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社会問題

介護職員 社会保障 社会問題

要介護1・2は介護保険の適用!?”介護保険外し”の「総合事業」とは

10月31日に介護保険の今後を話し合う、社会保障審議会介護保険部会が開かれました。そこで、要介護1と要介護2の高齢者に対する訪問介護と通所介護を、市町村の日常生活支援総合事業(以下「総合事業」と呼称)に移管するという構想が話し合われたのです。 この総合事業とはどういったものなのでしょうか? 総合事業は、今までは主に要支援者に該当した高齢者を対象に実施。高齢者が要介護状態になることを防止し、慣れ親しんだ地域の中で自立した生活を送れるように支援する制度です。 ただ、上限がない介護保険の一律給付と違って、総合事業には高齢者人口の伸び率に合わせた上限額が設定されており、行政が支出をコントロールしやすい代わりに、ケアに十分なお金が回らないリスクもあるのですります。 国が訪問介護と通所介護の該当者を減らし、総合事業に移管しようとしている理由として、高齢化が進行し、介護費用の総額が介護保険制度創設時と比べて約3.7倍になっていることが挙げられます。 今後も介護費は右肩上がりになることが予想され、国は現役世代の負担を減らそうとこの構想を打ち立てたのです。 介護福祉士会の意見 日本介護福祉士会は、総合事業に移管する案を「介護外し」だとして厳しく批判し、10月24日に要望書を、11月4日に意見表明書をそれぞれ国に提出しました。 要介護1や要介護2の人は、自立してほとんど他者の手を必要としない要支援の人と比べ、認知機能が低下し生活の一部または大半を支援する必要がある人も多く見受けられます。例えば、認知症でトイレが認識できず、トイレに行くことも1人では困難という人であっても、足腰がしっかりしていれば要介護1や要介護2の判定を受けてしまいます。 そのような人を、要支援の人をターゲットにしている総合事業に適応させるのは難しく、適切なケアが提供できなくなることも考え、かえって重度化を促進するおそれもあると、介護福祉士会は警鐘を鳴らしています。 総合事業に移すべきという意見 一方で、財務省や経済界は総合事業への移行を推進しています。 日本経団連は、「今後の社会保障を維持していくためにも経済の活性化が不可欠。そのためには現役世代の負担を減らしていく必要がある」と主張しました。 またほかにも、「現役世代の負担はすでに限界にあり、給付と負担のバランスを確保しなければならない」といった意見も出ました。 できる限り介護の水準は維持していきたいですが、下の世代にしわ寄せがいってしまうのも事実。うまく双方の妥協点を見つけたいところです。

2022/11/09

社会保障費 社会問題

ケアプラン有料化に”待った”!介護10団体が厚生省に要望書を提出

居宅介護支援とは、利用者が可能な限り自宅で自分らしい生活を送れるようにケアマネジャーがケアプランを作成し、関連機関と連携を取るように調整していく介護サービスです。 この居宅介護支援サービスは万人が公平に受けられるようにするため、制度発足から継続して利用者負担はなく、その費用はすべて介護保険財源で賄っていました。 しかし、少子高齢化で介護保険の対象になる人が増え、財源が圧迫されてきています。 そこで、国は増大する介護保険の費用を抑えるために、居宅介護支援費の一部を利用者にも負担を求めました。 それを受けて10月28日、ケアマネジャーが集う日本介護支援専門員協会は、居宅介護支援において現在おこなっている全額給付を今後も継続してほしいと国に要望書を提出したのです。 要望書の中身 要望書は、日本介護支援専門員協会や日本介護福祉士会など福祉系10団体の連名で提出されました。 中身は、居宅介護支援費を利用者が一部負担することに断固反対し、全額給付を維持するように要求するというもの。特に、全額給付が実現しているからこそ、居宅サービスが多種多様な利用者の状況に応じて効率的に提供されているという点を強調して訴えています。 全額給付の意義 居宅介護支援費の全額給付は、制度発足から今まで継続してきました。 この全額給付は、利用者それぞれが解決すべき課題や置かれている環境に応じて、医療・介護などのサービスが効率よく、誰に対しても総合的に提供されるようにするためにあります。 今回の要望書の中で、そうした意義は「今日の利用者に対しても薄らぐことはない」と強く訴えています。 もし居宅介護支援を利用者が一部負担することになれば、低所得者層は利用を控えることもあり得るでしょう。 しかし、居宅介護支援サービスは介護保険サービスを利用するための入口。有料化した結果、低所得者層にセーフティーネットとしての介護保険制度の手が届かなくなるおそれもあるのです。 居宅介護支援費の有料化は、2024年度の介護保健制度改正をめぐる大きな論点のひとつとなっています。今後の動向に注目ですね。

2022/11/08

介護の事故 社会問題

認知症患者の転倒で病院に532万円の支払い命令!転倒は予測できる?

2016年の4月、兵庫県立西宮病院で認知症を患っている87歳男性が廊下で転倒し、重い障害を負った事故がありました。 男性の家族は、「看護師が転倒を防げたはずなのに対応しなかった」と主張し、約2575万円の損害賠償を求めていました。 事故の経緯 男性は2016年4月2日の早朝、看護師に付き添われトイレに行きました。 男性の対応をした看護師は、男性がトイレに入っている間に別の患者に呼び出され、排便介助の対応をしました。 男性は看護師が排便介助をしている間にトイレから出て、一人で廊下を歩き、転倒。頭を強打し、外傷性クモ膜下出血と頭蓋骨骨折で重い障害を負ったのです。 男性は2年後、心不全で亡くなっています。 家族と県それぞれの主張 家族は、男性はけがで「入院が長引いた結果、寝たきり状態が続き四肢がまったく機能しなくなった」と主張していました。 一方、県は、男性がトイレに入っている間に看護師が対応した別の患者は感染症を患っており、優先して排便介助をしたのはやむを得ないと主張しました。 それぞれの主張を受け神戸地裁は、「転倒する恐れが高いことは十分に予見できた」と認定し、県に532万円の損害賠償を命じました。看護師が対応した別の患者はおむつの中に排便すれば問題はなく、介助を優先するべき理由にはならないと県の主張を退けたのです。 一方、男性がすでに高齢であったこと、認知症も事故に影響していることなどを踏まえ、家族の主張より賠償額を減らしました。 このニュースを受け世間では、「夜勤は看護師の配置が少なく全員に目を配るのは難しい。看護師の配置基準を見直してほしい」「どうしても転倒をゼロにするなら、身体拘束するか鎮静剤を使うしかない」などと、医療・介護従事者を中心に反発が強まっています。

2022/11/08

看取り 社会問題

良い最期の迎え方とは?11月30日「人生会議の日」で良い看取りを

11月30日が何の日か知っていますか? 11月30日は、自分の人生の終え方を考える、「人生会議の日」。「良いみとり、みとられ」という語呂合わせで覚えると覚えやすいですね。 この「人生会議の日」は、自分の目の前に死が迫っている段階になったときに備えて大切な人たちと、元気なうちから人生の終わりについて考えておく機会をつくるきっかけになることを目的として制定されました。 人生会議とは? 人生会議とは、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称。厚生労働省によって名づけられたものです。 では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とはなんでしょうか? これは自分の間近に死が迫ったとき、どのような医療を受けたいか、また受けたくないか、どこで最期を迎えたいかを周りの人と話し合うことです。 具体的には以下のようなことを考え、周りの人に伝える必要があります。 自分の力で呼吸できなくなったとき、人工呼吸器をつけるといった延命治療を受けるかどうか自分で水も飲めなくなったときに、流動食をチューブでお腹まで送り込む胃ろうを受けるかどうか また、話し合いの中で必要だと判断すれば、ケアマネジャーや医師など、介護や医療の専門家から適切なサポートを受けることも大切です。 生前にしっかりと意思表示を 人生会議を通して明らかになった希望が、人生が終わるときにしっかりと実現されるようにする必要があります。 そのため、人工呼吸器や胃ろうを受け入れるかなどといった意思表示は、事前指示書という文書に残しておきます。これをリビングウィル(生前の意思表示)といいます。 自分や親しい人の死について、なるべくなら考えたくないという方もいるかもしれません。しかし、最期までその人らしくあれる人生を送るためにも、11月30日に人生の終え方について考えてみませんか。

2022/11/04

介護職員 社会問題

介護施設の管理者の兼務で何が変わる?効率的な運営とサービスの向上を

10月20日、政府は介護事業者の団体を招いて問題意識の聞き取りを行いました。 会合に参加した介護事業者団体は以下の3団体です。 全国老人福祉施設協議会日本在宅介護協会高齢者住まい事業者団体連合会 この会合の中で「管理者が複数の事業所を兼務することを認めてほしい」という意見が上がりました。 現在の管理者の兼務ルール 現在のルールでは、管理者は「その職務に『もっぱら』従事する常勤の者」と定められています。また事業所の管理に支障がなければ、同じ敷地内や隣接する事業所の管理者も兼務できることになっています。 しかし、ルールの解釈が各自治体によって異なることもあります。 例えば、「管理に支障がなければ兼務する事業所の数は問わない」とする自治体もあれば、「兼務する事業所の数は2ヵ所までで、その場合の管理者は介護業務を兼務できない」とする自治体もあるのです。 会合では、管理者がほかの事業所と兼務できるように、現在それぞれの自治体に存在しているローカルルールを撤廃し、解釈を一致させたいといった声も上がりました。 管理者がほかの事業所と兼務するメリット 複数の介護事業所を所有するような大きな会社が運営している事業所の場合、「ここの事業所では利用者といっしょにごはんを作る」「ここの事業所ではすべて職員が作る」などと、事業所ごとに方針が違うこともあります。 そこで、管理者が複数の事業所を兼務できるようになれば、それぞれの事業所の方針のを統一が可能。サービスの質の向上が期待できます。 また同じ管理者が運営できるようになれば、違う事業所の利用者と合同で敬老会を開くなどといったサービスの連携もしやすくなるのです。 2024年度の介護報酬改定に合わせて、介護業界のルールもより良いものに変えようとする動きが出ています。今回の管理者の他事業所の兼務もひとつの大きな論点になるでしょう。

2022/10/31

社会問題 老後の備え

国民年金の納付が5年延長!?65歳まで保険料を納める可能性も…

政府は、国民年金の保険料の納付期間を現行の「40年間から45年間に延長する」案を議論する方針を決めました。実現すれば、納付の対象者は「20歳から65歳未満まで」となります。政府は、財源を確保して給付水準の低下・高齢者の生活保障につなげるとしています。 マクロ経済スライド 現在、少子高齢化 によって年金を受け取る人が増えて保険料を納める人が減少。年金制度を持続させるために「マクロ経済スライド」を実施しています。 公的年金の支給額は、物価や賃金に応じて決められています。これを「物価スライド」と言います。インフレ・デフレに関わらず、世代間で不公平にならないようにする仕組みです。 しかし、日本の年金制度は年金を納めている現役世代が減って受給者が増えれば、最終的には受給額を支払うことができなくなってしまいます。そこで登場したのが「マクロ経済スライド」という仕組みです。 マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢に合わせて年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。 例えば、物価が2.7%上昇、賃金が2.3%上昇したとします。これまでなら、伸び率の低いほうにあわせて年金の支給額も改定されるため、本来であれば2.3%上昇するはず。しかし、マクロ経済スライドが適用されると、0.9%の引き上げに留まるのです。 年金制度を維持するために それまでは「物価スライド」という物価に関連して上下する方式を取ってきましたが、少子高齢化による財政悪化のために「マクロ経済スライド」を発動し、その分を差し引いて年金額が決定されることになりました。 しかし、これにより特に国民年金のみを収入源とする高齢者の生活が苦しくなると予想されます。 政府は5年に1度、年金制度の健全性を確かめる「財政検証」を実施しています。今回、年金保険料の納付期間の延長も併せて議論すべきだと判断。これの実現により給付水準低下の抑制を目指します。 その一方で、自営業者や60歳定年で退職した人などは保険料負担が増えることになります。 今までのように60歳になったら「老後資金は年金で」というわけにはいかなくなり、これからは最低でも65歳までは「老後資金は就労と年金」という方が多くなりそうです。 豊かな老後を過ごすためには、自分自身の力でしっかりと準備をしておくことが必要ですね。

2022/10/25

介護職員 社会問題

今月から介護現場の「ベースアップ支援加算」開始!安定して3%賃上げに

人生100年時代、日本は高齢化社会が進み、介護職員の需要が高まっています。 そこで国は、介護職員の人員確保や定着を図るため「介護職員の給料を上げるための政策」をおこないました。それが「介護職員等ベースアップ等支援加算」です。 ただ、中には「介護職員の給料って上がるの?」と疑問に思う人も多いのではないのでしょうか。今回は、「介護職員等ベースアップ等支援加算」について紹介します。 介護職員等ベースアップ等支援加算とは? 介護職員等ベースアップ等支援加算とは、2022年10月の介護報酬改定を経て創設された新たな加算です。これは2022年2月に新設された「処遇改善支援補助金」の考え方をベースにしています。 処遇改善支援補助金は、介護職員に対して収入の3%程度(月額9000円相当)の賃上げをするというものです。「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」として、期間限定で2022年2〜9月まで国の交付金として支給されました。 この金額が10月からは介護報酬に組み込まれ、毎月支給されます。 算定要件は何か変わるの? 算定要件は、これまでの「処遇改善支援補助金」と大きく変わることはありません。 これまでの処遇改善加算を取得している事業者が対象で、加算額の3分の2以上を基本給または毎月決まって支払う手当などの引き上げに充てることが求められます。 「ベースアップ等支援加算」を取得するには、従来通り「処遇改善計画書」や「実績報告書」の提出が欠かせません。この書類の様式は、厚生労働省が公式サイトにて公表しています。 さらなる処遇改善が求められる介護業界 介護職の問題は、賃金の問題だけではありません。 慢性的な人手不足、職場内の人間関係で悩んで辞めてしまう離職問題、身体介助で腰などを痛めてしまう安全衛生の課題などがあります。 つまり、介護業界の働き方改革や業務改善の取組みが必要となっているのです。 近年、業務改善を進める事業所も増えており、「この事業所で働き続けたい」と思わせるための定着支援が重要になっています。 さらなる介護業界の業務改善が進み、ひとつでも多くの問題が改善され、ひとりでも多くの人が介護職につきたいと思えるような働きやすい環境が広まっていくと良いですね。

2022/10/24

介護職員 社会問題 調査結果

介護事業者の倒産が9月までに100件に。コロナ禍で過去最多ペースか

介護事業者の経営が悪化したことで、倒産した事業者件数が9月までに100件になったことが調査で明らかになりました。 前年のこの時期では51件で、これと比較しても約2倍の数字。この時期に100件にも上ることは初めてのことで、過去最多の倒産件数を更新する見込みが非常に高くなっています。 人手不足、コスト増とコロナ禍 深刻な人手不足と激化する競争という問題は以前からあり、経営難に陥っている事業者は多かったのですが、そこに新型コロナウイルスがさらなる打撃を与えました。 昨年までは公的な支援策が頼りになりましたが、その効果もどんどん薄れてきてしまっています。現在は、新型コロナを恐れたサービスの利用控えは以前より減りましたが、その影響は未だ深く爪痕を残しています。 また、今年に入り急速な円安などの情勢変化による光熱費や燃料費、食材費などのコストが高騰したことも加わり、これらの要素が経営を圧迫している複合的なものといえます。 介護はその事業の性格上、価格の値上げが難しく、厳しい経営に改善の兆しが見えてないと専門家に指摘されており、物価高を背景にコスト削減へ向けた支援が急務とされています。 どのような事業所が倒産しているか 今年、倒産した事業者の8割弱は従業員が10人未満と小規模なところが多く、デイサービスを中心とする通所・短期入所が最多となりました。 原因は売上不振が6割越えで圧倒的という結果に。企業である以上利益を出せなければ倒産してしまうのは必然といえます。 利用する介護施設の閉鎖は利用する本人も家族にとっても深刻な問題です。現状での公的支援がうまくいっておらず、多くの倒産する事業者を出している以上、新たな方向からの支援が期待されます。

2022/10/21

地域の取り組み 社会問題 高齢者の交通安全

免許返納した高齢者に「山田うどん」が埼玉県75店でポテトをサービス!

近年、高齢者の自動車事故が多発しています。免許の返納も呼びかけられていますが、車移動に慣れてしまっていると公共交通機関やタクシーでの移動を面倒に感じる人も多いのではないでしょうか。 そこで、高齢者の免許返納を促す後押しになればと、地域の企業と共に運転免許返納者に対するサービスを提供している自治体があります。 「運転経歴証明書」で無料サービスが受けられる 運転免許を自主的に返納した高齢者への生活支援を目的として埼玉県警がおこなっている「シルバー・サポーター制度」があります。 この制度は、原則65歳以上を対象に、運転免許を返納した際に発行される「運転経歴証明書」を提示することで協賛店でさまざまなサービスを受けられる制度です。 運転経歴証明書は、運転免許に代わる公的な本人確認書類として利用できるもので、申請すると取得できます。 例えば、今月から協賛の決まった山田うどん(本社・所沢市)では、埼玉県内の75店舗でフライドポテトを無料サービスする予定です。 山田うどん本社でおこなわれた意見交換会では、埼玉県内の事故状況や県警の取り組みについてや、管内で起きた死亡事故などを例に所沢署長が説明。協賛に感謝する言葉が述べられました。 山田うどんでは、お客に対して、アルコールの注文の際に運転の有無を確認する、従業員に対しては220台のアルコール感知器を導入して検査するなど、飲酒運転防止に取り組んできた実績もあります。これからも引き続き飲酒運転や交通事故防止の社内意識向上に努めていくそうです。 免許所有者の運転事故率は70歳から上昇 自動二輪なども含めた運転免許所有者10万人あたりの事故件数は、免許を取得して直ぐの16~19歳で1043.6件と最も多く、年齢を重ねるごとに減少していきます。 しかし35~69歳までの事故件数が300件前後で横ばいなのに対し、70歳から徐々に件数が上昇し、85歳以上になると524.4件となり、加齢に伴い事故率が上がっていることが分かります。 「自分は大丈夫」「長年運転してきたし、今更事故はないだろう」という過信が事故の元。少しでも運転に不安を感じたら免許を自主的に返納することが、加害者も被害者も減らすことにつながります。今一度、自分の運転が安全かどうか確認してみてはいかがでしょうか。

2022/10/20

地域の取り組み 最新テクノロジー 社会問題

高齢者の徘徊でAIが活躍!?歯のレントゲン写真から身元を特定

大阪府大阪狭山市は、徘徊から保護した認知症高齢者の身元を特定する新しい取り組みを10月から始めると発表しました。 この取り組みは、事前に登録した歯のレントゲン写真をもとに、AI(人工知能)を用いて情報を照合するというもので、全国でも初の試みだそうです。 徘徊高齢者の問題が深刻に 警察庁によると、2021年に届け出のあった認知症による行方不明者は1万7636人に上り、年々増加しています。 認知症による徘徊は止めることが難しく、事故や怪我などの危険もあります。また、発見までに時間がかかれば命にもかかわる可能性があるのです。 自治体による徘徊対策がある 徘徊は家族や近所だけで解決できる問題ではありません。 そこで各自治体は、地域の生活関連団体等が捜索に協力して速やかに行方不明者を発見・保護するSOSネットワークや、本人や家族の同意の上で氏名や顔写真などを登録しておく事前登録制度(「茨城県おかえりマーク」シール等)などの対策をとっています。 今回の大阪狭山市の取り組みは、こうした徘徊対策の新たな試みといえるでしょう。 新たな取り組みではAIを活用 大阪狭山市では、2009年度から「高齢者SOSネットワーク事業」を実施しています。 この取り組みでは、個人情報を登録した高齢者が行方不明になった場合、顔写真や年齢といった情報を市内の郵便局や企業、交通機関などに送り、警察、消防とともに地域が一体となって捜索してきました。 しかし、家族からの依頼がなく、身元がわかる物も持っていない人を保護した場合は身元を特定するのが難しかったそうです。 そこで、上下すべての歯の情報を記録できる「歯科パノラマレントゲン画像」が注目されました。 今回の新たな取り組みでは、行方不明になるかもしれない認知症の高齢者の歯を事前にレントゲン撮影して登録。身元がわからない高齢者を保護した際に、その歯の情報と合致する人がいないかを照合します。 この際、手作業の代わりにAIを用いることで、なんと10秒ほどで判定できるとのこと。市の担当者は「どうしても身元がわからない場合の決め手になる」と期待を寄せています。 高齢者の徘徊問題は待ったなし。複数の取り組みを組み合わせたり、新しい技術を使ったりすることが、今後ますます求められるのではないでしょうか。

2022/10/13

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介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

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グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

2021/11/15

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【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

介護の基礎知識

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