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実家で一人暮らしをしている母が、最近、同じ話を何度も繰り返すようになりました。同じ話を何度も聞かされたり、同じ質問を何度もするんです。 はじめは「年齢が年齢だし」と、老化のせいだと思っていたのですが、友人から「認知症かも」と言われて心配です。 母が同じ話を繰り返すようになったのは、老化のせいなんでしょうか?それとも、認知症になってしまったんでしょうか? (川島さん・会社員・62歳) ご高齢者が同じ話を繰り返す理由は、老化によるもの、認知症によるもののどちらの可能性もあります。そのため、認知症かどうかを確かめるときは、「慣れた道で迷う」「話のつじつまが合わない」「段取りが悪くなった」といったその他の認知症の症状がないか、チェックしてください。もし、「認知症かも」と思ったときは、早めに精神科や脳神経科などの認知症の診断ができる病院で検査を受けましょう。 同じ話を繰り返すのはただの老化?認知症? 実家で一人暮らしをする母が、最近、何度も同じ話をします。同じ内容の話を繰り返し聞かされたり、数時間前にした質問をまたしてくるんです。はじめは年齢も年齢なので、「老化のせいかな」と思っていたのですが、友人から「認知症かもしれないよ」と言われてとても心配で…。同じ話を繰り返すのは、老化のせいなのか認知症のせいなのか、どちらなんでしょうか? うーん。今の話では何とも言えませんね…。というのも、ご高齢者が同じ話を繰り返すのは、老化による場合と認知症による場合のどちらもあるからです。詳しくお話ししていきますね。 老化によるもの 老化によって同じ話を繰り返すようになった場合、主に「聴力の低下」と「記憶力の低下」の2つの理由が考えられます。まず、聴力の低下とは、加齢によって耳が聞こえにくくなっているということ。自分の話していることが相手にきちんと伝わっているのかが不安になって、確認するために何度も同じ話をするわけですね。加齢による物忘れと認知症の記憶障害の違いについては、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 なるほど。年齢とともに母は耳が遠くなっているような気がするので、当てはまるかもしれません。テレビの音が大きくなっていますし…。 また、認知症でなくても加齢によって記憶力が低下します。なので、話したかどうか記憶が曖昧になってしまって、念のために何度も話をすることも。それに、用事の日時や場所なども忘れやすいので、確認のために何度も質問しているケースも考えられます。 認知症によるもの 認知症によって同じ話を繰り返す場合、「記憶障害」と「見当識障害」が原因だと考えられます。記憶障害の場合、話をしたことや質問したこと自体を忘れてしまっています。対して、老化による物忘れは、話したことや質問したこと自体は覚えているけど、内容は忘れてしまうのが特徴です。なので、周囲は「同じ話を繰り返している」と思っていても、認知症のご本人はそんなつもりは一切ないんですね。 そうなんですね。母も話をしたこと自体を忘れてしまっているのかな…。 もうひとつの見当識障害というのは、時間や場所などの自分を取り巻く状況を理解できなくなる症状です。そのため、「今、何時?」「今日は何日?」「ここはどこ?」などの質問を繰り返すことがあります。 認知症を見分けるポイントは? 母が同じ話を繰り返すのが、老化のせいなのか認知症のせいなのか、見分ける方法はありますか? 認知症の場合、同じ話を繰り返すこと以外にも初期症状が出ていることが多いです。そのため、以下のような症状がないか確認してみてください。 見当識障害 理解力の低下 実行機能障害 人格の変化 具体的な症状もお話ししますね。 見当識障害 見当識障害があると、日時や季節の感覚がなくなったり、今いる場所を把握できなくなったりします。そのため、以下のような症状が出ることがあります。 日時や季節がわからない 慣れた道で迷う 理解力の低下 認知症の影響で脳の機能が低下した結果、理解力が低下することがあります。以下のような症状がないかチェックしてください。 テレビの内容が理解できない 質問に適切に答えられない 話のつじつまが合わない 料理や計算でミスが多い 実行機能障害 実行機能障害は、順番立てて作業することができなくなる症状。特に料理などの複数の作業を同時並行でおこなうものが上手くできなくなる傾向があります。 計画立てて行動できない 料理を段取り良く作れない 性格の変化 認知症によって脳が損傷を受けると、性格に影響を及ぼすことがあります。例えば、以前と比べて以下のような様子があったら要注意です。 ちょっとしたことで怒り、声を荒げたり手を上げる 身だしなみに無頓着になった 頑固になり周囲への配慮がない ひとりになると不安な様子がある 外出や人とのコミュニケーションを嫌がる 無関心で好きなことにも興味がない 無気力で何をするのも億劫がる 認知症かも、と思ったら 母の状態が認知症の初期症状に該当するものがいくつかあって、もしかしたら認知症なのかもしれません…。どうしたら良いんでしょうか? まずは、病院で認知症の検査を受けましょう。認知症の検査は、「精神科」「脳神経内科」「脳神経外科」「老年科」で受けられます。もし、直接、大きな病院に行くのが不安な場合は、かかりつけ医に相談してみてください。かかりつけ医が認知症の検査が必要と判断すれば、紹介状を作成してくれるでしょう。認知症の検査については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 まずは、かかりつけの先生に相談ですね。ちなみに、認知症の検査ってどんなことをするんでしょうか? 認知症の検査では、面談、身体検査、認知症検査がおこなわれます。はじめにご本人やご家族と医師が面談し、これまでの病歴や今の状態について話をします。その後、レントゲンや血液検査などの身体検査をおこないます。 レントゲンや血液検査もするんですね! いえ、最後に認知症検査をおこないます。CTやMRIで脳の画像を撮ったり、テスト形式で脳の機能のチェックをします。こうした複数の検査の結果をふまえて、総合的に認知症かどうかが判断されます。認知症は、早期の治療で進行を抑えられると言われています。そのため、ご家族が「認知症かも?」と思ったら早めに検査を受けてくださいね。 同じ話を繰り返すのは、老化と認知症のどちらの場合もある 認知症の場合、日時がわからなくなったり理解力の低下が見られることも 認知症かも、と思ったら早めに病院で検査を受けて pre { margin: 40px 0; background: #333; ...
2023/09/20
入院すると認知症が悪化するというのは本当ですか? 先日、母が転倒して骨折してしまい、病院に入院しました。友人から「入院すると認知症が悪化する」と聞いて、母の認知症が進行してしまうんじゃないかと心配です。 (三宅さん・パート・61歳) 認知症の方は、入院することで症状が進行することがあります。具体的には、徘徊をしたり大声を出したり、治療や介護拒否をするようになることがあります。認知症が悪化する理由は、入院前より活動量が減ったり環境が変化することによるもの。なので、入院中も規則正しい生活をしたり、ご家族が頻繁に連絡を取るなどしてできるだけご自宅に近い環境を整えましょう。もし、認知症が悪化した状態で退院を迫られたら、病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談し、対応できる介護施設や病院を見つけることをおすすめします。 入院して認知症が悪化すると、どうなるの? 入院すると認知症が悪化するというのは本当ですか?実は、先日、母が自宅で転倒して骨折してしまい、入院しています。親の介護をしている友人から「入院すると認知症が悪化する」と聞き、母の認知症が悪化してしまうんじゃないかと思って…。 実は、そうなんです。認知症の方が入院して症状が進行することはあります。 やっぱりそうなんですね!ちなみに、認知症が悪化するとどうなってしまうんでしょうか? 認知症の症状は個人差が大きいですが、進行すると一般的に以下のような症状が出ることがあります。 徘徊をする 大声を出す 暴力を振るう 治療・介護拒否をする 徘徊をする 認知症が進行することで、室内や屋外を当てもなく歩き回る「徘徊」の症状が出ることがあります。特に、脚を骨折している場合、骨折していることを忘れて歩いてしまうのでとても危険です。再び転倒してしまい、怪我が悪化したり、別の箇所を怪我してしまう可能性もあります。 認知症のせいで骨折していることさえも忘れてしまうんですね…。 大声を出す 大声を出すことも、認知症が進行して現れる症状のひとつです。同室や近くの病室の人の迷惑となってしまうので、状況によっては退院を迫られることもあります。また、ずっとベッド上で生活することで昼夜逆転してしまう傾向があります。そのため、夜間や早朝に大声で叫ぶことが多く、そういう面でも周囲の人に迷惑をかけてしまいます。 暴力を振るう 認知症の影響で感情のコントロールが難しくなることで、暴力的になることがあります。興奮して暴言を吐いたり、暴力を振るうことも。その結果、病院のスタッフや他の患者さんを傷つける可能性もあります。他の人を傷つける行為が続くと、退院を迫られることもあるんです。暴言や暴力については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 他の人の迷惑になる症状があると、退院を迫られることがあるんですね…。 治療・介護拒否をする 認知症の影響で理解力や記憶力が低下した結果、治療や介護を拒否することがあります。具体的には、腕から点滴の管を抜く、骨折した部位を固定しているギプスを動かしてしまう、といったことが起こるかもしれないんです。 拒否すると、なかなか治療が進まないですよね。そういう場合はどうするんですか? 治療拒否が強くて治療ができない場合、やむを得ず身体拘束がおこなわれる可能性があります。例えば、ミトン型の手袋をつけて指の動きを制限したり、手足をベッドに縛り付けて移動できなくする、などが身体拘束にあたります。もちろん、治療・介護拒否があると必ず身体拘束を受けるというわけではありません。緊迫性のある場合にしか認められませんから、頻繁に身体拘束がおこなわれているわけではありませんが、念のため頭に入れておいてくださいね。 入院による認知症悪化を防止する方法 認知症が悪化すると暴力を振るったり治療を拒否したり、大変な状況になりそうで怖いです。どうしたら、認知症の悪化を防止できるでしょうか? なるべくご自宅にいたときと近い生活をするのが良いでしょう。認知症の方は環境の変化が苦手なので、ご自宅での起床・就寝時間や習慣を病院でも継続するのがおすすめです。食事の時間など、どうしてもご自宅と同じようにはできないこともあるでしょう。なので「9時に新聞を読む」など、可能なところだけでもご自宅と同じように過ごせるようにしましょう。また、ご家族が頻繁に面会に行ったり、連絡を取るようにするのもおすすめですよ。 入院して認知症が悪化する原因 そもそも、治療をするために入院するのに、どうして認知症が悪化してしまうんでしょうか? 怪我や病気など、認知症以外の治療のために入院した場合、病院側は認知症よりも怪我や病気の治療が最優先になるので、どうしても認知症については優先度が下がってしまうんです。 じゃあ、認知症が悪化しても入院中に治療は受けられないんですか? そうなんです。認知症の治療は、精神科や脳神経科などの診療科でないとできないことが多いです。なので、骨折して整形外科に入院している場合、管轄外なので認知症の治療はできないでしょう。入院中に認知症が悪化する具体的な要因としては、以下の2点が考えられます。 入院前より活動量が減る 環境の変化 入院前より活動量が減る 入院すると、1日のほとんどの時間をベッドの上で過ごすようになるため、入院前よりも大幅に活動量が減ってしまいます。体を動かす時間が少なくなることはもちろん、活動をしないので脳への刺激も少なくなることで、認知症が進行しやすい環境になってしまうんです。 確かに。入院してからの母は、テレビを見ることしかすることがないのでいつも退屈そうです。それが認知症が進行しやすい環境だったんですね。 環境の変化 認知症の方は環境の変化が苦手です。そのため、病室という今までとまったく異なる環境がストレスとなって認知症が進行してしまうと考えられます。 環境が変化するだけで、認知症が進行するんですね! そうなんです。認知症の方は、新しい出来事や情報を覚えることも苦手になりますから、病院のスタッフさんや同室の患者さんなど見知らぬ人に囲まれることも不安感が強くなってストレスを大きくする要因になってしまいます。また、認知症の有無に関わらず、環境の変化に適応できないためにせん妄の症状が出るご高齢者は多いんです。 「せん妄」とは何ですか? せん妄とは、理解力や記憶力、注意力などが急に低下する症状です。認知症は理解力や記憶力、注意力の低下が長期的に起こりますが、せん妄は一時的なもの。多くは1ヵ月も症状が続かないとされています。せん妄は時間が経つと落ち着くことが多いので、心配しすぎず様子を見ることも大切です。とは言え、認知症が進行してしまわないよう、先ほどお話ししたようにできるだけご自宅と環境を近づける工夫をしてみてくださいね。 認知症が悪化したまま退院になったら…? 先ほどもお伝えしたように、怪我や病気など認知症以外の理由で入院した場合、そちらの治療が優先されます。そのため、その怪我や病気の治療が終わったら退院。認知症が悪化してしまっていても、退院を迫られることがあります。 えぇ!?そうなんですか!認知症が悪化した状態で帰って来られたら、家では介護できないかもしれません!どうしよう…。 落ち着いてください!もし、認知症が悪化してご自宅で介護ができない状態で退院となってしまった場合は、以下の方法をとってみてください。 病院のソーシャルワーカーに相談 地域包括支援センターに相談 認知症対応の病院へ転院 病院のソーシャルワーカーに相談 病院には、ソーシャルワーカーという退院後の生活について相談できる相談員が常駐していることがあります。まずは、ソーシャルワーカーさんに転院できる病院や介護施設がないか相談してみましょう。ソーシャルワーカーさんは、地域の医療や介護施設の情報を持っています。入院中のお母様の様子も理解しているので、まずはソーシャルワーカーさんを頼ってみましょう。 地域包括支援センターに相談 ご高齢者の生活については、地域包括支援センターに相談できます。 地域包括支援センターとは何ですか? 地域包括支援センターとは、介護支援専門員、社会福祉士、看護師といった福祉や医療の専門家が常駐している公共施設です。地域の介護施設や福祉サービスについて相談できます。退院後、介護施設に入居する場合でも在宅介護をする場合でも、地域包括支援センターに相談すれば総合的なアドバイスをもらえるでしょう。入居できる介護施設や利用できる介護サービスの紹介をしてくれることもありますよ。 認知症対応の病院へ転院 病院のなかには、入院して認知症の治療ができるところもあります。精神科や心療内科のある病院であれば、認知症の対応が可能ですよ。 認知症って入院して治療できるんですね。今も通院はしているのですが…。 先ほどお話ししたような、「大声を出す」「暴力を振るう」「治療・介護拒否をする」といった症状があると、介護施設やご自宅では対応が難しいケースが多いんです。認知症の専門家による治療やケアが必要な状態であると考えて良いでしょう。特に「認知症疾患医療センター」という認知症に特化した病院であれば、適切な治療を受けられるでしょう。 なるほど…。ちなみに、入院して認知症の治療ができる病院はどうやって探せば良いんでしょう? 病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談してみましょう。認知症疾患医療センターについても情報を持っているので相談してみてくださいね。認知症の方が入院できる病院については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症が悪化すると、徘徊、暴力、治療拒否などの症状が出ることがある 環境の変化や活動性の減少で認知症が悪化する 退院するときは、ソーシャルワーカーや地域包括支援センターなどに相談して pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: ...
2023/09/19
実家で一人暮らしをしている母親が、嘘の内容で警察に通報するので困っています。 「近所の人に財布を盗られた」といったことが多いのですが、私が母を殴ったという嘘の通報をされたことがあり、警察が私の家に何度か訪れたこともあるんです。 もちろん、私は殴っていませんし、財布も押入れの奥から出てきました。すべて嘘の内容なのですが、母は本当だと思い込んでいるようで通報を止めません。母の嘘の通報を止めさせる方法はありますか? (片岡さん・会社員・59歳) もしかしたら、認知症の周辺症状のひとつである被害妄想によって、お母様は警察に通報しているのかもしれません。その場合、不安感が強くなっている可能性があるので、お母様の話を否定せずに聞いてあげましょう。じっくり話を聞いてあげることで信頼関係が築かれ、困ったときは警察ではなくご家族に相談するようになるかもしれません。また、警察やご近所の人にお母様が認知症であることを伝え、被害妄想を話す可能性があることも共有しておきましょう。 認知症の親が警察を呼ぶ理由は? 認知症の母が何度も警察に嘘の通報をするので困っています。「近所の人に財布を盗まれた」など、物を盗まれたという内容が多いのですが、中には「息子に殴られた」という内容で通報されたこともあって、私の家に警察が聞き取りに来たこともあります。もちろん、私が母を殴ったことはありませんし、財布は押入れの奥などで見つかることが多いです。つまり、母が嘘の通報をしているわけです。どうして母は、嘘の通報をするのでしょうか? もしかしたら、認知症の影響かもしれませんね。 認知症のせいで嘘をつくようになってしまったんですか? いえ、おそらく、お母様はご自分が嘘をついているとは思っていないでしょう。財布を盗まれたことも、片岡さんに殴られたこともお母様のなかでは本当のことなんです。 えっ!?でも、どちらも本当のことではないですよ! 実は、認知症の周辺症状である「被害妄想」や「幻覚」の影響で、現実とは異なることを事実だと思いこんでしまうことがあるんです。被害妄想の代表的なものは、「物盗られ妄想」と「見捨てられ妄想」。財布やお金、大切なものを誰かに盗まれたと思い込んだり、家族や大切な人に捨てられたと思い込むことです。物盗られ妄想については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 まさに、母は物盗られ妄想をしているのかも! また、幻覚の代表的な訴えとしては、「知らない人が立っている」「誰かに悪口を言われている」といったもの。認知症によって脳がダメージ受けることで実際には存在しないものが見えたり、木や柱が人に見えたりするのが幻覚の症状です。幻覚がエスカレートすると、「泥棒に入られた」「誰かに命を狙われている」という通報をすることも考えられます。幻覚については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 でも、実際は物を盗まれたり、命を狙われていることはないんですよね?どうしてこんなことを思い込んでしまうんですか? 主な原因は、不安感が強くなっているからです。例えば、物盗られ妄想の場合、大切なものをなくさないようにどこかにしまい込んだのに、認知症の影響でしまった場所やしまったこと自体を忘れてしまいます。でも、忘れたことを認めたくなくて、「大切なものをなくすはずがない。誰かに盗まれたんだ」と思い込んでしまうんですね。 母も認知症による物忘れがありますが、物忘れからそんな妄想に発展するんですね…。 認知症の方は、記憶力や理解力の低下によって、不安感を抱きやすい状態です。そのため、ちょっとした出来事が不安の種になり、それが大きくなって被害妄想や幻覚につながると言われています。 認知症の親が警察を呼ぶのを止めさせるには? 母が嘘の通報をする理由がよくわかりました。母が警察を呼ぶのを止めさせる方法はないでしょうか? 方法はあります。それはお母様の不安を取り除いてあげること。ただ、この方法は即効性のあるものではないので、根気良く続けていく必要があります。具体的には以下の方法があります。 話を否定しない 自尊心を傷つけない対応をする 介護施設に入居する 話を否定しない お母様が事実とは異なる話をしても、話を否定しないことが大切です。例えば、「財布を盗られた」と言われたときに、「誰も盗ってないよ。自分でしまったんでしょ」と返すのはNG。お母様のなかでは財布が誰かに盗まれたのは事実なので、否定されると不安になってしまいます。 では、何と言えば良いんですか? 「家の中を探してみようか」と言って一緒に財布を探すのもひとつの手。もし、興奮しているようでしたら、「財布が盗まれたんだね」と同じ言葉を繰り返しながら話を聞くのも良いでしょう。否定をせずに言葉を繰り返して話を聞くだけでも気持ちが落ち着くことがありますよ。 話を聞くだけでも良いんですね。 不安を大きくする要因が、「誰も理解してくれない」「誰も頼れない」という孤独感であることがあります。なので、話を否定せずに受け入れた後に一緒に探しものをすれば、「家族が話を聞いてくれる」「家族に頼れる」と安心できるでしょう。安心できれば、警察ではなくご家族に相談するようになるかもしれません。 自尊心を傷つけない対応をする 認知症による被害妄想は、「誰にも必要とされていない」「自分は邪魔な存在だ」という気持ちがきっかけになることがあります。認知症の進行によってできることが減ったり、ご家族に介助をしてもらうことが増えてきて自分に自信がなくなることで、こうした気持ちになることが増えるんです。すると、「家族に必要とされていないから、見捨てられた」「邪魔な存在だから、自分を殴るんだ」といったように、妄想がエスカレートしてしまうことがあるんです。 母が、「息子が殴った」と嘘を言うのは、「自分は邪魔な存在だ」という妄想がエスカレートした結果だったんですね…。 そのため、お母様に自信を取り戻してもらいましょう。それには、「家族に大切にされている」とお母様に感じてもらうことが必要です。具体的には、お母様が妄想を訴えたときにはご家族が話を受け入れる。話をするときは目線を合わせて話す。簡単な家事や作業をお願いするのも良いでしょう。 介護施設に入居する 夜中に警察を呼んだり認知症の症状が進行して、ご家庭では対応が難しいと感じた場合は、介護施設への入居を検討してみましょう。介護スタッフによる見守りがある施設に入居すれば、お母様が通報する回数は減りますし、通報をする前に異変に気がついて対応してもらえるでしょう。 介護施設か…。考えたこともなかったですが、母が嘘の通報を止めないには検討しないといけないかもしれません。ちなみに、どんな施設であれば、認知症の母を受け入れてもらえるんですか? 以下の介護施設であれば認知症の方の対応をしてもらえるでしょう。 有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 それぞれの施設で入居条件が異なりますので、入居前に必ず確認をしてくださいね。 地域や警察と連携しよう 母が嘘の通報をしたことで警察が実家に来たことが何度もありますし、私の家まで来て調査されたこともあるんです。ご近所の人から私が「母に暴力を振るっている」と思われているんじゃないかと気になって…。 ご近所の目は気になりますよね…。なので、事前に警察やご近所の方に、お母様が認知症であることを共有しておきましょう。 母は認知症だから嘘の通報をすることがある、と警察には言ってあります。でも、近所の人にも母が認知症であることを言う必要があるんですか?隠しているわけではないのですが…。 ご実家と片岡さんのご近所の方にお母様が認知症であることや、認知症の影響で警察に嘘の通報してしまうことを言っておけば、警察が家に来ていても理解してもらえるでしょう。また、特にご実家のご近所さんは、お母様に異変があったときに片岡さんに連絡してくれるかもしれません。別々に暮らしていると、どうしても片岡さんの目が届かない部分が出てきてしまいますから、警察やご近所の方も一緒にお母様を見守ってもらえる体制を作っておくと安心ですよ。 話を否定しない、プライドを傷つけないなどの対応で警察を呼ぶのを予防できる 警察を呼んでしまっても大丈夫なように、地域の人や警察と連携しよう 不安が強くなると、被害妄想や幻覚などの症状によって警察を呼んでしまうことも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; ...
2023/09/19
約2年前に認知症と診断された父と同居して介護しています。以前はそんなことはなかったのに、この半年ほど父がちょっとしたことで怒って、私や母を殴ったり物を投げるようになりました。 母も私もあざだらけで、いつ殴られるのかおびえながら生活しています。こんな父にはどのように対応したら良いですか? (内山さん・会社員・56歳) 暴力行為があると、内山さんもお母様もかなり不安な日々を過ごしていらっしゃると思います。ですので、まずはできる範囲で距離を取りましょう。お父様が怒り始めたら、別の部屋などに移動して物理的に離れる、デイサービスやショートステイなどで離れる時間を作る、といった対応です。認知症になると、感情をコントロールする脳の機能が低下して、ちょっとしたことで暴力的になることがあります。また、不安やストレスを感じて暴力的になっていることがあるので、力で抑えようとしたり身体拘束をするのはNG。さらに暴力行為がエスカレートするおそれがあります。あまりに暴力行為が激しいときは、精神科のある病院への入院も検討してくださいね。 暴力は認知症の「周辺症状」のひとつ 認知症の父から殴ったり蹴ったりの暴力を受けることが増えて困っています。認知症のせいか物忘れがひどくなり、忘れている出来事を指摘すると怒鳴りながら殴りかかってきます。また、家電などの道具類も使い方がわからなくなり、いらだって庭に投げ捨てて壊すことも…。父は一度怒り出すと手を付けられず、私も母もあざだらけ…。何がきっかけで怒るのかわからないので、毎日おびえながら生活しています。急に暴力的になったのは、認知症のせいなんでしょうか? おそらく、認知症のせいだと思われます。暴力は認知症の「周辺症状」の代表的なもののひとつ。周辺症状とは、認知症のメインの症状「中核症状」や心理状態に影響して引き起こされる症状のことで、「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。認知症の中核症状には、物忘れや理解力の低下などがあります。周辺症状は、それらの中核症状が原因となって現れているんです。 うちの父は物忘れがひどいのですが、それが原因で暴力を振るっているということですか? はい、その可能性もありますね。ただ、物忘れは多くの認知症の方に現れる症状ですが、物忘れの症状がある方全員が暴力行為をするわけではありません。その方の状況などによって、個人差が大きいのが周辺症状の特徴なんです。 認知症の種類によっては暴力の症状が出ることも ちなみに、お父様の認知症の種類はご存知ですか? はい。血管性認知症です。認知症の種類が暴力を振るうことに関係があるんですか? そうなんです。実は、認知症のなかには暴力行為が起こりやすい種類があります。それが、「脳血管性認知症」と「前頭側頭型認知症」です。血管性認知症は、感情のコントロールが難しくなるのが特徴。脳血管の障害によって起こる認知症なので、障害がある脳の部位と正常な部位との機能の差が生まれ、意識がはっきりしている時間とそうでない時間があります。意識がはっきりしないときがあることを、ご自身で認識できる場合もあるので、精神的に不安定になる方も。そのため、不安が大きくなってちょっとしたことで暴力を振るいやすいんです。 えぇっ、父はそんな状態だったんですね…。 また、前頭側頭型認知症は、人格や社会性、言語などをつかさどる脳の部位が損傷しています。そのため、ルールを守った行動ができなくなったり、少し気に入らないことがあると暴力を振るうことがあるのが特徴です。 認知症の人の暴力はどう対応する? 毎日、父の顔色をうかがいながら生活するのはもう嫌です!どうにかならないでしょうか? そうですね…。対応策としていくつかお伝えしましょう。例えば、以下のような方法です。 物理的・心理的に離れる 薬で治療する 在宅介護サービスを利用する 介護施設に入居する 物理的・心理的に離れる まずは、物理的にも心理的にも距離を取りましょう。具体的には、お父様が怒り出したタイミングで、別の部屋へ移動したり、落ち着いているときに音楽などを聞いてご自分のリラックスタイムを作る、といったようなことです。取り急ぎの対応方法ではありますが、意識的に距離を取ってみると、内山さんやお母様の気持ちが多少楽になると思いますよ。 薬で治療する 薬を使えば、お父様の状態が落ち着くこともあります。既に服薬している薬がある場合は、飲み合わせの問題もあるので、「お薬手帳」を持ってかかりつけ医に相談しましょう。また、認知症の薬を服薬している場合、別の薬に変えたり量を調整することで、症状が良くなることも。暴力を振るわれていることを医師に伝えてみましょう。 在宅介護サービスを利用する 在宅介護サービスのなかでも、「デイサービス」と「ショートステイ」を利用するのがおすすめです。デイサービスは、介護施設に通って介護サービスを受けられるもの。昼間の時間帯に介護施設が預かってくれるので、ご家族が安心して過ごせる時間を確保できます。また、認知症だけが利用できる「認知症デイサービス」というものもあります。認知症デイサービスであれば、認知症ケアに慣れた職員がそろっているので、適切なケアによってお父様の状態も落ち着くかもしれません。 へぇ!認知症の人限定の介護サービスがあるんですね。ちょっとでも父を預かってくれれば、私も母も安心できます。 また、ショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。宿泊している間の食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを提供しています。デイサービスよりも長時間、介護施設が預かってくれるので、ご家族のリフレッシュとして活用している方が多いですよ。 それは助かります!父に気を使わなくて良い日が1日でもあると、気が休まりそうです。 介護施設に入居する もし、ご自宅での介護が難しい状況であれば、介護施設への入居も検討してください。以下の施設であれば、認知症の方への対応に慣れているので対応できるでしょう。 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム グループホーム ただ、お父様の暴力が職員さんや他のご入居者にも及ぶ場合、入居を断られる可能性も。介護施設の受け入れ状況やお父様の状態にもよりますので、介護施設によく相談してみてください。 暴力行為があると、介護施設でも入居ができないことがあるんですね…。 暴力があまりにもひどいときは病院へ 先ほどお話しした通り、暴力行為がある方は介護施設の入居が断られる可能性があります。これは、有料老人ホームなどの長期入居型の施設だけでなく、デイサービスなどの在宅介護サービスでも同様で、利用を断られる可能性があります。 そんな!では、父におびえながら私と母が自宅で介護するしかないんですか!? いえ、誰にも手がつけられないほど怒ったり、暴力を振るう場合は、病院での治療が必要な状態と言われています。そのため、介護施設で受け入れられないほどの暴力行為がある場合は、入院をおすすめします。 えっ!入院ですか? そうなんです。入院設備のある病院のなかでも、精神科のある病院が良いでしょう。なぜなら、一般的な病院の場合、認知症の方の対応ができないことが多いためです。精神科であれば、認知症の薬の処方をしてもらえますし、看護師も認知症の方の対応に慣れているので受け入れてくれるでしょう。 精神病院ですか…。まさか、父がそんな状態だとは思っていませんでした…。 もちろん、薬の調整やケアの方法を変えることで暴力が落ち着いて、在宅介護を続けられることもあります。まずは、かかりつけ医やケアマネジャーさんに相談してくださいね。認知症の方の入院については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 こんな対応はNG! 認知症の影響による暴力行為は、間違った対応をするとさらにエスカレートしてしまう可能性があります。なので、やってはいけない対応についてもお話ししておきますね。具体的には、以下の2つです。 力で押さえつける 身体拘束をする 認知症の方の振り上げた手を押さえつけて降ろさせるなどの、力で押さえつける対応はNGです。なぜなら、行動を制限されたことで不安や恐怖を感じ、暴力がエスカレートするおそれがあるからです。 私や母では父の力には勝てないので押さえつけたことはありませんが、暴力がエスカレートすることもあるんですね…。 また、ベッドなどに縛り付ける、部屋に鍵をかけて自由に出られないようにする、といったことは身体拘束で虐待にあたりますから、やらないでくださいね。 虐待!?絶対にやらないです! 身体拘束がストレスとなり、認知症が進行したり、身体機能が低下する危険性があります。暴力行為はとても怖いことで、不安を感じるかもしれませんが、「力で押さえつける」「身体拘束をする」といった対応はしないでくださいね。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人が暴力を振るう理由は? 父は、もともと怒りっぽい人ではありませんでしたし、すぐ手が出る人でもありませんでした。認知症のせいだとしても、どうして暴力的になってしまったんでしょうか? 認知症の方が暴力を振るうのは、以下のような理由が考えられます。 ストレス・不安のため 自尊心を傷つけられたため 薬の副作用のため ストレス・不安のため 先ほども触れた通り、認知症の影響で判断力や理解力が低下します。そのため、周囲の状況が把握しにくいので、ストレスや不安を感じやすい状態です。さらに、感情のコントロールする機能も低下しているため、ストレスや不安を感じると精神的に不安定になり、その結果、暴力的になってしまうことがあります。 自尊心を傷つけられたため 加齢や認知症の影響で、できないことが増えていきますよね。そのため、ご家族が介助をするわけですが、その際に自尊心を傷つけてしまうことも少なくないんです。 どういうことですか? 例えば、「一人で大丈夫?」といった声掛けも、ときには自尊心を傷つける一言に。「一人じゃできないんだから、手伝うよ」といった言い方をすると、なおさら自尊心を傷つけかねません。認知症の方を心配すると、こういった声掛けをしてしまいがちですが、自尊心を傷つけて暴力行為のきっかけになることもあるので、気をつけましょう。 薬の副作用のため 服用している薬によっては、副作用の影響で暴力的になっていることもあります。認知症の薬のなかには、暴力行為が副作用として指摘されているものも。体質に合わない薬を止めたら暴力行為がなくなったケースもあるんです。 認知症の薬のせいで、暴力的になっている可能性もあるんですか! そうなんです。だからといって、独断で服薬を中止するのはとても危険なので止めてくださいね。薬を中止したり、調整するときは、必ず医師に相談してください。認知症の影響によって暴力を振るうといっても、原因は人それぞれのため、対応方法もそれぞれです。ご家庭で抱え込まないで、まずはケアマネジャーやかかりつけ医に相談してくださいね。認知症の方の暴言については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人の暴力には心理的に離れる、薬で治療するなどの対応をしよう 認知症の人を力で押さえつける、身体拘束するのはNG! 認知症の影響で、感情の抑制ができない、不安感を感じやすいため暴力を振るうことも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: ...
2023/09/13
遠方の実家に母が一人暮らしをしています。このところ、帰省する度に近所の人の悪口や私への文句が止まらないのでうんざり。「ゴミ出しがきちんとできていない人がいる」「小学生がうるさい」といった他愛のないことですが、ぐちぐちと何度も言うので参っています。 もともと、ここまで愚痴っぽい人ではなかったのですが、ここまでひどいと帰る気もなくなります。母の悪口を減らす方法はないでしょうか? (成田さん・会社員・65歳) ちょっとしたことでも、帰省する度に悪口を言われるのはしんどいですよね。ただ、ご高齢者の悪口に対して、否定してしまうのはあまり良くありません。否定してしまうと「どうしてわかってくれないんだ」と感じて、さらに悪口がエスカレートする可能性があります。もし、悪口が増えたこと以外にも、物忘れ、日付がわからない、料理の手順がわからない、といったことがあれば認知症のおそれがあります。思い当たる場合は、病院で相談してみましょう。 悪口ばかりの高齢者への対応は? 実家で一人暮らしをしている母が、悪口ばかり話すようになってうんざりしています。帰省する度に、悪口や愚痴をずっと話していて、たまに帰るのも気が重くなるほど。昔はこんなに愚痴っぽい人ではなかったのですが…。帰る度に私や近所の人への文句が止まらないですし、帰省がストレスになっています。どうにか母の愚痴に上手く対応できる方法はないでしょうか? 帰省の度に悪口を聞かされるのはしんどいですよね…。次のような対処方法があります。 否定をしない 対等に話す 感謝を伝える ときには謝る 時間決めて聞き流す 介護サービスを利用する 専門家に相談する ひとつずつ、お話ししていきますね。 否定をしない たくさんの悪口を聞いていると、「それは違うでしょ」と否定したくなることもあるかもしれません。一旦、そういった否定したい気持ちを抑えて、共感したり、理解をしている態度を示してみましょう。 共感ですか。できるかな…。 「自分のことをわかってくれない」という思いで文句を言っていることもあります。そういう場合、お母様の言葉を否定してしまうと、さらに「わかってくれない」と感じて、悪口がエスカレートしてしまう可能性もあるんです。そのため、共感まではできなくても、「話はしっかり聞いているよ」という姿勢を示すだけでもお母様が安心するかもしれません。 対等に話す 親御さんがご高齢になると、お子さんが親御さんを「叱る」「注意する」といった場面が増えるかもしれません。ですが、子どものような扱いをするのはNG。あくまで、大人同士の対等な立場で話をしましょう。例えば、親御さんがご高齢になると「自分でやった方が早い」とお子さんがすべて家事をしてしまったり、「また悪口が始まった」と話を聞き流したり…。そのせいでお母様のプライドが傷ついて、文句や愚痴を言われることもありえます。 話半分に聞いていて、「いつも私の話を聞かない!」と長々と文句を言われたことがあります…。そのときは、ただうんざりしただけですが、私の態度が良くなかったんですね。 感謝を伝える ときには、感謝の気持ちを伝えましょう。シンプルな「ありがとう」「感謝しているよ」という言葉でも、口にすることが大切です。 うーん…。悪口ばかりで感謝の言葉を伝える気もなくなってしまうんですが…。 確かに、ご実家に帰る度に悪口を聞いていると、そういう気持ちになりますよね。そういうときは、アルバムで思い出の写真を見ながら、昔の出来事への感謝を伝えるのでも良いでしょう。悪口を言うご高齢者は、不安や焦りといった感情を持っていることが多いので、感謝を伝えることが自尊心の向上につながるでしょう。 ときには謝る もし、成田さんへの文句が続くときは、演技をして謝ることでお母様の気持ちが収まることもあるかもしれません。 演技をする?どういうことですか? なかには、普段のストレスを文句や悪口で解消していることがあります。お母様の場合、一人暮らしで寂しい気持ちを紛らわしている面もあるのかもしれません。なので、成田さんが一旦、謝ったり非を認めることでお母様の気持ちが収まって、文句も収まる可能性もありますよ。 時間決めて聞き流す 悪口を聞き続けるのは、とてもストレスがかかることですよね。でも、お母様の話をまったく聞かないのは、さらに悪口がエスカレートする可能性もあります。そこで、時間を決めて話を聞き流したり、話を変えるのもひとつの手です。例えば「文句は1日10分だけ聞く」「3分聞いたら話を変える」といったふうに、時間を定めておくと成田さんの気持ちが少し楽になると思いますよ。 介護サービスを利用する もし、お母様が介護認定を受けているのであれば、介護サービスを受けるのもおすすめです。一人暮らしだと、生活に刺激が少なくて気持ちがネガティブになりがち。落ち込んだ気持ちから誰かの悪口や文句を言っているのかもしれません。なので、デイサービスなどの人との交流する機会を作ると、生活にハリが出るでしょう。お母様はデイサービスを利用していますか? 母は、介護認定を受けて「要支援1」ではあるのですが、介護サービスは使ったことがなくて。今のところ一人で生活はできていますし、必要ないんじゃないですか? 介護サービスは介護が必要になってからだけではなく、介護予防としても利用できるんです。特にデイサービスは、レクリエーションや体操などで体を動かす機会もありますし、運動不足の解消や、気分転換にもなると思います。 専門家に相談する 愚痴っぽいだけで、専門家に相談するんですか? はい。以前はそんなことがなかったのに、「悪口が増えた」「愚痴っぽくなった」というときは認知症や何かしらの病気が隠れている可能性があります。なので、前にお話しした対応方法をしても悪口が収まらない場合は、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談することをおすすめします。 悪口ばかりなのは認知症の前触れかも 悪口ばかり話すのが、どうして認知症の前触れになるんですか? 認知症の症状の中に、「攻撃的な言動」「被害妄想」というものがあります。これらのせいで、悪口や文句が増えている可能性があるからです。「攻撃的な言動」「被害妄想」は、認知症の周辺症状(BPSD)と呼ばれるものです。記憶障害などの中核症状による不安やストレスから引き起こされる、二次的な症状を周辺症状と言います。つまり、他人への悪口や文句は、被害妄想による攻撃的な言動である可能性があるということです。 ただ愚痴っぽくなっただけ、と聞き流していましたが、認知症の可能性があるなんて…。 特に、「以前は愚痴っぽくなかった」という人は要注意。以下が認知症の初期症状なので、他の症状も現れていないか確認してください。 少し前の出来事をすぐに忘れてしまう 時間や場所がわからない 役所の手続きやATMでのお金の出し入れができなくなる 料理の手順がわからなくなったり、味付けを間違える 自分のものを盗まれたと疑う ちなみに、「怒りっぽくなった」というのも認知症の前兆の可能性があります。詳しくは以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 高齢者が悪口ばかりになる理由は? 母は、以前はそこまで愚痴っぽい人ではなかったんですが、どうしてこんなに悪口ばかり言うようになってしまったんでしょう?歳のせいだと思っていましたが、何か理由があるんでしょうか? 確かに、年齢の影響はあるかもしれません。例えば、ご高齢者が悪口ばかり言うようになることについて、以下のような理由が考えられます。 できないことが増えていらだっている プライドが高くなっている 孤独感がある 被害妄想がある できないことが増えていらだっている 元気なご高齢者でも、できないことや記憶力などの低下を感じる場面が若い頃と比べて増えていることが大半でしょう。昔と同じようにできないことのいらだちが、誰かへの悪口や文句という形になっているのかもしれません。 そういえば、母も最近、体が思うように動かなくなっていらだっている様子がありました。できないことが増えてきて、いらだっているのかな…。 プライドが高くなっている 年齢とともに経験を重ねることで、プライドが高くなっていることが誰かへの悪口につながっている可能性もあります。例えば、「若い人はわかっていない」「年上だから自分の方がえらい」といった思いから悪口を言っているのかもしれません。 孤独感がある 定年を迎えたり、体力的な面から外出の機会が減るため、ご高齢者は人との交流が減る傾向があります。一人暮らしだとなおさらですよね。一人の時間が増えると、「誰も相手をしてくれない」「かまってくれない」と孤独感が強くなってしまうでしょう。そうした不満が悪口につながっているのかもしれません。 被害妄想がある 被害妄想については、認知症の症状のひとつとしてお伝えしましたね。詳しくお話しすると、認知症などの影響で記憶力が低下することで被害妄想が始まることがあるんです。 なんで、記憶力の低下が被害妄想につながるんですか? 例えば、認知症による被害妄想の主なもののひとつに「物盗られ妄想」があります。これは、財布やお金などの大切なものを盗まれたと思い込むこと。大切なものを自分でしまったのに、しまったこと自体を忘れてしまって「盗まれた」と思い込む被害妄想です。認知症による物忘れは、直近の行動や出来事をまるごと忘れてしまうのが特徴。「どこにしまったのかを忘れる」のではなく、「しまったこと自体を忘れる」ので、自分でしまったのではなく盗まれたと考えてしまうんですね。 えぇ…、そんなことが起こるんですね。 物盗られ妄想から、「近所の◯◯さんに財布を盗まれた」のような根拠のない悪口が始まることもありえます。悪口の内容が「不自然だな」と、感じたら認知症の可能性を考えても良いかもしれません。ご高齢者が悪口ばかり言う背景には、加齢によるいらだちや孤独感、さらには認知症の可能性も隠れているかもしれません。耳を傾けるのはストレスが大きいことですが、ある程度は聞き流しつつも、その裏の本当の訴えも気にかけてみてください。 悪口ばかりでも、共感する、対等に話すといった対応を心がけて 悪口は認知症の前兆かも。他の初期症状がないかチェックしてみて できないことが増えている、孤独感などから悪口がエスカレートしていることも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; ...
2023/09/12
認知症の母が、ビニール袋やティッシュを食べるようになってしまいました…。すぐに私が口から離させるので飲み込むことはないのですが、何を食べてしまうのかわからなくて常に目を離せなくて困っています。 今後、もっと危険なものも食べてしまうかもしれません。どうしたら母は食べ物以外のものを食べるのを防げますか? (奥村さん・会社員・63歳) もしかしたら、空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうようになったのかもしれません。なので、軽食を食べてもらったり、ストレスの原因を取り除くなどの対策をしてみましょう。もし、食べ物ではないものを飲み込んでしまったときは、できる範囲で飲み込んだ量を把握したうえで病院を受診してくださいね。 認知症のせいで食べ物以外のものを食べる!?予防法は? 認知症の母が、ちょっと目を離した隙に食べ物以外のものを口にするようになってしまいました。特に多いのがビニールやティッシュです。しかも、この間は服から取れたボタンを食べようとしていたんです。いつ、何を食べてしまうかわからないので母を家に一人にできないですし、常に目を離せないので私は疲れてしまいました。どうしたら食べ物以外のものを食べるのを防げるのでしょうか? 食べ物以外のものを口にしてしまうのは、とても危険ですよね。ちなみに、食べ物以外のものを食べてしまうことを「異食」と言い、認知症の周辺症状のひとつです。認知症の人が食べ物以外のものを口にするのを防ぐ方法には以下のようなものがあるので、参考にしてみてください。 おやつを食べてもらう 食べると危険なものは手の届かないところに置く 食べ物ではないことをわかりやすくする 食べられるものと入れ替える おやつを食べてもらう お母様は、お腹が空いていて食べ物ではないものを口にしている可能性があります。なので、その対策としては、軽食を食べてもらうこと。せんべいやクッキーなどのおやつを食べて、次の食事までの間の空腹を紛らわしてもらうんです。 えっ、でも、そんなに食べてしまったら、食事が摂れなくなってしまうんじゃないですか? もちろん、量の調整は大切です。食事に影響が出ないくらいの量に抑えたり、おやつを食べた分は食事を減らしたり、といった調節はしてくださいね。 食べると危険なものは手の届かないところに置く 認知症の方が異食をしてしまうことが多いもののなかでも、乾電池や洗剤などは飲み込んでしまうと大変危険です。なので、手の届かないところや棚の中にしまいましょう。 確かに。口にしないように、食べ物以外のものはすべてしまっておかないと。 ただ、飾り物をすべてしまって、あまりにも殺風景になってしまうのも刺激がなくて脳に良くありません。手が届かないところに飾るなど、うまく調整してくださいね。 食べ物ではないことをわかりやすくする 「食べ物ではないことをわかりやすくする」ってどういうことですか? ストレートに「これは食べ物ではありません」と書くのはどうでしょうか?認知症の方でも文字が読める方であれば、効果があるでしょう。食べてしまうものにもよりますが、洗剤や薬品類などのパッケージに大きく書いておくと効果があるかもしれません。 食べ物と入れ替える お母様がティッシュやビニールを手に持っていたりして、「食べてしまうかも」と思ったときには、食べられるものと交換してみるのも良いでしょう。 今までは、急いで母の手から取り上げていたのですが、それではいけないんですか? お母様としては、手に持っているものは「食べても良いもの」と理解しているので、それを急に取り上げられると驚きますし、混乱しますよね。そうしたことが繰り返されると、混乱からストレスを感じてさらに異食をする頻度が上がってしまう可能性があります。 そうなんですか!?食べたら危険だと思って、急いで取り上げていたのは良くないことだったんですね…。 なので、食べ物を手渡してさりげなく食べてはいけないものと交換しましょう。「こっちの方がおいしいよ」と食べ物を手渡してみると、意外とすんなり交換してくれるかもしれません。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 食べ物以外のものを食べてしまったら もし、母が食べ物以外のものを飲み込んでしまったらどうしたら良いんでしょうか? もし、食べ物以外のものを飲み込んでしまった場合、無理に吐き出させようとせずに、口の中を確認しましょう。口にしたものの大きさによっては、口の中に物が残っていることがありますから、それを取り除きましょう。ただ、ティッシュやビニールといったものは気管をふさいで窒息する危険性があります。電池や洗剤なども中毒のおそれがあるので、危険なものを飲み込んでしまった場合はすぐに病院を受診してください。 ティッシュやビニールで窒息する可能性があるんですね!それには気が付きませんでした。本当に危険ですね…。 食べると危険なもの ティッシュやビニールなどの、家の中に当たり前にあるものでも食べたら危険なものがあるんですね…。他に、食べると危険なものにはどんなものがあるんですか? 食べると危険なものには、以下のようなものがあります。 ティッシュ ビニール 電池 洗剤 漂白剤 防虫剤 殺虫剤 ガソリン・石油 除光液 薬 タバコ マニキュア 針・刃物 上記のものは、口にしてしまうととても危険なので、認知症の方が手が届かない場所に保管しておきましょう。便を食べてしまう場合については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人が食べ物以外のものを食べる理由は 母は「まだ飲み込んでいないから大丈夫」と思っていましたが、異食がとても危険なことだとよくわかりました。そもそも、どうして母は食べ物以外のものを食べるようになってしまったんでしょうか? 認知症の影響だと考えられます。具体的には、以下のような理由で食べ物以外のものを食べてしまっているのかもしれません。 食べ物かどうか判別できない 食事の時間だと勘違いしている お腹が空いている 不安やストレスを発散している 食べ物かどうか判別できない 認知症の影響で、目の前のものがどういった役割のものなのかを理解できなくなることがあります。この症状を「失認」と言い、認知症の症状のひとつです。具体的には、「ティッシュが何かわからない。わからないから手に取ってみる。それでもわからないから口に入れてみる」といった具合です。また、洋服のボタンやビー玉などを飴玉と勘違いしているケースもあります。食べ物と勘違いしているのであれば、自然と口に入れてしまいますよね。 うちの母も、ティッシュやビニールを食べ物と勘違いしていたのかもしれませんね。 食事中と勘違いしている また、認知症になると現在の日時、季節といった時間に関する感覚があいまいになることがあります。これは「見当識障害」と言って、認知症の症状の代表的なものです。見当識障害の影響で時間感覚があいまいになり、食事の時間と勘違いして近くにあったものを食べてしまった、ということもありえます。 お腹が空いている 母は食欲旺盛で、3食しっかり食べています。それでもお腹が空いているんですか? 実は、認知症の影響で満腹感を感じにくくなっている可能性があります。認知症によって脳の満腹を感じる部位が損傷を受けることで、満腹になりにくいんです。そのうえ、認知症によって食べ物以外のものを食べ物と思い込んでしまっていれば、自然と食べようと思ってしまいますよね。そうした理由が合わさって、食べ物ではないものを食べてしまっているのかもしれません。 不安やストレスを発散している 認知症ではない私たちも。「やけ食い」などでストレス発散することがありますよね。それと同じように、認知症の方も食べることで不安やストレスを解消しようとしているのかもしれません。また、誰でも何がなんだかわからない状況に置かれるのはストレスですよね。認知症の方は、それ以上に認知機能の衰えによって物事が理解できず、不安やストレスを感じやすい状態にあります。なので、ストレスを発散させようと異食をしてしまっている可能性があります。 母が食べ物以外のものを食べるのを止めさせることばかり考えていましたが、いろんな理由があって異食をしていたんですね…。母の異食の原因を減らせるように、対策をしていきたいと思います。 おやつを与えたり、危険なものを届かないところで保管して予防して 食べてしまったら、無理に吐き出させようとせず、口の中を確認して 空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうことも pre { margin: 40px 0; background: ...
2023/09/08
母が亡くなってから、急に父の様子が変わってしまい、介護が必要になってしまいました。もともとはマメな性格で掃除を率先してやる人だったのに、母が亡くなってからは無気力になって、家の中は荒れ放題に。ぼーっとしていることも増えました。 そのため介護サービスを使い始めたのですが、支出が増えて家計が苦しいです。でも、私は一人っ子でお金の工面をしてくれる兄弟もいません。親の介護をしたくてもお金がないときはどうしたら良いですか? (大森さん・パート・63歳) 介護にかかるお金や老人ホームの利用料を軽減する制度があります。そうした制度を上手く活用していきましょう。もし、費用の軽減制度の対象にならない場合や、制度を利用してもなお介護のお金が足りない場合は、生活保護の受給も検討してみてください。一人っ子の介護は、介護の負担が集中しやすいです。大森さんが体調を崩してしまっては元も子もないので、介護サービスを上手く活用していきましょう! 一人っ子で親の介護のお金がない!どうする? 母が亡くなってから父の様子がおかしくなって、介護サービスを利用するようになりました。でも、父の年金が少なくてこれまでの生活を維持するので手一杯。介護のお金が捻出できません。私も自分の生活でギリギリで、お金の支援はあまりできそうにありません。それに、私は一人っ子でお金の工面をしてくれる兄弟もいませんし…。父の介護をしたくてもお金がないんです。介護のお金がないときはどうしたら良いですか? 一人っ子の介護はお金の面でも大変ですよね…。例えば、介護にかかる費用を軽減する制度があるので、それを利用してみるのはどうでしょうか? 費用が抑えられる制度があるんですか!ぜひ教えてください。 では、介護や医療費全般が軽減される制度と、介護施設の利用費が軽減される制度についてお話ししますね。 介護費用の軽減制度を利用する 介護費や医療費の軽減制度には、以下のようなものがあります。 福祉用具購入費 居宅介護住宅改修費 高額介護サービス費 高額介護合算療養費制度 医療費控除 福祉用具購入費 「福祉用具購入費」は、福祉用具を購入した場合に、介護保険が適用されて一部の費用が手元に戻ってくる制度。以下の特定の福祉用具を購入した場合に、費用の助成を受けられます。 腰掛便座 自動排泄処理装置の交換可能部品 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、入浴用介助ベルト) 簡易浴槽 移動用リフトのつり具の部分 排泄予測支援機器 費用の助成を受けるには、事前の申請が必要なので忘れないでくださいね。 居宅介護住宅改修費 「居宅介護住宅改修費」は、介護リフォームの費用を助成する制度です。介助が必要な方が暮らしやすいように自宅を改修した場合に、最大20万円が支給されます。 20万円も!最近、父が段差でつまづくことが多くなったのでリフォームしても良いのかも。 それは良いですね!以下のリフォームが対象となりますので、念のため確認しておいてください。 廊下や階段、浴室、トイレ、玄関まわりなどへの手すりの設置 段差解消目的のスロープ設置、浴室床のかさ上げなど 滑り防止および円滑な移動のための床材変更(畳・じゅうたん・板材など) 扉の取り替え(開き扉・引き戸・折り戸など、ドアノブ交換など) 洋式便座などへの便器の取り替え 上記の住宅改修に付帯して必要となる改修(下地補強、給排水設備工事、壁・柱・床材の変更など) 高額介護サービス費 「高額介護サービス費」は、所得に応じた介護サービス費の自己負担額の上限を超えた場合、超えた分のお金が払い戻される制度です。高額介護サービス費の負担限度額は、以下のように定められています。 区分負担の上限(月額)生活保護を受給している方など15,000円(個人)前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下24,600円(世帯)15,000円(個人※1)世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方24,600円(世帯)市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満44,400円(世帯)課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満93,000円(世帯)課税所得690万円(年収約1160万円)以上140,100円(世帯) 「高額介護合算療養費」は、介護保険と医療保険の自己負担額の合計が、限度額を超えたときに超えた分が戻ってくる制度です。限度額は、以下のように所得に応じて定められています。 70歳以上70歳未満年収約1160万円以上212万円212万円年収770万~1160万円141万円141万円年収370万~770万円67万円67万円年収156万~370万円56万円60万円市町村民税世帯非課税31万円34万円市町村民税世帯非課税(所得が一定以下)19万円34万円 なるほど。この費用を上回ったときに、超えた分のお金が戻ってくるんですね。 医療費控除 「医療費控除」は、医療費が一定額を超えた場合に控除が受けられるものです。通院などにかかった医療費だけでなく、介護サービスの中でも以下のサービスであれば対象となります。 居宅サービス 訪問看護 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 通所リハビリテーション 短期入所療養介護 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 看護・小規模多機能型居宅介護 施設サービス 特別養護老人ホーム(支払った額の2分の1が控除対象) 介護老人保健施設 指定介護療養型医療施設 介護医療院 介護施設の費用の軽減制度を利用する 介護施設の居住費や食費を軽減する「特定入所者介護サービス費」という制度もあります。すべての介護施設に適用されるわけではなく、以下の公的施設であれば制度を利用できます。 特別養護老人ホーム(特養) 介護老人保健施設(老健) 介護医療院 加えて、所得に応じて以下の5段階に分けられており、段階ごとに各施設の金額が設定されています。 第1段階:生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で本人及び世帯全体が市民税非課税第2段階:世帯全員が住民税非課税かつ本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円以下第3段階(1):世帯全員が住民税非課税かつ本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円より大きく120万円以下第3段階(2):世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額120万円を超える人第4段階:上記以外の方 出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省) 特別養護老人ホーム 特養は、要介護3以上の方が入居できる施設。寝たきりなどの要介護度が高い方や看取りの方にも対応しているので、「終の棲家」として人気があります。「特定入所者介護サービス費」を利用すると、特養の費用は以下のようになります。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 320円 420円 820円 820円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 部屋のタイプによっても費用がかなり違うんですね。父はまだ要介護2なので、入居はできないですが、ゆくゆくは検討しないといけないのかも…。 介護老人保健施設 老健は、リハビリや医療ケアが充実している施設です。リハビリを重点的におこなって、在宅復帰することが前提の施設のため、入居期間は基本的に3~6ヵ月と短いのが特徴です。老健も居室タイプによって料金が異なります。詳しい料金は、以下の表のとおりです。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 320円 420円 820円 820円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 介護医療院 介護医療院は、かなり充実した医療体制が特徴。医師が常駐しており、胃ろうなどの経管栄養やたん吸引といった、常に医療ケアが必要な方も入居可能です。介護と医療のサポートが必要な方を対象とした施設のため、要介護1以上で医療ケアが必要な方が入居対象です。「特定入所者介護サービス費」を利用したときの介護医療院の費用は、以下のとおりです。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 どうしても親の介護のお金がないときは生活保護も検討して いくつか費用の助成制度をご紹介しましたが、制度の対象にならなかったり、制度を活用しても経済的に厳しい場合もあるでしょう。そういうときは、生活保護の受給も検討してください。 えっ、生活保護ですか?生活保護でも介護サービスは利用できるんですか? もちろんです!生活保護になった場合、介護保険料や介護サービス費は生活保護費の中から支払われます。なので、自己負担はありません。生活保護を受給するためにはいくつもの条件がありますので、簡単に決断できるものではないかもしれませんが、介護のお金がない場合には、一度検討してみてください。 介護のお金がないときは、費用の軽減制度を活用して 公的施設なら所得に応じて利用料が安くなる どうしても介護のお金がないときは生活保護の検討を ...
2023/09/07
最近、高齢の母がトイレに間に合わず粗相をするようになりました。母が使った後のトイレの床が尿で濡れているので、間に合っていないのだと思います。 毎回、トイレの掃除をするのも大変ですし、何より臭いがこもるようになりました。母が粗相をしないような対策はありますか? (福井さん・自営業・57歳) 例えば、排泄のタイミングを把握して、トイレの声掛けをしてみましょう。「食事の前」「寝る前」など、トイレに行くタイミングで「トイレに行っておこうよ」と声をかけるだけでも、粗相の回数が減るかもしれません。ただ、トイレはとてもデリケートな話題ですから、声掛けやトイレの介助を嫌がる可能性が十分あります。そのため、嫌がられたら無理をせずに見守ることも大切ですよ。 高齢者がトイレに間に合わないときの対策は? 最近、高齢の母がトイレに間に合わないことが増えたようで、母がトイレを使うと、床が尿で濡れているんです。尿で汚れた床を掃除するのも嫌ですし、何より臭いがこもるようになってしまって…。床だけでなく、ズボンも濡らしているようで、服も臭うんです。母が粗相しないような対策ってありますか? 尿で汚れると臭いますから、本当に大変ですよね。粗相を予防するには、以下のような方法があります。 トイレの声掛けをする 着脱しやすい下着に変える ポータブルトイレを設置する オムツを使う トイレの環境を整える トイレの声掛けをする まずやっていただきたいのが、トイレの声掛けです。お母様の毎日の排泄のタイミングを把握して、タイミングに合わせて少し早めに声をかけるんです。 なるほど…。例えば、どんな風に声掛けをすれば良いんですか? 「ご飯の前にトイレに行っておいたら?」「出かけるからトイレに行っておこうよ。私も後で行くから」など、気軽な言い方がおすすめです。「トイレに行っておかないと、また漏らしちゃうよ」といった、自尊心を傷つけるような言い方は控えてくださいね。 着脱しやすい服に変える ズボンや下着などを着脱しやすいものに変えるのもおすすめです。高齢になると、指先の動きが鈍くなってズボンや下着の脱ぎ着が難しくなることが多いです。そのため、チャックとホックやボタンのズボンの場合はウエストがゴムのものを、締めつけの強いガードルのような下着の場合は普通の布パンツに変えましょう。 ポータブルトイレを設置する お母様のお部屋にポータブルトイレを置くのはどうでしょうか? ポータブルトイレって何ですか? ポータブルトイレは、任意の場所に設置できる簡易トイレです。歩行が不安定などの理由でトイレまで行くのに時間がかかる方におすすめです。特に、夜にトイレに行く場合、足元が暗かったり、寝ぼけて歩行がより不安定になることが多いので、夜間に使うために設置している方も多いですよ。 オムツを使う オムツですか?まだ母には早い気がします。オムツ交換するのも大変そうだし…。 実は、パンツタイプの紙おむつがあるんです。普通の布パンツを使うのと同じ感覚で使用できます。また、尿漏れ用のパッドよりも大きな尿とりパッドも売られています。毎回、紙パンツを取り替えるのは経済的な負担が大きいので、中にパッドを入れている人が多いですね。1~2回分の尿なら吸収できますから、トイレを汚してしまう心配がかなり減ると思いますよ。 へー!そんな便利な物があるんですね。買ってみようかな。でも、母は「オムツ」と言うととても嫌がって使わない気がします…。 はじめは紙パンツを使うのに抵抗があると思います。そういうときは、普段使っている布パンツの中に尿とりパッドを入れて使うのも手。これなら紙パンツを使うよりも抵抗が少ないと思います。おむつ外しについては、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 トイレの環境を整える スムーズに排泄ができるように、トイレの中の環境を整えることも大切です。もし、トイレのマットを尿で濡らしてしまうのであれば、防水タイプに変えるのも良いでしょう。 それは良いですね!トイレマットに防水タイプがあるなんて知りませんでした。 それと、足元に物を置かないようにするのも、スムーズにトイレに座れるようになるポイント。トイレットペーパーのストックや掃除用具を室内に置いておくことが多いと思いますが、それが歩行の妨げになっている可能性があります。なので、足元に物を置かないようにしましょう。今回、紹介した方法も含めて、トイレの室内の環境を整える方法がいくつかあるので、以下を参考にしてみてくださいね。 防水のトイレマットに変える 足元に物を置かない 消臭剤を使う 手すりをつける トイレ介助するときのポイント 母がトイレに間に合わないことが増えたので、そろそろ私が介助した方が良いのかな、と思っているのですが、北野室長はどう思いますか? うーん、そうですね。おひとりでトイレに行けるようにさまざまな工夫をした結果、それでもトイレに間に合わないようだったら、福井さんがお手伝いしても良いかもしれないですね。ただ、トイレの問題はかなりデリケート。うまく進めないと介助を拒否される可能性が高いです。 そうか…そうですよね。 トイレの介助をされることが「恥ずかしい」「情けない」と感じる方は多いです。特に排泄中は見られたくないと思っている方がほとんどでしょう。ですので、まずはトイレの声掛けから始めてみてくださいね。 トイレ介助を拒否されたら もし、トイレ介助を母に嫌がられたらどうしたら良いですか? 無理に介助をしようとしないことが大切です。介助に入れそうなところだけをお手伝いしてみてください。例えば、部屋からトイレまでの移動が大変そうであれば、手を引いたりして歩行の介助だけをします。無理にトイレ介助をしようとすると、「トイレ」という言葉だけで嫌がるようになってしまう可能性もあるので、慎重に進めると良いでしょう。 トイレの介助の前に、歩きの介助をするんですね。 トイレの中での介助ができるのであれば、ズボンや下着を下ろして排泄している間はトイレの外で扉を閉めて待つ、という対応が良いでしょう。まどろっこしいように思いますが、完全にトイレ介助を拒否されてしまうと、今後の介助が大変になってしまいます。段階を踏んで進めていきましょう。 トイレに間に合わなかったときは? ご高齢者に対しては、トイレに間に合わなかったときの対応も重要です。 汚れた床を掃除したり、濡れた服を洗濯するだけではないんですか? それも大切なのですが、粗相をしてしまったご家族への対応も大切です。トイレに間に合わなかったときは、粗相したことを責めるのは避けてください。毎回、「また間に合わなかったの?」といった、責める言葉を掛けたり嫌な顔をしてしまうと、粗相をしないように摂取する水分量を減らしてしまうことがあります。摂取する水分量が減ると、脱水症状になるリスクが高まります。トイレのことを気にして体調を崩しては元も子もありませんから、お母様が粗相をしても落ち着いて片付けをするように気をつけてみてください。については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 高齢者がトイレに間に合わない原因は? そもそも、どうして母は粗相をしてしまうようになったのでしょうか?ここ最近まで、そんなことはなかったのですが…。 お母様が粗相をするようになったのは、つい最近のことなんですね。もしかしたら、以下のような理由でトイレに間に合わないようになってしまったのかもしれません。 移動に時間がかかる 蓄尿機能が衰えている 筋力が低下している トイレの場所が分からない 年齢を重ねることで、誰しも身体機能が衰えてきます。例えば、以前よりも歩くのに時間がかかるようになって、トイレに行くまでの間で我慢の限界が来てしまうのかもしれません。また、尿を溜めておく膀胱の機能が衰えたり尿道周辺の筋力が低下することで、気づかぬうちに尿もれをしていることもあるでしょう。 言われてみれば、このところ母の歩き方がぎこちないかもしれません。トイレに行く道中も壁を伝ってなんとか歩いているような感じですし…。これまで尿もれの話はなかったのですが、私に言わないだけで尿もれがあったのかもしれません。 お母様には当てはまらないかもしれませんが、場所がわからなくなって、トイレにたどり着けないために粗相をしてしまうことも。こうしたケースは、認知症の方に多いですね。 認知症ですか…。まだ認知症のような様子はないと思います。うちの母の場合は「トイレの場所が分からない」は当てはまらなさそうですね。 トイレの問題はとてもデリケートな問題ですから、その方の粗相の原因を突き止めて適切な対応をしていきましょう。けして無理にトイレ介助をしようとはしないでくださいね。 トイレの声掛けやポータブルトイレの設置をしてみよう トイレ介助はとてもデリケート。拒否されても無理強いしないで 加齢や認知症の影響でトイレに間に合わなくなることがある pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/09/05
先日、帰省したところ、高齢の父親の様子がおかしくて気になっています。具体的には、一緒に外食をしたら、料理にお箸がついていないことで店員を怒鳴りつけて大騒ぎしたんです。ちょっとしたことですぐ怒るようになっているようで…。 昔はここまですぐに怒るような人ではありませんでしたから、何かの病気の前触れなのかと心配です。もしかして、認知症の可能性もありますか? (松原さん・会社員・58歳) 認知症の可能性もありますね。ただ、認知症以外にも、うつ病や脳梗塞の後遺症、加齢などによって怒りっぽくなることはあります。認知症にはいくつか初期症状がありますから、他の症状も当てはまったら、病院で検査することをおすすめします。 高齢者が怒りっぽいのは病気の前触れ? 先日、久しぶりに実家に帰省したら、一人暮らしの父が怒りっぽくなっているような気がして気になっています。一緒に外食に出かけたところ、食事にお箸がついていないことに激怒し、店員を怒鳴りつけたんです。以前は、こんなことで怒るような人ではありませんでした。急な変化だったので、何かの病気の前触れなのではと心配です。もしかして、認知症になってしまったのでしょうか? 現時点では、はっきりとしたことは申し上げられませんが、認知症も可能性のひとつです。ただ、認知症も含めて、ご高齢者が怒りっぽくなる理由は以下のようなことが考えられます。 認知症 うつ病 脳梗塞 加齢 認知症 認知症の初期症状のひとつに怒りっぽくなることがあります。認知症によって、感情をコントロールしている前頭葉が萎縮すると、気持ちの制御ができなくなって怒りやすい性格になってしまうと言われています。また、認知機能の低下によって状況が理解できない、適切な判断ができない混乱が怒りにつながることもあります。 やっぱり、認知症の可能性もあるんですね。一人暮らしだから心配だな…。 認知症の影響で暴言を吐いてしまう方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 うつ病 うつ病の可能性もあります。うつ病の症状というと、気持ちが落ち込んでふさぎ込むようなイメージがありますが、実は怒りっぽくなるのも症状のひとつなんです。というのも、幸せホルモンとも言われる「セロトニン」が減少することで気持ちが落ち込むと同時に怒りっぽくもなります。「落ち込みながら怒る人」も多くいるんです。 脳梗塞 脳梗塞を経験している人は、その後遺症として怒りっぽくなることがあります。これも、脳の一部がダメージを負ったために、感情のコントロールができなくなってしまうんです。また、反対に脳梗塞の前触れにも怒りやすくなることも。脳の血流が徐々に減少していくなかで、脳梗塞の症状が出ることがあります。高血圧の方は、脳梗塞の可能性も疑った方が良いかもしれません。 父は高血圧です。母が亡くなって一人暮らしをするようになってから、食事が乱れているみたいで血圧が上がっているようなんです。血圧の薬もきちんと飲んでいるのか確かめないと…。 加齢 年齢を重ねることで怒りやすくなることもあります。こうした方は、もともと怒りっぽい気質だったケースが多いですね。特に一人暮らしの場合、人との交流が減ることで日常生活でストレスを発散する機会も減る傾向があります。そのため、ちょっとしたことでも、怒りにつながってしまうんですね。 なるほど…。父もそうなのかな。このところ、趣味の将棋サークルも行かなくなったみたいですし…。家にこもりきりみたいなんですよね。 認知症のせいで怒りっぽいのか見分ける方法 認知症以外にも、父に当てはまりそうな理由がいくつかありました。認知症かどうか、見分ける方法はないですか? ひとつの方法として、「怒っている理由を聞く」ことがあります。認知症の方の場合、ご本人自身も何に対して怒っているのかわかっていないことも多いんです。なので、「どうして怒っているの?」と聞いてみて、はっきり答えられない場合は認知症の可能性が高いです。また、以下のポイントにも注意してみてください。 今まで怒っていたか 外出時も怒るようになったか 頻度が増えているか これらに当てはまったら、認知症や脳梗塞などの病気の前兆かもしれません。病院での検査をおすすめします。 「怒りっぽい」以外の認知症の初期症状 怒りっぽくなるのは認知症の初期症状のひとつ、とお話ししましたよね。その他にも初期症状があるので、「怒りっぽい」以外の症状にも当てはまっていないか、確認しておきましょう。主な認知症の初期症状は、以下の通りです。 同じことを何回も話す・質問する お金の管理ができない 料理や買い物に手間取る 物をよく探している 周りの出来事に関心がない 趣味を止めた 物や人の名前が出てこない だらしない服装になる これらに当てはまったら、認知症の可能性が高いということですね。うーん…。そういえば、「明日は何時に家を出るんだ」と、外出する時間を何度も聞かれたような。帰省の期間が短かったから、その他の症状はわからないですね。 普段、一緒に過ごしていないとわかりにくいところではありますよね。もし、初期症状にいくつか当てはまるようでしたら、病院で検査してもらってくださいね。認知症の影響で怒りっぽくなってしまった方についても、以下のご質問でお答えしています。参考にしてください。 高齢者が怒り出したときの対応方法 先日の帰省のときは、店員さんだけでなく、私も何度も怒鳴られて。近々、また帰省する予定があるんですけど、次も同じように怒鳴られるかもと思うと気が重いです。 怒鳴られるというのは、ストレスですよね。それに、自分が怒られているわけではなくても、怒っているのを見るだけでも気が滅入ってしまうと思います。そういうときは、「顔を背ける」「別の部屋に移動する」といった方法で、怒りから離れましょう。ストレスの元から逃げることも大切です。 顔を背けるって、それだけでも良いんですか? はい。物理的に離れるのが難しい場面では、顔を背けて、怒っている人を視界に入れないだけでもストレスが軽減されます。怒っている人をなだめるのは大変ですから、毎回、相手の気持ちを落ち着けようとするのはかなりの負担です。「手を付けられない」と思ったら、逃げるのもひとつの手ですよ。 逃げても良いんですね。ちょっと安心しました。とはいえ、まずは父が認知症や脳梗塞を発症しているのか確認しないとですね。 怒りっぽくなったときは、単なる加齢のほかに認知症やうつ病なども考えられる 昔より怒りっぽくなった、怒る頻度が増えている傾向があったら認知症の可能性も 怒り出したら顔を背ける、別の部屋に移動するなど、ストレスを避ける対応を pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: ...
2023/08/31
認知症の父親が自分の便を食べるようになってしまい、どうしたら良いかわかりません…。 先日、家に帰ったら父が便で手を汚した状態で廊下に立っていました。よく見ると口の中にも便が入っていて…。 それ以降、同じように便を食べてしまうことが何度かあって。いつ便を口にしてしまうかわからず、常に目を離さないようにしているのがしんどいです。 (川島さん・会社員・56歳) 便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGです。ストレスを感じて、余計に食べるようになってしまう可能性があります。便が下着の中に残っていることで肌が不快で触って、手に着いた便を食べてしまった可能性があります。なので、排便のタイミングを把握して、下着の中に便が残っている時間を短くしましょう。空腹やストレスなどから便を食べてしまっている可能性があります。原因を把握して対応していきましょう。 認知症の親が便を食べてしまったら? 先日、家に帰ったら父が手を便で汚して廊下に立っていたんです。よく見たら口の中にも便があって…。たぶん食べてしまったんだと思います。それ以降、便を食べてしまったり、食べようとしたところを私が止めたことも何度かありました。ずっと目を離せないので、しんどくて…。毎回、父を叱るのですが食べるのを止めないんです。 実は…便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGなんです。 えっ、そうなんですか!?どうしてですか? 叱られるというのは誰しもストレスを感じますよね。そのうえ、認知症の方の場合、なぜ怒られているのか理解できない可能性があります。「なぜかわからないけど怒られる」というのはとてもストレスを感じることですよね。そのストレスが原因で、余計に便を食べるようになることもあるんです。 えぇ!?では、どうしたら良いんですか? 落ち着いた口調で、「便を食べるのは危険」と伝えましょう。便とわかっていない場合、「おしりに付いているものを食べるのは危険なんだよ」という伝え方でも良いでしょう。便を触っていたり、食べてしまっているのを見ると、どうしても怒りたくなると思います。が、そこはぐっと気持ちを落ち着けてから、話をしましょう。認知症の方との関わり方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の親が便を食べるのを予防するには 父が便を食べるのを止める方法はありますか?もう、どうしたら良いかわからないんです。 いくつか方法があります。ひとつずつ試していきましょう。 排便タイミングの把握 皮膚を保護する 汚れも予防する 排便タイミングを把握する まずは、お父様の排便のタイミングを把握しましょう。同じルーティンで生活していることが多いご高齢者は、排便のタイミングもある程度決まっています。そのため、1日の排便のタイミングや、毎日、排便がない場合や何日間隔で排便があるのかを把握してみましょう。トイレ介助をしている場合は、比較的、把握しやすいと思います。お父様がお一人でトイレに行く場合、いつもよりもトイレが長いときに排便していることが多いです。意識して記録しておきましょう。 排便のタイミングですか…。記録するのは良いんですが、タイミングを把握してどうするんですか? 排便のタイミングが把握できると、下着の中に排便してしまったときにすぐに確認できますよね。下着の中に便があると、気になって触ってしまうことがあります。それに手についた便を口にしてしまうことを防げるんです。できるだけ便が肌に触れている時間を減らすと、便を食べてしまう回数が減ると思いますよ。手で便をいじってしまうときの対応については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 皮膚を保護する また、肛門やおしりの周りにワセリンなどの保湿クリームを塗っておくのも効果があるかもしれません。というのも、下着やパッドの蒸れによって肌がかぶれ、おしりをかいてしまって便が手につくことがあります。あらかじめ、クリームで皮膚を保護しておくとかゆみの予防になるでしょう。 汚れも予防する お父様が便に触っているということは、お家の中が汚れやすいことはありませんか? そうなんです!特に父の部屋が汚れやすいんです。便がついた手でいろんなところを触ってしまうみたいで…。 便は臭いますから、掃除も大変ですよね。便を食べるのを予防するだけではなく、汚れの予防もすることで、相談者さんの負担も大きく減ると思いますよ。例えば、便がつきやすい場所にビニールの保護シートを貼ったり、シーツが汚れる場合は上から敷く防水シートもあります。 へー!そんなものがあるんですね。 もし、畳の部屋の場合、畳の目に汚れがつまりやすくて掃除が大変だと思います。そういうときは、畳の上に敷くフローリングカーペットがあります。それだけでもとても掃除が楽になると思いますよ。 認知症の親が便を食べる理由は? そもそも、どうして父は便を食べるようになってしまったんでしょうか? いくつか理由が考えられます。便を食べてしまう主な理由は以下の通りです。 肌に違和感がある 食べ物だと勘違いしている お腹が空いている 肌に違和感がある 下着やオムツの中に便があると肌がかぶれてかゆくなります。そのため、おしりが気になってかくことで便が手についてしまうことがあります。手についた便が何だかわからなくて、口に入れてしまうんですね。 父はリハビリパンツを使っているのですが、最近、濡れたパンツやパッドを自分で捨てられなくなってしまいました。もしかしたら、それで肌がかぶれているのかも…。 食べ物だと勘違いしている 便を食べ物だと勘違いしていることも考えられます。認知症の影響で、物を認識していてもそれが何だかわからなくなることがあります。手についた便が汚いものなのか、食べ物なのか何なのか理解できなくなってしまうんですね。 でも、おいしいものではないでしょうし、口の中に入れたらわかるものだと思いますが…。 いえ、加齢や認知症の影響で、味覚が鈍くなることがあるんです。なので、口に入れても食べ物なのかどうかがわかっていない可能性があります。 お腹が空いている お腹が減って便を食べてしまうんですか?食事は十分に食べさせているんですが…。 実は、認知症によって脳の一部が損傷することで、満腹を感じにくくなることもあるんです。なので、食べても食べても満腹感は薄く、常にお腹が減っている状態になることも。目についたものは何でも口に入れてしまうんです。こういう場合は、軽食を渡すことで便を食べる回数が減るかもしれません。 便のほかにも食べてしまいがちなもの 便のほかにも、食べ物ではないものを口にしてしまうことを「異食」と呼びます。認知症の症状のひとつです。 便以外にも食べてしまうことがあるんですか?何を食べてしまうんですか? その人にもよりますが、よく異食してしまうものには以下のものがあります。 ゴミ・ほこり 薬の袋・パッケージ ティッシュ 電池 タバコ 洋服のボタン・飾り 洗剤 いろいろあるんですね…。今のところ、父はこれらのものを食べてはいませんが、いつか口にしてしまうかも…。気をつけておかないと。 異食の危険性 異食をしてしまうと、以下のようにさまざまな危険性があります。 窒息する 中毒症状が出る 食道や内臓を傷つける 薬の袋などのビニール類、服のボタンなどは、気管に詰まって窒息してしまう可能性があります。また、洗剤を飲んでしまった場合、中毒症状が出る危険性も…。 中毒!?それは危険ですね。 そのうえ、当然ながら食べ物ではないものは胃の中で消化できずに残ってしまうことが多いです。すると、胃や腸などの消化器官を傷つけてしまうことも。口に入れてしまいやすいものは、手の届かないところにしまっておきましょう。異食があると常に目が離せなくて負担が大きいと思います。適度に気を抜けるように介護サービスの活用もしてくださいね。 便を食べたときに叱るのはNG.落ち着いて対応しよう 排便タイミングに合わせてトイレに座るなど、便が肌に触れる時間を減らそう ボタンや洗剤などを口にすることも。手の届かないところに置こう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; ...
2023/08/31
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。