ニュース
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社とシオノギヘルスケア株式会社は、「ガンマ波サウンド」の取り組みの強化の一環として、店内のBGMなどに利用する音楽配信サービスと業務用BGMアプリに「ガンマ波サウンド専用チャンネル」を開設。ガンマ波サウンドのオリジナル楽曲の2曲を配信するそうです。 「ガンマ波サウンド」とは、音によって脳に刺激を与えるサウンドのこと。ガンマ波サウンドによる脳の刺激は認知症のケアに役立つという研究結果が出ています。 「ガンマ波サウンド」とは 「ガンマ波サウンド」とは、脳の認知機能に影響を与える「40Hzの変調音」を組み込んだ音楽です。 米国でおこなった研究では、アルツハイマー病患者に40Hzでの感覚刺激を6ヵ月間与えたところ、アルツハイマー病の特徴である脳萎縮が軽減されたことがわかりました。この研究結果により40Hzのガンマ波は、アルツハイマー病による脳の萎縮の軽減と細胞の損傷を防ぐ効果があることがわかったのです。 音のある場所で認知症ケアを ピクシーダストテクノロジーズ株式会社とシオノギヘルスケア株式会社は、スマートフォンなどの個人のデバイスや公共の場でのBGMなど、「音」のあるさまざまな場所でガンマ波サウンドが聴ける環境を作る取り組みをおこなっています。ガンマ波サウンドが聞けるさまざまな場所で認知症ケアができる環境を作り、認知症問題の解決に挑むことを目指しているそうです。 同社は店内などに利用するBGMの配信サービスと業務用BGMアプリに「認知機能ケアを目指すガンマ波サウンド」という専用チャンネルを開設。また、ガンマ波サウンドのオリジナル楽曲を2曲作成し、2024年3月より専用チャンネルでの配信を開始しました。 音楽を聞くことで認知症ケアになるのは手軽で良いですね。自分でスマートフォンなどを操作して音楽を聞くのが難しい高齢者でも、街中で自然と流れている音楽なら聞きやすいでしょう。生活の中のさまざまな環境が認知症のケアや予防につながる取り組みが今後も広がると良いですね。 参考:「コグニート・セラピューティクス、6ヶ月間の独自のガンマ感覚刺激がアルツハイマー病患者の白質萎縮を軽減すると発表」 参考:「認知機能に作用する自然な音「40Hzガンマ波サウンド」を共通開発」(ピクシーダストテクノロジーズ株式会社)
2024/03/21
政府が「新たな国家プロジェクト」として、認知症への対策を打ち出すことを表明。対策を立てるために「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」という会議を開催し、認知症当事者やその家族、有識者などと意見を交わしました。 実際に介護が始まると、介護と仕事の両立に悩む人が多くいます。そこで、『幸齢社会』実現会議に参加した、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」の理事長は、小規模多機能型居宅介護の認知度向上と事業所の増加を提案しています。 小規模多機能型居宅介護とは、通い・宿泊・訪問の介護サービスが一貫して受けられるもの。夜間の訪問介護も対応できるなど、柔軟なケアを提供し、働きながら介護する家族や一人暮らしの認知症高齢者が使いやすい介護サービスです。この小規模多機能型居宅介護が増えることで、介護をする家族が仕事との両立がしやすくなるのではないでしょうか? 「『幸齢社会』実現会議」とは 政府が「新たな国家プロジェクト」として、認知症対策に注力していくことを表明。その具体的な方策を話し合う「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」の、第1回が9月27日に、第2回が10月12日に開催されました。 この会議は、認知症の人も含めたすべての国民が自分の個性と能力を発揮できる社会の実現を目的としたもの。大きく分けて「認知症理解の促進」「介護サービスなどの支援体制の整備」「認知症研究の促進」を中心に施策を打ち出していくとのことです。 高齢者の5人に1人が認知症に そもそも政府が認知症の対策に注力し始めた背景には、高齢化による認知症患者の増加があります。 内閣府の『高齢社会白書』では、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計が出ています。認知症の問題は決して他人事ではなく、自分自身や家族が発症するなど、すでに身近な問題になっているのです。 私たちが求める「幸齢社会」とは 私たちが本当に求める「幸齢社会」とはどんなものなのでしょうか? 幸齢社会を「認知症の人も含めたすべての国民が自分の個性と能力を発揮できる社会」と定義すると、認知症介護における心配事や不安点を解決することで、認知症の人やその家族も自分の個性や能力を発揮できる社会に近づけるのではないでしょうか。 では、現在、認知症介護で問題になっているのはどのようなことなのでしょうか。 もし、親が認知症になったらどんなことが起こる? 自分の親が認知症になったとき、もしくは認知症が進行して介護が必要になったとき、以下のようなことが頭をよぎるのではないでしょうか。 親が何もできなくなってしまうのでは 仕事と介護の両立はできるのだろうか 自宅が狭いから呼び寄せたくてもできない 徘徊して事故にあったりするかもしれない 一人暮らしで火事を起こしたらどうしよう 特に、働き盛りの世代の親が認知症になったとき、「介護と仕事の両立ができるのか」という不安はかなり大きいものでしょう。 不安なく介護と仕事の両立ができ、認知症の親が一人暮らしをしていても、子どもが安心して生活できる…こういった社会が「幸齢社会」にかなり近いと言えそうです。 政府の優先施策とのズレ 認知症介護には前述のような問題がある一方で、第2回の「幸齢社会」実現会議では「緊急的に対応すべき認知症関連・『幸齢社会』実現に向けた施策」が発表されました。つまり、政府として優先して取り組む施策が発表されたのです。 その内容は以下の通りです。 「共⽣社会の実現を推進するための認知症基本法」の施⾏準備に向けた都道府県・市町村の取組⽀援 認知症治療の新時代を踏まえた早期発⾒・早期介⼊、検査・医療提供体制の整備 「認知症・脳神経疾患研究開発イニシアティブ」の早期着⼿ 独居⾼齢者を含めた⾼齢者等の⽣活上の課題への対応 ⾼齢者などの消費者被害の防⽌ 参考:「緊急的に対応すべき認知症関連・「幸齢社会」実現に向けた施策」(首相官邸) 上記の施策からもわかるように、緊急に対応する施策として介護をする家族への支援が明示されていません。特に、介護と仕事の両立について積極的な支援はなく、各自治体の取り組みに任せる姿勢です。 もちろん、認知症治療の研究を推進することは重要です。しかし、認知症の人とその家族が今抱えている問題に注力しないのでは、「幸齢社会」の実現は遠いのではないでしょうか。 認知度の低い「小規模多機能型居宅介護」にスポットライトを 第1回「『幸齢社会』実現会議」では、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」の柴田理事長が以下の提案をし、小規模多機能型居宅介護が認知症介護の課題を解決する切り札になる、と述べました。 小規模多機能型居宅介護の認知度の向上、利用促進 自治体主体での小規模多機能型居宅介護の設置 小規模多機能型居宅介護とは 小規模多機能型居宅介護とは、「通い(デイサービス)」「宿泊(ショートステイ)」「訪問(訪問介護)」の3つの介護サービスをひとつの事業所で一貫して提供するサービス。24時間365日、回数の制限なく利用できることが特徴で、特に夜間帯に排泄介助や見守りが必要な人に便利なサービスです。 また、3つのサービスを同じスタッフから受けられるため、顔なじみのスタッフからケアを受けられるのも特徴。人の顔を覚えるのが苦手で環境の変化によって不安になりやすい認知症の人も、見知った顔のスタッフからケアを受けられて安心できるのが魅力です。 認知症が進行すると、昼夜問わず見守りが必要になることがあるため、家族だけでの介護には限界があります。そのうえ、仕事と両立するとなるとかなり厳しいでしょう。 そこで、小規模多機能型居宅介護が24時間365日の切れ目のないサービスを提供することで現在の認知症介護の課題を解決できるのでは、と柴田理事長は述べています。 小規模多機能型居宅介護の課題 柴田理事長は、小規模多機能型居宅介護には以下のような課題があると言います。 名前やサービス内容の認知度が低い ケアマネジャーからのサービス利用の提案が少ない 利用可能地域が限られている 名前やサービス内容の認知度が低い 「通所介護=デイサービス」「短期入所生活介護=ショートステイ」のような、わかりやすい通称が小規模多機能型居宅介護にはなく、覚えにくい名称です。さらに「小規模多機能型居宅介護」という名称だけでサービス内容がイメージしづらいのも認知度が低い理由のひとつでしょう。 ケアマネジャーからのサービス利用の提案が少ない 小規模多機能型居宅介護を利用する際は、これまでの担当ケアマネジャーから利用する小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーに変更する必要があります。これまで担当していたケアマネジャーにとっては「お客さんが減る」ことになるので、ケアマネジャーからのサービス利用の提案が少ないそうです。 ほとんどの人が、担当ケアマネジャーから提案を受けて介護サービスの利用を開始しているため、ケアマネジャーから小規模多機能型居宅介護の提案を受けなければ、その存在すら知らずに終わってしまうのです。 利用可能地域が限られている 小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービス。地域密着型サービスはその事業所がある市区町村の住民しか利用できないため、多くの人が小規模多機能型居宅介護を利用するには事業所数の増加が喫緊の課題なのです。 働きながら認知症の家族を介護をする人にとって、介護と仕事の両立はかなり差し迫った問題です。しかし、今回の「幸齢社会」実現会議では認知症の人を介護する家族への支援は後回しにされている印象が拭えません。 ”5人に1人が認知症”という時代が迫っている今だからこそ、小規模多機能型居宅介護の拡大のような、認知症の人やその家族の問題に直結する課題を優先して解決する必要があるのではないでしょうか。
2023/10/20
2023年8月30日、実用書を中心に出版事業をおこなっている株式会社クロスメディア・パブリッシングは、『1日が36時間になる日 家族が認知症になったら』を発売しました。 著者はそれぞれ、アルツハイマー型認知症の研究をおこなっているナンシー・メイスとピーター・ロビンズ。「認知症そのものを治すことはできなくても、当事者やその家族の生活の質を向上させることは可能だ」という考えのもと、適切な認知症ケアの方法を具体的な事例とともに本書に示しています。 日本で刊行される意義 認知症研究のスペシャリストが著した本書を日本で刊行する意義は絶大です。なぜなら、日本は世界で最も認知症を発症している人の割合が大きい国だからです。 総務省統計局の発表によると、2022年9月時点における日本の65歳以上の高齢者割合は29.1%で過去最多を更新したといいます。 また、日本の高齢化社会が進展するにしたがって、認知症有病者数も増加傾向にあることが判明。九州大学らの研究グループがまとめた「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年時点での認知症有病率は16.7%で、65歳以上の高齢者の6人に1人は認知症であることがわかったのです。 認知症を患っている高齢者の介護がもたらす、家族への負担は少なくありません。いざ、家族の誰かが認知症になったときに共倒れにならないためにも、正しい認知症ケアの方法を知っておく必要があります。 認知症ケアのハウツーを記述 今回発売された『1日が36時間になる日 家族が認知症になったら』では、家族が認知症になった場合のケアの方法や、認知症ケアがもたらす家族への負担を減らす方法などが具体的に記載されています。 特に、本書に特徴的なのは、認知症ケアをおこなう家族が抱く複雑な心理面についても言及していること。本書では、悲しみや怒り、絶望感などの負の感情にも向き合っていて、家族が認知症ケアを一時的に離れて心身を休ませることの重要性などを説いています。 また、日本では認知症ケアの相談窓口として地域包括支援センターが各自治体に設置されています。もし、認知症の介護で悩んでいる方がいたら、一度相談してみると良いかもしれません。
2023/09/11
高知県高知市で、認知症の人でも安心して暮らせる街づくりが進められています。今回は、位置情報を取得できるGPSを貸し出して、道に迷った場合でもすぐに捜し出せるようにしていくことなどを検討するとしています。 行方不明になった認知症の高齢者が相次ぐ 全国で高齢化が進行するのにともない、認知症になる高齢者の数も増加傾向にあります。それは高知県高知市も例外ではなく、およそ32万人が暮らす市内には1万7000人ほどの認知症の高齢者がいると推計されています。 高知市によると、2022年4~12月の間に「行方不明になった」と相談があった認知症の高齢者は58人に上るとのこと。そのうち3人は遺体で見つかったと言います。 こうした現状を受けて、高知市は認知症の高齢者が行方不明になることなく、安心して暮らせる街づくりを進めていくことにしたのです。 認知症の高齢者が安心して暮らせる街づくり では、どうすれば認知症の高齢者が行方不明になることを防げるのでしょうか? 国立長寿医療研究センターの担当者は「行方不明から9時間以上が経過すると発見率が下がる。いかに早期に発見できるかが重要だ」と指摘しました。 こうした意見も踏まえて、高知市は2023年6月7日に認知症当事者や医師、専門家などを集めた「認知症検討部会」を設置することに。位置情報を取得できるGPS端末の貸し出しや、認知症本人の持ち物に、市や警察署の連絡先が表示されるQRコード付きのシールを貼り付けることなどを検討するとしています。 また、認知症検討部会には警察や消防関係者も招き、行方不明者を捜索する体制も強化していく方針です。 地域包括支援センターの担当者は「認知症になっても安心して行きたい場所に出かけられる街づくりを進めたい」と話しています。 近い将来、65歳以上の高齢者のうち5人に1人は認知症になるという試算もあるように、誰もが認知症に無関係ではいられない世の中です。地域を構成するみんなで高齢者を見守っていく環境をつくっていきたいですね。
2023/05/30
2023年4月26日、2024年度に控える介護、医療、障がい福祉の同時改定に向けた意見交換会がおこなわれました。 厚生労働省は、その意見交換会でテーマのひとつとして認知症を提示。超高齢化社会で認知症の人がさらに増えていくことが見込まれる中、対応策を考えるねらいがあります。 認知症をテーマに取り上げる意義 厚生労働省の推計によると、2040年には約800~950万人が認知症の高齢者になると予測されています。これは、65歳以上の高齢者のうち4~5人に1人となる計算です。 また、高齢者の一人暮らしも今後増加を続けることが予測され、2025年には85歳以上の男性の約7%、女性の約14%が認知症を患いながら一人暮らしをする高齢者になる可能性があるとのこと。さらにこの割合は、2025~2040年の25年間に男性では約3倍、女性では約2倍に増えると試算されているそうです。 このように、今後はだれもが認知症とともに生きる可能性があるため、対策を今のうちに考えておく必要があるのです。 認知症の早期発見・早期対応が重要 意見交換会では、今後、議論すべき課題についての確認や検討もおこなわれました。 その中で、「単独の認知症高齢者が増加することが見込まれる中で、認知症の早期発見と早期対応ができる体制を構築することが求められる」という意見が挙がりました。具体的には、以下のように重層的な体制を構築する必要があるとしています。 日頃から、単独の認知症高齢者が社会参加活動をおこなえる地域づくり かかりつけ医による定期的な健康管理 医療機関や高齢者施設等で適切なサービスが提供されるための取り組み 介護の窓口となる地域包括支援センターと認知症疾患医療センターの連携 ほかには、「一人暮らしの高齢者は、情報の入手や必要なサービスにアクセスすることが困難になること、社会的に孤立するリスクが高まることなど多くの課題が残されている」という指摘などもありました。 認知機能が大きく衰えると、日常生活のちょっとした判断も難しくなります。認知症のある人が生きやすい社会にするために、お互いが協力できる地域づくりをしていきたいですね。 参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
2023/04/26
2023年4月3日、筑波大学はアルツハイマー型認知症を早期に検出可能なモバイルアプリを開発したと発表。発話された音声から認知機能障がいの特徴を分析できるとしています。 この研究は筑波大学の医学医療系とIBM Reserch社の研究グループによっておこなわれ、その研究成果は「Computer Speech &Language」という学術誌に掲載されています。 認知機能障がいを判定するアプリを開発 今回、研究グループはアルツハイマー型認知症や、その前段階となる軽度認知障がいを判定できるモバイルアプリを開発しました。 このアプリでは、従来の認知機能検査をもとにした課題に音声で回答することで、アルツハイマー型認知症や軽度認知障がいを患っている人に見られる特徴的な音声を検出できるとしています。 アルツハイマー型認知症を90%の確率で判定可能 アプリを開発後、健常者43人、軽度認知障がいがある46人、アルツハイマー型認知症がある25人を集めて、音声データを収集。認知機能障がいがある人に見られる言語的特徴を自動的に推定できるかどうかを検証しました。 その結果、認知機能障がいがあると変化する語彙力や発話の情報量などの言語的特徴を、アプリが正確に推定できることが明らかになりました。 また、対象者の話し方の特徴も組み合わせても、軽度認知障がいを88%、アルツハイマー型認知症を91%と高い確率で検出可能なことがわかりました。 研究グループは「このようなツールは認知症などの認知機能障がい以外にも、うつ病や統合失調症などの言語的変化をともなうような精神疾患にも転用できる。また、疾患の進行度や治療の効果の測定にも役立つだろう」と述べました。 調べるべき項目が多数あるため認知症の診断は難しく、多くの時間を費やします。今回のアプリのように簡単に認知症の診断ができるようになれば、より速やかに適切な支援につなげられそうですね。
2023/04/07
VRやメタバース技術の医療分野への転用などをおこなっている株式会社アルファコードと静岡大学は、メタバースと呼ばれる仮想空間内で、認知症の人に見えている世界観を再現するPX体験プラットフォームを開発したことを明らかにしました。 また、2023年3月15日にはこのプラットフォームの体験会も開催したそうです。 プラットフォームの体験会を実施 今回のPX(患者体験:Pacient eXperience)体験プラットフォームでは、体験者がVRゴーグルを装着することで、メタバース内で認知症の人の世界観を体験できるとのこと。具体的には、「スープに虫がいる」「いろいろなものが人の顔に見える」などの、脳の機能が低下することで見えてしまう幻視・錯視症状を体験できるそうです。 2023年3月15日には、実際に介護・医療従事者を招いてプラットフォームの体験会を実施。24人の医療職・介護職の人が参加しました。 この体験会に参加した人からは「言葉では認知症の人の症状は知っていても実際に体験したことはなかった。これは人材育成にも役立ちそうだ」など好評の声が聞かれたそうです。 また、このプラットフォームの開発を手がけた静岡大学情報学部に所属する石川翔吾氏は「認知症の方の症状を実際に体験することで、認知症の人をより深く知ることにつながるだろう」とコメントしました。 幻視、錯視について 今回のプラットフォームで体験できるのは、認知症の人が体験する「幻視」や「錯視」といった症状です。 では、「幻視」や「錯視」はどのようなものなのでしょうか? まず「幻視」とは、「自分のベッドで子どもが寝ている」など、実際にはそこに存在しないはずのものが見える症状のこと。幻視は、特にレビー小体型認知症を患っている人によく見られる症状です。 一方、「錯視」は「スープに入っている海苔がアリに見える」「壁のシミが人の顔に見える」など、あるものがほかのものに見えてしまう症状のこと。こちらもレビー小体型認知症の人がよく経験する症状だと言われています。 幻視や錯視は幻のようなものですが、本人にとっては「実際にそこにある」と思わざるをえないくらいリアルに見えるのだそうです。介護者はそれをむやみに否定せず、「危険のないものだから大丈夫」と幻視や錯視が見えている人を安心させることが大切です。 今回のプラットフォームが普及していけば、より親身に認知症の人のケアができるようになるかもしれませんね。
2023/03/31
新たな研究で、アルツハイマー型認知症による視覚障がいを抑制する、新たな脂肪酸が開発されたことが明らかになりました。 この研究は、イリノイ大学の研究グループによっておこなわれたものです。 認知症にともなう視覚障がいについて ミシシッピ州立大学に所属するケンドラ・ファロー氏によると、アルツハイマー型認知症にかかると、視力はまだ残っている状態でも周辺の視野が失われるなどの視覚障がいをともなうことが多いと言います。脳が侵されることで、視覚情報を処理できなくなるのだそうです。 また米国眼科学会によれば、アルツハイマー型認知症にともなう視覚障がいには以下の症状がよく現れると言います。 奥行きが知覚しにくくなる 文章が読みにくくなる 色の判別が難しくなる 新たな脂肪酸で視覚障がいの症状が軽減 研究グループは実験の中で、オメガ脂肪酸の一種であるドコサヘキサエン酸(DHA)の新しい型を発見したことを明かしました。 ところで、DHAというと魚やそれに由来するサプリメントに含まれるイメージがあるのではないでしょうか。ただ、それらに含まれている従来型のDHAでは、網膜まで届かないことがわかっています。 一方、今回研究グループが発見したDHAは網膜まで作用することが判明。研究グループがおこなったマウスを使った実験によると、マウスにこの脂肪酸を接種することで、網膜に存在する脂肪酸の量が増加し、視覚障がいの症状が軽減したことが明らかになったのです。 研究グループは今後、さらなる調査をおこなっていくとしています。 この研究がさらに発展し、人間にまで応用できればアルツハイマー型認知症にともなう視覚障がいの症状を緩和できるようになる可能性があります。今後の研究に注目ですね。
2023/03/30
新たに、アルツハイマー型認知症の診断精度を高められる可能性がある手法が開発されました。 この研究は慶應義塾大学によっておこなわれ、研究結果は「Neurology」というアメリカの医学誌に掲載されています。 認知症の誤診率は4割程度 アルツハイマー型認知症の診断を確定させるのは難しいと言われています。 アルツハイマー型認知症だと診断を確定させるためには、脳の一部を採取して、「アミロイドベータ」や「タウ」と呼ばれる異常なタンパク質が脳に蓄積していることを確認する必要があります。しかし、こうした検査は患者に大きな負担がかかるため、実際にはほとんどおこなわれていません。 では、どのようにアルツハイマー型認知症だと診断されているのでしょうか? 診断するためには、主に脳の萎縮具合を画像で見る頭部MRIや認知機能を測る認知テストなどが用いられています。その結果を精査して、総合的にアルツハイマー型認知症かどうかが判断されているのです。 しかし、それらはどれも決定的な検査ではないため、認知症の誤診率は4割程度に上るとも言われています。 こうした状況を改善する手がかりを見つけるために、慶應義塾大学のグループは今回の研究を実施することにしたのです。 2種類の画像診断で誤診を防ぐ 研究グループは、107人の研究対象者を、認知症がある42人、軽度認知障がいがある25人、認知機能が正常な人40人に分類。その後、それぞれの対象者に、脳に異常なタンパク質が蓄積されているかどうかが画像でわかるPET検査を2種類実施しました。 その結果、全体の35%に診断の変更があったことが明らかになったのです。 【PET(ペット)検査とは】がんなどの病変を検査する画像診断法のひとつ。「陽電子放射断層撮影法」を表す、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography)の略で、微量の放射線で目印をつけたブドウ糖を体内に投与してから専用のカメラで撮影するとがん細胞が光っているように表示され、がんの位置や大きさ、活動の状態を判断することができる。 研究前、軽度認知障がいがある25人のうち、23人は将来アルツハイマー型認知症になるリスクが高いと言われていました。 しかし、2種類のPET検査によって、25人のうち11人の脳内にはアルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドベータ」は検出されなかったことが判明。そのため、11人はアルツハイマー型ではない、別のタイプの認知症になるリスクが高いと診断が変更されたのです。 また、2種類のPET検査によって認知機能が正常な40人のうち4人にも脳内に「アミロイドベータ」が蓄積されていることが確認され、将来アルツハイマー型認知症になるリスクがあることがわかりました。 今回の研究をリードした伊東大介特任教授は「2種類のPET検査を実施することで、診断の精度が向上し、アルツハイマー型認知症の薬をより適切に使えるようになるかもしれない」としています。 これから認知症診断の精度が改善され、より迅速に認知症の人を支援につなげられるようになると良いですね。
2023/01/30
株式会社セブン&アイ・フードシステムズは、これまでデニーズ数店舗で開かれていた「認知症本人ミーティング」を、さらに多くの店舗で実施することを明らかにしました。 セブン&アイ・フードシステムズによると、千葉県千葉市、東京都大田区、埼玉県川口市とふじみ野市、愛知県瀬戸市にあるデニーズの店舗で、新たに「認知症本人ミーティング」を順次実施するとしています。 認知症本人ミーティングとは ところで、「認知症本人ミーティング」とはどのような会議なのでしょうか? 厚生労働省によれば、認知症と診断された、または認知症疑いのある本人たちが集まり、自らの体験や必要としていることを地域の人や支援関係者、行政などに伝える場が「認知症本人ミーティング」だとしています。 そして、認知症本人ミーティングに参加した人たちは、認知症本人が発信した意見を踏まえた地域づくりを目指していきます。 認知症本人ミーティングでは、認知症本人が話し合いたいテーマが議題となります。例えば、以下のようなテーマがよく話し合われます。 認知症になって、どんな体験をしたか 認知症の人が安心して外出するために、町ができることは何か 今の生活で困っていること 自分がこれからしてみたいこと 以上のようなテーマを1回だけでなく、何回も話し合って理解を深めていきます。 デニーズが本人ミーティングを始めた経緯 デニーズは、2019年7月からほぼ全店舗で認知症サポーターを配置。店舗で認知症の人やその家族のサポートをおこなってきました。 その後、東京都千代田区の提案で認知症本人ミーティングを店舗でおこなったことを皮切りに、大阪府、埼玉県など全国各地の店舗でも実施するようになったそうです。 認知症本人ミーティングは、認知症の人が周りの人に伝えたいことを発信できる貴重な場です。さらに多くの地域に広がって、地域と一体になって認知症の人へのサポートができたら良いですね。
2023/01/30
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。