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大人に代わって家族の世話や介護をする子どもを指す「ヤングケアラー」。ニュースなどで取り上げられるようになりましたが、その支援体制はまだまだ整っているとは言えません。 そこで、厚生労働省は今月14日にヤングケアラーの支援に関するマニュアルを公表。学校や自治体が連携してヤングケアラーに支援ができるよう、対応事例なども公開しています。 ヤングケアラー支援マニュアルが公開 今月14日、厚生労働省はヤングケアラーの支援に関する対応マニュアルを公表しました。 このマニュアルは、ヤングケアラーの発見の流れやヤングケアラーの負担を軽減するサービスなどを紹介。加えて、自治体や学校などの関係機関の連携の必要性を指摘しています。 例えば、精神疾患を持つ母親を介護する子どもの場合、子どもが通う学校に加えて行政の障害福祉部門などの支援が必要。しかし、それぞれの機関が各々で対応をしていると、ヤングケアラーへの支援が不足してしまう可能性があります。 加えて、ヤングケアラーがおかれている状況はさまざま。特にヤングケアラーが自身の問題に気が付いていないことも多いため、総合的に把握してケースに応じた支援を検討する必要性があるそうです。 こうしたヤングケアラーの現状に対してマニュアルでは、主体となる機関や部署を決めてコーディネーターを配置することを提言。担当者が多いと対応方針がぶれるおそれがあったりスムーズな情報共有が難しくなることから、機関を横断して調整するコーディネーターを配置することを対応策として紹介しています。 子どもが望む道に進めるように ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちが抱える問題は、本人の将来にまで影響することもあります。 例えば、家族の介護で時間を取られるために学校の遅刻・早退が増えるようになり、それによって同級生となじめなかったことが大人になっても心の傷として残ることもあるそう。さらに、勉強する時間が取れないために、進学をあきらめる子どもも少なくありません。 しかし、ヤングケアラーの発見が難しい理由には、本人に自覚がないことに加えて「家事を手伝う良い子」という思い込みを周りの大人がしてしまうこともあります。そうして発見が遅れることで、状況が深刻化して、後の人生にまで影響を与えてしまうのです。 そうなる前にヤングケアラーを救えるように、今回のマニュアルを参考にして学校や自治体などの機関が連携して支援体制を整えて欲しいですね。
2022/05/17
家族の介護をしていると、「なんで介護が上手くできないのか」など思い悩むことがあるかもしれません。 なかでも男性の介護者は、孤立しやすい傾向があることがとある調査でわかりました。 この調査は、山梨県がおこなったもので介護のために孤立していると思われる男性が65%に上ることが明らかになっています。 男性は孤立しやすい? 山梨県が昨年におこなったアンケート調査によると、介護のために孤立していると思われる男性介護者が65%に上ることがわかりました。 この調査は、男性介護者の支援に取り組む「山梨やろうの会」に委託して実施されたもの。ケアマネジャーや要介護1以上の家族を介護している男性にアンケートをおこないました。 ケアマネジャーへは、担当している男性介護者のなかに介護のために孤立していると思われる人がいるかどうかを聞き取り。「現在、担当している」と回答したのは38.5%、「以前、担当していた」は26.6%となり、合わせて65.1%という結果になりました。 さらに、孤立している原因について最も多かったのは「1人で抱え込む」の62.4%。「弱音を言わない」が44.1%と続きました。 また、男性介護者の63%が60歳以上。全体の61%が仕事と両立しながら介護をしているそう。男性介護者からは「ストレスが溜まる」「仕事との両立が大変」といった声も挙がっているとのことです。 この調査結果を受けて山梨県は、本格的な支援をおこなうために6月補正予算に経費を計上。ケアマネジャーなどが企業などを訪問して相談に応じたり、悩みを共有できる場を設けるなどの支援策を早急に検討するとしています。 ”介護者”を支援できる環境を 現在、家族の介護をしている男性の多くが、長年、会社勤めをしてきた人が多い世代。そのため、地域とのつながりが希薄で近くに悩みを相談できる人がいないのかもしれません。 しかし、男性だからといって一概に同じ悩みを持っているというわけではありません。 特に、介護は一人ひとりの要介護者の状況が大きく異なるもの。つまり、介護者の状況も大きく異なるのです。 だから「男性だから孤立しやすい」「女性だから孤立しにくい」と性別によって課題を区別するのではなく、その人自身に寄り添ったサポートが必要になるのではないでしょうか。 介護者の支援をおこなう際は、女性や男性の区別がなく、同じ「介護の悩みを抱える人」が相談し合えるような環境づくりが必要なのかもしれません。
2022/05/16
高齢化に伴って認知症の人は増加しています。今後、さらに増加することが見込まれており、2030年には「65歳以上の高齢者の2割以上が認知症になる」という予測も出ています。 ということは、認知症を持ちつつも自宅で暮らす高齢者も増えていくことでしょう。そのため、さまざまな自治体や企業で認知症の人の暮らしを支えるサービスや取り組みを実施しています。 例えば日本郵便の信越支社では、長野県北信地域の全107局に認知症についての研修を受けた局員を配置。新潟県燕市では、認知症の人やその家族を「認知症初期集中支援チーム」が支援をおこなうそうです。 地域で認知症の人の暮らしを支援 日本郵便の信越支社は、北信地域にある107局すべてに認知症に関する研修を受けた郵便局員を配置したことを明らかにしました。 この局員は、自治体の職員がおこなう研修を受けており、認知症の症状についてや接客などの応対方法を学んだそう。この10年ほどで約300人が研修を受けたため、今月1日からは北信地域の全郵便局に研修を受けた局員を配置できるようになりました。 局員たちは研修で得た知識を生かして、認知症の人の資産管理について相談を受けたり高齢者に異変があったときに行政に情報を提供できるようにするそうです。 こうした認知症の人を支える取り組みは、自治体でもおこなわれています。 その取り組みをしているのは、新潟県燕市。医師や看護師、介護士などの専門家による「認知症初期集中支援チーム」が、認知症の人やその家族を支援しています。 この取り組みでは、おおむね6ヵ月の「初期集中支援」を実施しています。 初期集中支援では、まず支援チームが家庭訪問して「施設に行くことを拒否する」「認知症の薬を飲まない」といった現状や「犬の散歩をするのが楽しみ」といった毎日の習慣についてを聞きながら、本人や家族から今後の生活の意向を確認します。 そして、必要であれば介護サービスの利用を勧めたり、本人や家族の負担が減るような暮らしに変わるような支援をしています。 認知症の人を支える取り組みが拡大中 郵便局や自治体など、身近なところで認知症の人へのサポートをしてくれると、本人も家族も助かりますよね。 このような取り組みは、「認知症バリアフリー宣言」をした一般企業でもおこなわれています。 「認知症バリアフリー宣言」の詳しい取り組みについては、以下の記事で紹介していますよ。 https://e-nursingcare.com/guide/news/news-7564/ 認知症を抱えながら自宅で生活する場合、認知症の人もその家族もどうしたら良いかわからずすれ違ってしまうことが多くあります。そこで、認知症の知識を持った人が支援してくれるとお互い落ち着いて暮らせるようになるかもしれませんね。
2022/04/18
全国で「認知症カフェ」が拡大しています。2019年時点で全国に約8000ものカフェが開設されており、ほとんどの市町村で開催されているようです。 そのなかでも大分県中津市では、ちょっと珍しい「移動型の屋外認知症カフェ」が開催されています。多くの認知症カフェが公民館などの公共施設を活用していますが、この屋外型のカフェはスペースがあれば出張もしているそうです。 認知症カフェの方からやって来る 中津市社会福祉協議会が運営している「ストリートオレンジカフェみなと」は、屋外型認知症カフェです。 認知症カフェとは、認知症の当事者やその家族、地域の住民などが集まって交流する場。アクティビティをしたり、介護相談をしたり、認知症についての知識を深めたりとそのカフェによって内容は異なります。 ちなみに、オレンジカフェみなとの開催場所は固定ではなく毎回変わるそう。というのも、テントと駐車場スペースが確保できれば開催できるので、いろんな場所で出張開催もしているからです。 このカフェが移動型になったのは、遠くまでの移動が難しい人も気軽に来てほしいという思いからだそうです。 2021年12月時点で、中津市内には同社協が開設しているものもあわせて12の認知症カフェがあります。それでも「足を運ぶには遠い」という声や近くに集いの場がない地域があると、カフェの方から出向いていきます。 ちなみに、カフェの参加費は100円。オレンジカフェに参加するともらえるスタンプがたまる「オレンジスタンプカード」を作成しており、楽しみや目的を持って参加できるように工夫しています。 高齢化の進行で需要が拡大? 認知症カフェは、「認知症の当事者やその家族が地域の人たちや専門家と情報を共有できる場所」として厚生労働省が推進している活動です。 家族や自分に介護が必要になったとき、初めてのことで本人も家族も不安になるもの。特に認知症の初期段階では、本人も「何かおかしい」と感じて不安になることが多いそうです。 しかし、軽い症状では介護サービスを受けられないことも。そこで、認知症カフェに立ち寄ってみて、専門家に相談したり同じ認知症の人と交流してみることで、解決策が見つかることもあるかもしれません。 こういった「介護サービスを利用できるかわからない」というグレーゾーンの人は、高齢化が進むにつれて増えていくでしょう。 認知症カフェは、そういった人やその家族が気軽に悩みを相談できる場所のひとつとして活用されていくと、もっと認知症の人が暮らしやすい環境になっていくかもしれませんね。
2022/03/15
看護師が24時間常駐している場合でなければ、多くの介護施設で看護師のオンコール体制をとっています。 このオンコール体制とは夜間帯に何かあったときのために、看護師が自宅で待機すること。しかし、深夜に電話がかかってきたり負担がかかるため、オンコール対応が必要な施設では看護師の求人に応募が少ないという問題があったそうです。 そうした問題に応えたのが、夜間オンコール代行サービスを提供するドクターメイト社。すでに400以上の施設で導入されており、8000件のオンコール実績に到達したとのことです。 オンコールは大きな負担に 特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどに特化した夜間オンコール代行サービスを提供しているドクターメイト社。今回、そのオンコール実績数が8000件を超えたそうです。 この夜間オンコール代行サービスとは、同社の看護師が施設の看護師の代わりにオンコールに対応するサービスです。 このサービスを導入することで、看護師の負担が減って退職を思いとどまったり、「オンコールなし」で採用を出せるため、求人応募が増えたという事例もあるそうです。 多くの介護施設では、看護師は夜間オンコールで自宅待機しています。夜間帯に入居者の異変があった場合に、救急車を呼ぶのかを看護師が判断するためです。 しかし、オンコール当番になった場合、深夜に連絡が入ることもあるので「いつ電話が鳴るかわからない」と不安を感じることも。また、介護スタッフも看護師の負担が大きい状況を知っているため、「オンコールしづらい」といった声もあがっています。 この夜間オンコール代行サービスでは、同社の看護師が常に待機しているため、施設の看護師の負担がなくなります。さらに介護スタッフも気兼ねなくオンコールできるため、入居者のちょっとした変化でも看護師の指示を仰げるようになった施設もあるそうです。 加えて、「オンコールレポート」を対応後に施設へ送信。介護職員の書類作成の手間が省けて、業務負担の軽減につながっているそうです。 新しいものにも目を向けてみると… 対応する看護師も、夜勤の介護職員にもオンコールの負担は大きいものです。 もちろん、利用者に何かあった場合を考えれば待機する必要があるのですが、オンコール担当を同じ看護師がおこなって負担が偏っているという問題もあるようです。 そこで、こういったサービスがあると負担が減って助かりますよね。 「オンコールは施設の看護師がやるもの」と考えてしまいがちですが、ちょっと考え方を変えて新しいサービスに目を向けてみるのもいいかもしれませんね。
2022/03/10
先月28日、自民党による新型コロナウイルス対策に関するヒアリングがおこなわれました。 そのなかで、介護事業者の団体である「全国老人福祉施設協議会」は、在宅系サービスに対する支援の強化について言及しました。 特にデイサービスでは「利用控え」によって稼働率が下がって経営状態が悪化。経営の補填などの要望をしました。 在宅サービスにも施設と同等の支援を 先月28日におこなわれた「自民党社会保障制度調査会介護委員会」では、特別養護老人ホームの経営者の組織である全国老施協が新型コロナ拡大で苦しむ介護現場の現状と支援の要望を訴えました。 そのなかで在宅系のサービスに対する支援に触れています。 現在、デイサービスではコロナ以前と比べて1割ほど稼働率が低下しているそうです。 というのも、利用者が感染した場合には、感染防止のために休業をせざるを得ないから。加えて、同居家族に濃厚接触者がいる場合には、利用を控えてもらっているとのことです。 そのため、このようなデイサービスの「利用控え」が起きている場合に、飲食店のような補償を要望しています。 さらに、在宅系サービスも施設系サービスと同等の支援を求めています。 例えばワクチン接種について、施設系サービスの職員は優先対象となりましたが、在宅系サービスの職員は対象となりませんでした。 在宅系の職員も「外部との接触がある」「系列施設の応援に入ることがある」など、施設系職員と変わらず感染リスクが高いため、ワクチンの優先接種対象にするように訴えています。 在宅サービスの経営に大きな打撃 施設系のサービスだけでなく、在宅系サービスにも新型コロナは大きな影響を与えています。 特にデイサービスは、利用者が24時間いる介護施設とは異なり、休業を余儀なくされることがあります。加えて感染者が利用を一時停止したり、感染予防のために自主的に利用を控える人もいるそうです。 そのような理由から、収入が減少して経営状態が悪化している事業者も多くあります。 また、在宅サービスの方が施設サービスの職員よりも感染リスクが低いことはないでしょう。そのためサービスの種類で支援を差別してしまうと、現場の職員が理不尽に感じてしまう可能性もあります。 新型コロナに立ち向かうためにひとりでも多くの人員を確保するべき時期なのに、負担だけが増えて、このままでは職員の離職が増えてしまうかもしれません。
2022/03/03
先月28日に東京大学の研究グループが、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査 2021」の分析結果を発表しました。 これは、2007年から15年間にわたって継続しておこなわれている調査で、健康や介護、雇用などについてアンケートを取っています。 それによると、家族の介護をしている女性はそうでない女性に比べて労働時間が短くなる傾向があり、精神的な健康に悪影響が出ていることがわかりました。 一方で家族の介護をしている男性は、していない男性と比べて大きな違いはなかったとのことです。 仕事と健康に影響があるのは女性だけ? 東京大学の研究グループが発表したのは、15年間にわたって継続してきた「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の分析結果です。 これは、若年世代(20~34歳)と壮年世代(35〜40歳)の男女にアンケートを取ったもの。雇用や介護、健康などについて調査しています。 「誰が介護をしているのか」については、主に壮年世代の女性が介護を担っていることがわかりました。 詳細はこちらの記事に記載しています。 https://e-nursingcare.com/guide/news/news-6502/ 加えて、研究グループは介護と仕事・健康の関係を調査。仕事と健康のどちらについても、女性にのみ影響を与えていることがわかっています。 具体的には、家族の介護をおこなう女性はそうでない女性よりも就業率が平均5%低下。月の労働時間は5時間短くなっていました。 そしてメンタルヘルス(心の健康)は、介護をおこなっている女性の方が数値が悪い結果となりました。 今回のアンケートでは、介護の有無については調査しているものの、量や質については確認していません。そのため「(今回の調査ではわからなかったが、)男女で介護の量や質が異なる可能性がある」と研究グループは述べています。 女性の社会進出が進んでも… 2000年にできた介護保険制度から2017年の時点で、居宅サービスの利用者は約3.8倍、施設サービスの利用者は約1.8倍になっているそうです。 これによって、介護は「家族がするもの」から「社会全体で担っていくもの」という認識が広まりつつあります。 しかし今回の研究結果から、女性に介護の負担が偏り、健康や就業に悪影響が出ていることが伺えます。 ちなみに、2021年の女性(20~69歳)の就業率は約80%。この数字と合わせて今回の調査結果を考えると、介護と仕事の両面で女性の負担が増えている可能性もあります。 「介護離職」という言葉が注目されている昨今、この男女の介護負担の差を小さくしていく努力が必要なのかもしれません。
2022/03/03
先月28日に自民党は、新型コロナウイルス拡大に関する介護事業者への支援策について、介護事業者に聞き取りをおこないました。 そのなかで全国老人福祉施設協議会は、介護施設でのクラスターが多発している背景には、医療体制が整っていない状況で感染者の施設内療養をおこなっていることにあると訴えました。 そのため、利用者が感染した場合は入院を原則とする旨や、医療支援の拡充など要望しました。 医療支援が足りない! 先月28日におこなわれた「自民党社会保障制度調査会介護委員会」で、介護事業者の各団体にヒアリングが実施されました。 その出席団体のひとつ、特別養護老人ホームの経営者で組織する全国老施協は、介護施設で入居者の感染が発覚した際の対応について言及。現在の問題や支援の拡充を訴えました。 まず、入居者が感染した場合は「入院対応を原則」とすることを要望しています。 施設の医療体制では、夜間帯は医師・看護師が不在となるため急変に対応ができません。また、感染対応によって普段と施設の雰囲気が変わることにより、認知症の利用者が不穏になるなど、通常時よりも他の利用者へのケアが増えるそうです。 つぎに、やむを得ずに施設療養となった場合の支援の拡充を挙げています。 厚生省は、自治体が施設療養を指示する際の医療体制などの条件を設けています。しかし実際には、約半数の施設でそれが満たされていないとのことです。 この条件とは「医療・ケアにかかわる人員体制の支援」「感染拡大防止対策に関する専門家の派遣」「必要物資などの共有」などの療養体制のこと。しかし、自治体からの支援が行き届いていないのが現状だそうです。 こうした状況があり、介護施設でのクラスターが多発していると全国老施協は訴えています。 施設クラスターが収まらない… オミクロン株が拡大してから、高齢者施設でのクラスター発生のニュースを数多く聞くようになりました。現在、新規感染者は減少傾向にあるものの、油断はできない状況です。 今回の全国老施協の要望を知ると、いかに介護施設が体制の整っていない状況で戦っているのかがよくわかりますね。 連日報道されているように、現在は病床がひっ迫しています。そういった状況だと、病院としても施設の感染者を受け入れられないのはわかります。 しかし、施設療養をするにしても、医療スタッフや物資が足りない状況では施設での対応は難しいでしょう。 こうした点は介護事業者では解決しにくい問題です。自治体が積極的に介入しないと、介護施設のクラスター数はなかなか減らないのかもしれません。
2022/03/03
「介護離職」という言葉が近年注目されているように、家族の介護をすることは多くの働いている人にとって負担が大きいものです。 そこで人材サービス大手のアデコが、介護中や介護の経験がある管理職にアンケートを実施。介護と仕事の両立について調査しました。 その結果、管理職の約5割が「介護を理由に退職を考えたことがある」と回答。また6割以上が「介護休暇などの制度を利用しづらいと感じたことがある」と答えました。 多くの人が介護離職を考えている 人材派遣などのサービスを展開しているアデコが、「介護と仕事の両立に関する調査」を実施。全国の部長クラス以下で部下のいる管理職の会社員600人を対象にアンケートを取っています。 ちなみに、アデコは同様の内容のアンケートを2017年にも実施しており、今回が2回目の調査です。 この調査によると、介護中もしくは介護を経験したことのある管理職の約48%が「介護を理由に退職を考えたことがある」と回答しました。 その中でも、介護のために会社を休んだことのある人の約60%が「介護を理由に退職を考えたことがある」と回答。休んだことのない人は、約25%にとどまっています。 このことから同社は「会社を休む必要があるほど介護の負担が大きいと、離職するリスクが高まることがわかる」としています。 また、「介護休暇などの勤務に関する制度を利用しづらい」と回答したのは約65%。2017年の調査では約63%だったため、状況の改善はされていないようです。 「制度を利用しづらい」と思った理由に関しては「自身の業務に支障が出るため」という回答が最も多い結果に。ここから制度が整備されていないわけではなく、「管理職の意識とマネジメントスキルが不足していることが、制度利用の障害となっていることがわかる」と述べています。 企業の”休みにくさ”があらわに 今回の調査から、介護離職が問題となっている背景には、制度の整備不足よりも利用する本人や業務を調整する管理職の意識とスキル不足があることが伺えます。 介護休暇などの制度については、2017年に改正がおこなわれて制度の周知が企業側に課されるといった改善がおこなわれています。 しかし今回の調査で、制度が拡充されていても「業務の調整が難しい」ことが介護離職につながることがわかりました。 これは介護離職だけの問題ではなく、人材の活用という点でさまざまな影響のある問題です。 高齢化がますます進んでいく日本では、働きながら家族の介護もできるような仕組みづくりが緊急の課題と言えます。
2022/03/02
東京大学の研究グループが、2007年から毎年実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」についての分析結果を発表しました。 それによると、家族の介護をしている人は若い世代よりも壮年世代の方が多く、男性よりも女性の方が多かったそうです。 年代、性別、コロナ禍で介護の状況が変化 先月28日、東京大学の研究グループが、2007年から15年間にわたって続けている「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の分析結果を公表しました。 これは、若年世代(20~34歳)と壮年世代(35〜40歳)の男女にアンケートを取ったもの。雇用や介護、健康などについて調査しています。 それによると、2021年では壮年女性の約16%、壮年男性の約4.8%、若年女性の約5.4%、若年男性の約3.3%が家族の介護をしているという結果に。対象者の年齢が上がるほどに介護している人の割合が増える傾向があります。 ただ、2021年は前年よりも割合が減少。新型コロナウイルスの拡大の影響で、会うことが制限されることによって介護が難しくなっている可能性があります。 また、配偶者の有無によっても介護をしている人の割合に差が出るのかも調査。特に配偶者がいる男性が介護者になる割合が大幅に少なくなりました。一方で、女性は大きな違いがみられませんでした。 研究グループは「男性は配偶者がいる場合には介護を妻が担っている一方で、女性は配偶者の有無にかかわらず介護の役割を担っている」と分析しています。 性別で介護をするかどうかが変わる 今回の調査で、次のようなことがわかります。 若い世代よりも壮年世代の方が介護をしている割合が多い 男性よりも女性の方が介護をしている割合が多い 配偶者がいる男性は介護を妻に任せている可能性が高い これらのことから「親の介護は妻がするもの」「家族の世話は女性がするもの」というイメージが、まだまだ一般的であることがわかります。 また注目したいのは、この調査の特徴は15年間にわたって継続されている点。つまり、15年前から現在に至るまで、介護においては性別による役割の差別が続いていることがこの調査でわかります。 昨今、共働きの家庭が多くなりました。これからは、男性も介護に積極的に参加していくのが自然なのではないでしょうか。
2022/03/02
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。