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もう、母の認知症に我慢ができません!私や私の妻が母のトイレやお風呂の介助をしようとすると、大声で叫んで嫌がるのは毎日のことで、ときには手が出ることもあります。 それに、夜中に家から出ようとすることもあり、その度に私や妻が起きてなだめているのですが…。常に寝不足で体力的にももう限界です。 こんな状況をどうにかする方法はありませんか? (小泉さん・会社員・64歳) 在宅介護サービスは活用していますか?デイサービスやショートステイなど、一時的に介護施設で過ごすサービスがあるので、小泉さんご夫妻の負担がかなり減ると思います。また、介護施設への入居も合わせて検討してください。認知症ケアはかなり難しいです。なので、介護のプロに任せることも、ご家族ができる介護のひとつです。我慢の限界を超えてしまうとご家族が「介護うつ」になってしまうリスクがあるので、無理をせずに、介護サービスを活用しましょう! 認知症の親に我慢の限界!どうしたら良い? もう限界です。母の認知症がどんどんひどくなってきて、妻も私も疲れ切っています。以前からお風呂とトイレの介助が必要だったのですが、最近になって嫌がるようになりました。それも、大声で「助けて!」と叫んで抵抗するんです。気持ちが高ぶっていると手が出るときもあります。それに、夜中に起き出してきて家から出ようとするので、毎晩、私や妻が母をなだめないといけなくて…。ゆっくり眠れないので、いつも寝不足なんです。 それは本当に大変な状況ですね…。ちなみに、介護サービスを利用していますか? いえ、していません。以前、利用した訪問ヘルパーさんと母が折り合いが悪くて、訪問介護を使うのを止めてからは、何もサービスを利用していません。 お母様の状況を聞いていると、ご家族だけの介護はもう厳しいと思います。というのも、認知症ケアはかなり難しく、ご家族の負担がとても大きいんです。ですので、できれば介護サービスを利用することをおすすめします。 そうなんですよね…。私と妻だけでは、介護を続けるのは難しいと思います。でも、どのサービスを使えば良いんでしょうか? 介護サービスは、在宅介護サービスと施設介護サービスに分けられます。それぞれお話ししますね。 在宅介護サービスを使う お母様にぜひ使っていただきたいのは、次の在宅介護サービスです。 デイサービス ショートステイ デイサービスでは、日中の間、介護施設に通って介護サービスを受けられます。具体的には、食事、入浴、レクリエーションなどを提供しています。もちろん、必要であれば食事介助、入浴介助、排泄介助も受けられます。 デイサービスって聞いたことがあります。お風呂やトイレの介助も任せられるんですね! その次のショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。もちろん、宿泊している間の食事や入浴、レクリエーションなども提供しています。最大30日連続で宿泊できることもあり、ご家族のリフレッシュや介護施設に入るまでの順番待ちの間に利用されることもあります。 介護施設に入居する 在宅介護ではなく、施設入居を検討するのもひとつの手です。むしろ、小泉さんと奥様が限界を迎える前に、早めに検討することをおすすめします。 介護施設か…。いろんな種類がありますよね?よくわかっていないんですよね。 はい。介護施設にはたくさんの種類があります。認知症の方だったら、以下の施設がおすすめです。 特別養護老人ホーム グループホーム 介護付き有料老人ホーム 特別養護老人ホームは聞いたことがあります。でも、詳しくは知らないです。 そうでしたか!特別養護老人ホームは、要介護認定3以上の方が入居できる施設。介護が必要な方のための施設で、「終の棲家」として入居される方も多いです。ただ、公的施設ということもあって料金が安いので、入居の順番を待たないといけないことがほとんどです。なかには数年待つケースもあるようです。 人気なんですね…。ただ、うちの母は要介護2なので入居できないですね。その次のグループホームというのは? グループホームは、認知症の方向けの施設です。「ユニット」と呼ばれる最大9名の少人数のグループで生活をするのが特徴。掃除や料理などをご入居者が協力しながらおこなっています。もし、お母様がアットホームな施設が合いそうであれば、グループホームがおすすめです。 アットホームなところか…。母は人の好き嫌いがはっきりしているので、合わない人がいたらなじめなさそうです。 でしたら、介護付き有料老人ホームも選択肢のひとつです。比較的、大規模な施設が多く、合わない人がいたらフロアを変えるなどの対応もしてもらえるかもしれません。また、介護付き有料老人ホームも看取りなどの対応ができる施設ですので、最期までお母様を任せたい場合はおすすめです。 接し方を変えれば認知症の症状は緩和される? 介護サービスを利用すれば、私たちの負担が減りそうで安心しました。ただ、在宅介護サービスを使うにしても、介護施設に入居するにしても、しばらくは私たちが介護をしないといけませんよね。母の状態がこのままだと、どちらにしろ気が休まらない気がして…。 うーん。もしかしたら、お母様への対応を変えることで、認知症の症状が緩和するかもしれません。 えっ、私たちの対応を変えるだけで、症状が緩和するんですか? 認知症を進行させる原因のひとつにストレスがあります。認知症の方は、認知機能が低下することで不安を感じていることが多いんです。その不安感が和らぐことで、症状が緩和すると言われています。 へぇ!そうなんですね。具体的にはどうしたら良いんでしょう? では、詳しくお話ししていきますね。 認知症の人の関わり方のポイント 認知症の方は認知機能の低下や、加齢によって耳が遠くなっていることがほとんどです。なので、以下のようなことに気をつけてコミュニケーションを取りましょう。 話し方 話を否定しない ゆっくり話す 大きな声で話す 目線を合わせて話す 話をよく聞く 接し方 ペースを合わせる 無視をしない 役割を持ってもらう 特に気をつけていただきたいのが、「話を否定しない」です。認知症の方は、症状の影響で事実と異なる話をしたり、何度も同じ話をしたりします。でも、それに対して「それは違うよ」「さっきも言ったでしょ」と、認知症の方を否定するのは禁物なんです。 そうなんですか!?毎晩、母が「仕事に行かなきゃ」と言って出かけようとするので、「もう仕事はしていないでしょ!」と止めていたのですが…。いけないことだったんですね。 おそらく、お母様の中では仕事に行っているのが事実です。なので、それを否定してしまうと、混乱して不安になってしまうんですね。なので、「仕事は今日休みだよ」「まだ仕事の時間には早いから、もう一度寝よう」などの声掛けをすると、納得してもらえるかもしれません。認知症の方とのコミュニケーションは、その方の”世界観”に合わせるのが基本。事実と異なっていても否定をせず、話を合わせていると症状が穏やかになっていくと思いますよ。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 我慢の限界を超えると「介護うつ」になってしまう!? 今の状況が良くなりそうで良かったです。このままだと、私も妻もどうにかなりそうだったので…。 認知症の方の介護は大変ですよね。我慢の限界を超える前に、負担を減らす工夫をしていきましょう!限界を超えてしまうと、「介護うつ」になってしまうこともあるので…。 介護うつですか? はい。介護うつは介護が原因で起こるうつのことです。介護によって心身に大きな負担がかかり続けていると、発症してしまうことがあります。長期的に食欲や気力がなくなっていると、危険なサイン。趣味や好きなことを楽しめなかったり、気分が晴れない状態が続いている場合、介護うつの可能性が高いです。そうした状態になる前に、ショートステイを使うのもおすすめです。まとめて数日間ショートステイを利用して、ゆっくり休む時間を作りましょう。 介護サービスには、そういう使い方もあるんですね。私や妻が限界を迎える前に、介護サービスを活用していきたいと思います。 認知症の親の介護に限界を感じたら、介護サービスを積極的に使おう 関わり方を変えると症状が緩和されることも 我慢し続けると「介護うつ」になってしまう可能性も pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/08/30
最近、父の足腰が弱ってきたので父の部屋に介護ベッドを入れようと思っています。ただ、部屋が4畳しかなく、かなり狭いです。 4畳だと介護ベッドを入れるのは難しいですか? (南さん・パート・63歳) そんなことはありませんよ!標準的な介護ベッドのサイズは、「幅91cm×長さ191cm」ですので、このサイズが入れば問題ありません。ベッドを配置するときは、両側にスペースがあることが理想です。もし難しいようであれば、壁に片面を付ける形にしましょう。また、物を減らすことで意外と部屋が広くなることも。捨てる以外にもフリマアプリやリサイクルショップで売る方法もありますから、お父様と相談しながら断捨離することも検討してみてください。 部屋が狭くても介護ベッドは入る? 同居する父の足腰が弱ってきたので、介護ベッドを検討しています。ただ、父の部屋は狭くて4畳しかありません。こんなに狭いと、介護ベッドは使えないでしょうか? いえいえ、そんなことはありませんよ!介護ベッドが収まるスペースがあれば、基本的には利用できます。介護ベッドには、レギュラー、ミニ、ロングの3種類があります。それぞれのサイズは以下の通りです。 レギュラー 幅91cm×長さ191cm ミニ 幅91cm×長さ180cm ロング 幅91cm×長さ205cm 介護ベッドも普通のベッドと同じように、大きさにバリエーションがあるんですね。選ぶときは、どうやって選べば良いんでしょうか? 利用する方の身長を基準に考えると良いでしょう。目安は、「レギュラーは身長150~175cm」「ミニは身長150cm未満」「ロングは身長175cm以上」です。 でしたら、うちの父はレギュラーで良さそうです。ちなみに、うちの玄関もかなり狭いんですが、介護ベッドを運びこめますか? 介護ベッドには、組立て式のものが多くあります。組立て式のベッドを選べば問題ないでしょう。 介護がしやすい部屋の位置、レイアウトは? 実は、おうちの中でも在宅介護がしやすい部屋の位置があるんです。また、介護がしやすい部屋のレイアウトもあります。 介護がしやすい部屋の位置とレイアウト…。ぜひ教えてください! 介護がしやすい部屋の位置 おうちの中でも介護がしやすい部屋の理想は、以下の条件を満たしている部屋です。 トイレから近い部屋 換気のしやすい部屋 1階にある部屋 ご高齢になるとトイレが近くなりますよね。なので、ご自分でトイレに行く方の場合は、できるだけトイレに近い部屋が良いでしょう。また、反対にお部屋でオムツ交換をしたりポータブルトイレを利用する方の場合、換気をしやすい部屋がおすすめ。匂いなどがこもりやすいので、こまめに換気が必要だからです。 「1階にある部屋」というのは、2階以上の部屋だと階段の昇り降りがあるからですか? おっしゃる通りです。階段の昇り降りは、ご高齢者にとって大変危険。転倒のリスクがあるので、なるべく1階の部屋が良いでしょう。 介護がしやすい部屋のレイアウト そろそろ、本格的に介護が必要になりそうなので、介護ベッドを利用するのを機に、父の部屋を模様替えしようと思っています。どんなレイアウトだと介護がしやすいんでしょうか? 介護ベッドについては、両側にスペースがあるのが理想ですね。ベッド上で介助が必要になったときに、やりやすいんです。部屋の広さの関係で難しければ、ベッドの片側を壁につけて設置してください。もし、ポータブルトイレを利用するのであれば、ベッドのすぐ横に設置しましょう。夜間に起きてトイレに行く場合に、すぐに座れますから。 なるほど!ポータブルトイレも使おうと思っていました。ベッドのすぐ横ですね。 また、ベッドの上で過ごすことが多い場合は、ベッドの前にテレビを置くと見やすいですね。寝る前までテレビを見るご高齢者は多いですからね。 部屋が狭いのは物が多いせいかも? できることなら、今の狭い部屋ではなくて広い部屋に移させたいんですよね。最近、父の足元がおぼつかなくなってきて、物につまづいたりすることが多くなって…。 歩いているときにふらつくようになったら、歩行スペースの確保が重要です。なので、まずは今のお部屋の物を減らすことから始めてはどうでしょうか? 確かに…。長年、物があふれている家に慣れてしまっていましたが、物を処分する必要があるのかも…。 ご高齢者は、物を大切にする方が多いので、ご自宅の物が多くなりがちです。でも、体力の衰えから物を管理するのも難しくなりますし、何より転倒の原因になることもあります。それに、物を最低限にしたら、意外とお部屋が広くなることもありますよ。 北野室長の言う通りです!でも、父は物を捨てるのが苦手な人で、なかなか片付かないと思います。 確かに、「捨てる」と言うと抵抗のあるご高齢者は多いです。なので、捨てる以外の方法で処分するのはどうしましょうか?例えば、以下の方法です。 友人にあげる フリマアプリで売る リサイクルショップで買い取ってもらう 単に捨てるよりもひと手間かかる方法もありますが、「捨てる」ではなく「あげる」「売る」と言った方が、お父様の抵抗感も薄まるかもしれませんよ。 介護リフォームは介護保険の補助金が出る ご自宅で本格的に介護が始まる前に、在宅介護がしやすいように介護リフォームをするのもおすすめです。 介護リフォームって手すりをつけたりするものですよね?お金がけっこうかかりそう…。 実は、介護リフォームは、介護保険が適用されて補助金が出るんです。申請をすれば、お金が最大20万円戻ってきますよ。 20万円!それは嬉しいですね! ちなみに、介護保険が適用されるリフォームについて、厚生労働省は以下の内容のものと定めています。念のため確認しておいてください。 手すりの取付け 段差の解消 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 引き戸等への扉の取替え 洋式便器等への便器の取替え その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 引用元:「介護保険における住宅改修」(厚生労働省) 補助金が出る条件や申請方法などが決められています。介護リフォームをしたい場合は、ケアマネジャーさんに相談してみてくださいね。 介護に適した広さは6~8畳だが、狭い部屋でも介護ベッドは使える 物を減らすことで部屋を広く使えることも。断捨離も検討して pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...
2023/08/30
介護認定の結果がわかるまで介護サービスを利用できませんか? 母親の介護認定の申請をしているのですが、結果が出るまでかなり時間がかかると言われました。でも、母が認知症ということがわかって、1日でも早く介護サービスを利用したいんです。 (小西さん・会社員・57歳) 暫定ケアプランを作ってもらえば、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できますよ!介護保険は申請した日に遡って適用できますから、申請さえしてしまえば介護サービスを利用できます。ただ、想定よりも介護度が低くなってしまった場合、介護保険の利用上限額を超えた分は全額自己負担になるので、注意してください。 介護認定の結果が遅い!早く介護サービスを使うには? 先日、実家で一人暮らしをしている母が保護されたと警察から連絡がありました。様子がおかしいと思って検査をしたら、認知症ということがわかりました。これ以上、一人暮らしは難しいと思うのですが、同居は厳しい状況です。かかりつけ医に勧められて、介護認定の申請をしたのですが、結果が出るまで2ヵ月かかると言われてしまって…。介護認定の結果が出る前に介護サービスを使うことってできないんですよね? 高齢化の影響で介護認定の結果が出るのが遅くなっている地域もあるんですよね…。介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できますよ!それには「暫定ケアプラン」が必要です。暫定ケアプランとは、仮のケアプランのこと。見込みの介護度に基づいてケアプランを作成することで、介護サービスを利用できるようになるんです。 そういえば、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用したら、費用は全額負担になってしまうんですか?介護保険が適用されないと、1割負担にはならないですよね? いえいえ、介護保険は申請時に遡って適用できるんです。なので、介護認定の結果が出る前に利用した介護サービスも、介護保険が適用されて費用を1割負担に抑えられるんです。 それならよかった!それで、その暫定ケアプランってどうやって作ってもらえば良いんでしょうか? 暫定ケアプランは、既に担当ケアマネジャーさんが付いている場合はケアマネジャーさんに。初めての介護認定の場合はお住まいの役所や地域包括支援センターに相談すれば、暫定ケアプランを作ってくれますよ。 介護認定の結果の前に介護サービス使う注意点 暫定ケアプランは、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できるので便利な反面、注意が必要なこともあります。 注意が必要なこと?どんなことですか? 想定していた介護度よりも低い結果になった場合、一部が全額自己負担になる可能性があるということです。 全額自己負担ですか!?どういうことですか? 介護保険には利用限度額が決められており、所得に応じて自己負担割合も定められています。この利用限度額を超えた分は、全額自己負担になります。以下の表は、在宅介護サービスの利用限度額と自己負担分です。 利用限度額1割負担2割負担3割負担要支援15万320円5032円1万64円1万5096円要支援210万5310円1万531円2万1062円3万1593円要介護116万7650円1万6765円3万3530円5万295円要介護219万7050円1万9705円3万9410円5万9115円要介護327万480円2万7048円5万4096円8万1144円要介護430万9380円3万938円6万1876円9万2814円要介護536万2170円3万6217円7万2434円10万8651円 参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省) 例えば、要介護2と想定して暫定ケアプランを作ったのに、要介護1の結果になってしまった場合、要介護2の上限額まで介護サービスを利用していたら、超えた分の費用は全額自己負担になってしまいます。 えっ、じゃあこの表に基づいて考えると、3万円近く追加で支払わないといけないということですか? おっしゃる通りです。想定していた要介護度と異なる結果になることはあり得ますから、暫定ケアプランで介護サービスを利用するときには頭に入れておいてくださいね。 認定調査には同席しよう 介護認定の結果が思っていたよりも低くなってしまったらどうしよう…。予想よりも要介護度が低かったら、お金の負担が大幅に増えてしまう可能性があるんですよね? その通りです。なので、適切な要介護度と判定が出るために、認定調査には同席してください。 認定調査って、母の状態を調査するものでしたっけ。役所で説明を受けた記憶があります。私が遠方で暮らしているので同席するつもりはなかったのですが、同席は必要なんですか? はい。というのも、同席しないと実際の要介護度よりも低い結果になる可能性が高いんです。 えっ!そうなんですか!? 認定調査では、認定調査員がお母様の心身の状態を聞き取り調査をします。「今日は何日ですか?」「今日の朝食は何でしたか?」といった認知機能に関わる質問から、立ち上がりや歩行などの身体機能に関わる質問がされます。こういった質問に対して、理解している風に嘘をついたり、普段はできていないことも「できます」と回答してしまうご高齢者が多いんです。初対面の認定調査員に、できないことを話すことに抵抗があるのだと思います。 母も、話をよくわかっていないのにわかったふりをすることがあります。母も認定調査で見栄を張って「できます」と言ってしまうような気がします。 できないことを「できる」と言ってしまうと、要介護度は低く算出されてしまいます。となると、介護保険が適用される金額が減るので、古賀さんの負担が大きくなってしまうことに…。なので、古賀さんが同席して普段のお母様の様子や、介護をするうえで困っていることを伝えましょう。 そう考えると、確かに私が同席しないと適切な要介護度が出ないと思います。なんとか時間を作って認定調査には同席するようにします。 要介護度に納得いかないときは? もし、思っていたよりも要介護度が低い結果になってしまったらどうしたら良いんでしょう?介護サービスがあまり使えないのは本当に困るのですが…。 介護認定の結果に納得がいかないときは、「審査請求(不服申立て)」と「区分変更」という2つの方法で、介護認定のやり直しができます。ただ、審査請求の方は、認定結果が再度出るまでに数ヵ月かかるので、ほとんどの人は区分変更をしていますね。 区分変更の手続きはどうすれば良いんですか? まずは、役所や地域包括支援センターで区分変更申請をしましょう。その後の流れは介護認定の流れと同じです。認定調査を再度おこない、その結果や専門家の意見を元に要介護度を判定します。 また同じように認定調査をするんですね。 やはり、この認定調査でしっかり実情を伝えることが大切です。また、合わせて大切なのが医師の意見書です。介護認定にも区分変更にも医師の意見書は必要です。特に要介護度に納得が行かずに区分変更をするときは、想定と違う結果になってしまった旨を医師に伝えましょう。意見書の内容を充実させて、実情に合わせた要介護度が出るように計らってくれるでしょう。 医師の意見書も要介護度の判断には大切なんですね。とりあえず、早く介護サービスが利用できるように、役所に相談してみます! 介護認定の結果が出る前に介護サービスの利用ができる 予想よりも低い介護度になった場合は全額自己負担になる可能性も 介護度に納得いかないときは、区分変更をするのもアリ pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before { content: '[sample]'; ...
2023/08/29
父親の世話をするために、片道2時間かかる実家に週2回通っています。父はまだ介護が必要な状態ではないのですが、家事が一切できない人なので、私が掃除や洗濯、食事の準備をすべてしている状態です。 でも、父は「親の面倒を子どもが見るのは当たり前」と言って感謝の言葉もありません。むしろ、少しでも実家に着く時間が遅くなると怒鳴りつけるような人です。 私はフルタイムで働いていますし、自分の家のこともしないといけません。父の面倒を見るのに疲れてしまいました…。どうにかこの状況を変える方法はないでしょうか? (小西さん・会社員・57歳) お父様のお世話とご自宅の家事に仕事…。本当に大変ですよね。少しでも負担を減らすために、介護サービスを活用してみてはどうでしょうか?例えば、訪問介護なら掃除や洗濯、食事の支度をしてもらえます。他にも、デイサービスに通えば、食事や入浴サービスの提供を受けられますし、運動する機会を増やせるでしょう。無理をすると、介護離職や介護うつになってしまう可能性もあります。そうならないためにも、適度に力を抜いてくださいね。 親の面倒を見るのに疲れたら介護サービスを使おう 父親が家事がまったくできないので、週2回、片道2時間かけて実家に帰っています。母が生きていたころは、母に家のことを任せっぱなしだったせいで、掃除、洗濯、食事の支度もろくにできず、すべて私がやっているんです。私はフルタイムで働いていますし、自分の家のこともやらないといけません。まともに自分の時間も取れなくて、もう疲れました…。この状況を変える方法はありませんか? お父様のお世話とご自宅の家事とお仕事…。本当にお忙しいと思います。小西さんの負担を少しでも減らすために、介護サービスを活用するのはどうでしょうか? 介護サービスですか?でも、父は介護は必要ありませんよ。確かに最近、足元がふらついてきたり、自宅で転倒したことはありますが…。 実は、介護サービスは、直接体に触れる介助以外にも利用できるんです!例えば、以下の2つのサービスがお父様におすすめです。 訪問介護 デイサービス 訪問介護 訪問介護では、「生活支援」と「身体介護」の2つのサービスを提供しています。そのうち、お父様におすすめなのは生活支援サービスです。 具体的にはどんなサービスなんですか? 生活支援サービスは、掃除や洗濯、料理などをおこないます。買い物の代行もやってくれますし、小西さんが帰省される回数を減らせるのではないでしょうか? それは助かります!特に料理と買い物がネックになっていて、食事をレンジで温めるだけにしておいてくれると父も食べられると思いますし…。帰省する回数が、週2回から週1回になるだけでもだいぶ負担が減りますね。 デイサービス デイサービスの利用もおすすめです。デイサービスは、日中に介護施設に通ってサービスを受けるもの。食事や入浴、レクリエーションなどを提供してくれます。なかには介護度が高い人が多いデイサービスもありますが、運動やリハビリに力を入れている施設であれば、お元気な方も多いです。他のご利用者と交流する機会も作れますよ。 良いですね!父は実家にこもりきりでろくに外出もしないので、良い気分転換になりそうです。 おっしゃる通りです!お一人暮らしのご高齢者は運動不足やうつになりやすい傾向があります。デイサービスを活用して、出かける機会を作るのがおすすめです。それに、デイサービスの日の分の食事を準備しなくて良いですし、転倒の危険性のある入浴が介護職員の見守りがあるところでできるのが安心ですよね。 介護認定を受けよう 介護サービスを使うことをまったく考えていなかったので、盲点でした。介護サービスの知識がほとんどないのですが、どうやって利用すれば良いんでしょうか? 介護サービスを利用するには、まず介護認定を受ける必要があります。介護認定を受けると、介護の必要性を「要支援1」から「要介護5」の7段階で判定されます。その要介護度によって利用できる介護サービスの量や種類が決まります。まずは介護認定を受けるための申請をしましょう。お父様がお住まいの地域の役所などで申請ができますよ。 まずは役所ですね。わかりやすい場所で良かった。 申請をしたら、以下の流れで調査と判定がおこなわれます。 ここでポイントとなるのが、「訪問調査」。ケアマネジャーなどの認定調査員がご実家を訪問してお父様の心身の状態を調査します。できれば、この訪問調査には小西さんも同席してください。 都合がつけば同席しますが…。なぜ同席した方が良いんですか? お父様お一人で訪問調査を受けた場合、実際にはできなくて困っていることも「できます」と答えてしまって、要介護度がつかない可能性があるんです。要介護度がつかないと介護サービスは利用できませんから、介護サービスを使って小西さんの負担を減らすことができなくなってしまいます。 それは同席しないと!父のことなので、見栄を張って何でも「できる」と言ってしまいそうですし。でも、私が同席しても、何をすれば良いんでしょう? お父様が日常生活でできなくなっていることや、小西さんがお父様のお世話で大変な思いをしていることを率直に伝えましょう。お父様がいる前だと言いにくいと思うので、お父様がいないところで認定調査員に伝えると良いと思いますよ。 なるほど!そうすれば良いんですね。 訪問調査の後は、調査の結果をもとに一次判定がおこなわれ、二次判定が専門家によって実施されます。その後に認定結果が出るので、申請から結果が出るまではおおよそ1ヵ月程度かかります。 疲れたまま親の面倒を見続けるとどうなる? 介護サービスを利用したいですが、介護認定の手続きがあったり利用するまでもいろいろと大変なんですね。大変とはいえ、すぐに介護サービスを使わないといけない状態ではないので、しばらく様子見かな…。 無理をしていませんか?無理が続くと、小西さんの方が倒れてしまって小西さんの将来の生活にも影響しかねないので、無理はしないでくださいね。疲れたままご家族のお世話を続けていると、以下のような危険があるので心配なんです…。 介護離職 介護放棄 介護うつ 介護離職 ご家族の介護をする方のなかには、仕事を辞めてしまう人がいます。「介護に集中するため」というのは良いことですが、私は介護離職をおすすめしていません。 なぜですか?私は、今はフルタイムで働けていますが、父が本格的に介護が必要になったら、仕事の量を減らすか、仕事を辞めることも考えていました。 介護離職をおすすめしない理由はいくつかあります。まずは収入が減ること。介護に集中することで介護サービスを使う量が減り、介護の費用を減らせると思いますが、それ以上に収入が減ります。経済的な負担が大きくなるでしょう。また、いったん仕事を辞めてしまうと、介護が終わった後の再就職が難しくなる可能性があります。介護のために仕事のブランクが10年あった場合、年齢によっては再就職が難しくなるかもしれません。キャリアアップも難しくなることも考えられます。 そうか…。もし、今、退職して10年介護をしたら私は70歳近くになります。そうなると、再就職は難しいかもしれませんね…。 それに、仕事を辞めて介護に集中すると、精神的な負担も増えることがわかっています。次のグラフを見てください。 経済的負担が増えるのはわかります。が、精神的な負担も増えていますね。仕事との両立をしなくて良い分、精神的な負担が減りそうに思えますが…。 実は、仕事を辞めると生活が”介護一色”になります。常に介護のことを考えていたり、介護の対象である親御さんなどと一緒の時間が増えて、ストレスに感じることが多くなるようです。仕事を辞めると、時間に余裕ができても息抜きができなくなってしまうのかもしれません。 確かに…。もし、仕事を辞めて父と一緒にいる時間が増えたら、時間ができても息が詰まるかもしれません。 介護放棄 介護放棄とは、介護をすべて投げ出してしまうことです。「ネグレクト」とも呼ばれます。親御さんなどが介護が必要な状態と知りながら放置することを指します。この介護放棄は、罪に問われる可能性もあります。というのも、子どもやきょうだい、配偶者などの家族には、扶養義務があると民法で定められています。ちなみに、以下の人に扶養義務があります。 つまり、この範囲の人が介護を放棄したら、罪に問われるかもしれないということですね。 おっしゃる通りです。ただ、扶養義務とは必ずしも直接的に介護をしないといけないものではありません。忙しかったり、身体的な理由から直接の介護ができない場合は、経済的な支援だけでも良いとされています。お父様の生活を支援するのは、何も家事を代わりにすることだけではありません。お金の援助をしたり、介護サービスの手続きをすることも支援につながりますから、小西さんご自身の負担が少なくて済む方法を選んでくださいね。 介護うつ 介護うつは、介護が原因でうつになってしまうことです。在宅介護というのは、介護をするご家族の心と体の負担が大きくなりがちです。大きすぎる負担が続いた結果、何も手につかない無気力状態になってしまうこともあるんです。 最近、ニュースでも介護が大変で追い詰められて虐待してしまう話を聞きますよね…。 はい。介護は一時的なものではなく、長期に渡ることが多いです。負担がかかり続けてしまうと、心を壊してしまうんですね。加えて、介護のせいで介護をする人が体を壊してしまうことも…。「親御さんを優先してご自分の体調を後回しにした結果、病気に気が付かずに倒れてしまう」ということも珍しくありません。 確かに。介護が本格的に始まったら、病院に行く時間もなさそうですし…。 介護をする人が倒れてしまったら、介護が必要な親御さんは生活ができなくなってしまいます。親御さんの暮らしが立ち行かなくなり、最悪の場合、亡くなってしまうケースも…。まだお父様は、本格的な介護が必要な状況ではないとは思います。ですが、今のうちから介護サービスを積極的に活用して「楽な介護」をしていきましょう! 親の面倒を見るのに疲れたら介護サービスを活用して! 介護サービスを使うために介護認定を受けよう そのままだと介護離職・介護うつなどになる可能性も pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...
2023/08/28
先日、認知症の親御さんを介護している友人に、「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。具体的には、どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 私も認知症の母の介護をしており、このところ急に症状が悪化しているような気がしています。汚れたパッドが部屋に投げ捨てられていたり、着替えを手伝おうとすると大声で叫んで暴れるようにもなってしまいました…。 言ってはいけない言葉を使うと、どうなってしまうんですか? (松原さん・自営業・65歳) 認知症の人を否定したり、急かしたり、責めるような言葉はNGです。というのも、こうした言葉によって、不安が強くなってストレスを感じ、認知症が進行してしまうことがあるからです。なので、食事をしたのに「ご飯を食べていない」と言われたときは、「今作っているから待っていてね」と言ったり、「壁に虫が這っている」と幻覚を見ている様子があれば、「追い払っておいたよ」と声掛けをしましょう。認知症の人の言葉が現実と異なっていても、それを指摘せずに、話を合わせることが大切です。 認知症の人に言ってはいけない言葉がある? 認知症の親御さんの介護をしている友人から「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。私も認知症の母を介護しているので気になっていて。どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 認知症の方が不安になってしまうような言葉は、言ってはいけません。具体的には以下のような言葉です。 否定する言葉 脅かす言葉 急かす言葉 責める言葉 できることを奪う言葉 否定する言葉 認知症の人自身や、その人の言葉を否定する言葉はNGです。例えば、以下のような言葉です。 (「仕事に行く」と言われて)「もう仕事は辞めたでしょ」 (食事後に「ごはんを食べていない」と言われて)「さっき食べたばかりでしょ」 (虫がいないのに「虫がいる」と言われて)「虫なんてどこにもいないよ」 (「家に帰る」と言われて)「ここが家でしょ」 認知症になると直近の記憶を忘れてしまいやすくなるので、食事を摂ったことを忘れてしまうことがあります。そのため「まだご飯を食べていない」と言うこともあります。それに対して、「さっき食べたでしょ」と否定してしまうと混乱させてしまうことがあります。 なぜでしょうか?実際には、ご飯を食べているんですよね? 認知症の方にとっては、「ご飯を食べていない」のが事実です。認知症による物忘れの場合、「さっき食べたでしょ」と伝えても思い出せないことが多いんです。 だから、事実を言っても不安を感じるだけになってしまうんですね。 脅かす言葉 (お風呂に入らなくて)「頭がかゆくなっても知らないよ」 (食事を拒否されて)「あとでお腹減っても食べ物ないからね」 これらの言葉は、認知症の人に介護を拒否されたときに言ってしまいがちな言葉です。介護をしていると忙しいので、どうしてもいらだってしまいます。そのうえ、介護を拒否されて家事などが上手く進まないと、脅かすような言葉を使って、思い通りに動いてもらおうとしてしまうこともあるでしょう。ただ、こうした言葉は認知症の人にとって大きなストレスになりかねないので、使ってはいけない言葉なんです。 急かす言葉 在宅介護をしていると、忙しくて以下のような言葉を使ってしまっているかもしれません。 「早くして」 「いつまでやっているの?」 「まだ?」 加齢によって身体機能が低下して体が思うように動かせなくなったり、認知機能の低下によってより動作に時間がかかるようになります。着替えをしたり、食事をしたり、靴を履いたり…。これまで当たり前にできていたことに、時間がかかっていると、思わず「早くして」と言ってしまうこともあるかもしれません。 そうなんです!何をするにも時間がかかるようになってしまって。特に朝はぐずぐずしてなかなか着替えないので、「早くして」と言ってしまいます。私が手伝おうとしても怒鳴って拒否されるし…。私が言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれませんね。 そうだったんですね…。忙しくてなかなか難しいかもしれませんが、時間がかかることを予想して余裕を持って行動するのが良いかもしれません。 責める言葉 責めるような言葉も、認知症の人に言ってはいけない言葉のひとつです。例えば、以下のような言葉です。 「そんなこともできないの?」 「さっきも言ったよね」 「同じ話を何度もしないで」 あ…。これも心当たりがあります。病院の予約日時や、道具の使い方を教えても母が覚えていないので、「さっきも言ったよね」と責めてしまうことがよくあります。 認知症になるとできないことが増えていきます。それを認知症の方ご本人も自覚していることが多いんです。なのに、そのうえ、ご家族から責められると自信がなくなってしまいますよね。責めるような言葉は、プライドや自尊心を傷つけてしまうのでNGなんです。 できることを奪う言葉 「できることを奪う言葉」ってどんな言葉ですか? 具体的には、こんな言葉です。 「私がやるから手を出さないで」 「危ないから触らないで」 認知症になってできないことが増えていくご家族を見ていると、心配する気持ちから「やらないで」と代わりにやってしまいがちです。なかには本当に危険なこともあるかもしれませんが、ご本人ができることは見守って自分の手でやってもらうことが大切です。 うーん、でも私がやった方が早いことも多いんですよ。母に任せているとやたら時間がかかって。 そういうこともありますよね。でも、そうしてお母様のできることを奪ってしまうと、さらにできることが減ってしまう可能性があるんです。時間がかかっても、ご自分の手でできることであれば、できるだけお母様に任せましょう。 かける言葉によって認知症が悪化する!? そういえば、「認知症の人に言ってはいけない言葉」を言い続けていると、どうなってしまうんですか? 認知症の症状が進行してしまう可能性があります。 えぇ!?そうなんですか!なぜですか? 認知症の人に言ってはいけない言葉は、認知症の人にとってストレスを感じる言葉だからです。ストレスを感じると、脳の細胞が死滅することがわかっています。つまり、脳の機能低下が加速するというわけです。脳の機能低下が進むと、認知症の状態が進行し、症状も悪化してしまいます。 えぇ…そうなんですね。このところ、母の認知症がひどくなっているように感じていましたが、それは私が認知症の人に言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれません…。 認知症の人にはどんな言葉をかければ良い? 母に、認知症の人に言ってはいけない言葉をたくさん言ってしまっていたのがよくわかりました。言わないようにしたいのですが、だからといって、どんな言葉をかければ良いのかわからなくて…。 認知症の方への受け答えは難しいですよね。なので、認知症の方によくある発言と、それに対する返答をリストアップしてみました。 「ご飯を食べていない」には「今作っているところだよ」 「財布を盗られた!」には「一緒に探そう」 「家に帰りたい」には「車を呼んでるからお茶を飲んで待っていて」 「虫が這っている!」には「追い払っておいたよ」 「今作っているところだよ」 認知症の症状のひとつに、直前の出来事を覚えられないことがあります。そのため、食事を食べたばかりなのに「ご飯を食べていない!」と言うことがあるんですね。 聞いたことがあります。うちの母はそういったことはありませんが…。 そのときに、「さっき食べたでしょ!」と返すのはNG。「なんでご飯を食べさせてくれないの!」とさらに興奮させてしまう可能性があります。そこで、「今、食事を作っているところだから待っていてね」と声をかけたり、軽食を渡すのがおすすめです。時間を空けて、「ご飯を食べていない!」と興奮した気持ちが落ち着くのを待ちましょう。認知症の方が食事をしたことを忘れてしまうときの対処法については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「一緒に探そう」 認知症の方の訴えでよくあるのが、「財布が盗まれた!」というものです。特に一番近くにいるご家族が犯人にされてしまうケースが多いんです。そのため、「盗んでないよ!」「自分でどこかにしまったんでしょ!」と言うのは良くありません。認知症の方の頭の中では、盗まれたと思い込んでいるからです。そこで、「まずは家の中を一緒に探そう」と声をかけましょう。また、一緒に探すうちに財布が見つかっても、ご家族の手から渡すのもNGです。 どうしてですか? ご家族から財布を渡すと、「盗んだ犯人だから財布の場所を知ってるんだ」と思い込みが強くなってしまうことがあるからです。「やっぱりあなたが犯人なんでしょ!」と言われてしまうかもしれません。なので、財布の場所がわかったら、ご本人が見つけられるようにそれとなく誘導するのがベターです。「物盗られ妄想」については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていて」 自宅にいるのに「家に帰りたい」と言われたときは、「ここが家でしょ」と否定するのではなく、「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていてね」と、認知症の人の世界観に合わせた返事をしましょう。もちろん、実際に車を呼んでいるわけではありませんが、「車を呼んでいるから」と言われれば認知症の人の気持ちが落ち着きます。不安な気持ちから「家に帰りたい」と言っているので、不安な気持ちを取り除くことが大切なんです。 事実を伝えるんじゃなくて、気持ちが落ち着くような言葉をかけるんですね。 認知症の方が「家に帰りたい」と言うときの対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「追い払っておいたよ」 認知症の影響で、幻視や幻聴が起こることがあります。壁紙の模様が虫に見えたり、「庭に知らない人が立っている」といった現実にはないものを見る症状です。そこで「虫なんてどこにもいないよ」などと返すのはおすすめできません。認知症の人にとって、「虫」や「知らない人」も存在していますから、それを否定するとさらに不安になってしまいます。 実際には見えないものなのに、どうやって対応したら良いんですか? 否定せず、世界観を合わせます。例えば「追い払っておいたよ」と言えば落ち着くかもしれません。それでも怖がっている様子があれば、「追い払っておくから向こうの部屋に行こうか」と場所を移動するのが良いでしょう。いずれにしても、幻視や幻聴の内容に合わせて対応すると、納得してくれることが多いですよ。幻視や幻聴の対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてくださいね。 認知症になってから、母が今までと大きく変わってしまって、思い通りにならないことが増えてきました。何をするにも時間がかかったり、トンチンカンなことを言いだしたり…。でも、それを責めるのはいけないことだったんですね。まずは母の感じていることを否定しないで話をするように心がけます。 否定・急かす・責める言葉などは認知症の人に言ってはいけない 言ってはいけない言葉をかけることで認知症が悪化することも 認知症の人の世界観に合わせた声掛けをしよう pre { margin: 40px 0; ...
2023/08/25
最近、認知症の父親が便を失禁するようになってしまいました。毎日のように下着が便で汚れていて、かなり参っています。 こういう場合って、区分変更をした方が良いのでしょうか?区分変更をしたら要介護度はいくつになりますか? (福井さん・パート・63歳) 「前と状態が変わったな」と感じたら、区分変更をおすすめします。ただ、要介護度は、心身の状況などから総合的に判断されるものなので、「便失禁をしたら要介護いくつ」と決まっているわけではありません。各要介護度の状態の目安はありますが、必ずしもその要介護度になるわけではないので、あくまで参考として把握しておくと良いですね。ご高齢者は便秘になりやすい傾向があり、便秘が便失禁の原因となることも。便秘を解消することが便失禁の予防につながることもあります。区分変更と合わせて便失禁の対策もうっていきましょう。 認知症の親が便失禁をするようになったら介護度はどうなる? 認知症の父が便を失禁するようになってしまいました。ほぼ毎日なので、汚れた服や布団を掃除するのが大変で…。このように父の状態が悪くなった場合、区分変更をした方が良いのでしょうか? おっしゃる通り、お父様の状態が変化しているので、区分変更するのがおすすめです。要介護度が上がる可能性がありますから。 やっぱり…。区分変更をした場合、要介護度はいくつになるんでしょうか? うーん。こればかりはなんともお伝えできません。というのも、「便失禁をしたら要介護いくつ」といったように、要介護度は決められていないからです。要介護度は、その方の心身の状態から介護の必要性を総合的に判断するものなので、明確に「この症状があったら要介護いくつ」という設定をされていないんですね。 そうなんですね…。父は今、要介護1なのですが、区分変更をして要介護いくつになるのかはわからないんですね。 今、はっきりとお伝えできないですね…。申し訳ないです。ただ、各要介護度の状態の目安はお伝えできますよ。以下の通りです。 要介護度要介護認定の目安状態の目安となる具体例自立支援が必要ない状態。一人で支障なく日常生活を送れる要支援1基本的に一人で生活ができるが、家事などの支援が必要。適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。掃除や身の回りのことの一部において、見守りや手助けが必要。要支援2基本的に一人で生活ができるが、要支援1と比べ、支援を必要とする範囲が広い。適切なサポートがあれば、要介護状態になることを防げる。身だしなみを自分だけでは整えられない、立ち上がりや歩行などでふらつく、入浴で背中が洗えないなど支援が必要な場面がある。要介護1基本的に日常生活は自分で送れるが、要支援2よりも身体能力や思考力の低下がみられ、日常的に介助を必要とする。排泄や入浴時に見守りや介助が必要。認知機能の低下がみられる。要介護2食事、排泄などは自分でできるが、生活全般で見守りや介助が必要。自力での立ち上がりや歩行が困難。爪切り、着替えなどにも介助が必要。「薬を飲むのを忘れる」「食事をしたことを忘れる」などの認知症初期症状がみられる。問題行動をとる場合もある。要介護3日常生活にほぼ全面的な介助が必要。食事、着替え、排せつ、歯みがきなど、日常生活において基本的に介助を必要。認知機能の低下によって問題行動をとる場合もある。要介護4介助がなければ日常生活を送れない。排せつ、食事、入浴、着替えなどすべてにおいて介助が必要。思考力の低下もみられ、認知症の諸症状への対応も必要になることもある。要介護5介助なしに日常生活を送れない。コミュニケーションをとることが難しく、基本的に寝たきりの状態。日常生活全般が自分でおこなえないため、寝返りやオムツの交換、食事などのすべてで介助が必要。会話などの意思疎通も困難。 この表もあくまで目安。便失禁について明確に触れているわけではないので、参考程度に考えてください。 状態が変わったら区分変更をしよう 実は、区分変更をしたことがないんです。父の状態が以前より悪くなっているのを感じるので、区分変更をしたいのですが、どんな手続きをしたら良いのでしょうか? では、区分変更の流れについてお話ししますね。 区分変更の流れ 区分変更の手続きは、介護認定を始めて受けたときと大きく変わりません。ただ、はじめに「介護認定申請」をしていたものが「区分変更申請」に変わるだけ。介護認定申請は、お住まいの地域の役所や地域包括支援センターでおこなったと思います。区分変更申請も同様で大丈夫です。担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーさんが申請を代行してくれることもあります。区分変更申請をした後は、以下のように介護認定と同じ流れで進みます。 要介護度が上がったら介護サービスを増やそう もし、区分変更の結果、父の要介護度が上がったら、利用できる介護サービスの量が増えるんですよね? おっしゃる通りです!要介護度が上がると介護保険が適用される金額が増えます。そのため、介護サービス費の負担が安く抑えられる量も増えるんです。 具体的には、どのくらい増えるんでしょうか? 在宅介護サービスの利用限度額は以下のとおりです。 要介護1で自己負担割合が1割負担の場合、16万7650円が利用限度額です。もし、要介護2に上がった場合、利用限度額は19万7050円になります。つまり、要介護度が上がると、介護サービスが1割負担で利用できるのが2万9400円分増えるということです。 3万円近くも多く利用できるようになるんですね!もっと介護サービスを使いたいと思っていたので、助かります。 在宅介護サービスの一覧 要介護度が上がって介護サービスの利用限度額が増えるんだったら、もっとデイサービスの回数を増やしたいです。 デイサービスを利用しているんですね!確かに、今、利用している介護サービスの頻度を上げるのはおすすめです。その他にも、利用していない介護サービスを追加するのもひとつの手ですね。 他の介護サービスというと、どんなものがあるんですか? 在宅介護サービスには以下のようなものがあります。 訪問介護 訪問看護 訪問入浴 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 夜間対応型訪問介護 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ(デイケア) 短期入所生活介護(ショートステイ) 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 福祉用具レンタル 介護リフォーム 例えば、ショートステイを利用するのはどうでしょうか?ショートステイは、1日から利用できる短期宿泊サービスです。排泄の介助はもちろん、栄養バランスの整った食事や、入浴といったサービスを提供しています。宿泊中のお父様のお世話はすべて任せられます。もし、便失禁のこともあって介護のストレスが溜まっていたら、ショートステイにお父様を任せて、数日リフレッシュするのも良いんじゃないでしょうか? 父を任せてリフレッシュなんて…。そんなことして良いんですか? もちろんです!もともと、ショートステイは介護をするご家族がリフレッシュするのも目的のひとつですから。ストレスを溜めすぎると福井さんの方が参ってしまいますから、適度に息抜きを挟みながら、介護を続けていきましょう! 施設介護サービスの一覧 もし、介護量が増えて在宅介護の継続が難しい、と感じるようになったら、老人ホームに入居することも検討してみてください。 老人ホームですか…。考えたこともなかったです。 一口に老人ホームと言ってもさまざまな種類があります。一覧にまとめましたので、老人ホームを検討することになったら、ぜひ参考にしてみてください。 民間施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ介護付き有料老人ホーム0~数千万円15~30万円要介護1以上○住宅型有料老人ホーム0~数千万円11~25万円自立~要介護3程度△サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円11~25万円自立~要介護1程度△グループホーム0~数十万円10~15万円要支援2以上◎ 公的施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ特別養護老人ホーム(特養)0円8~14万円要介護3以上○介護老人保健施設(老健)0円7~14万円要介護1以上○介護医療院0円7~14万円要介護1以上○養護老人ホーム0円0~14万円自立×ケアハウス0~数十万円6~17万円自立~要介護3程度△ 認知症の人が便失禁を予防する方法は? 要介護度が上がって、介護サービスを使う量を増やしたとしても、父の便失禁が続くなら介護が大変なままなんですよね…。どうにか、便失禁がなくなる方法はないでしょうか? そうですね…。確実になくなるとは言い切れませんが、以下のような方法が効果があるかもしれません。 排便タイミングを把握する 食事を整える 適切にオムツを使う 適切に下剤を使う 排便タイミングを把握する まずは、お父様の排便タイミングを把握してみましょう。お父様がお一人でトイレに行っているようであればいつ排便しているのか把握しにくいですが、排泄のタイミングはわかるはず。「いつもより長くトイレに入っているな」「今日はトイレの回数が多い」など、記録をつけているうちに、排泄や排便のルーティンが把握できると思います。 トイレのタイミングを把握するんですね。でも、それで便失禁がなくなるんですか? トイレのタイミングに合わせて、「そろそろトイレに行く?」と声掛けをすると、いつものタイミングを逃さず、トイレで排便できるようにするんです。また、食後にトイレに行く習慣を身につけるのもおすすめ。食後は腸の働きが活発になるので、排便しやすい時間帯です。そのタイミングでトイレに誘導すると、自然に排便しやすくなり、便秘による便失禁が減るでしょう。 食事を整える 食事量が少なくて便秘になっている場合、食物繊維を多く摂ることで便秘が解消され、便失禁も減ることがあります。なので、普段の食事で以下のような食物繊維が豊富な食材を取り入れると良いでしょう。 さつまいも 玄米 大豆 ごぼう 適切にオムツを使う 加齢によって肛門周辺の筋肉である肛門括約筋が衰える傾向があります。そのため、肛門がしっかり閉じられないために、知らず知らずのうちに便失禁をしてしまうこともあるんです。そうした場合、下着を汚してしまうので、オムツを使うのも検討してください。 オムツですか。まだ早いような気がするのですが…。 下着のような履き心地のショーツ型の紙パンツである「リハビリパンツ」もあります。リハビリパンツであれば、紙オムツよりもお父様の抵抗感が薄いと思いますよ。いろんな手を尽くしても、すぐにお父様の便失禁が100%なくならないかもしれません。そのため、少しでも福井さんの介護の負担を減らすためにリハビリパンツを利用するのをおすすめします。 適切に下剤を使う 下剤を使って便秘を解消することも、便失禁を予防することにつながります。ただ、ご高齢者は、若い世代よりも薬が効きすぎてしまうことが多いんです。便秘を解消しようとして下剤を使ったら、むしろ下痢になってしまった…ということも珍しくありません。 下剤の調整って難しいんですね。 そうなんです。なので、かかりつけ医などに相談しましょう。便秘で悩んでいるご高齢者はたくさんいらっしゃるので、すぐに薬を処方してくれると思いますよ。その際に、便失禁があることも伝えておくと、うまく薬の量を調整してくれるでしょう。 便失禁をしているから、要介護度がいくつ、と決まっているわけではない 区分変更で介護度が上がったら、介護サービスを増やして、負担を減らそう 排便タイミングを把握したり、適切にオムツを使って便失禁を防ごう pre { margin: 40px 0; background: #333; ...
2023/08/23
認知症が進んできたのか、母親がお風呂を嫌がるようになってしまいました。昔はお風呂が大好きだったのに、最近は月に1~2回しか入浴しません。 においもありますし、フケもすごいです。下着も替えておらず衛生的に良くないので、お風呂に入るように言うのですが、口を出すとものすごい勢いで怒りだして…。毎日、口論になるので疲れました。 どうにか母が入浴してくれる方法はないでしょうか? (鎌田さん・会社員・61歳) まずは、どうしてお風呂を嫌がるのかを考えてみましょう。認知症の方がお風呂を嫌がる理由には、「入浴の必要性がわからない」「入浴の方法がわからない」「裸になるのが恥ずかしい」などがあります。理由がわかったら、その対策を考えます。なかでも、適切な声掛けが大切。お母様がお風呂に入ったと思い込んでいる場合、「体が汚れているからお風呂に入ろう」と言っては逆効果。「お風呂に入っているから汚れていない!」と怒らせてしまう可能性があります。ご家庭での介助が難しい場合は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用して、介護のプロに頼るのもひとつの手です。 認知症の母がお風呂を嫌がるのはなぜ? 昔はお風呂が大好きだったのに、認知症のせいか母親が入浴を嫌がるようになってしまいました。最近は月に1~2回しかお風呂に入りません。そのため、髪の毛のフケがすごいし、においもすることがあって…。お風呂に入るように何度言っても耳を貸しません。どうにかお風呂に入らせる方法はないものでしょうか? それは衛生面で心配ですね…。お母様にお風呂に入っていただく方法を探す前に、どうしてお風呂を嫌がるのかを考えてみましょう。原因が分かれば、対応方法もわかるかもしれません。 確かにそうですね。どうして母はお風呂を嫌がるのでしょうか? お母様の状況を見ないとはっきりとしたことはわかりませんが、一般的に認知症の方がお風呂を嫌がる理由には以下のようなものがあります。もしかしたら、この中にお母様がお風呂を嫌がる理由に当てはまるものがあるかもしれません。 入浴の必要性がわからない 入浴の方法がわからない 入浴が面倒くさい お風呂に悪いイメージがある 裸になるのが恥ずかしい 介助がいらないと思っている 入浴する気分ではない 入浴の必要性がわからない 認知症の影響で、入浴する必要性がわからなくなることがあります。 どういうことでしょうか?何週間もお風呂に入らなければ、頭がかゆくなったり、においがしたりするものだと思いますが…。 それが、認知症になるとお風呂に入っていると思い込んでしまうことがよくあるんです。お風呂に入っているから体は汚れていないし、入浴しなくて良いと思ってしまうんですね。なので、頭がかゆくてもお風呂に入っていないことと結びつかないんですよね。それに、年を重ねると嗅覚がにぶることが多いので、ご自分のにおいに気がついていないのかもしれません。 お風呂に入っていると思い込んでるんだ…。それじゃあ、確かに「お風呂に入っていないから入って」と言っても耳を貸さないですよね。 入浴の方法がわからない 認知症の症状のひとつに、「実行機能障害」「失行」というものがあります。これらの症状のせいで、入浴の仕方がわからなくなっている可能性があります。 入浴の仕方がわからなくなることなんてあるんですか? そうなんです。例えば、実行機能障害とは、物事を順序立てて作業できなくなること。入浴の「1枚ずつ服を脱ぐ」「シャンプーで頭を洗って、シャワーで流す」といった作業もできなくなってしまうんです。また、失行はそれまでできていたことができなくなること。具体的には、体を洗うために何をしたら良いのかがわからなくなってしまったりするんです。 認知症になると、今まで当たり前にできていたのに急にできなくなってしまうことがあるんですね…。 入浴が面倒くさい 誰しもお風呂に入るのがめんどくさい、と感じることはありますよね。特にご高齢になると、体力も落ちてくるので疲れて入浴がめんどくさく感じることが増えているのかもしれません。 お風呂に悪いイメージがある お風呂で転んだり顔に水がかかるなど、嫌な経験を以前にしていると、悪いイメージだけが残ってしまって、入浴を嫌がることがあります。 でも、認知症になると物忘れが増えますよね?母もちょっと前のことでもすぐに忘れてしまいますし、嫌な経験をしていても忘れてしまうんじゃないですか? 確かに、嫌なことがあってもその出来事自体の記憶は忘れてしまうかもしれません。ただ、認知症の方は、出来事の記憶は忘れてしまってもそのときの感情の記憶は忘れにくいと言われています。なので、お風呂で嫌なことや恐怖を感じる出来事があると、嫌な感情だけが残っている可能性も。つまり、「なんだかわからないけど、嫌な感じがするからお風呂に入りたくない」と感じているのかもしれません。 裸になるのが恥ずかしい 「裸になるのが恥ずかしい」って、お風呂では裸になるのが当たり前じゃないですか? そうですね。でも、認知症の影響でお風呂がどういうところなのかわからなくなっていたらどうでしょうか?なんで裸になるのかわからず、服を脱ぐのを嫌がるのも自然なことですよね。 確かに…。「なんで服を脱がないといけないんだ」と不安になるかもしれません。 また、ご家族が入浴介助をする場合、家族は服を来ているのに自分だけ服を脱ぐのにも違和感があるのかもしれません。また、ご家族としては服を脱ぐのを手伝おうとしているだけなのに、「わけもわからず服を脱がされる!」と混乱してしまう可能性も考えられますよね。 介助がいらないと思っている 認知症の方の場合、入浴介助が必要なことがわからず、家族に手を出してもらいたくないのでお風呂を嫌がるケースがあります。「介助なんていらないのに、家族が手伝おうとしてくる」と、自尊心を傷つけられてしまうんですね。 あぁ、母にもそういうところがあるかもしれません。私が「手伝うよ」と言ったら、「手伝いなんていらない!」と怒鳴って、自分の部屋に閉じこもってしまったことがあります。あれは見栄を張っていただけではなくて、本当に自分が手伝いが必要なことをわかっていなかったんですね。 入浴する気分ではない 好きなテレビ番組を見ていたり、眠いときにお風呂に入る気持ちにはなかなかならないですよね。それは認知症の方も同じで、声をかけたタイミングが入浴したい気持ちになっていないときだったのかもしれません。また、お母様がお一人で入浴できていたときには、気が向いたタイミングやいつものルーティンでお風呂に入っていたのに、介助が必要になるとご家族の都合に合わせることが多くなるでしょう。となると、お風呂に入る意欲が低くなり、お風呂を嫌がる原因にもなります。 言われてみれば、私の手が空いたときに「お風呂に入ろう」と声をかけていたような気がします…。 お風呂に入りたくなるような声掛けとは? お風呂を嫌がる理由には、いろんなものがあるんですね…。いくつか思い当たることがありました。 お母様に当てはまりそうなものがあって良かったです。お母様にお風呂に入ってもらうために、特に気をつけていただきたいのが声掛けです。すんなり入浴してもらえたり激しく拒否されたり、認知症の方は声掛けひとつで大きく反応が変わるんです。 どんな声掛けをすれば良いんですか? 例えば、次のような声かけが効果的かもしれません。お風呂を嫌がる理由によって適切な声掛けは異なりますし、前に効果的だった声掛けで今回もすんなり入浴してくれるとは限りません。いろいろと試してみてください。 お風呂沸かしたからどう? 一番風呂だよ 温泉に入ろう 足湯に入ろう ちょっと高い入浴剤買ってきたよ 身体を温めよう シャワーで汗を流そう たまには背中を流そうか 友達の○○さんと会うからきれいにしておこう 明日は病院だからきれいにしよう ここで、「しばらくお風呂に入ってないから入ろう」「汚れているからきれいにしよう」といった声掛けはNGです。お風呂に入っていると思い込んでいる場合、「汚れていない!」と反発されてしまうことがあるからです。 それ、よくあります!「何日もお風呂入ってないだから、汚いよ」と言ったら「汚くない!」と怒鳴られてしまいました。良くない声掛けだったんですね…。 ご家族としては、清潔にしてほしいからそう言ってしまいがちですよね。他にも、水を怖がっている様子でしたら、足湯から始めてみるのも良いかもしれません。無理に全身を洗おうとせず、「足湯だけ」「体を濡れタオルで拭くだけ」としていくうちに、気持ちが良くなってお風呂に入りたくなるケースもあるんです。ものすごく汚れているわけでなければ、完璧を目指さないのも長く介護を続けていくコツですよ。 介護サービスを利用すれば負担が減る ご家族の負担を減らすために、介護サービスを活用してお母様にお風呂に入ってもらうのもひとつの方法です。 介護サービスっていろいろありますよね。どのサービスなら、お風呂の手伝いをしてもらえるんですか? 以下の介護サービスで入浴サービスを受けられます。もちろん、必要に応じて入浴介助もしてもらえますよ。 訪問介護 デイサービス デイケア ショートステイ なかでも、デイサービスは入浴をするために利用している方も多いですね。デイサービスは、介護施設に通って利用するもので、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを受けられます。体操をしたり体を動かす機会もあるので、運動不足の解消にもなると思いますよ。 母は家に閉じこもりきりなので、デイサービスを利用して、外出する機会を作るのも良いかもしれないですね。 入浴介助は介助のなかでも体力を使うものなので、介護サービスを活用してプロに頼ると、在宅介護の負担がだいぶ軽くなると思いますよ。 認知症によって入浴をしたと思い込んでいたり、羞恥心からお風呂を嫌がることがある 声掛けを工夫したり、安全な環境を整えることでお風呂に入りたくなることも 家族の介護が難しいときは、デイサービスや訪問介護などの介護サービスを活用して pre { margin: 40px 0; background: ...
2023/08/21
先日、約10年ぶりに父親に会いました。一人暮らしの家の中は荒れ放題だし、トイレットペーパーなどの必要な物は切らしているのに、卵が何パックも買ってあって腐らせていたりと物の管理も上手くできなくなった様子。もしかしたら、認知症になってしまったのかもしれません。 でも、私は父と関係が良くなく、できれば介護をしたくありません。が、このままにしておくわけにも…。 どうにか、介護をしなくて済む方法はないでしょうか? (古賀さん・59歳・会社員) うーん、正直なところ、親御さんの介護を完全に放棄できません。子どもは親に対して扶養義務があるので、場合によっては罪に問われてしまう可能性があるんです。ただ、できるだけ直接介護しないで済む方法はあります。それは、介護サービスを利用すること。また、きょうだいや親戚に任せるのもひとつの手です。もし、経済的な支援が難しいという場合は、介護や医療費の減免制度もありますので、活用してみましょう。 親の介護をしない方法はある? 先日、10年ぶりに帰省し、父に会いました。しかし、家は荒れ放題で掃除もろくにできていない様子。また、トイレットペーパーなどの必要なものがないのに、卵やスナック菓子など、同じものがいくつも置いてあって腐っているものも…。もしかしたら、認知症になってしまったのかもしれません。年も年ですし…。でも、私は昔から父と折り合いが悪く、介護をしたくありません。どうにか介護をしないで済む方法はないでしょうか? うーん…。結論から言うと、親の介護を完全に放棄できません。というのも、子どもは親に対して扶養義務があるからです。場合によっては、罪に問われることもあります。 えっ、犯罪になるんですか!? もちろん、経済的に支援が難しいなどの理由がある場合は別です。ただ、経済的に余裕があるのに支援をしなかったり、介護を放棄したことで親が死亡や怪我をした場合は罪になることがあるんです。法律では、以下のように直系の血族・兄弟姉妹や配偶者に扶養義務が発生します。 ここで言う扶養義務とは、直接介護をすることだけではありません。生活費や医療費の援助も扶養義務に含まれます。そのため、仕事が忙しくて介護ができない場合や介護を直接したくない場合は、経済的な援助をすることでも義務を果たすことになります。 経済的な支援…。あまりお金の余裕はないけど、直接顔を合わせるよりは良いのかも…。 できるだけ親の介護をしない方法 先ほどお話しした通り、お父様の介護を完全に放棄してしまうと、罪に問われてしまう場合があります。なので、できるだけ古賀さんの負担が少ない介護をしていきましょう。 負担が少ない介護ってどうやるんですか? 例えば、以下の2つの方法があります。 他のきょうだいや親戚に任せる 介護サービスを利用する 他のきょうだいや親戚に任せる もし、お父様の介護を任せられるごきょうだいや親戚がいるのであれば、その方に相談しましょう。お父様の様子を伺うに、普段の生活に援助が必要な状況である可能性が高いので、そうした身の回りの支援をごきょうだいや親戚に任せて、その分、古賀さんが介護費用の負担を多めに負担するといった分担もできるでしょう。 私には妹がいますが、妹とも疎遠なんですよね。事が事なので、連絡しないとなのかな…。 そうですね。今後、お父様の介護にあたって、妹さんと連携が必要な場面が何度もあると思います。本格的に介護が始まっていない今のうちに連絡を取っておいた方が良いと思いますよ。 介護サービスを利用する 介護サービスを活用することでも、古賀さんの負担は大きく減らせるでしょう。 介護サービスってヘルパーさんが家に来て、介護をしてくれたりするんですよね?利用してみたいとは思うんですが、どうやって利用すれば良いのかわからなくて…。 そうだったんですね。では、介護サービスを利用する方法についてご説明しましょう!介護サービスを利用するには介護認定が必要なのですが、お父様は介護認定を受けていらっしゃいますか? 介護認定?どんなものですか? 介護認定とは、介護が必要な度合いを7段階でレベル分けしたもの。一番状態が軽いのは「要支援1」、最も重いのが「要介護5」と判断されます。必要な介護の量が増えるに従って、要介護度も上がります。要介護度が上がると介護保険が適用される介護サービスも増えて、よりたくさんの介護サービスを費用負担を抑えながら利用できます。 なるほど…。まずは、介護認定を受ければ良いんですね。 まずは介護認定を受ける 介護認定を受けるには、まずは申請をします。申請はお住まいの役所の窓口や「地域包括支援センター」などでおこなえます。 地域包括支援センター? ご高齢者の生活をさまざまな面から支援する公的な相談窓口です。介護についてはもちろん、成年後見制度などのご高齢者の権利を守る制度の手続きなどもおこなえる施設です。役所や地域包括支援センターで介護認定の申請をおこなったら、以下のような流れで介護認定が進んでいきます。 介護認定の結果がわかったら、介護サービスが利用できるようになるというわけですね。ちなみに、介護認定の結果が出るのにはどれくらいの時間がかかるんでしょうか? 介護認定は、1ヵ月前後で結果がわかることが多いです。急いで介護サービスを利用したい場合は、結果が出る前に利用を開始することも可能です。そのときは、役所や地域包括支援センターの窓口で相談してみてくださいね。 在宅介護サービスとは 要介護度がわかったら、今度は介護サービスを利用する段階です。 と言われても、介護サービスってどんなものがあるんですか? 介護サービスは大きく分けると「在宅介護サービス」と「施設サービス」があります。例えば、在宅介護サービスには以下のようなものがあります。 訪問介護 訪問看護 訪問入浴 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 夜間対応型訪問介護 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ(デイケア) 短期入所生活介護(ショートステイ) 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 福祉用具レンタル 介護リフォーム いろんなサービスがあるんですね。どれを利用すれば良いのかな…。 お父様の場合でしたら、訪問介護やデイサービスはどうでしょうか?訪問介護は、先ほど古賀さんがおっしゃっていたように、ヘルパーさんが家にやってきて家事や介護をしてくれるサービス。制限はありますが、お家の掃除や食事の支度を頼めますから、ご実家の状態も良くなるでしょう。 確かに…。掃除もそうですが、食事の支度をしてくれるのは助かりますね。父がまともなものを食べているようには見えませんでしたから。もうひとつのデイサービスとは? デイサービスは、昼間に介護施設に通って食事や身体介助、レクリエーションなどのサービスを受けられます。また、デイサービスで入浴もできるので、お父様がひとりで入浴するのが心配でしたら特におすすめのサービスですよ。 施設サービスとは 施設サービスは、その名の通り、介護施設に入居して受けられるサービスのこと。在宅介護よりはお金がかかる傾向がありますが、施設にお父様のことを任せられるので、古賀さんの心身の負担はかなり少なくて済むでしょう。施設サービスには、以下のようなものがあります。 公的施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ特別養護老人ホーム(特養)0円8~14万円要介護3以上○介護老人保健施設(老健)0円7~14万円要介護1以上○介護医療院0円7~14万円要介護1以上○養護老人ホーム0円0~14万円自立×ケアハウス0~数十万円6~17万円自立~要介護3程度△ 民間施設 施設の種類入居時費用月額利用料入居条件認知症の受け入れ介護付き有料老人ホーム0~数千万円15~30万円自立~要介護5○住宅型有料老人ホーム0~数千万円11~25万円自立~要介護3程度△サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円11~25万円自立~要介護1程度△グループホーム0~数十万円10~15万円要支援2以上◎ 介護施設は、運営法人によって公的施設と民間施設に分けられています。なかでも公的施設の特別養護老人ホームは、安価なうえに終身利用ができるため人気。満室の場合が多く、入居まで2~3年かかるケースもあるそうです。 2~3年!?そんなにかかるんですか!それじゃあ、いざ老人ホームに入れようと思ってもすぐには入居できないんですね…。 民間施設だったら、比較的、入居しやすいと思いますよ。公的施設よりも料金が高くなる傾向はありますが、急いで入居したいときは民間施設の方が確実でしょう。 介護にお金をかけられない!そんなときは? 在宅介護サービスを使うにしても、介護施設に入れるにしても、お金はかかりますよね。私もそんなに経済的に余裕があるわけではないので、お金の支援も難しいかもしれません。だからって、父が貯金をしているとも思えないし…。 うーん。あまり気が進まないかもしれませんが、まずはお父様の資産の状況を確認することが大切です。貯金があるのか、年金はいくら受給しているのか…。お金の支援をするにしても支援しないにしても、お父様の資産状況を確認しないと始まりません。 そうですよね。年金額がわからないとお金の支援が必要なのかどうかもわかりませんよね。 おっしゃる通りです。お父様の介護費用はお父様自身の財産でまかなうのが原則。足りない場合に支援する形にしないと、古賀さんの経済的負担が大きくなってしまいます。始めに話した扶養義務についても、「余力の範囲内」で良いとされています。 なるほど。それでも、経済的支援をする余裕があまりなくて。子どもが2人いてお金がかかるので…。そういうときはどうしたら良いんでしょうか? でしたら、以下のような方法で負担を減らすのもひとつの手です。 介護・医療費の減免制度を利用する 生活保護を利用する 介護・医療費の減免制度を利用する 在宅介護のサービス費や老人ホームの利用料、医療費など、介護にはさまざまなお金がかかります。そのため、少しでも費用負担が軽くなる減免制度もご紹介しますね。減免制度には、以下のようなものがあります。 特定入所者介護サービス費 高額介護サービス費 高額医療・高額介護合算制度 介護保険料の減免制度 自治体独自の助成制度 「特定入所者介護サービス費」は公的施設の利用料を軽減する制度。「高額介護サービス費」と「高額医療・高額介護合算制度」は、支払った介護サービス費や医療費が一定額を超えたときにお金が戻ってくる制度です。 そんな制度があるんですね、知りませんでした! また、経済的に介護保険料の支払いが難しい場合の減免制度もあります。加えて、自治体によっては、収入が一定以下のご高齢者を支援する制度を設けている場合もあるんです。 収入の条件があるんですね。制度を利用できるか確認するためにも、父の資産状況を確認する必要がありそうですね…。 生活保護を利用する ご家族が経済的援助ができず、お父様が生活に困窮する可能性がある場合、生活保護を受けられることがあります。年金を受け取っていても条件を満たしていれば生活保護を受給できますよ。生活保護を受けると、介護サービスや老人ホームの費用などを自己負担なく利用できるようになるんです。 そうなんですね!それは助かりますね。でも、生活保護かぁ…。 もちろん、生活保護を受けるには収入や資産などの条件があります。生活保護を受けるとさまざまな制限がかかりますから、最後の手段として頭の片隅に置いておいてくださいね。もし、お父様の介護を老人ホームに任せたい、という場合は、ぜひ「いい介護 入居相談室」にご連絡ください!お父様を安心して任せられる老人ホームをお探ししますよ。 親の介護を放棄すると罪になることも。子には親の扶養義務がある 他の家族や親戚に介護を任せる、介護サービスを利用して負担を減らそう 介護費用が足りない場合は、減免制度や生活保護の利用を検討しよう pre { margin: 40px 0; background: ...
2023/08/21
特養に「特例入所」という制度があると聞きました。どんな制度か教えてください。 父親を特養に入所させたいのですが、区分変更の結果、要介護2になってしまったため入所できなくて困っています。特例入所の制度を使えば、父は特養に入所できるのでしょうか? (上原さん・アルバイト・68歳) 特例入所とは、特別な事情がある場合に限って要介護1や要介護2の方でも、特養に入所できる制度です。ただ、「認知症などで在宅生活が困難」など、条件が厳しく、特例入所制度を活用して入所している方はかなり少ないのが実情です。特例入所ができない可能性もあるので、特養以外の介護施設も合わせて検討しましょう。もし、金銭面で特養を希望されているのでしたら、「介護老人保健施設」や「グループホーム」なども良いかもしれません。 特養の特例入所とはどんな制度? 父の認知症が悪化して一人暮らしが心配なので、特養に入所させたいと思っています。ですが、区分変更の結果は要介護2。特養は要介護3以上じゃないと入れないのに…。ネットで特養には「特例入所」というものがあることを知りました。介護度が要介護3より低くても入所できるとのことですが、この制度を利用すれば、父も特養に入れるのでしょうか? 確かに、特例入所は、要介護3以下でも特養に入所できる制度です。厳密に言うと、要介護1もしくは要介護2の方でも例外的に特養に入所できます。ただ、特例入所をするには条件があって、それがかなりハードルが高いんですよ。 えっ、そうなんですか!?どんな条件なんでしょうか? それでは具体的にお話ししていきますね。 特養の特例入所の条件とは? 以下のように、特養の特例入所の条件の方針を厚生労働省が定めています。 認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること、 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること 引用元:「介護保険最新情報 Vol.1141 令和5年4月7日」(厚生労働省) うーん。これだけだと、よくわかりません。 ざっくりとした表現なので、具体的にイメージしにくいですよね。新潟県長岡市が公開している事例もふまえてご説明しますね。 一人暮らしの継続が難しいと判断されたケース アパートで一人暮らしをしている要介護2の101歳の方のケースです。大変高齢な方ですが、ご本人の希望で、お隣さんの生活支援を受けながら一人暮らしをしていたそうです。しかし、そのお隣さんが施設に入所してしまい、支援が受けられなくなってしまいました。しかも、ご本人はアパートの2階に住んでいて、歩行器を使って階段を登り降りしないといけない状況。そのうえ、居室にトイレはなく、用を足すには1階に降りないといけませんでした。 むしろ、101歳までこんな環境で一人暮らしできていたのがすごい…。 さらに、部屋にエアコンがなく、夏場は体調を崩すことが多くなったそうです。訪問介護やショートステイを利用していましたが、これ以上、夏や冬の時期を自宅で過ごすのは難しいと判断されて、特例入所が認められました。 家族による介助が難しいと判断されたケース ご家族による在宅介護が難しいと判断されて、特例入所ができたケースもあります。93歳で要介護2の認知症の方です。中心となって介護をしていた息子さんががん末期と診断され、介護ができなくなってしまいました。しかし、息子さんの奥さんは精神疾患と視力障害を持っており、お孫さんは知的障害と脳梗塞の後遺症の影響で要介護状態。介護ができるご家族がいない状態だったんです。デイサービスとショートステイを利用していたものの、これ以上の在宅介護が難しいと判断されて特例入所が叶いました。 事例の2つとも、かなり特殊なケースというか…。「これ以上、自宅では生活できない」というギリギリの状態のように思えます。 そうですね。この2つの事例から、特例入所はかなりハードルが高いことがわかりますね。判断基準は自治体ごとに多少異なりますが、客観的に見てどうしても在宅介護が難しいと思えるような、ギリギリの状況でないと特例入所は難しいのかもしれません。 参考:「特別養護老人ホームにおける特例入所者の取扱いについて」(長岡市) 特養に特例入所するための手続きは? 特例入所をするための手続きは、通常の入所の手続きと大きくは変わりません。ただ、特例入所を申し込む理由を詳細に記載する必要がある点が異なりますね。手続きは以下のように進みます。 特養に入所申込み 特例入所の適否を判定 入居順位の決定 入居 まずは、特養に入所の申し込みが必要なんですね。 そうです。特養に上原さんやお父様の状況を説明して、入所の必要性を理解してもらいます。そのうえで、特養が市区町村に特例入所の手続きをおこないます。その後、特例入所の要件に当てはまるかどうか市区町村が判定し、認められた場合は特養が入所対象者名簿にお父様の名前を載せることになります。 えっ、すぐに入所できるわけではないんですか? そうなんです。特例入所の要件を満たしていると判断されたとしても、入所対象者になることを認められただけなんです。そのため、他の申込者も含めて優先度が高いと判断された人から順番に入所していきます。 特例入所制度の実情 実は、特養の特例入所の制度は、厚生労働省が定めているものではありますが、すべての市区町村で上手く活用されているものではないのが実情です。 というと?どういうことですか? 以下のグラフを見てください。 参考:「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度調査)」(厚生労働省) これは、市区町村の特例入所の運用状況を表したものです。約87%の自治体で運用されているものの、一部の自治体では特例入所の指針が決められておらず、上手く運用されていないんです。また、一部では地域独自のルールで特例入所の可否を判断されていることも厚生労働省の調べでわかっています。 えーっと、地域独自のルールがあるなら、どうしたら良いんでしょうか? 入居を希望する特養で、特例入所の条件について改めて確認してみるのが良いでしょう。特養側で特例入所の条件を把握しているはずですから。もしくは、お住まいの地域の役所で、特例入所について聞いてみるのもひとつの手です。役所の「高齢介護課」「介護保険課」といった窓口があるので、そこで確認すれば詳細を教えてもらえるでしょう。 特例入所できなかったときに検討する施設 北野室長の話を聞いていたら、なんだか父が特養に入所するのは難しい気がしてきました…。思ったよりも条件が厳しいですね。 そうですね。それだけ特別な場合にしか認められていない制度なんです。そういえば、どうして上原さんは特養を選んだんですか? 他の介護施設よりも安いと聞いたからです。あまりお金が出せるわけではないので…。 そういうことだったんですね。でしたら、比較的、費用が安い他の介護施設もご案内しますよ ぜひ、教えてください!介護施設ってたくさんあるから、自分ではなかなか調べられなくて…。 費用の設定は施設によって異なることもありますが、以下の種類の施設であれば、比較的、安い施設が見つかるでしょう。 介護老人保健施設 有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム 介護老人保健施設 介護老人保健施設は、「老健」とも呼ばれる施設です。老健はリハビリ専門職が常勤していたり、医師の配置もあったりと医療面のサポートも手厚いという特徴があります。ただ、老健はリハビリなどによって在宅復帰を目指す施設。そのため、一般的な入居期間は3~6ヵ月とされています。空室状況によってはもっと長期間の入所ができる場合もありますが、すべての施設で長期入所に対応しているわけではありません。 長期入所はできないんですか。最期まで父の面倒を見てくれる施設が良いのですが…。 はい。ただ、「特養や他の施設の入所順が回ってくる間だけ入所する」という手もあります。もしくは、「まず老健に入所して、その間に施設探しをする」という方法もあります。 そういう理由で入所するのもアリなんですね。最近、毎日のようにおもらしをしたり、わけのわからないことを言うことが増えたので、もう一人暮らしは無理だと思うんです。とりあえず、老健に入所させるのも良いのかな…。 有料老人ホーム 有料老人ホームは、「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の2種類あります。介護付き有料老人ホームは、食事介助や排泄介助といった介護サービスを施設が直接提供。対して、住宅型有料老人ホームは、介護サービスを受けるには外部の介護事業者を利用する必要があります。費用面では、住宅型有料老人ホームの方が安くなる傾向があります。というのも、介護付き有料老人ホームは、介護サービスを利用料が少なくても介護サービス費を満額で払わないといけないのに対して、住宅型有料老人ホームは利用した分だけの費用で済むからです。 そうなんですね!住宅型有料老人ホームなら、介護サービスを最低限に抑えれば費用を安くできるということでしょうか? おっしゃる通りです。ただ、介護が必要な量が多い場合、むしろ住宅型有料老人ホームの方が高くなってしまうこともあります。その場合は、介護サービスをたくさん使っても金額が変わらない介護付き有料老人ホームの方が安くなるでしょう。つまり、お父様に必要な介護サービスの量によって、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームのどちらが安くなるのかが変わってくる、ということです。また、有料老人ホームは施設によって、入居時費用が0~数千万円、月額11~30万円と大きく異なります。費用を事前に確認しておきましょう。 サービス付き高齢者向け住宅 サービス付き高齢者向け住宅は「サ高住」とも呼ばれる施設です。サ高住は住宅型有料老人ホームと同様に、介護が必要な場合は外部の介護事業者を利用します。サ高住が住宅型有料老人ホームと異なるのは、生活支援サービスの有無。住宅型有料老人ホームは食事や掃除などの生活支援サービスを提供しますが、サ高住は安否確認と生活相談サービスのみです。つまり、介護とまではいかないけど、生活のサポートサービスがあるのが住宅型有料老人ホーム。見守りだけを提供しているのがサ高住ということです。 サ高住は見守りだけなのかぁ。となると、父には合わないかもしれません。今でも掃除や洗濯などは私や私の妻がやっていますから。 グループホーム グループホームは、認知症の方限定の施設です。最大9名のユニットごとの生活をしているため、アットホームな雰囲気が魅力です。また、入居できるのが認知症の方だけとあって、職員さんも認知症ケアの経験が豊富なのが特徴。認知症の方が穏やかに暮らせる環境やケアが提供されます。 へぇ!父も認知症なので、グループホームが良いかもしれません。グループホームの費用はいくらなんですか? グループホームの費用は、入居時費用が0~数十万円、月額費用は10~15万円です。グループホームも料金の幅があるので、事前に確認してくださいね。 北野室長の話を聞いて、特養に特例入所するのはかなり難しいことだとよくわかりました。近くの特養にかけあってみますが、特例入所できなかったときのために、特養以外の施設も探してみます。 介護施設はたくさんありますから、施設探しに迷ってしまったときはぜひ「いい介護 入居相談室」にご相談くださいね。 特養の「特例入所」とは、要介護1や要介護2でも入所できる制度 特例入所をするのは、かなりハードルが高い 特例入所できなかったときのために、他の施設も検討しよう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/08/18
認知症を理由にデイサービスの利用を断られることってありますか? 認知症のお母さんを介護している知人が、デイサービスの利用を断られたそうです。私も父をデイサービスに通わせようと思っていたので、同じように断られてしまうんじゃないかと心配で…。 (岡崎さん・65歳・自営業) 「認知症だから」という理由で、デイサービスの利用を断られることはまずありません。というのも、「正当な理由なしに利用を断ってはいけない」と決められているからです。ただ、認知症の影響で、ほかのご利用者や職員さんに暴力を振るったり、暴言を吐くなどの行動があれば。断られてしまうかもしれません。加えて、認知症に関係なくデイサービスの定員をオーバーしてしまう場合なども断られることがあります。 認知症を理由にデイサービスを断られる? 認知症の父をデイサービスに通わせようと思っています。が、同じように認知症のお母さんを介護している知人から、お母さんがデイサービスの利用を断られたと聞きました。認知症であることを理由に、デイサービスの利用を断られることってあるんでしょうか? うーん、「認知症だから」という理由だけで断られることは基本的にはないですね。というのも「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と厚生労働省が定めているからです。どのような理由でデイサービスに断られたかご存知ですか? そこまではちゃんと聞きませんでした。デイサービスを断られたと聞いてショックだったので…。ちなみに、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」ということは、正当な理由があれば断れるということですよね?どんな理由で断られてしまうんでしょうか? 厚生労働省が正当な理由について、大まかな指標が示されています。断られてしまう理由について、お伝えしますね。 認知症の人がデイサービスを断られる理由 厚生労働省は、デイサービスの利用を断る正当な理由として、以下の3点を挙げています。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 引用元:厚生労働省 老健局「介護保険最新情報 Vol.920 令和3年2月8日」 認知症とは関係のないものもありますが、さまざまな理由を把握していただきたいので、順番にお話ししていきますね。 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合 「当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合」とわかりにくい表現をしていますが、つまりは「定員オーバー」の場合のことです。ちなみに「現員」とは、「現在の人員」のこと。要するに「現在の人員からこれ以上増えたら対応できないと考えられる場合」は利用を断っても良い、ということですね。 うーん、安全のことを考えたら、定員オーバーならしょうがないですね。 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合 「利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合」というのも、ややこしい表現をしていますが、「サービス対象地域外の人は断っても良い」ということです。デイサービスでは、送迎の都合などでご利用者の居住地域を限定しています。そのため、その送迎エリアから外れているご利用者の利用を断るのは、正当な理由に当てはまります。 デイサービスは、利用者の家を順番に回って送迎してくれるんでしたっけ。それなら住んでいる地域を限定しているのはしょうがないことですよね。 その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合 認知症の症状が理由で利用を断られた場合、この「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」が当てはまるかもしれません。 どういうことですか? 「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」とは、簡単に言えば「その利用者に合った介護サービスを提供できない場合」ということですね。例えば、認知症の症状にデイサービス側が対応できないとき。認知症の影響で、帰宅願望が強くなってしまったり、不安感が強くて徘徊してしまったり…。利用開始する前に大まかな認知症の症状の聞き取りがあるので、その際にデイサービス側で対応できないと判断すると利用を断られることがあります。 なるほど…。父も落ち着かないときは家のなかをうろうろすることがあります。となると、断られてしまうんでしょうか? いえいえ、施設によってはさまざまな認知症の症状を持つ方を受け入れていることもあります。どういった状態であれば利用できるのかは、そのデイサービスごとに異なりますね。ただ、ほかのご利用者や職員さんへの暴力や暴言がある方の場合、かなり高い確率で利用を断られてしまうでしょう。 そうなんですね!父は暴力を振るったり暴言を吐く人ではないですが…。そういえば、知人のお母さんは暴言を吐くことがよくあるそうです。気持ちが高ぶっていると手が出ることもあると言っていました。 もしかしたら、暴力や暴言を理由にデイサービスの利用を断られたのかもしれませんね。やはり、デイサービスとしてもほかのご利用者や職員に危害を与える可能性のある方を受け入れるわけにはいきませんから。 認知症の症状が進行しているときは病院が優先 認知症の方が症状を理由にデイサービスの利用を断られる場合、介護サービスの利用よりも治療を優先した方が良いケースが多いんです。 それってどういうことですか? 介護のプロであるデイサービスから利用を断られたということは、認知症の症状が介護職員では手に負えない状態である可能性が高いということです。つまり、介護で認知症ケアをするのではなく、医療で認知症治療をするほど状況が深刻ということ。通院や入院による治療を優先した方が良い段階とも言えます。 なるほど…。認知症がひどい状態ならまずは治療を、ということですね。ちなみに、認知症の治療ってどんなことをするんですか? 認知症の治療方法には、以下のようなものがあります。 薬物療法 作業療法 運動療法 生活機能回復訓練 回想法 薬物療法 薬物療法とは、その名の通り、薬を使った治療方法のことです。実は、認知症を完治させる薬はまだ存在しません。そのため、認知症治療に使われているのは症状を抑える薬です。認知症の症状を一時的に抑えたり緩和したりすることを目的としています。 認知症の薬は父も使っています。 ちなみに、認知症治療に使われている薬にはいくつかの種類があります。現在、認知症の薬は以下の4種類です。 アリセプト® (塩酸ドネペジル) レミニール® (ガランタミン) イクセロンとリバスタッチパッチ®(リバスチグミン) メマリー®(メマンチン) 作業療法 作業療法って何ですか? 作業療法は、トランプやぬりえ、手芸といった頭や指先を使うものが多いです。レクリエーションのように楽しめるものが多いですね。他にも、音楽を聴く音楽療法や園芸療法といったものもあります。 運動療法 運動療法は、身体を動かすことで認知症の症状を抑える治療法です。例えば、体操や関節の動きを良くするストレッチやリハビリ、筋力トレーニングもおこないます。 生活機能回復訓練 「生活機能回復訓練」?耳慣れない言葉です。 日常の中でおこなう動作をリハビリすることで、認知機能の低下を抑制することが目的の治療法です。認知機能が衰えてくると、歯磨きやトイレでのズボンの上げ下げ、髪をとかす、といった何気ない動作ができなくなることがあります。そうなると、日常的に介助が必要になりますよね。そこで生活機能回復訓練を通して日常動作のトレーニングをして、自分で身の回りのことができるようになることを目的としています。 回想法 回想法は、認知症の方の記憶の特徴を生かした治療法。認知症の人は「最近の出来事を忘れやすい」一方で、「昔の記憶は忘れにくい」という特徴があります。そこで、その方の子どもの頃の写真や、思い出の品、当時流行した音楽などを使って昔のことを思い出してもらい、思い出を語ってもらうんです。そうすることで脳が活性化して、認知症の症状が緩和できるそうです。 へー、そんな治療法があるんですね。おもしろそう! 認知症デイサービスなら受け入れられるかも もし、一般的なデイサービスの利用を断られてしまっても、「認知症デイサービス」であれば受け入れてもらえるかもしれません。 「認知症デイサービス」? 名前の通り、認知症の方のためのデイサービスです。食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどをおこなうのは、一般的なデイサービスと共通。ですが、加えて認知症の方に合った作業療法や運動などもおこないます。さらに、認知症デイサービスの定員は最大12名。認知症の方は、人が多い環境や慣れない人とのコミュニケーションが苦手な傾向があるので、それに配慮して利用者数を制限しているのです。 なるほど。認知症の人に配慮したサービスや体制が整っているんですね。 そうなんです。それに、もちろん認知症の方が利用しているサービスですから、職員も認知症ケアの経験が豊富な人ばかり。なかには認知症ケアに関する資格を取得している職員もいるので、安心して通えるのが魅力です。 それはうれしいですね!認知症デイサービス、利用しようかな。 デイサービスと一口に言っても、認知症デイサービスのように認知症ケアに特化していたり、身体機能を回復するリハビリに注力していたりと、さまざまな特徴があります。お父様に合ったデイサービスを見つけてくださいね。 デイサービスは正当な理由がないと利用拒否はできない! 定員オーバー、送迎範囲外、認知症の症状に対応できない、などの理由で断られることも 認知症デイサービスであれば、重度の認知症の人を受け入れていることも pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...
2023/08/16
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