憶は忘れにくいと言われています。なので、お風呂で嫌なことや恐怖を感じる出来事があると、嫌な感情だけが残っている可能性も。つまり、「なんだかわからないけど、嫌な感じがするからお風呂に入りたくない」と感じているのかもしれません。 裸になるのが恥ずかしい 「裸になるのが恥ずかしい」って、お風呂では裸になるのが当たり前じゃないですか? そうですね。でも、認知症の影響でお風呂がどういうところなのかわからなくなっていたらどうでしょうか?なんで裸になるのかわからず、服を脱ぐのを嫌がるのも自然なことですよね。 確かに…。「なんで服を脱がないといけないんだ」と不安になるかもしれません。 また、ご家族が入浴介助をする場合、家族は服を来ているのに自分だけ服を脱ぐのにも違和感があるのかもしれません。また、ご家族としては服を脱ぐのを手伝おうとしているだけなのに、「わけもわからず服を脱がされる!」と混乱してしまう可能性も考えられますよね。 介助がいらないと思っている 認知症の方の場合、入浴介助が必要なことがわからず、家族に手を出してもらいたくないのでお風呂を嫌がるケースがあります。「介助なんていらないのに、家族が手伝おうとしてくる」と、自尊心を傷つけられてしまうんですね。 あぁ、母にもそういうところがあるかもしれません。私が「手伝うよ」と言ったら、「手伝いなんていらない!」と怒鳴って、自分の部屋に閉じこもってしまったことがあります。あれは見栄を張っていただけではなくて、本当に自分が手伝いが必要なことをわかっていなかったんですね。 入浴する気分ではない 好きなテレビ番組を見ていたり、眠いときにお風呂に入る気持ちにはなかなかならないですよね。それは認知症の方も同じで、声をかけたタイミングが入浴したい気持ちになっていないときだったのかもしれません。また、お母様がお一人で入浴できていたときには、気が向いたタイミングやいつものルーティンでお風呂に入っていたのに、介助が必要になるとご家族の都合に合わせることが多くなるでしょう。となると、お風呂に入る意欲が低くなり、お風呂を嫌がる原因にもなります。 言われてみれば、私の手が空いたときに「お風呂に入ろう」と声をかけていたような気がします…。 お風呂に入りたくなるような声掛けとは? お風呂を嫌がる理由には、いろんなものがあるんですね…。いくつか思い当たることがありました。 お母様に当てはまりそうなものがあって良かったです。お母様にお風呂に入ってもらうために、特に気をつけていただきたいのが声掛けです。すんなり入浴してもらえたり激しく拒否されたり、認知症の方は声掛けひとつで大きく反応が変わるんです。 どんな声掛けをすれば良いんですか? 例えば、次のような声かけが効果的かもしれません。お風呂を嫌がる理由によって適切な声掛けは異なりますし、前に効果的だった声掛けで今回もすんなり入浴してくれるとは限りません。いろいろと試してみてください。 お風呂沸かしたからどう? 一番風呂だよ 温泉に入ろう 足湯に入ろう ちょっと高い入浴剤買ってきたよ 身体を温めよう シャワーで汗を流そう たまには背中を流そうか 友達の○○さんと会うからきれいにしておこう 明日は病院だからきれいにしよう ここで、「しばらくお風呂に入ってないから入ろう」「汚れているからきれいにしよう」といった声掛けはNGです。お風呂に入っていると思い込んでいる場合、「汚れていない!」と反発されてしまうことがあるからです。 それ、よくあります!「何日もお風呂入ってないだから、汚いよ」と言ったら「汚くない!」と怒鳴られてしまいました。良くない声掛けだったんですね…。 ご家族としては、清潔にしてほしいからそう言ってしまいがちですよね。他にも、水を怖がっている様子でしたら、足湯から始めてみるのも良いかもしれません。無理に全身を洗おうとせず、「足湯だけ」「体を濡れタオルで拭くだけ」としていくうちに、気持ちが良くなってお風呂に入りたくなるケースもあるんです。ものすごく汚れているわけでなければ、完璧を目指さないのも長く介護を続けていくコツですよ。 介護サービスを利用すれば負担が減る ご家族の負担を減らすために、介護サービスを活用してお母様にお風呂に入ってもらうのもひとつの方法です。 介護サービスっていろいろありますよね。どのサービスなら、お風呂の手伝いをしてもらえるんですか? 以下の介護サービスで入浴サービスを受けられます。もちろん、必要に応じて入浴介助もしてもらえますよ。 訪問介護 デイサービス デイケア ショートステイ なかでも、デイサービスは入浴をするために利用している方も多いですね。デイサービスは、介護施設に通って利用するもので、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを受けられます。体操をしたり体を動かす機会もあるので、運動不足の解消にもなると思いますよ。 母は家に閉じこもりきりなので、デイサービスを利用して、外出する機会を作るのも良いかもしれないですね。 入浴介助は介助のなかでも体力を使うものなので、介護サービスを活用してプロに頼ると、在宅介護の負担がだいぶ軽くなると思いますよ。 認知症によって入浴をしたと思い込んでいたり、羞恥心からお風呂を嫌がることがある 声掛けを工夫したり、安全な環境を整えることでお風呂に入りたくなることも 家族の介護が難しいときは、デイサービスや訪問介護などの介護サービスを活用して pre { margin: 40px 0; background: ...
2023/08/21
認知症を理由にデイサービスの利用を断られることってありますか? 認知症のお母さんを介護している知人が、デイサービスの利用を断られたそうです。私も父をデイサービスに通わせようと思っていたので、同じように断られてしまうんじゃないかと心配で…。 (岡崎さん・65歳・自営業) 「認知症だから」という理由で、デイサービスの利用を断られることはまずありません。というのも、「正当な理由なしに利用を断ってはいけない」と決められているからです。ただ、認知症の影響で、ほかのご利用者や職員さんに暴力を振るったり、暴言を吐くなどの行動があれば。断られてしまうかもしれません。加えて、認知症に関係なくデイサービスの定員をオーバーしてしまう場合なども断られることがあります。 認知症を理由にデイサービスを断られる? 認知症の父をデイサービスに通わせようと思っています。が、同じように認知症のお母さんを介護している知人から、お母さんがデイサービスの利用を断られたと聞きました。認知症であることを理由に、デイサービスの利用を断られることってあるんでしょうか? うーん、「認知症だから」という理由だけで断られることは基本的にはないですね。というのも「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と厚生労働省が定めているからです。どのような理由でデイサービスに断られたかご存知ですか? そこまではちゃんと聞きませんでした。デイサービスを断られたと聞いてショックだったので…。ちなみに、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」ということは、正当な理由があれば断れるということですよね?どんな理由で断られてしまうんでしょうか? 厚生労働省が正当な理由について、大まかな指標が示されています。断られてしまう理由について、お伝えしますね。 認知症の人がデイサービスを断られる理由 厚生労働省は、デイサービスの利用を断る正当な理由として、以下の3点を挙げています。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 引用元:厚生労働省 老健局「介護保険最新情報 Vol.920 令和3年2月8日」 認知症とは関係のないものもありますが、さまざまな理由を把握していただきたいので、順番にお話ししていきますね。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 「当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合」とわかりにくい表現をしていますが、つまりは「定員オーバー」の場合のことです。ちなみに「現員」とは、「現在の人員」のこと。要するに「現在の人員からこれ以上増えたら対応できないと考えられる場合」は利用を断っても良い、ということですね。 うーん、安全のことを考えたら、定員オーバーならしょうがないですね。 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 「利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合」というのも、ややこしい表現をしていますが、「サービス対象地域外の人は断っても良い」ということです。デイサービスでは、送迎の都合などでご利用者の居住地域を限定しています。そのため、その送迎エリアから外れているご利用者の利用を断るのは、正当な理由に当てはまります。 デイサービスは、利用者の家を順番に回って送迎してくれるんでしたっけ。それなら住んでいる地域を限定しているのはしょうがないことですよね。 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 認知症の症状が理由で利用を断られた場合、この「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」が当てはまるかもしれません。 どういうことですか? 「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」とは、簡単に言えば「その利用者に合った介護サービスを提供できない場合」ということですね。例えば、認知症の症状にデイサービス側が対応できないとき。認知症の影響で、帰宅願望が強くなってしまったり、不安感が強くて徘徊してしまったり…。利用開始する前に大まかな認知症の症状の聞き取りがあるので、その際にデイサービス側で対応できないと判断すると利用を断られることがあります。 なるほど…。父も落ち着かないときは家のなかをうろうろすることがあります。となると、断られてしまうんでしょうか? いえいえ、施設によってはさまざまな認知症の症状を持つ方を受け入れていることもあります。どういった状態であれば利用できるのかは、そのデイサービスごとに異なりますね。ただ、ほかのご利用者や職員さんへの暴力や暴言がある方の場合、かなり高い確率で利用を断られてしまうでしょう。 そうなんですね!父は暴力を振るったり暴言を吐く人ではないですが…。そういえば、知人のお母さんは暴言を吐くことがよくあるそうです。気持ちが高ぶっていると手が出ることもあると言っていました。 もしかしたら、暴力や暴言を理由にデイサービスの利用を断られたのかもしれませんね。やはり、デイサービスとしてもほかのご利用者や職員に危害を与える可能性のある方を受け入れるわけにはいきませんから。 認知症の症状が進行しているときは病院が優先 認知症の方が症状を理由にデイサービスの利用を断られる場合、介護サービスの利用よりも治療を優先した方が良いケースが多いんです。 それってどういうことですか? 介護のプロであるデイサービスから利用を断られたということは、認知症の症状が介護職員では手に負えない状態である可能性が高いということです。つまり、介護で認知症ケアをするのではなく、医療で認知症治療をするほど状況が深刻ということ。通院や入院による治療を優先した方が良い段階とも言えます。 なるほど…。認知症がひどい状態ならまずは治療を、ということですね。ちなみに、認知症の治療ってどんなことをするんですか? 認知症の治療方法には、以下のようなものがあります。 薬物療法 作業療法 運動療法 生活機能回復訓練 回想法 薬物療法 薬物療法とは、その名の通り、薬を使った治療方法のことです。実は、認知症を完治させる薬はまだ存在しません。そのため、認知症治療に使われているのは症状を抑える薬です。認知症の症状を一時的に抑えたり緩和したりすることを目的としています。 認知症の薬は父も使っています。 ちなみに、認知症治療に使われている薬にはいくつかの種類があります。現在、認知症の薬は以下の4種類です。 アリセプト® (塩酸ドネペジル) レミニール® (ガランタミン) イクセロンとリバスタッチパッチ®(リバスチグミン) メマリー®(メマンチン) 作業療法 作業療法って何ですか? 作業療法は、トランプやぬりえ、手芸といった頭や指先を使うものが多いです。レクリエーションのように楽しめるものが多いですね。他にも、音楽を聴く音楽療法や園芸療法といったものもあります。 運動療法 運動療法は、身体を動かすことで認知症の症状を抑える治療法です。例えば、体操や関節の動きを良くするストレッチやリハビリ、筋力トレーニングもおこないます。 生活機能回復訓練 「生活機能回復訓練」?耳慣れない言葉です。 日常の中でおこなう動作をリハビリすることで、認知機能の低下を抑制することが目的の治療法です。認知機能が衰えてくると、歯磨きやトイレでのズボンの上げ下げ、髪をとかす、といった何気ない動作ができなくなることがあります。そうなると、日常的に介助が必要になりますよね。そこで生活機能回復訓練を通して日常動作のトレーニングをして、自分で身の回りのことができるようになることを目的としています。 回想法 回想法は、認知症の方の記憶の特徴を生かした治療法。認知症の人は「最近の出来事を忘れやすい」一方で、「昔の記憶は忘れにくい」という特徴があります。そこで、その方の子どもの頃の写真や、思い出の品、当時流行した音楽などを使って昔のことを思い出してもらい、思い出を語ってもらうんです。そうすることで脳が活性化して、認知症の症状が緩和できるそうです。 へー、そんな治療法があるんですね。おもしろそう! 認知症デイサービスなら受け入れられるかも もし、一般的なデイサービスの利用を断られてしまっても、「認知症デイサービス」であれば受け入れてもらえるかもしれません。 「認知症デイサービス」? 名前の通り、認知症の方のためのデイサービスです。食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどをおこなうのは、一般的なデイサービスと共通。ですが、加えて認知症の方に合った作業療法や運動などもおこないます。さらに、認知症デイサービスの定員は最大12名。認知症の方は、人が多い環境や慣れない人とのコミュニケーションが苦手な傾向があるので、それに配慮して利用者数を制限しているのです。 なるほど。認知症の人に配慮したサービスや体制が整っているんですね。 そうなんです。それに、もちろん認知症の方が利用しているサービスですから、職員も認知症ケアの経験が豊富な人ばかり。なかには認知症ケアに関する資格を取得している職員もいるので、安心して通えるのが魅力です。 それはうれしいですね!認知症デイサービス、利用しようかな。 デイサービスと一口に言っても、認知症デイサービスのように認知症ケアに特化していたり、身体機能を回復するリハビリに注力していたりと、さまざまな特徴があります。お父様に合ったデイサービスを見つけてくださいね。 デイサービスは正当な理由がないと利用拒否はできない! 定員オーバー、送迎範囲外、認知症の症状に対応できない、などの理由で断られることも 認知症デイサービスであれば、重度の認知症の人を受け入れていることも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/08/16
認知症の義母と同居しています。最近、義母が夜中に起き出して家の中をゴソゴソと探しまわるようになりました。何度も布団に連れて行くのですが、それでも寝てくれなくて…。 私も夫も母が目を覚ます度に起きているので寝不足です。昼間は仕事があるので、体力的にもしんどくて。どうしたら寝てくれるようになるでしょうか? (小田さん・会社員・62歳) 認知症の影響や日中の活動量が低下することで体内時計が乱れて、ご高齢者が不眠になることがあります。そういう場合は、まず睡眠記録をつけて睡眠の状態を把握しましょう。そこから不眠の原因や傾向がわかる可能性があります。また、昼間に散歩をしたりデイサービスに通って身体を動かすことでほど良く疲れて夜に眠りやすくなることもありますよ。認知症の方が夜に眠らない理由はさまざまなので、まずは原因を見つけてそこから対応方法を探っていきましょう! 認知症の人が夜に寝ないのはなぜ? 同居する認知症の義母が寝ないので、一緒に起きていて睡眠不足です。私も夫も仕事があるので、体力的にしんどくて…。家の中で何かを探しているようにゴソゴソとして落ち着かないし、夜中に1人で外出しようとするので危なくておちおち寝ていられないんです。どうしたら夜に眠ってくれるようになるんでしょうか? うーん、そうですね…。ご高齢者が夜に眠らなくなる理由はさまざまです。理由に合わせた対応方法がありますから、まずは夜に眠らなくなった理由を考えてみましょうか。 夜に寝ない理由ですか…。年を取って眠りが浅くなるから、とかですかね? その可能性も大いにあります。「眠りが浅くなるため」も含めて、以下のような理由が考えられます。 眠りが浅くなるため 体内時計が乱れているため 日中の活動量が少ないため トイレの回数が多いため 食事をしたことを忘れているため 時間や場所がわからなくなったため 身体に痛みや不快感があるため 睡眠環境が整っていないため 「レム睡眠時行動障害」のため 眠りが浅くなるため 歳を重ねると誰しもが眠りが浅くなるのはよく聞く話ですよね。それに加えて、認知症の影響によっても眠りが浅くなりやすいんです。認知症の症状が進行している方だと、連続で1時間の睡眠も取れなくなってしまうこともあると言われています。 1時間も眠れないんですか!?認知症って眠りにも影響するんだ…。もしかしたら義母も認知症の影響で長時間眠れなくなっているのかもしれないですね。 体内時計が乱れているため 認知症の影響で、「概日リズム」、いわゆる「体内時計」が乱れやすくなることもわかっています。これは、認知症によって脳の機能が損傷することで体内時計の調整がしにくくなることが原因とされています。加えて、認知症になると社会参加や外での活動の機会が減ることで体内時計が乱れやすくなります。人は、学校や仕事、地域の人との交流といった活動を日中におこなうことで体内時計の調整をおこないますが、そうした機会が減ってしまうので体内時計の調整をする要因も減ってしまうんですね。 出かける予定が体内時計の調整に役立っていたんですね…。最近はほとんど家から出なくなっているからなあ。 認知症や社会参加の機会が減るなどの複数の条件が重なることで、体内時計が乱れて昼夜が逆転して夜に眠れなくなっている可能性もあるんですね。 日中の活動量が少ないため 認知症を発症していたり、介護が必要なご高齢者の多くは、日中の活動量が少ない傾向があります。活動量が少ないと身体が疲れないので、夜に眠気が起こりにくいんです。 確かに。昼間にのんびりする日が続くと、疲れていなくて眠りにくかった経験はありますね。母もずっと家の中にいますし、疲れないから寝付けないのかも…。 トイレの回数が多いため これはイメージしやすい原因だと思います。夜中に何度もトイレに起きてしまうことで、睡眠時間が減ってしまうんですね。それに何度も起きることで、寝付きが悪くなったり眠りが浅くなることもあるでしょう。 食事をしたことを忘れているため 「食事をしたことを忘れているため」って、どうして眠りと食事が関係しているんですか? 認知症の方には、夕食を食べたことを忘れて空腹を感じたり、「食事を食べさせてもらえない」という不安感から目が覚めて食べ物を探すことがあるんです。ご高齢者のなかには、過去の生活歴から「食事が食べられないこと」に強く不安を感じる方がいます。そういう方の場合、認知症の影響で食事を食べた記憶がなくなってしまうと、不安で寝付けなくなってしまうんですね。認知症の方が食事を忘れてしまうことについては、以前のご質問でもお答えしています。ぜひ参考にしてください。 時間や場所がわからなくなったため どうして時間や場所がわからなくなると、眠れなくなるんですか? 認知症の症状のひとつに、「見当識障害」というものがあります。今の場所や時間がわからなくなるという症状です。つまり、お母様に見当識障害があった場合、「目が覚めたら自分がいる場所も時間もわからない」状態ということに。とても不安になって眠るどころではないことは想像できると思います。 確かにそうですね…。私だったら、ここはどこなのか周囲を調べようとするかもしれません。 おっしゃるとおりです。お母様が落ち着きがないのは、そういう不安を感じているのかもしれませんね。また、目覚めた時間が深夜ということがわからず、昼間だと思って活動している可能性もあります。詳しいことは、お母様に直接お話を聞いてみるとわかるかもしれませんね。 身体に痛みや不快感があるため 身体に痛みやかゆみ、不快感が原因で寝付けなくなっていることも考えられます。ご高齢になると、身体の節々が痛んだり、皮膚が敏感になって肌荒れを起こしていることがよくあります。さらに、便秘になっていてそのお腹の張りが気持ち悪くて眠れないのかもしれません。ただ、認知症になるとそうした不快感に適切に対応できなかったり、ご家族に伝えられないこともあるんです。 睡眠環境が整っていないため 寝室が明るすぎる、暑い・寒いといった理由で睡眠状態が悪くなることもあります。 うーん、義母はそんなことを言っていなかったのですが…。それに、暑かったら掛け布団を減らしたり、寒かったら増やしたりして自分で調整していますし。 そうなんですね。でしたら問題ないかもしれません。ただ、認知症の進行によって、気温や明るさの調整ができなくなることがあります。こまめに気をかけてあげてくださいね。 「レム睡眠時行動障害」のため 「レム睡眠時行動障害」とは何ですか? レビー小体型認知症の症状のひとつです。アルツハイマー型認知症の方にはあまり見られません。人は、睡眠中に深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を繰り返しています。そのレム睡眠の間に大きな声を出したり、起き上がったりすることをレム睡眠時行動障害と言います。これも、認知症によって脳のレム睡眠に関わる部分が損傷することによって起こるとされています。 認知症の人が寝ないときの対応方法 認知症の人が夜に寝ない理由って、たくさんあるのがよくわかりました。いくつかは義母に当てはまりそうです。 眠れない理由に心当たりがあるものがあって良かったです。ここからはそれぞれの理由に対応した対策があるので、ご紹介していきますね。 睡眠記録をつける 日中の活動量を増やす コーヒーやアルコールなどを控える 身体の状態を整える 寝室の環境を整える 病院に相談する 睡眠記録をつける まずは、お義母さまの睡眠状態を把握するために、睡眠記録をつけてみましょう。 睡眠記録?どんなことを記録すれば良いんですか? 例えば、夜に布団に入った時間や、夜中に起きた時間、再び眠った時間、日中の活動の様子などです。しばらく続けているうちに、「昼寝をした日は夜中に起きている時間が長い」「お通じが良くないと、寝付けないのかも」など、睡眠の傾向がわかると思います。そこから、対策のヒントがわかるかもしれませんよ。 日中の活動量を増やす 日中の活動ってどうやって増やせば良いんですか? 例えば、散歩はどうでしょうか?適度な運動にもなりますし、日光を浴びることで体内時計の調整にもつながります。あとは、デイサービスを利用するのも良いでしょう。散歩をしているところもありますし、多くのデイサービスでは体操などの身体を動かすレクリエーションを取り入れていますよ。決まった時間に外出する機会を増やすことにもつながるので、規則正しい生活もしやすくなるでしょう。 コーヒーやアルコールなどを控える カフェインが眠りを妨げることはよく聞きますよね。合わせて、アルコールやタバコも睡眠状態を悪化させる効果があることもわかっています。 義母はお酒は飲まないですし、タバコも吸わないので大丈夫だと思います。でも、よく紅茶を飲むんですよね。それも影響しているのかも…。 紅茶やコーヒー、緑茶もカフェインを含みますから要注意ですね。まったく飲まないのは難しくても、夕方以降は飲まない、などのルールを決めると良いかもしれませんね。 身体の状態を整える 身体の痛みや皮膚のかゆみで眠れないようであれば、通院したり、かゆみ止めを塗ったりして治療をしましょう。また、排泄状況を把握して便秘への対策もすると、睡眠状態の改善につながるかもしれません。 病院に相談する 身体が激しく痛む様子やレム睡眠時行動障害が疑われる様子があったら、まずは病院で相談してみましょう。必要に応じて鎮痛薬や睡眠薬が処方されるかもしれません。ただ、「眠れないから」という理由だけで安易に睡眠薬に頼るのはNGです。高齢者は若い世代よりも薬の効果が出やすい傾向があるので、必要以上に薬が効いてしまうことがあるからです。 介護サービスを利用して負担を減らそう 在宅介護はご家族の負担が大きくなりがちです。そのため、介護サービスを上手く活用してできるだけ負担を減らしていきましょう。介護サービスを利用するには介護認定が必要ですが、お義母様は介護認定を受けていらっしゃいますか? 介護認定を受けてはいるのですが、介護サービスは利用していないんですよね。どんなサービスがあるかもよくわかっていませんし。 でしたら、介護サービスについてご紹介します。介護サービスには大きく分けて「在宅介護サービス」と「施設介護サービス」がありますよ。 在宅介護サービス 在宅介護サービスには、以下のようなものがあります。 訪問介護 訪問看護 訪問入浴 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 夜間対応型訪問介護 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ(デイケア) 短期入所生活介護(ショートステイ) 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 福祉用具レンタル 介護リフォーム 先ほどお話しした、デイサービスも在宅介護サービスのひとつです。デイサービスは、介護施設に通ってサービスを受けるもの。朝9時ごろにご自宅に迎えが来て、夕方ごろに自宅まで送ってくれます。体操や歌、クイズなど身体と頭を使うレクリエーションを積極的に取り入れている施設が多く、活動量を増やすにはピッタリです。また、日中の間、施設で預かってくれるので、安心してお仕事もできるでしょう。 なるほど、それは良いですね!利用してみようかな…。 施設介護サービス 施設介護サービスとは、以下の公的施設で受けられるサービスのことです。 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ特別養護老人ホーム(特養)0円8~14万円要介護3以上○介護老人保健施設(老健)0円7~14万円要介護1以上○介護医療院0円7~14万円要介護1以上○養護老人ホーム0円0~14万円自立×ケアハウス0~数十万円6~17万円自立~要介護3程度△ これらの公的施設は入居条件に要介護度が設定されていることが多いです。例えば、「特別養護老人ホーム」は要介護3以上でないと入居できません。 要介護3以上か…。義母は要介護2だったと思うので、入居できないですね。 でしたら、民間施設はどうでしょうか?入居条件に要介護度を設定していない施設も多いので、すぐに入居したい場合にはおすすめです。 民間施設というと、どんな施設があるんですか? 民間施設には以下のようなものがあります。 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ介護付き有料老人ホーム0~数千万円15~30万円自立~要介護5○住宅型有料老人ホーム0~数千万円11~25万円自立~要介護3程度△サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円11~25万円自立~要介護1程度△グループホーム0~数十万円10~15万円要支援2以上◎ 認知症の方におすすめなのは、「介護付き有料老人ホーム」とグループホームです。介護付き有料老人ホームは24時間介護職員がおり、日中は看護師も常駐しています。介護体制が充実しているので、看取りまで対応しているのが特徴です。グループホームは、認知症の方限定の施設。そのため、認知症ケアに特化しているのが特徴です。また、少人数でアットホームなので家庭的な雰囲気で過ごしたい方には合っているでしょう。 へー、介護施設と言ってもいろんなタイプがあるんですね。迷うな…。 もし、施設探しに迷った際には、ぜひ「いい介護 入居相談室」にお電話ください。さまざまな施設の知識を持った相談員が、お義母様に合った施設をお探ししますよ。 睡眠が浅くなる、活動量が少ないなどの理由で眠りにくくなっている 睡眠記録をつけたり、活動量を増やすと夜に眠りやすくなるかも 介護サービスを利用して、介護の負担を少なくしよう! pre { ...
2023/08/15
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。