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がん 最新研究 糖尿病予防

高齢者の骨折で死亡リスク増加!?骨折したがん患者の4割が死亡

高齢者の骨折において、骨折した部位が体の中心に近い場合や、骨折した高齢者に基礎疾患がある場合に死亡率が高まることが研究で明らかになりました。 この研究は、オーストラリアのカーヴァン医学研究所に所属するJacqueline Center氏が牽引しておこなわれました。 研究の詳細 この研究の対象者は次の通りです。 対象者は直近14年の間に骨折した50歳以上のデンマーク人30万7870人 対象者のうち、男性は9万5372人で、女性は21万2498人 対象者はさらに4つのグループに分けられました。グループはそれぞれ、比較的健康なグループ、心疾患を患っているグループ、糖尿病を患っているグループ、がんを患っているグループとなっています。 平均して約6年間にわたって追跡したところ、男性の約43%と女性の約39%にあたる人が死亡。また、死亡者のうち半数近くが、2つ以上の疾患を持っていました。最も多くの人が患っていたのは心疾患で、次に多かったのはがんだったそうです。 さらに、各グループの骨折部位と骨折後の死亡率、基礎疾患の有無を照らし合わせました。すると、太ももの骨にあたる大腿骨(だいたいこつ)、股関節にあたる大腿骨近位部、骨盤、肋骨(ろっこつ)、鎖骨などの体の中心に近い部位を骨折し基礎疾患がある人は、そうでない人に比べて骨折後の死亡率が上昇したことが明らかになったのです。 特に死亡率が高かったのは、がんのグループの大腿骨近位部を骨折した男性で、40.8%の人が死亡しました。 一方、手や前腕などといった体の中心から離れた部位を骨折した、比較的健康なグループでは、死亡率の増加はほぼ見られませんでした。 研究を通して考えられること なぜ、基礎疾患がある人が骨折すると、死亡率が上がったのでしょうか? この研究をリードしたCenter氏は具体的なことはまだわかっていない、としながらも、「骨と免疫系の相互作用によるものである可能性が高い」と考えています。基礎疾患があると、骨折による炎症を引き起こしている原因分子をうまくコントロールできず、結果として骨折が基礎疾患を悪化させているのではないかと推測しました。 今回の研究論文の筆頭著者であるThach Tran氏は、「この研究は、骨折と基礎疾患が相互に関連していることを明らかにしたもので、リスクが高い患者を特定しやすくするものかもしれない」と話しました。 高齢者は骨がもろくなり、骨折しやすくなります。骨折の原因になりやすい転倒を減らす工夫が大事ですね。

2022/11/11

事件 特殊詐欺 社会問題

高齢女性が「だまされたふり作戦」で詐欺犯を逮捕!カードを狙った犯行

11月2日、愛知県名古屋市港区に住む高齢者の自宅を訪れ、キャッシュカードを不正に入手しようとした男が逮捕されました。 事件の概要 74歳女性の自宅に、百貨店の職員と名乗った男から「クレジットカードが偽造され、キャッシュカードがスキミングされた可能性がある」と電話がありました。またその男は、「銀行職員が向かうので、職員にカードを渡してほしい」といった趣旨の発言もしていたそうです。 女性はこれを不審に思って警察に通報し、「だまされたふり作戦」を男に実行します。その後、女性の自宅に現れた愛知県の23歳の男、筒井悠登容疑者は詐欺未遂で現行犯逮捕されました。 11月2日の午前中は、名古屋市港区と南区で同様の詐欺事件が確認されていて、警察は関連を調べています。 詐欺被害に遭わないために キャッシュカード詐欺の被害が急速に確認されています。 今回は百貨店の職員でしたが、警察や銀行職員と名乗って「キャッシュカードが不正に利用されている」と電話をかけてくることもあるそうです。 警察は、よくある詐欺の手口をこう解説しています。 電話の中で、「預金を保護する手続きをするため、職員を家に向かわせる」などと、うその手続きを説明する キャッシュカードを受け取りに来た、銀行職員などに扮した犯人は、「手続きをするから暗証番号を書いた紙とキャッシュカードを封筒に入れてほしい」と要求 その隙に、あらかじめ用意しておいた偽物のカードと本物のカードをすり替える 被害者が気づかない間に口座から現金を引き出す 警察は、「警察官や銀行職員が暗証番号を聞いたりキャッシュカードを封筒に入れさせることは絶対にない」として注意を呼びかけています。 最近ますます巧妙になっている詐欺の手口。詐欺に遭わないために、「おかしいな」と少しでも感じた電話は、まず家族などに相談することが大事ですね。

2022/11/11

社会保障費 社会問題

老健の部屋代も自己負担に?次の保険制度改正でさらに介護費用が増加

11月7日、財務省は国の財政を話し合う財政制度分科会の中で、「介護老人保健施設(通称「老健」)や介護医療院、介護療養病床における多床室の室料を2024年度からすべて利用者負担にすべき」との考えを示しました。 少子高齢化で介護にかかる費用はますます増大しており、それを抑えるねらいです。 財務省の主張 現在、個室の場合は水道光熱費と室料を利用者が負担していますが、1つの大部屋に大人数のベッドが配置されている多床室の場合は、水道光熱費のみ利用者負担となっています。これは、個室と多床室で生活環境に違いがあり、それを考慮した結果です。 しかし特別養護老人ホーム(通称「特養」)では、2015年からすでに多床室の室料も利用者負担となっています。特養は「終の棲家」としてだけではなく、事実上、生活の場として利用者から選ばれており、在宅を選んだ人との負担を均等にするため、特養では多床室の室料も利用者が負担することになったのです。 しかしその結果、老健や介護医療院などの多床室を利用している人と特養の多床室を利用している人で、負担額に差が生じました。 このことを踏まえ財務省は、どんな施設であっても、「同じように居住費を求め公正性を担保するために、老健や介護医療院の多床室においても室料を請求するべきだ」と主張しました。 介護保険部会であがった意見 この「老健や介護医療院の室料を利用者負担にするか」というテーマは、介護保険改正案を話し合う社会保障審議会の介護保険部会でも重要な論点になっています。 今回の介護保険部会では、財務省の案に賛否両論の意見が出されました。 肯定派からは「施設間の負担の公平性から見直しを図るべきだ」と財務省の案を後押しする意見が出ています。 一方、「老健や介護医療院は、住まいではなく『医療を提供する施設』と位置づけられているため、居住費を利用者に求めるのは適切ではない」と否定的な意見も多く聞かれました。 また、「利用者の負担を検討するならば、低所得者層が利用できなくなったということがないように、負担できるかどうかをしっかり調査する必要がある」と慎重な意見も見られます。 必要な人に、必要なサービスを届けるためにも、支払い能力に応じた対策をしてほしいところですね。

2022/11/11

心疾患 最新テクノロジー 高血圧

高齢者の心臓病予防は「血管の硬さ」をチェック?指輪型測定器で手軽に

長引くコロナ禍で外出したり運動したりする機会も減り、高齢者を中心に、心筋梗塞や狭心症などといった虚血性心疾患のリスクが高まっています。 そのような背景を受け、福岡工業大学で生体情報計測システムを研究している李知炯(リ・ジヒョン)助教の研究室が、画期的な血管の健康チェックができる装置を開発しました。 指輪のような装置で血管の状態を調べる方法 李研究室が開発した装置は指輪のようになっていて、指にはめるだけで血管の硬さ・血圧・心拍数の3つの情報を計測できます。 また病院にあるような大がかりな装置に比べ、端末の長さは約9センチと大幅な小型化に成功しています。 この装置の使い方は簡単で、以下のようにして血圧の値や血管の硬さ、心拍数を算出します。 装置を指にはめる 小型のポンプで空気を送り込み、内部のカフを膨張させる カフで指を圧迫することで、心臓から押し出された動脈血がつくる波形である、指の根元の脈波を、搭載された光センサーが計測 脈波を装置が読み取る その特徴を、コンピューターの演算や制御を司るマイクロプロセッサーが分析 このように、自分はただ指に装置をはめるだけで、血管の状態を測定できるのです。 装置の使用実績 李研究室の健康チェック装置は、福岡工業大学が福岡県の篠栗町(ささぐりまち)で実施している高齢者の健康調査「篠栗元気もん調査」で使用。すでに4000人以上の篠栗町内の高齢者の健康状態を診断し、データを取得しています。 取得したデータをもとに、精度向上に向けた装置の改良も実施中とのことです。 今回紹介した装置は試作段階のため、まだ一部の地域でしか使えませんが、病院で血管の状態をチェックすることはできます。 健康で長生きするためにも、万病のもとである動脈硬化の予防は重要です。定期的に血管の状態を確認して、動脈硬化の予防に努めましょう。

2022/11/10

社会保障費 社会問題

65歳以上の保険料引き上げ!?負担増加で介護サービスの利用控えも

厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会は、2024年度の介護保険制度改正に向けた議論を進めています。 特にフォーカスされているのが、介護保険の給付と負担に関する議論です。少子高齢化が進行し、給付費はますます財政を圧迫。2020年度の状況報告によると、利用者負担をのぞいた給付費が初めて10兆円を突破したことも明らかになりました。 今後、介護保険制度を持続させるためにも、財政基盤の強化は急務となっています。 介護保険制度の今後を決める3つの議題 9月26日に開かれた社会保障審議会の介護保険部会では、政府側がこれから推し進めていきたい議題を列挙しました。挙がった議題の多くは、これまでも議論してきたけどなかなか実現できなかったものです。 挙がった主な議題は次の3つです。 要介護1と2に認定されている人の一部介護サービスを、市町村がおこなう総合事業へ移管すること ケアマネジメントの有料化 40歳以上としている被保険者の年齢引き下げ この議題の中でも、介護サービスの一部を市町村が実施する生活支援事業である、総合事業に移管するのは、時期尚早だとする意見が多く出されています。 現在、総合事業は生活がほぼ自立している要支援の人を対象に実施されています。しかし、これから加えようとしている要介護1や2の人は認知症の人も多く、これらの人を受け入れる自治体の体制がまだ整っていないのです。 また、利用者を適切な介護サービスにつなげるケアマネジメントはこれまで無料でしたが、財政圧迫のため、有料化しようとする動きも。しかし、有料化することで低所得者層の利用控えが生まれ、適切なサービスにつなげられなくなるおそれが懸念されています。 さらに、現在の第2号被保険者は40歳以上からですが、その年齢を引き下げる案も出ています。しかし、40歳以下はちょうど子育て世代に当たり、彼らのさらなる負担を課すとして反発もあります。 65歳以上の保険料引き上げも視野に 10月31日に開かれた介護保険部会では、一定以上の所得がある65歳以上の人に対する介護保険料を引き上げる案が出されました。所得が高い人にも介護保険料を負担をしてもらうことで、若い世代の負担を減らす狙いです。 一方、低所得者層の介護保険料は引き下げ、支払い能力に応じた仕組みを作ろうとしています。 政府は2024年度の実施を目指し、議論を深めています。誰もが納得できる制度にするのは難しいですが、少しでもお互いが歩み寄ってより良い介護保険制度になれば良いですね。

2022/11/10

ヤングケアラー 介護者への支援 調査結果

「ヤングケアラー」高校生の10人に1人…自覚しているのはごく一部

家族の世話に追われている子ども「ヤングケアラー」の現状を把握しようと、千葉県は今年の7~8月にアンケート調査を実施しました。 ヤングケアラーとは? ところで、「ヤングケアラー」とは具体的にどのような子どもを指すのでしょうか? 厚生労働省によると、法的な定義はありませんが、「本来大人が担うと想定されている家事や、家族の世話を日常的にしている子ども」のことを指すとしています。 例を出すと、家族に代わり幼いきょうだいの世話をしている子どもや、障がいや病気のある人、足腰が弱った高齢者の身の回りの世話をしている子ども、家計を支えるために労働している子どもなどが挙げられます。 勉強する時間や友人と遊ぶ時間などを犠牲に家族の世話をしているため、本来なら享受できたはずの「子どもとしての時間」が奪われているのです。 その結果、授業に出席できず、家でも勉強する時間がないため、学業へ悪影響が出ることもあります。また、課外活動もできず就職へ影響が出たり、コミュニケーションを取る時間も奪われるので、友人関係にも影響が出ることも考えられます。 千葉県の調査 千葉県は、千葉市をのぞく公立の小学6年生、中学・高校の2年生の計11万7000人を対象にアンケート調査を実施しました。 現在、自分が世話をしている人の有無を尋ねる質問で「いる」と答えたのは、小学6年生の14.6%、中学2年生の13.6%、高校2年生の10.5%でした。しかし、このうち「自分はヤングケアラーである」と認識しているのは、小学6年生で7.1%、中学2年生で6.4%、高校2年生で8.5%にとどまりました。 家族の世話をしている時間は、小中高生とも平均は2時間半程度となっています。さらに7時間以上世話をしていると回答した子どもも2%ほどいました。 子どもがのびのびと暮らし、健やかな成長ができる社会にするためにも、ヤングケアラー問題には早急に取り組む必要がありそうです。

2022/11/10

介護職員 社会保障 社会問題

要介護1・2は介護保険の適用!?”介護保険外し”の「総合事業」とは

10月31日に介護保険の今後を話し合う、社会保障審議会介護保険部会が開かれました。そこで、要介護1と要介護2の高齢者に対する訪問介護と通所介護を、市町村の日常生活支援総合事業(以下「総合事業」と呼称)に移管するという構想が話し合われたのです。 この総合事業とはどういったものなのでしょうか? 総合事業は、今までは主に要支援者に該当した高齢者を対象に実施。高齢者が要介護状態になることを防止し、慣れ親しんだ地域の中で自立した生活を送れるように支援する制度です。 ただ、上限がない介護保険の一律給付と違って、総合事業には高齢者人口の伸び率に合わせた上限額が設定されており、行政が支出をコントロールしやすい代わりに、ケアに十分なお金が回らないリスクもあるのですります。 国が訪問介護と通所介護の該当者を減らし、総合事業に移管しようとしている理由として、高齢化が進行し、介護費用の総額が介護保険制度創設時と比べて約3.7倍になっていることが挙げられます。 今後も介護費は右肩上がりになることが予想され、国は現役世代の負担を減らそうとこの構想を打ち立てたのです。 介護福祉士会の意見 日本介護福祉士会は、総合事業に移管する案を「介護外し」だとして厳しく批判し、10月24日に要望書を、11月4日に意見表明書をそれぞれ国に提出しました。 要介護1や要介護2の人は、自立してほとんど他者の手を必要としない要支援の人と比べ、認知機能が低下し生活の一部または大半を支援する必要がある人も多く見受けられます。例えば、認知症でトイレが認識できず、トイレに行くことも1人では困難という人であっても、足腰がしっかりしていれば要介護1や要介護2の判定を受けてしまいます。 そのような人を、要支援の人をターゲットにしている総合事業に適応させるのは難しく、適切なケアが提供できなくなることも考え、かえって重度化を促進するおそれもあると、介護福祉士会は警鐘を鳴らしています。 総合事業に移すべきという意見 一方で、財務省や経済界は総合事業への移行を推進しています。 日本経団連は、「今後の社会保障を維持していくためにも経済の活性化が不可欠。そのためには現役世代の負担を減らしていく必要がある」と主張しました。 またほかにも、「現役世代の負担はすでに限界にあり、給付と負担のバランスを確保しなければならない」といった意見も出ました。 できる限り介護の水準は維持していきたいですが、下の世代にしわ寄せがいってしまうのも事実。うまく双方の妥協点を見つけたいところです。

2022/11/09

コロナ対策 介護食 調査結果

レトルトの介護食を利用している人65%!コロナ禍で増える在宅介護の負担

今年の7月、アサヒグループ食品は自身が家族の介護をしている531人の男女を対象に、介護世帯の食を中心としたアンケート調査を実施。家族は、長引くコロナ禍で増えた在宅介護の負担を減らそうと、さまざまな策を練っていることがわかりました。 介護における食と調理意識について まず、介護における食と調理意識に関する調査をしました。 調査結果を見ると、新型コロナウイルスが流行する以前に比べ、レトルトやインスタント食品を利用している人が増えていることが明らかに。65.9%の人が「レトルトやインスタント食品がある」と回答しています。「介護用のレトルト食品も活用していきたい」と答えた人もコロナ禍以前より増えていました。 さらに、「介護の食事は配食やホームヘルパーなどのサービスを活用した方がいい」と回答した人も、コロナ禍以前より大幅に増加しています。 これらの背景には、新型コロナウイルスの流行で介護施設の利用が制限され、家族が介護を必要としている人の食事作りも担っている人が増えていることが推測されます。その食事作りが負担になると感じている人も多いようで、「食事の支度は面倒だ」と回答した人は6割に上りました。 現在利用している介護サービスについて アンケートでは、現在利用している介護サービスに関する調査もおこないました。 すると、デイサービスなどの通所介護施設やショートステイを利用している人がコロナ禍以前に比べ大幅に減っていることが明らかに。やはり新型コロナウイルスの蔓延で、施設の利用を現在は控えている人も少なくないようです。 一方、介護食や配食サービスの利用はコロナ禍以前より増加傾向。家事代行サービスやクリーニングサービスを利用する人もコロナ禍以前に比べて増えています。その背景には、在宅介護の負担を少しでも減らそうとしていることが推測されます。 新型コロナウイルスの流行は、介護環境にも多大な影響を与えました。長く介護を続けていくためには、レトルト食品を使ったり配食サービスを利用するなど、負担を減らしていく工夫が大事になっていきそうです。

2022/11/09

人材不足 介護職員

訪問介護の移動時間・キャンセル料の支払いを!原告の訴え、判決で棄却

11月1日、訪問介護のヘルパー3人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地裁であり、裁判は原告側の訴えを退ける形となりました。 原告3人は、訪問介護ヘルパーが劣悪な労働条件や低賃金の中、働くことを余儀なくされているのは介護保険制度にあるとして国を提訴。また、「移動時間などの賃金未払いによって、介護労働者としての尊厳を傷つけられる働き方を強いられた」として、原告1人に対し330万円を支払うよう求めていました。 原告側の主張 訴えの中でヘルパーの労働実態が見えてきました。 原告側の主張は以下の通りです。 訪問介護事業所の中で大半を占める非正規雇用のヘルパーは、利用者宅への移動時間や合間の待機時間など介護サービス以外の時間に賃金が支払われない。その原因は、賃金を支払えるだけの介護報酬体系になっていないことにある 利用者側のキャンセルによる休業手当も発生しない 以上のような「労働基準法違反の状態を放置し、事業所を規制する権限を行使しなかったのは違法」として国を相手に裁判を起こしたのです。 裁判の結果 「移動時間などの未払い賃金が支払われていない」という原告側の訴えに対し、国側は「未払い賃金などの支払いは事業者側の義務である」と反論しています。 判決でも「労働条件は各事業所が是正すべきものだ」と国側の主張を認める形で、原告の訴えを棄却しました。 判決後の報告集会で、原告側は「介護サービスを提供した時間しか賃金が支払われない不安定な生活だ」と改めて苦しい現状を訴えました。 このような厳しい労働条件で、訪問介護の各事業所は深刻なヘルパー不足に悩まされています。公益財団法人「介護労働安定センター」の2021年度の調査では、事業所の実に8割が「ヘルパー不足」と回答しているのです。 高齢者が自宅で自分らしい暮らしを営んでいくけるためにも、ヘルパーの労働条件の改善は急務です。

2022/11/09

社会保障費 社会問題

ケアプラン有料化に”待った”!介護10団体が厚生省に要望書を提出

居宅介護支援とは、利用者が可能な限り自宅で自分らしい生活を送れるようにケアマネジャーがケアプランを作成し、関連機関と連携を取るように調整していく介護サービスです。 この居宅介護支援サービスは万人が公平に受けられるようにするため、制度発足から継続して利用者負担はなく、その費用はすべて介護保険財源で賄っていました。 しかし、少子高齢化で介護保険の対象になる人が増え、財源が圧迫されてきています。 そこで、国は増大する介護保険の費用を抑えるために、居宅介護支援費の一部を利用者にも負担を求めました。 それを受けて10月28日、ケアマネジャーが集う日本介護支援専門員協会は、居宅介護支援において現在おこなっている全額給付を今後も継続してほしいと国に要望書を提出したのです。 要望書の中身 要望書は、日本介護支援専門員協会や日本介護福祉士会など福祉系10団体の連名で提出されました。 中身は、居宅介護支援費を利用者が一部負担することに断固反対し、全額給付を維持するように要求するというもの。特に、全額給付が実現しているからこそ、居宅サービスが多種多様な利用者の状況に応じて効率的に提供されているという点を強調して訴えています。 全額給付の意義 居宅介護支援費の全額給付は、制度発足から今まで継続してきました。 この全額給付は、利用者それぞれが解決すべき課題や置かれている環境に応じて、医療・介護などのサービスが効率よく、誰に対しても総合的に提供されるようにするためにあります。 今回の要望書の中で、そうした意義は「今日の利用者に対しても薄らぐことはない」と強く訴えています。 もし居宅介護支援を利用者が一部負担することになれば、低所得者層は利用を控えることもあり得るでしょう。 しかし、居宅介護支援サービスは介護保険サービスを利用するための入口。有料化した結果、低所得者層にセーフティーネットとしての介護保険制度の手が届かなくなるおそれもあるのです。 居宅介護支援費の有料化は、2024年度の介護保健制度改正をめぐる大きな論点のひとつとなっています。今後の動向に注目ですね。

2022/11/08

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介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

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グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

2021/11/15

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【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

介護の基礎知識

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